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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第七章 〜新米ママ(パパ)編〜
996/1073

996.私、二十歳になりました。





 お誕生日会。

 本来それは嬉しい物なのだろう。

 実際に昨年までは私も嬉しい催しだった。

 ただ、今年は違う。


「本当にするのね……」

「ユウさん、往生際が悪いですわ。

 何ヶ月も前に招待状を配りましたし、そもそも数日後に控えて言う言葉ではありませんわ」


 お誕生日会って、身近な家族から祝福される小さな催しだからこそ楽しめるのよ。

 それが大々的になると、途端に面倒臭さが湧きあがる。

 そもそもお誕生日の招待状と言う物が私は気に食わない。

 だって『招待してあげるから、貢ぎ物(プレゼント)を持って祝いに来なさい』って事でしょう?

 いえ、本来はそういう物ではないのだけど、身近な人相手なら『来てね』で済む話じゃん。

 それが貴族社会で行うと、途端に強要染みた内容になってしまうのよ。

 いえいえ、そうやってお手紙を態々書く事で、お互い気持ちを高める催しと思えばそうなんだけど……。


「来て下さる沢山のお客様に気を使い続けるよりも、部屋に引き籠もってネチネチと研究を進めていた方が楽しいのに……」

「まぁまぁ、そこはユウさんのために、多くの人が貢ぎ物を持ってユウさんに跪きに来たと思えば、少しは楽しめますわよ」


 プレゼントではなく貢ぎ物を持ってと言うあたり、ジュリも大概私に毒されて来たとは思うけれど、跪きに来たと言うのは流石に違うと思う。

 あと、それは完全に女王様プレイだからね。

 ジュリには似合うと思うけれど、私には不向きな楽しみ方よ。


【ぽんこつな、イケイケ女王様の奮闘記】


 ふと、ジュリを見ていたら、そんなフレーズが脳裏に浮かんだ。

 うん、想像が膨らんで楽しい。

 過去のジュリが仕出かしたネタをぶっ込めば尚楽しい。

 ジュリがポンコツかどうかはさておいて、イケイケなポンコツな王女様と、それを温かい目で見守る騎士と、支える従者との友情物語。

 いや、悪を装う事が格好良いと勘違いするも、やることなす事が良い事に繋がってしまう残念ドジ令嬢の方が良いかな?

 その方が支える側が活躍しそうだし。


《意外性があって良いわね》


 そう、普通の男女の恋愛ものと思わせて、実は男同士の友情譚……って、まだ作ってもいないものに賛同しない。

 と言うか、作品にもなっていない代物を作者の断りもなく読むなんて、作品に対する冒涜よっ!

 完成するまで寝てなさいっ!


《監修役》


 いらんっ!

一人で作って出来上がるまでが楽しいの!

 余計な意見は、寧ろやる気が削がれる!


