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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第六章 〜オルディーネ編~
743/1070

743.ぶっちゃけて言わせてもらいますけど、面倒臭いです。





 謝罪合戦は終わったものの、賠償の話は流石に無かった事には出来なかった。

 これはヴォルフィード家側の面子の問題だからね。

 賠償の中には、私が技術委譲した物で始めた事業を、商会の部門と技術者を付けて返却すると言う物もあったけれど、それは私が断固として拒絶した。

 今の私の商会の大きさならば引き継げない事は無いけど、それこそ多忙のゼルにキレられそうだし、私もそんな事は求めていない。

 シャルド様が仰ったように、これからも変わらぬお付き合いをと言っているのだから、それを覆す様な真似は止めて欲しい。

 利益供与の比率も今まで通りで良いですって返事をする。

 なのでアグマイヤ様の奥様が裏で色々動くために使ったお金、その十倍の金額を謝罪金とし、そして……。


「今後も色々と御迷惑をお掛けするかも知れませんので、その時は宜しくお願い致します」

「ああ、その時は幾らでも力になろう」


 うん、これで一件落着。

 一番綺麗に収まったとは思うけれど、この内容って相手によっては酷い内容になるんですよね。

 賠償金も結構酷い金額ではあるけれど、公爵家であるヴォルフィード家ならば払えない金額ではないし、逆に言うとお金で済むのならばって事で済む話。

 問題は後者の方で、これって未来の出来事に対して、白紙の小切手を切った様なものなんですよ。

 しかも一枚ではなく、小切手帳ごとで。

 おまけに今回の件って、世間的にはヴォルフィード家に一方的に非がある訳だから、ヴォルフィード家の面子を守るためには、余程の事でない限り力を貸さないといけなくなる。

 まぁ面倒臭いから、そんな悪どい真似はしませんけどね。


「はぁ……、良かった。

 無事に済んで」


 何やら脱力されるシャルド様の様子に、そこまで疲れたのかとお聞きしたのだけど、帰ってきた返事が酷かった。

 私を本気で怒らせたら、家門の危機だと思っていたと言うんですよ。

 いや、そんな事はしませんから。

 いえいえ、人に喧嘩を売った三家の末路を考えたら、恐れる気持ちは分からないでもないですけど、私、基本的に平和主義者ですからね。

 今回のような事故みたいな事で、そこまで怒ったりはしませんよ。

 人を何だと思っているのかと愚痴る。


「いや、そうなんだがな。

 陛下に散々脅されたからな。

 使用人達を全て退避させているのも、此処に私達しかいないのも、最悪の事態が起きようとも下の息子夫婦さえ生き残っていれば、なんとか家は守られると思っての事なんだ」


 そうですか、元凶は陛下ですか。

 王都の街屋敷でなく領地の屋敷にしたのも、王都に被害を与えない為と言うのもあるんでしょうけど、絶対に陛下は私がそんな事をしないと確信して、シャルド様達を脅したに違いない。

 まったく、幾ら保険を兼ねているとは言っても、悪趣味ですよ。


「もう一度確認を取らせてもらうが、アグマイヤに責任を取らせなくても良いのだな?」

「ええ、アグマイヤ様に責任が無いとは言いませんけど、お話しを聞く限り、アグマイヤ様も被害者だと言えますし、何よりヴィーはそんな事を望んでいないのでしょう?

 なら、そんな必要はありませんし、私が口を出すべき事でもありません」


 私の言葉に、シャルド様よりもジュシ様の方が、深く安堵の息を吐く。

 以前のお話を聞いた時に、ジュシ様がヴォルフィード家に嫁いだ時から、自分の子供ではなく、前妻の子供であるアグマイヤ様が後継者だと宣言していたみたいだからね。

 今の様子だと、今もその考えは変わっていないみたい。

 ヴィーも最初からそのつもりでいたようで、学習院で私とヴィーが出会ったのも、そのための修行の一環中の出来事だったらしいもの。

 アグマイヤ様どうこうよりも、ヴィーの今までの努力を、下らない事で台無しにしたくないだけ。


「それにアグマイヤ様は十分に罰を受けておられると、私は思っていますので」


 先程聞いた話によると、アグマイヤ様は奥様と離縁。

 今回の一件は奥様一人の罪にせずに、奥様の実家に責任を追及する為もあり、現在そちらとも賠償について調整中なのだとか。

 何でも奥様は実家を通して、色々やっていた様だからね。

 そして二人の間の子供ごと奥様の実家に帰したアグマイヤ様の跡継ぎは、ヴィーとレティシア様との間の子を養子として迎えて後継者にするのだとか。

 つまりアグマイヤ様の血を引いた子供は、ヴォルフィード家の後継者になれないと言う事。

 それはジュシ様がヴォルフィード家の後妻になった際に、自分の子を後継者にしないと宣言したのと同じ事。

 きっとアグマイヤ様も後妻を取り、その間に子供が出来たとしても違える事はない。

 そうでなければ、弟夫婦から子供を譲り受けるだなんて事は、許される事ではないもの。

 だからアグマイヤ様は、既に十分な罰を受けていると思う。

 正直、そこまでしなくても良いと思うのだけど、それこそ私が口出すべき事ではない。

 ううん、口を出してはならない事なの。

 歯痒いけどね。


「そう言って貰えると助かる」


 今度こそ本当に今回の件は終わり。

 ヴォルフィード家の面子もあるからお付き合いしたけど、本当に面倒臭かったわ。

 だってねぇ、裏で動いている事なんて正直どうでも良いし、納得は出来ないけど私にも原因があるのは確かなので、その事を今更言われても『はぁそうですか』なんですよね。

 お金の問題だって、言い方は悪いけど投資でしかない。

 自分の都合の良い行動をする相手がいたから、その相手に投資する事で、自分の求めるより良い結果を得る。

 それだけの問題でしかないと、私の考えで愚痴っておく。

 またこんな謝罪劇に付き合わされるのは、面倒臭いもの。

 もっともそう言えるのは、私の中では領地戦の事はとっくに決着がついて終わっている出来事だからですけどね。


「み、身も蓋もない考えだな」

「そうですか?

