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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第七章 〜新米ママ(パパ)編〜
997/1073

997.私のお誕生日会ではあるけど、影の主役は自慢の嫁達です。





 私のお誕生日会は、私の希望を盛大にこれでもかと言うくらいに無視されて、随分と派手な催しとなってしまっている。

 一体どれだけのお金が動いたのか、報告書に目を通すのが今から気が重い。

 これには王都邸と共に催しの準備を任せた、新たに雇用した執事であるシェロに特大の文句を言いたい所だけど……、残念ながら文句は言えない。


『ユゥーリィのお誕生日に招待する方々って事は、ユゥーリィの為に色々と力を尽くしてくれた方が大半と言う事でしょう。

 それなのに、派手にするのは嫌だって我が儘言うってどういう事?

 態々王都で行うのは、確かに国からの命令かもしれないけれど、でもそれは国王陛下を始めとしたユゥーリィの後ろ盾をして下さっている方々が、ユゥーリィの為に力を貸すだけの価値があったと言う事を、王都にいる人達に知らしめるためでもあるのに、そう言う我が儘を言うのだから、当然ながらその方々を納得出来る様な理由があるのよね?

 言っておくけど、力を借りた以上に相手に儲けさせているとか、くだらない言い訳は聞かないからね。

 周囲から見てどう映るかが肝心だし、私やジュリさんは勿論の事、多くの使用人の皆んなは、ユゥーリィが認められて、多くの人に祝われる事を楽しみにしているのよ。

 そんなユゥーリィの事を皆んなして心から想っている、ユゥーリィが家族だと言っている皆んなをも納得させられるだけの理由もあるなら、是非とも聞かせて欲しいのだけど』


 ええ、もう素敵な笑顔で(目がちっとも笑っていない)問い掛けてくる嫁の前には全面降伏するしかない訳でして……。


『あと事後報告になるけれど、王都邸のシェロ様には私が家令として許可を出したから、言いたい事があるなら私に言ってね。

 私を家令に任命したのは、他でもないユゥーリィなんだから』


 ましてや、しっかりと釘を刺されているので、文句など言える訳がない。

 言うまでもない事だけど、私、嫁に弱いですから。

 しかもそれが正論なら、尚更の事。

 そして肝心のお誕生日会の催しと言えば、現在、私の才能を見だした貴族と言う事になっているコンフォード家前当主のドルク様から、お祝いの言葉を貰っている最中で……。


「早いもので、君ももう二十歳を向かえるか、私も歳を取る訳だ。

 十五歳で少女から女性へ、二十歳で貴婦人へと変わると言われているが……、どう見ても見えぬな。

 い、いや、何時までも若々しいと言う意味でだ。

 誤解をしないでくれたまえ」


 ドルク様、称えるのなら最後までキチンと称えて下さいよっ!

 誤魔化そうとしても、笑いを堪えるように身体を震わせながらでは、欠片も説得力がありませんっ!

 と言うか、何時までも若々しいというのは、もっと上の年齢層に対して言う言葉であって、間違っても二十歳を迎えたばかりの女性に言う言葉ではない。

 いえ、祝いの言葉を述べようとした事は認めますけどね。

 えぇ、ええ、どうせ定型文が使えない程の童顔発育不良のチビですよ。

 あと周りの方々、そこで思わずドルク様の言葉に頷かない。

 まったくもうと思いつつも、それだけ親しい方々だと思えば、年寄りの達の悪い冗談だと受け止めるしかない。

 なので、ドルク様の御期待に応えるように、子供らしく頬を膨らませて……。


「そう言う事を仰るコンフォード家には、春までお菓子の付け届けはしません」


 と、更に子供らしい台詞を口にしてみせる。

 周りは私とドルク様の遣り取りに、祖父と孫のような関係だからこそと微笑ましそうに笑っているけれど、ドルク様の心中は穏やかではないだろうなぁ。

 なにせコンフォード家には、毎月のようにお肌の手入れ用品と共に付け届けているお菓子は、我が家からしか手に入らない果物や素材をふんだんに使っており、更に公表していない調理法を用いたお菓子もあって、それらをコンフォード家の女性陣は毎月心待ちにしている。

 つまりドルク様、屋敷に戻ったら奥様達を筆頭に、間違いなく使用人を含めた女性陣から不満の目で見られる事になる。

 しかもそれが、二十歳になる女性を公の場で子供扱いする発言をした結果ともなれば、誰も同情してはくれないだろう。


「は……はは…、は……」


 そしてドルク様、流石に自分の発言が失言だと御理解されているだけに、乾いた声で笑うだけで、黙って己が失言を受け入れる姿は男らしいです。

 まぁ隣にいる奥様に、思いっきり脇腹を抓られているのが一番の原因でしょうけどね。

 もっとも、私もドルク様がワザとではないと分かっているので、ちゃんとジュリとエリシィーがコンフォード家に教えを受けに行く際に手土産として持たせるし、現在従者見習いの勉強のためお世話になっているオルヴァー君が一時帰宅した際に、同様にお菓子などを手土産と持たせて量の調整するつもりだから、実質的な被害を与える気はない。

