第485話 ”七賢人”の企み
「”七賢人”……彼らは世界の体制を変えようとしている。それは勇者のあり方にさえ手を加えようとしているんだ。」
「な、なんだって!?」
かつてフェルディナンドと戦った際もそんな話をしていた。世界を作り替えるのだと。自らが神になってでも世界を変えてみせると。アイツは世の中の人間があまりに愚かであるからといって、改編するのだとも言っていた。あれはあくまでアイツだけの考えなのかと思いきや……似た考えを持つのがあと6人いるっていうのか……。
「私は彼らに反する行動を取りすぎていたのかもしれない……。勇者の使命、行いは彼らの理想と相反するものだから。」
「弱気を助け、強気を挫く、その考えに反するのがそいつらのなのか?」
「ある種、人類の選別を行おうとしているようだ。きっとこの先、君への障害として彼らは立ちはだかるだろう。そして、最も注意すべき人物がいる。」
”七賢人”の思想……俺はフェルディナンドの考えしか知らないが、基本的には弱者を一掃して、強者即ち優れた人間だけが運営する社会を築き上げるということ。不要なものは全て排除し、世界の更なる発展を促す事を理想としていたようだ。
他の6人も同じ目的を持っているというのなら、当然、勇者ともぶつかる可能性が出てくる。その中で注意すべき人物とは何者なのか? あのフェルディナンドと同レベルの人間がいるというだけでもゾッとするが……。
「その人物とは……我が師、シャルル・アバンテだ。」
「アンタの師匠が、先々代の勇者が”七賢人”の一人だというのか!?」
「師匠は必ず君の前に立ちはだかるだろう。そして……出来ることならば、我が師を止めてほしい。いや、君なら我が師を救えるかもしれない。彼は未だ深い悲しみに捕らわれている……。」
先々代の勇者が”七賢人”の一人として加わっているというのは驚きだ。しかも勇者の理想に反する活動をしているなんて……。エルのお母さんの件といい、牛の魔王との戦いがもたらした結果が、その後の生き方を変えてしまっていたのか? 彼は一体、何を考えているのか? 一度会って、その本心を確かめてみないといけないな……。
「もっと君に詳しく話したかったのだが……私の二度目の命もこれまでのようだ……。」
「待ってくれ! もっと聞きたいことがあるんだ!」
「本当に済まない。少なくとも要点は話せて良かった。あとは君の目で確かめてほしい……、」
「カレルーっ!!」
俺の呼び掛けもむなしく、カレルの体はゲイリーと同じようにチリチリと灰のようになって消滅していった。もっと彼とは話がしたかった。七賢人とかシャルルの事を聞きたかった訳じゃない。勇者の先達としての話を、色んな事を学びたかった……。
「いっちまったか……。とはいえこういう形で再会できただけでも良かったのかもしれん。」
「カレルさん……。もっとお父さんの話を聞いてみたかった。」
「カレル……やはり君は勇者としての規範とも言うべき存在だった……。君という先達がいたからこそ、その精神がロアに引き継がれているのだろう。」
ファル、エル、エド、みんな口々にカレルに対しての思いを吐露していた。それぞれ関わりあい方、立ち位置は違うが、身近な人間としての付き合いを望む声ばかりだった。それだけ慕われていた存在だったというのが良くわかる。俺はそんな人に勇者としての役割を託されたのだ。例え、偶然の出会いから始まっていたのだとしても、それを誇りに思って使命を全うしていきたい。
「なあ、お前ら、あまり感傷に浸っている暇はないかもしれんぜ?」
「え? どゆこと?」
「ここがどういう経緯で出来ていたのか忘れたか? ここもハリスの魔力による産物だってことをな。」
「それじゃあ、まさか!?」
カレルの二度目の死で感傷に浸っていたら、ファルが寝起きに水を引っかけるような事を言ってきた! この塔がどういうものであったのかを思い出させる発言だった。そうだ。戦いの最中で忘れていたが、この場所はハリスが作った要塞、ホムンクルスやクローンと同じで、主を失ったということは……、
「ここも崩壊してしまうってことか!?」
「そういうことになる!」
「早く脱出しないと……!?」
脱出自体は問題ないと思う。ここに入る前に緊急脱出用の転送陣を持たされていたから。任務を全うした後、危機的状況に陥った時に脱出できるように各パーティーの代表者に持たされていたのだ。それを使えば脱出可能だが……問題点がある!
「でも、まだ……グレートが戦っている! どうするんだ? アイツを置いていくわけには……、」
「やるしかないだろう! 全員でよってたかって倒してしまえばいいのさ!」
やれるのか? いや、グレートが一人で押さえている以上は複数でかかればその体勢も崩れるはず。でも、本当にそれでいいのだろうか? 何か引っ掛かるところがある。奴は邪悪な存在かもしれないが、魔王のように卑劣な行いをする輩ではない。なんとか説得したりは出来ないものか……。そう考えているうちに、俺の目線の先に二つのデーモン・コアが転がっていた。