《……寝る》


 はぁ……、まったく【   】には、困ったものね。

 出来ればそのまま永久に寝ていてほしいと思いつつ、また、声が近くなっている事に思い溜め息を吐きたくなる。

 あとそれはそれとして、ちゃんとジュリに注意しておく。


「ジュリ……、それ、お客様の前で言っちゃ駄目よ」

「当たり前ですわっ。

 只の冗談ですのに、ユウさんは私をどう思っているんですか」


 ポンコツなところがある、私の可愛い嫁ですけど。

 うん、ちょっとプリプリする嫁が可愛い。

 このまま頭をナデナデしてあげたい。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

【お誕生日会当日】



「ようこそお越し下さいました。

 主人もラルフィード枢機卿閣下が来られた事を、心よりお喜びになられる事でしょう。

 御時間まで、他のお客様方との歓談を、どうかごゆるりとお楽しみくださいませ」


 僅かに開いたドアの隙間から、エリシィーの声が聞こえてくる。

 貴族のお誕生会の催しは、主役は時間まで顔を見せないのが慣わし。

 なのでお客様のお出迎えは私以外の人間が行うのだけど、お客様を出迎えて案内するのも、使用人の格も重要視される。

 来られるお客様は前もって分かっているので担当は既に決めてあり、教会のラルフィード様は教会でお世話になった事があるエリシィーが担当になった。

 領内爵位ではあるものの一応は正式な準男爵なので、枢機卿にエリシィーを割り当てるのは非礼には当たらないのも、その理由の一つ。

 寧ろ私の嫁であり片腕でもあるので、厚遇していると言えるのよ。


『元平民を迎えに寄越すとは、なんて非常識で無礼なっ!』


 なんて事を言う相手でもないので、その辺りは配慮しているのよ。

 そして、ラルフィード様が招待されている事から分かるように、会場は王都の街屋敷。

 普段は十数人しかいない屋敷なので、当然ながら港街の別邸からも応援の人間を出しているし、本邸や港町の別邸からもヴァイスやエマを初めとした何名かを応援として連れてきている。


「ぁぁ〜〜、まぁ〜まぅ?」

「うん、うん、何かなぁ〜」

「ぅぁ?」

「そこは頑張って言おうよぉ」

「ん〜?」


 腕の中にいるサクラも街屋敷を賑やかしている内の一人だけど、サクラは私が一緒に居たいからだし、一応は最初だけ、チラッとお客様にお見せするためという重大な役目があるため。

 それにしても惜しい、


「もう少しで、ママと言えたのに」

「殆ど言えていましたわよ」

「そうなんだけど、ユリアに対しても偶に言おうとしているとね、ハッキリと聞きたいという欲望が……、それに出来ればパパと言ってほしい」

「どうしてそうなるんですか……、あまり馬鹿な事を言わないで下さいな」


 呆れ果てるかのようにユリアに溜め息を吐かれるけど、馬鹿な事を言っているつもりはない。

 中身がオジサンなので、パパと呼ばれたいと思うのは当然の事だよ。

 ともかく、ユリアも王都邸に来ているのは、サクラの顔を最初に皆んなに見せたら、サクラの面倒をユリアに託すため。

 私のお誕生日会と言っても、実際には只の社交の一環でしかない。

 つまりお仕事なので、サクラとずっと一緒に居れないのも仕方がない事なの。

 別に空間移動の魔法で、サクラを本邸に送っちゃえば済む話なんだけど、そこは一応は理由がありまして……。


『ファンデット夫妻を招待?

 まぁ私の代わりに教会派を纏めて下さっているから、招待するのは構わないし、最初から招待客の名簿に入っているけれど、なんでそこで夫人を必ずという一文を入れる事を強調するの?

 確か以前に別邸のお披露目の際に招待した時は、伯爵しか来られなかったのが理由かしら?』

『ナナエルから聞いた話ですと、お披露目の時も伯爵は夫人には黙っていたらしく、その上、ユルギア様の事もお知らせしていなかったようでして、ユリア様に謝罪する機会も、ユルギア様を腕に抱く機会も失ったと、夫人は伯爵に大層御立腹されたそうです』

『……それ、我が家が対応しないといけない事なの?

 言いたくはないけれど、私、伯爵夫妻にはユリアを家から追い出した事に関して、今でもどうかと思っているのが本音よ。

 無論、謝罪したいと言う気持ちは理解しているけどね。

 まぁ、プシュケが態々私に言うと言う事は、夫人が謝罪したいという気持ちも本物なのだろうし、ファンデット家には教会派の事でお世話になっているのは本当だから、素直に言う通りにはしておくわ』


 と言う事がありまして、何処かの駄目な男親の後始末も兼ねている訳です。

 催しの最中に謝罪でも仲直りでも、どうか勝手にして下さいってね。

 正式な場を設けないのは話が大事になってしまい、ファンデット伯爵に瑕疵があり、それを認めさせてしまう事になる上、場を設けた我が家の面子を潰して貸しを作る事になってしまうため、そうならないように配慮しての事。