 ただ、ドルク様の采配で屋敷の中に回らないと言うだけ。


「はははっ、意味もなく淑女を怒らすなど、ドルクよ、何処かの不良老人に似たのではないかね?」


 そこへ声を掛けて来られたのは、ガスチーニ侯爵家のヴァルト様。

 ドルク様ともそうだけど、この方との付き合いもそれなりに長い付き合いと言えるようになったと思いつつも、二十歳を迎えたばかりの私と年寄りとでは時間の感覚が違うので、相手がどう思っているかは別。

 それでも私が長いと思えるくらい、長期に渡ってお世話になっているのは確か。


「やめてくれっ、フェルに似ているなど、流石にゾッとするわい」

「ふふふっ、きっと向こうも同じ事を思っているであろう」

「確かにフェルならありそうだ。

 だがな、彼奴から口の悪さがなくなったら、それこそ老い先短い命の灯火が、本当に僅かである事を心配せねばならなくなる。

 ヴァルト、フェルが儂等より先に約束の地に旅立つと思うか?」

「それこそ、まさかの話だろう」


 コッフェルさんも、まさか私のお誕生日会の催しで、自分が話のネタにされているとは思ってもいないだろうなぁ。

 と言うか、ドルク様もヴァルト様も年齢は離れているけれど、仲が良いなぁと思っていると、ヴァルト様は此方に視線を向けて祝いのお言葉を贈って下さる。


「ユゥーリィ嬢、君が生まれた日を祝わせて戴こう。

 君との出会いがあったからこそ、今の我が家の繁栄が在ったと思えば、今日と言う日を感謝する事に疑問を持つ事などあり得ぬであろう」

「身に余るお言葉、有り難うございます。

 今後ともまだ至らぬ身ではありますが、どうか御指導の程を宜しくお願い致します」

「しかしドルクではないが、今日の君の装いを見れば、如何に周りの者が努力したか良く判る」


 それは私が普段は手を抜いている事に対しての皮肉だろうか?

 いや、仕事が出来て周囲への気遣いの出来るヴァルト様の事だから、それは流石にないと思いたい。


「ヴァルト様からその様な嬉しいお言葉を戴いたなど、家の者達が聞いたらさぞや喜ぶでしょう」


 なので素直にそのままの言葉として受け取っておく。

 でも、両替機の事は忘れませんよ。

 ヴァルト様からしたら我が家への応援だったかもしれないけれど、迷惑以外の何ものでも無かった訳ですから。

 あの時、私、待ってくださいとお願いしましたよね。

 おかげさまで、この冬も何かと忙しくなる事が決定ですよ。


「一番輝いているのはユゥーリィ嬢である事には違いないが、ペルシア嬢とプラーガ嬢と、君の周りにいる者達の普段とは違う装いで輝いている姿は、私のような年寄りの目を楽しませてくれている」


 でも、嫁達を褒めてくれるので、ついつい頬が緩んでしまう。

 自慢の嫁達ですからね。


「ええ、彼女達が私を支えてくれいるからこそ、今の私があります。

 私のためのお祝いであるなら、彼女達なしでは有り得ない事です。

 なにより彼女達の華やかな姿を目にするのが、私への一番の贈り物ですから、頑張りましたわ」


 着飾る事の少ないジュリとエリシィーも、今日はしっかりとドレスを着て装飾品を身に付けている。

 私と出かける事の多いジュリだけど、あくまでその立場は私の嫁としてではなく、護衛を兼ねた従者としてなので、貴族籍を持った令嬢であっても意外に令嬢として着飾る機会が少ないのよね。

 着飾った姿が物凄く似合うのに、本当に勿体ない。

 エリシィーは最近貴族籍を得たと言っても、私が持つ辺境伯の権限でもって得た一代限りの貴族籍だし、着飾る場所に出席する事自体が殆どない。

 なので、今日はしっかりと着飾って貰った。

 しかも私を含めて、三人のドレスは共通した装飾が施されているため、私に近しい人間と誰の目にも映るはず。

 もっとも、着飾らさせられた本人はと言うと……。


『ドレスも装飾品も重くて嫌なんだけど

 何より華やかな場所って、私、苦手』


 てなわけです。

 はっはっはっはっ、華やかな場所が苦手なのは私も同じ。

 私に社交をしっかりと遣れと言うなら、嫁二人の華やかで綺麗で可愛い姿を愛でるくらいの御褒美を要求する権利はある。

 という訳で、当主権限で命じましたよ。

 ついでに最初の私の挨拶の後に、しっかりと二人を相手に踊りました。

 うん、似合っているのはドレス選びの際に分かっていたけど、やっぱり本番で見ると印象が段違い。

 眼福♪ 眼福♪

 もうニヤけすぎて、目元と口許が蕩け落ちそうですよ。


「君の二人への熱の入り様は、二人の装いを見れば大抵の者は理解出来よう」

「確かにな、よく相手を自分の色に染めると言うが……、アレは些かやり過ぎではないかね?

