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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第七章 〜新米ママ(パパ)編〜
995/1073

995.とある新米執事の苦悩 その参




 シンフェリア家王都邸執事

【シェイロニア・エーデルフィルド】視点:




 さて、此処までの流れでもう分かって戴いたと思うが、俺の新しい主人(マスター)は非常に変わった方だ。

 高位貴族であるにも拘わらず社交嫌いな所もあり、あらぬ噂が多いのも、それが原因の一つである事は想像するに難くない。

 さて、そんな社交嫌いの主人(マスター)だが、今まで王都に街屋敷を所有しながらも、管理のために最低限の人数しか置かなかったのに、急に俺を含めた人員を派遣するようにしたのは、ようやく社交をする気になったからだそうだ。

 それは良い、忙しくはなるが喜ばしい事だと言えよう。

 ファーガソン家に仕えていた俺を巻き込まなければと補足しておくが、今更それを言っても詮無き事。

 諦めて誠心誠意仕えるしかない。


『冬の始まり頃に私の誕生会を行うから、申し訳ないけれど準備をお願いね。

 セバスから貴方なら任せておいても大丈夫だと聞いているから、派手にしなければ自由にして貰って構わないわ』


 とは言え、王都邸を任された際に、ついでとばかりに与えられた仕事自体には(・・・・・・)不満はないが、当主の誕生会など派手にしてこそだと思うのだが、主人(マスター)が目立つ事を嫌うという話は聞いているため、加減が難しいなと考えていると……。


『ちなみに、此れが招待したお客様の一覧よ。

 参加する旨のお返事を戴いている方は、名前の後ろに記載があるわ』


 渡された紙に目を通した瞬間、主人(マスター)が噂通り常識がない人間だと理解した。


 主人(マスター)に対して酷い言いようだって?


 はっ、言ったであろう、仕事自体には不満はないと。

 使用人も含めて慣れていない屋敷で、赴任早々に当主の誕生会を行うこと自体は別に不満はないし、寧ろ、俺を含める使用人の能力を確認する事も含めて、実にやる気の溢れる催しだと言えよう。

 短い間に屋敷内の者を纏め、辺境伯爵家当主である主人(マスター)の趣味嗜好に沿った催しを成功させてみせる。

 執事たる者、その程度の事を熟せなくてどうする、と招待客の一覧を見るまでは言えたであろう。

 主人(マスター)を俺が常識が無い人間だと判断したのは、招待される予定のお客様方の名前だ。


 古き血筋の一族だけでなく、主人(マスター)以外の辺境伯全員に、国の重鎮達。

 特に王都から遠方の地にいる中で、国が重要視しているであろう家がほぼ全て一覧に載っている。

 主人(マスター)と仲が良くないはずの家も含めてだ。

 おまけに王族の名も連ねているとなれば、どうやったって派手な催しにしない訳にはならないというのに、よりにもよってこの面子で控えめにしろだと?

 出来る訳がなかろう。

 なかろうが、主人(マスター)がやれと言うのであれば頷くしかない。


 大人しく引き下がるなど俺らしくないだと?


 君は私をなんだと思っているのかね?

 まぁ言いたい事は分かるが、飢饉の最中に領主一族の贅沢のために税金を引き上げろだとか、何処ぞの家の評判を失墜させてこいだとか、何処かの屑な貴族みたいな命令をされる事を思えば、よほどマシな無茶振りだと言える。

 まぁおかげで、早急に使用人の掌握と意識改革を同時に行わなければならないという事態に陥っているのだが、何方にしろ避けられない出来事である以上、些事だと言える。

 問題は主人(マスター)の要望だ。


 何か問題があるのかって?


 訪れる予定の客筋だけでも大物過ぎていい加減に問題なのに、主人(マスター)の要望は控えめな誕生会だ。

 そもそも、主人(マスター)自身に問題がある。

 今度二十歳に成られる成人女性ではあるが、見た目の容姿がまず問題だ。

 誤解のないように言っておくが、醜女という訳ではない。

 知らぬ者が主人(マスター)を見て思う感想は、おそらく寧ろ将来が(・・・)楽しみだと思うだろうくらい、主人(マスター)の容姿は整っている。

 但し、年齢を鑑みなければと付け加えるならばだ。

 言い方は悪いが、童顔、低身長、発育不良、では済まないほど主人(マスター)の容姿は……言うなれば女性ではなく少女、しかも十代前半も前半の少女だ。

 更に細い手足と儚い雰囲気を持ち、庇護欲をそそる容姿をしている。

 まぁこれだけならば、問題はないと言えたのだが……。


 問題にならないのなら何が問題なのかって?