 但し、サクラやユルギア君とクレアちゃんのお世話が名目で連れて来ている以上、二人っきり、もしくは三人にはさせないし、そもそも私はユリアの味方。

 なので警護の人間に囲まれた状態で、何気ない親子の世間話という体で行われる事になる。


「もうすぐ時間になりそうね。

 アシュレナ、カミラ、もう一度言っておくけど、サクラ達に害意を持つ人間がいても、直ぐに殺しちゃ駄目よ。

 手足の一本や二本は構わないけれど、殺さずに気絶させるまでにしておいてね」


 天狐と金翅鳥(ガルーダ)の厄災級コンビなので、国で最も厳重な警備だと言える。

 王都に魔物を連れ込んで良いのかって思うかもしれないけど、王都であっても貴族の街屋敷って、王都の法律や条令みたいな物に縛られはしても、基本的に治外法権扱いなのよ。

 厳密には違うけれど、そこは貴族の特権と言う奴ね。

 要はバレなきゃOK、文句があるなら乗り込む前に証拠を出せって奴よ。

 そもそも魔物を持ち込んではいけないと言う決まりがない以上、法を犯している訳ではない。

 まぁあまり陛下達を刺激したくはないので、基本的にはこの部屋から出る事のない裏方だし、アシュレナ達も催し自体はあまり興味が無い。

 二人の真の目的は、催しに出る料理や甘味。

 お誕生日会は社交を兼ねているので、新作料理と新作の甘味を出すと言ったら、二つ返事でOKでしたよ。

 別に餌付けしたつもりはないので、二人にとっても口実にしているだけに過ぎないと思う。

 たぶん……ね。


 トン、トン、トン。


 ノックの合図に、私が頷くと入室の許可をカミラが出すと入ってきたのは、ジュリとエリシィーの二人。

 つまり予定していたお客様は揃ったと言う事ね。

 ついでに予定にないお客様はと尋ねてみた所……。


「基本的に招待された方の御家族と、お知り合いの方達ばかりです」


 お誕生日会の催しでは、何時ぞやみたいな予定にない御客様による突撃訪問は、かなり嫌がられる行為なので流石に自重したみたい。

 国の命令で王都の街屋敷の門戸を開いたし、こうして社交を開くのは将来サクラ達が背負う苦労を減らしたいからだけど、流石に最初から揉め事は勘弁して貰いたい。

 もっとも【御家族】や【お知り合い】と言うのが厄介なのだけどね。

 こればかりは御招待したお客様の良識を信じるしかない。


「では行きますか。

 ジュリ、サクラをお願い」

「はい、サクラさん、行きますわよ」


 本当は私が抱えていたいけれど、ジュリやエリシィーだって自分達の子供であるサクラを抱えたい。

 それでもジュリにサクラを預けたのは、単純に身長の問題。

 幾ら視線が高くなる階段の上からとは言え、身長が低い私が抱えているよりも、身長が高いジュリが抱えている方が良く見えるのよ。

 ジュリとの身長差の前には、自称百四十センチ代の私の身長は些細な誤差でしかないのだ。

 悲しい事にねっ!

 残念ながらこの手の催しにおいては、チビは人混みの中では埋もれてしまう存在でしかない。


「ユウさん、サクラさんがユウさんの後ろ姿を見ている事をお忘れなく。

 勿論、私達も後の特等席から、ユウさんの勇姿を見守っている事も」


 ふぅ……、此方の嫁も厳しい時は厳しいのよね。

 社交なんて気が重いけれど、確かに娘のサクラの前ではみっともない所は見せれないか。

 それに家族の期待には出来るだけ応えないと。

 じゃあ、一丁気合いを入れますかっ!


「皆様、御機嫌よう。

 本日は、私、ユゥーリィ・ノベル・シンフェリアの誕生日会の為にお集まり下さり、厚くお礼申し上げます。

 国より辺境伯爵を任されるには頼りないと思われている事は、若輩である私が一番存じておりますが、それでも、今、こうして王都の街屋敷で催しを開き、お客様を迎えれるようになりましたのは、此処にいる皆様方の御尽力があっての事だと─────」


 さぁ、始めよう。

 私達の子供のための家作りを。

 守るべき領民を導き、失わないための人脈作りを。

 魔力でもなく、武力でもなく、人が本来持つ強い力を。








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