 見た目こそ身分を弁えて抑えてはあるが、使われている布地や身に付けている石は勿論の事、掛かっている手間や装飾の見事さは、見る者が見れば分かる」

「見る目の乏しい若い者が踊りを申し込みに行こうとして、事情を知っている周りの者に警告を受けて止められている姿は、生き馬の目を抜く者ばかりの社交界では中々に見れぬ姿だな」

「何処かの娘を怒らせて、その巻き添いを喰らいたくないというのが本音だろうさ」

「確かにな」


 こう言っては何だけれど、嫁二人の社交界での立場は高くない、どころか寧ろ下の方だと断言出来る。

 何せジュリは子爵家出身の令嬢とは言え、今は家を出て従者という立場だし、以前に何処かの馬鹿息子がジュリの過去を暴露したため、尚更に社交会に顔を出しづらい身の上。

 エリシィーは平民だったし、爵位を持っていると言っても平民貴族と揶揄される一代限りの準男爵である以上、家の歴史の長さが幅を利かせる貴族社会では無視される事が多い。

 そこで物を言うのは、二人の後ろ盾である私の存在。

 新興貴族であっても、私、一応これでも伯爵位を持っているし、侯爵相当とされる辺境伯を任されている身。

 おまけに魔導具関連を含めて商売でも成功しているお金持ち。

 その分だけ敵は多いけれど、やっぱり世の中物を言うのは権力とお金なのよね。

 つまり周囲が異常だと思えるほど、私が二人にお金を掛けて可愛がっていると思わせる事が、二人を守る事に繋がる訳です。

 ついでに嫁を自慢出来る。


 私の嫁達は綺麗でしょ〜。

 可愛くで、スタイルも良くて、文句の付け所がなくて。

 近付きたいよね〜。

 手を繋いでみたいよね〜。

 出来る事なら匂いも嗅いでみたいよね〜。

 でも許さん。

 二人は私の物。

 見るだけです。

 お触り厳禁です。


 現に今も我が家の使用人に側に付いて貰って、男避けになって貰っている。

 男性相手に舞踏を許すのはお仕事の上で、しかもそれなりの年輩の紳士が相手の時だけです。

 当然ながら、離れた所からであっても監視付きで。

 社交界って婚活パーティーの場でもあるから、私の嫁ではあるけど世間的には未婚になっているので油断は禁物。

 だからドルク様達と踊られるのは問題なしというか、寧ろ推奨した。

 ドルク様達なら心配ないという事もあるけれど、楽しげに話してみせる姿を見せる事が、ジュリ達を守る事に繋がるからね。

 私経由ではあるけれど、二人ともコンフォード家にお世話になっており、そこそこの縁があるからね。


「一応忠告しておくが、信頼ある者だけ同士の催しでしか、彼女を余所の家の催しに参加(・・)さぬようにした方が良い」


 ドルク様が仰っている彼女と言うのは、エリシィーの事であり、参加と言うのは招待客としての参加であって、私に連れ添ってついて行く従者やとは別の意味。

 と言うのも、従者は文字通り私の連れであり、保護下に在る者なんだけれど、参加者となると、私とは独立した招待客扱いされてしまうのよね。

 魔法と武術と強力な自衛手段を持つジュリはともかく、闘う力を持たないエリシィーは私の弱点その物だから、尚更に注意が必要なの。

 周りに護衛を置いておけるならともかく、この手の催しだと露骨な護衛を付けられない上に、準男爵のエリシィーより上の立場の者ばかり。

 例え爵位がない準貴族であっても、最初から家が介入する前提で既成事実を作ろうとする輩はいるので注意は必要なのよ。

 だからこそ嫁二人に敢えて着飾って貰い、今日この場に来ている方々に、私がそれだけ気を掛けているのだから知っておいて下さいね。

 派閥傘下の家の人にも注意しておいて下さいね、と言う意味合いを持たせているの。


「ええ、そこは分かっております。

 我が家の催しだからこそですわ」


 ただね、自分で言っておいてなんだけど、縁を求めるのであればまだ理解出来るのだけど、人を貶めて悦には入る馬鹿な人って何処にでもいるから頭が痛い。

 特にそれが貴族という名の特権階級を持ち、自分は何をしても許されるのだと間違った選民意識を持って、王族のような明確な基準で自分より上だと分からない人間だと特にね。



 言っておくけど、フラグじゃないから。






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