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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第七章 〜新米ママ(パパ)編〜
998/1073

998.どうしたって騒ぎは起こるんですね……。





 私のお誕生日会は、当初の私の予定と違って派手な催しになってしまったものの、嫁二人が喜んでいたので、……まぁ良しとしよう。

 多少の馬鹿が出た事くらいは目を瞑る。

 馬鹿に費やす時間があるなら、嫁のために費やしたい。


「疲れた……、足が痛い……。

 二人とも良くもあんな踵の高い靴を履いて、一日中踊っていらるわね

 前の時は慣れの差だと思ったけど……、二人を見ていると絶対に違う気がする」


 嫁の一人であるエリシィーが、お客様を送り出すなり寝台(ベッド)でへばっているのは、まぁご愛敬。

 でもへばる気持ちは分かる。

 確かに踵の高いヒールって、はっきり言って拷問道具だと思うもの。

 踵でグリグリやったら、別の意味で拷問道具になるし。

 人によっては御褒美だと言うかもしれないけれど、それはまた別の話であって、私達には更に関係のない話。


「エリシィーさん、ユゥーリィさんは魔法で足首を必要に応じて固定しているため、足に掛かる荷重を分散して楽をしているだけです」

「……ずるい」

「ジュリだって、今は私の真似しているじゃない」

「教えてくれるまでした、私の苦労を返してほしいですわ。

「そこは魔法の勉強で、自分で気が付いて欲しかったの」

「……つまり二人ともズルをして楽をしていると?」


 魔法を使う事をズルと言われると困るけど、エリシィー一人に苦労させているという意味では私もジュリも同罪なので、黙ってパンパンに張ったエリシィーの足をモミモミとマッサージ。

 疲れと痛みで苛立っている人間に意味のない反論したところで、感情を逆なでするだけだからね。

 寧ろ、私のお誕生日会という名の社交に付き合ってくれた結果なので、感謝の気持ちを込めてエリシィーを労るのが当然。

 感謝、感謝ってね。


「ぅぅ…ん、そ、そこ、気持ち良い」

「ここ?」

「ぅぅん、そう、ふぅ…はぁ……んん…ふはぁ…」


 漏れ出る声に、これは相当疲れているなぁと、更に優しく丁寧に揉む。

 今日は秋祭りの時と違って、高位貴族が大半だったから気を張り続けていただろうと思うと、疲れるのも当然よね。

 エリシィーは私とジュリと違って貴族の家に生まれて、そういうものだと教育を受けて育ったわけではないもの。

 でも此処でヒールを履いている間、弱い治癒魔法を常に足に掛けておくと少しだけ楽になると教えたら『なんで早く教えてくれないのっ』と怒られそうなので、気が付くまで黙っておく。