 それにあの三家の引き起こした領地戦に投資をしたのは、ヴォルフィード家だけではないですから、そう考えた方が私的には楽なんです」


 ヴォルフィード家と口にはしたけど、実際にはアグマイヤ様の奥様が、勝手に家のお金を使って投資したと言うだけの話だ。

 他の家は投資と言う名の資金供与ではなく、資金の貸付ではあったけれど、結果的には同じようなもの。

 私にボロ負けした三家の経済状態やその資金の利用は、王家が完全に握る事になるため、他の家が三家に貸し出したお金の返済は、三家全てが(・・・・・・)私への賠償金の支払いが全て終わってからになる。

 おまけに、先日のスデカーバ元伯爵子息の王城での暴挙の件で、被害者である私の減刑の願いを聞き入れられた結果、実行犯は終生犯罪奴隷として鉱山送りまで減刑され、家の方も取り潰しも爵位の降格も免れた。

 ただし罰金刑として国と私に、それぞれ白金貨二百枚(にひゃくおく)づつの支払命令が下されたので、スデカーバ伯爵家の私への賠償金額が増え、自然と返済期間が長引く事になってしまったんですよね。

 しかもその間の他家の借金に対する金利は一切なし。

 貸し付けたお金は何十年も戻ってこないし、いざ返済されると言っても長期での分割払いになる。

 その上で、今回の領地戦は貴族として恥ずべき卑怯な手段を行なわれている事も公表されたから、彼等の家はその卑怯な行いに力を貸した家として、社交界で長々と囁かれる事になるから、泣きっ面に蜂状態。

 貸し付けに対して金利が無しになったのは、恥ずべき行為をした家に力を貸したため、国が下した罰則の内の一つなので文句は言えない。

 貸し付けた資金はいずれ帰ってはくるものの、現当主の時代には帰ってこないし、割に合ったとはとても言えないでしょうね。

 私と敵対したら割に合わない、そう思って貰えれば私はそれで十分。


「そちらもその方が助かる訳ですから、構わないでしょう?」

「……ははは、笑えないが、その通りだな」


 ヴォルフィード家の面子的には納得出来ないでしょうけれど、深く突っ込まれたら困るのはヴォルフィード家だもの。

 そもそも資金供与していた、なんて言っているけれど、幾ら小公爵夫人だからと言っても、社交界で他人を動かす程度なら兎も角、唆して領地戦をさせたともなれば、そんな大金を無かった事には出来ない。

 知っています?

 戦争って物凄いお金が掛かるんですよ。

 軍隊規模を三日動かそうと思ったら、兵士一人辺り、最低でも銀板貨(じゅうまん)で二枚の準備金が必要。

 装備もそうだし、糧食や備品の用意、それらを運ぶための馬車や人足達、他にも軍を維持するためには調理人や家事や身の回りの事をする非戦闘員の旅装だって準備をしないといけないので、頭割りをするとそれくらいの金額になる。

 装備にお金が掛かっている騎士や、動かすのにお金が物を言う傭兵なら、此方も一人辺りで換算すると、金貨(ひゃくまん)単位で必要となる。

 領地戦では三万人近い将兵がいた上に、移動距離とそれに要した日数と糧食などの消耗品等、人数が多い分だけ動いた金額も膨大。

 肝心の将兵に支払う給金と追加の報償は、領地戦に勝ったら私の財産や領民の財産を奪って支払うつもりだったみたいだけれど、将兵を掻き集めて、戦の準備をして、軍を移動させるだけでも、それだけの大金を生じてしまうのが戦争。

 その全ての金額を支援した訳ではないにしたって、唆して領地戦をさせた以上、金板貨(おく)が詰まった袋が一袋や二袋で済むはずがなく、とっくにポケットマネーの段階なんて金額は通り過ぎているのよ。

 そんな大金を幾ら小公爵夫人だからって不正利用されるなど、ヴォルフィード家のお金の管理ってどうなっているのかと問いたいけれど、そんな話は今はどうでも良い。

 洒落にならない金額である以上、他家同様に貸し付けだったはず。

 私から奪った財産から返して貰えれば、不正利用もバレないからね。

 まぁ、流石に古き血筋の一族であるヴォルフィード家が、あの卑劣な領地戦を仕掛けた側に資金を出していただなんて公に出来ないですから、資金の回収は諦めて資金を供与していたと言う形にしただけでしょうね。

 だからこそ、今回の謝罪劇なんです。

 口裏合わせであり、賠償は謂わば口止め料。

 その資金供与も、なかった事にしてくれとね。

 今回の話は結局はそう言う事。







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[一言]それぞれ金板貨二百枚づつ、これ白金貨では?
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