 ああ、確かに問題ではない、一つ一つを見れば、何一つ問題にならないであろう。

 高位貴族の当主である事も、一児の母である事も、派手な催しを嫌う事も、幼く見える事も、どれもが催しを行う上では問題ではない。

 只、それらが全て重なり合えば問題にしかならない、と言う事が分からないのかね?

 先ずは高位貴族である以上は一定以上の派手さが求められるのに、主人(マスター)は派手な催しを嫌う。

 更に少女のような容姿だから可愛らしい物が似合うと言うのに、二十歳になる一児の母でもある女性ともなれば、対外的に落ち着いた華やかさが求められる。

 そして客層が客層だ。

 間違っても背伸びしている少女のような、可愛らしくも残念な印象を与える訳には行かない。

 主人(マスター)は歴史は浅くとも、多くの実績と数々の功績を持つ辺境伯なのだからな。

 分かるかね、全てが相反しているのだよ。


 それでも出来ると引き受けた以上、出来るのだろうって?


 はっはっはっはっ、そんな物があるのなら悩みはしない。

 寧ろ出来る者がいたら、是非ともお目に掛かりたいものだ。


『困った事があれば、何時でも相談下さい』


 社交辞令ではあるが、よく聞く言葉だ。

 主人(マスター)からにも言われたし、セルニバス殿にも言われた言葉。

 但し、セルにバス殿から賜った言葉には続きがあり……。


『ユゥーリィ様から、無茶を言われているって?』


 シンフェリア家の良心と囁かれる一人の少女……と言うよりも女性。

 エリシィー・プラーガ嬢に現状をお話しをし、彼女のお力にお縋りする。

 妹と然程変わらぬ年頃の女性に頼るのは恥ではあるが、主人(マスター)から与えられた仕事を熟せない方が余程の恥である。


『……はぁ〜、まだそんな悪足掻きを口にするだなんて困ったものね。

 構わないから派手にしてしまっても良いので、シェイロニア様にお任せします。

 家令である私に確認をして許可を貰った、と言えばユゥーリィ様は文句を言わないし、言わせません。

 どうせユゥーリィ様の事だから、こうなる事も想定していたに決まっているもの、希望通り出来るのなら幸運だった程度の気持ちでね。

 私の方で叱っておきますから、シェイロニア様は『流石はシンフェリア家当主の誕生会だ』と感嘆の声をお客様方から戴ける様に全力を尽くして下さい』


 という訳で、問題を問題でなくしてしまえば良いだけの事。

 何より、主人(マスター)の希望は主人(マスター)の為にならないからな。

 叱責を受ける覚悟で、主人(マスター)の要望に反する事も、使用人としての勤め。

 さて言質も戴いた事だし、心置きなく全力を尽くさせて戴こうか。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

   【双子ちゃん女中(メイド)の、なぜなにコーナー】

        〜 引き籠もり編 〜

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



メアリー「姉のメアリーと」

アンネ 「妹アンネの」

メ&ア「「双子ちゃん女中(メイド)の、なぜなにコ〜〜ナ〜〜〜♪」」

メアリー「今回のお題は【引き籠もり】です」

アンネ 「ユゥーリィ様がよく使っているけど、あれは間違い」

メアリー「少なくとも【蟄居】や【謹慎】を【引き籠もる】とは言いませんし、政治的な問題で表に出ない事は【遁世】等の言葉を使います」

アンネ 「ユゥーリィ様の場合、面倒で【引き籠もり】を使っている疑惑が大」

メアリー「半分は自虐ではないかと、なにせ【執務室に引き籠もる】とかよく言っていますからね」

アンネ 「世の当主が偶に受けているけど、あれは【軟禁】では?」

メアリー「いえいえ、軟禁されるのはお仕事を溜め込む困った方であって、ユゥーリィ様の場合は御自身の御意志で引き籠まれるので軟禁にはあたりません。その証拠に半日も籠もる事は殆ど在りませんからね」

アンネ 「普通はあの書類の量を、あの時間で終わらせられない。しかも指示が的確」

メアリー「おかげで私達の仕事も早く進むので、シンフェリア家の【影】は動きが速いと密かに有名なんですよ。現状でも殆ど一刻程で書類仕事は終わらせますから【影】の活動を増やしても問題なさそうです」

アンネ 「……こうして増える仕事の量に、ユゥーリィ様は現実逃避に益々研究室に引き籠もられるんですね。エリシィー様達が研究室という名の【穴蔵】から引っ張り出すのに、毎回苦労される要因の一つは、確実にお姉様にある」

メアリー「すべては、シンフェリア家の発展のためです♥」






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