 こういうスキンシップが減るのは、私にとって損失でしかないもの。

 此処か、此処がエエのんかっ、と嫁の足をモミモミと楽しんでますからね。

 言っておくけど、えっちぃ事はしていませんよ。

 何処かの誰かさん達と違って、純粋なマッサージです。


「そう言えばユリア様の方は無事に済んだの?」


 でもそんな状態でも他人に気を使える優しさを持つ所は、私の好きなエリシィーらしいなぁと思うと同時に、他人の事ばかりでと心配なところでもある。


「うん、無事に済んだと言えば済んだかな。

 ちょっと揉めたらしいけど……」

「え? 詳しくっ!」


 疲れているはずなのに勢いよく体を起こして、真面目な顔で聞いてくるエリシィーに、そんなに心配しなくても大丈夫だと伝える。

 互いの認識不足による軽い事故が起きただけだとね。

 ちゃんと私、無事に済んだと最初に伝えたでしょとも。

 本当は黙っておいても良いんだけれど、この場合、黙っていた事がバレた時の方が恐い。


「そう、なら良かった。

 他人の家の事は言えないけれど、仲直りできるものなら、仲直りできた方が良いに決まっているもの」


 そう言って、再び寝台(ベッド)に倒れ込むエリシィーの姿に苦笑が浮かぶ。

 奇しくも私を含めて三人とも、実家と問題を抱えているからね。

 私は私の我が儘で実家に縁を切られた不良娘。

 ジュリは……、家が多額の借金を背負っていた上に、その借金の幾らかを軽くするからと、貴族後見人である貴族の跡継ぎを相手に練習用の宛てがい娘として売られた。

 エリシィーは……、私が原因みたいなものだけど、まぁ似たようなものね。

 性質(たち)が悪い事に、母親である小母さんは罪悪感を感じていないどころか、ようやく地獄から解放されたエリシィーをまだ利用しようとしているところ。

 そう考えると私が一番幸せな人間で、我が儘なだけだと言える。


「ユリアはね、一応は母親であるファンデット夫人の謝罪を受け入れたわよ。

 でもそれは父親であるファンデット伯爵にも言える事だけど、謝罪を受け入れただけ。

 自分が受けた不幸を誰かのせいにしたり、憎んだりする事が嫌だから受け入れただけなのよ。

 何より、そんな醜い感情を子供達に見せたくない、引き継がせたくないからとね」


 だから少しでも安心できる様に、心が安まる様に、受けた報告に少しだけ耳当たりの良い言葉を加えて話す。


「そこにファンデット婦人が孫を抱いて、その可愛さと嬉しさのあまり、少しだけ距離感を誤ってしまったのよ」

「……そう言う事もあり得る……のかな?」

「私の子供を可愛がる姿を見れば、少しは分かるでしょ」

「確かに」

「……今の冗談の部分なんだけど」

「ユゥーリィの場合、少しも冗談に聞こえないと、いい加減に自覚すべき」

「何でっ!?」


 だからユリアは過去の出来事を許しはしても、親を許してはいないの。

 ましてや信頼なんて出来る訳がない。

 なにせユリアが罠に嵌められて辛い時に、すべてユリアが悪いとばかりに両親に責め立てられ、家を追い出されて沢山の苦労をしているのよ。

 幾ら裏で元凶の妹が暗躍していたとしても、決断を下したのはあの人達。

 それなのに一度きりのしおらしい態度で謝罪の言葉を口にしたところで、直ぐに昔のような関係に戻れると思える方がおかしい。

 なのに実家に戻って来て、昔のように一緒に暮らさないか、なんて無責任な事を笑顔で言われたら、ユリアとしては堪ったものではない。

 いくら実の両親だと言っても、ユリアにとって両親は一度自分を見捨て、実際に家からも追い出した、また裏切るかもしれない人間でしかないの。

 ユリアが我が家に来た時、男性不信に陥ってはいたけれど、その根底にあるのは、信じた人に裏切られる事に対する恐怖なのよ。

 ギモルが時間を掛けて解して、ようやく自分なりの幸せを掴んだのに、何を勝手なことを言うのかって、ユリアが怒るのも当然。


「明日、顔を見れば分かるわよ」

「それもそうね、きっと今頃ギモルさんに甘えているのかも」

「……ユリアが甘える姿、あまり想像がつかないんだけど」

「ふふふっ、ユリアさん、礼儀作法の先生でもあるからね。

 ユゥーリィにはあまり緩んだ姿を見せたくないのよ」」

「そうですわね、ユリアさん二人っきりだと思っている時は、偶にギモルさんに甘えている所を見掛けますわ」

「ああ、でも写真機騒ぎの時は思いっきり緩んだ姿を見せたのだから、普段からも見せてくれても良いのに」

「そこはそこよ」

「ですわね」


 ユリア付の女中(メイド)であるナナエルがとっさに間に入って、なんとかユリアから決定的な言葉が出る前に場を収めたらしいのだけど、婦人は娘からの罵倒に相当ショックを受けたみたい。

 もしかすると伯爵は、そんな婦人の気性を知っているから、ずっと黙っていたかもしれないわね。

 まぁ婦人に関してはどうでも良いけれど、ユリアだって婦人が感情が先走って距離感を誤っただけだと、今頃は分かっているはずだし、それこそ二人の言葉ではないけれど、ギモルに甘えて慰めて貰っているかもしれない。

 と言うかギモル、こう言う時に夫としての甲斐性を見せていない様なら、本邸に戻ったら一度絞める。


「……それにしても、やっぱり泊まっていかないと駄目なの?」

「……ユゥーリィ、何度も言ったでしょう。

 そんな事をしたら、自分の屋敷にも関わらず泊まりたくもない屋敷だと、此処の人達に勘違いされてしまうから駄目だって」

「ユウさん、明日の朝に改めて使用人達に労いの言葉を掛けるのが、当主としての大切な役割ですわ。

 それに戴いた物を確認して仕分けする作業があります」

「ふにぃ……、面倒くさい」


 言っている事は分かるんだけどね。

 どうしても面倒臭さが先に出てしまう。


「ぅぅぅ……、ぅぁぁぁあ、ぅぁぁ」


 あらら、サクラが起きちゃった。

 どうしたのかなぁ?

 オムツは……なし。

 おっぱいは……でもないか。

 ぁぁ、でも一生懸命に身体をすり寄せようとしている所を見ると、人肌が恋しくなっちゃったのかもしれない。


「はいはい、大丈夫よ。

 ちゃんと側にいるから」


 サクラをあやしていると、うん、私も何か人肌が恋しくなっちゃった。

 という体で、サクラを抱えたままエリシィーの横になって、ジュリの綺麗で柔らかな髪をそっと掴む事でおねだり。

 川の字にしては一本多いかもしれないけれど、まぁ意味合い的には同じ。


「面倒な事は全部明日へ後回しにして、今日はもう寝ちゃいましょう」


 誕生日の夜だもの、愛しい家族と同じ寝台(ベッド)で、ゆっくりと眠るくらいの贅沢をしても罰は当たらないと信じている。


「おやすみなさい、良い夢を」

「「ええ、良い夢を」」

「ぅぁぁ……、ぅん……zzz」







 ---------- 第七章 〜新米ママ(パパ)編〜 完 ----------





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― 新着の感想 ―
わあ、また一つの章が終わった。時間は本当に早く過ぎていくものだ。さくらが成長していく先の展開を読むのが楽しみです。これからも見守っていきます。この1年間、物語とご尽力に感謝いたします。今年も素晴らしい…
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