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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第六章 〜オルディーネ編~
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741.え〜、やらかしたと申されても困ります。





 秋の終わり頃に行われる王家主催の舞踏会は、その年の社交界の終わりを告げる催し。

 とは言っても、親睦がある家同士の社交は、こっそりと行っていたりする。

 例えるなら、冬の味覚である白角兎(ホワイト・ラビット)を私が毎年お世話になっている家に配り歩いているのも、その一つ。

 生憎と今はとある事情で山歩きを禁止されているので、秋に収穫したノーベル・セップ茸をはじめとする人工栽培のキノコの盛り合わせを配る予定。

 貧乏くさい言う勿れ、私の所以外ではキノコの人工栽培技術が確立されていないこの世界だと、椎茸や平茸や舞茸などの前世でメジャーなキノコは高級品なの。

 と言うか、魔物の領域にしか生えないと言う巨大キノコのノーベル・セップ茸なんて、一本まるまる買おうとしたら、王侯貴族か大商人ぐらいしか買えない代物だったりする。

 なのでキノコの盛り合わせは、貴族が相手でも喜ばれるものなんですよ。

 しかも生のも乾燥させたのも合わせての盛り合わせ、一流の調理人ならば驚喜する事は間違いない一品。

 もっとも、それだって私自身で配り歩く訳ではなく、アドル達を空間移動の魔法で送って届けてもらう事になっているから、今年は寂しい冬になりそうなのよね。

 ただ、そんな中でヴォルフィード公爵家から熱心なお誘いがあったため、受けてみる事にした。

 幸いな事にヴォルフィード家は私の事情を知っているし、以前と違って流石に今の私をヴォルフィード家に取り込もうと言う気はないと分かっているから、安心して訪問できる。


「ん〜〜〜、何なんだろうね」


 王都の街屋敷ではなく、領地の屋敷の方にお呼ばれしたのだけど、違和感が凄い。

 ヴォルフィード家が治める領地、その領都の近くに空間移動の魔法で移動してから、例によって歩いて行こうとしたのだけど、しっかりと街の外で待ち伏せされ、馬車に放り込まれたのは百歩譲って良いとして。

 お屋敷に着いたら、その……何と言うか寒々していると言うか、人の気配が殆どないのよね。

 以前ならば、ちゃんとお約束した日の訪問だと、屋敷の入口で使用人がずらりと並んでお迎えされたのだけど、今日はヴォルフィード公爵夫妻と小公爵だけが、お迎えにあがっている状態。


「ようこそ我が家にいらっしゃい下さいました。

 お越しになられるのを、心よりお待ちしておりましたのよ」


 歓待はしてくれているし、別に仰々しいのは苦手だから構わないんだけど、ジュシ様らしくないと言うか、どうしても違和感を拭えない。

 そして屋敷の中は更に違和感だらけ。

 なにせ本当に人の気配がしないもの。

 顔馴染みの執事や女中(メイド)どころか、誰一人使用人がいない。

 警備の兵さえも。

 その事に護衛のアドル達が、僅かに緊張の糸を張らせているのが分かる。

 でもそれなのに屋敷の中は温められており、案内された部屋にはエアコンの魔導具があるにも関わらず、それとは別には暖炉に火が入っており、客である私達の身体を冷やさないため、と言う心遣いを感じる。


「驚きましたでしょう?

 御招待しておいて、閑散としているのですから」

「使用人達は全て別の建物に、一時的に移ってもらっている。

 今日はこの建物内には私達だけしかいないため、君の身体の事を気付いて漏らす者はいないから、そこは安心してくれたまえ」


 どうやら公爵夫妻も私達が疑問に思っている事は分かっていた様で、最初に説明してくれる。

 敵意や罠がある訳ではないとね。

 お茶は公爵夫人であるジュシ様自ら淹れて下さっているし、給仕は小公爵であられるアグマイヤ様が行われているので、待遇的には最上位の待遇だとも言えるので、不満など言える訳がないし、そもそも不満だとも思っていない。

 ただ、それでもジュシ様らしくないな、と思うだけで。

 でもそれは、らしくないだけの理由があると言う事であり、今日の御招待は何らかの目的があっての事と言う事になる。

 う〜ん、もしかして……。


「ジュシ様、もしかしてまたやらかしてくれましたか?

 できればエステサロン【朝霧の滴】モルゲンニブル・ドロップに関しては、リーゼロッテの好きな様にやらせてあげたいので、手を引いてくださると助かるのですが」


 王妹殿下でもあるジュシ様だけど、こと美容品関係に関しては熱意が高く、過去に私の商会で扱う美容品関係で、何度もやらかしてくれた実績がある。

 もはや常習犯とも言えるほどに。

 もうすぐ開店予定のエステサロン【朝霧の滴】モルゲンニブル・ドロップの二号店だって、公爵夫人であるジュシ様でも足を運べるようにと、周囲の人間を焚き付けた結果、完全に貴族用のお店を作る羽目になっている訳ですからね。


「ち、違います。

 今回はそちらは関係ありません」

「そうですか、早とちりをしてしまいました。

 失礼ながら、ジュシ様には過去に幾度もありましたので、今度は御主人であるシャルド様に事前にバレて、こっぴどく叱られてこう言う機会を設けたと、勝手ながら邪推をしてしまい申し訳ありません」


 過去の実績から仕方なかったとは言え、疑ってしまったので、きちんと謝罪をしておく。

 無論、もうしないでねと、釘を刺している訳でもあるので、態と大袈裟に謝罪をした訳だけど。


「もう酷いですわ。

 ですが、そこは自業自得ですので、素直に受け入れます」

「ジュシ、本当にそこは信じて良いのだな?」

「ちょっ、アナタまでなんですかっ。

 妻である私を信じ……、とにかく、していないと言うのに、疑うなど酷いですわ」

「まぁまぁ、そう怒らないでくれよ」


 うん、ジュシ様が言いたい事も分かるけど、シャルド様が言いたい事も分かる。

 だってねぇ、ジュシ様を抑えきれずに、シャルド様が何度も私に謝罪の手紙を書く羽目になった訳ですからね。

 はいはい、夫婦が仲が良いのは分かりましたから、人前で見せつけないでください。

 そこで仲直りの口付けはしなくて良いですから。

 いえ、ほっぺにですけど、ちょっと仲睦まじすぎて目に毒というか、背中が痒くなると言うか。

 現実逃避に私と一緒に仲の良い夫妻を傍観している、ヴォルフィード家の御長男のアグマイヤ様に声を掛けたくなる。


「仲の良い御両親を持って、アグマイヤ様も大変ですね」

「子供の頃は気恥ずかしかったのですが、流石にもう慣れました。

 毎日がこんな感じですから、明日ぐらいに弟か妹が出来たと言われても、少しも驚かないでしょうね」


 あはははっ、ヴォルフィード夫妻の熱愛ぶりは、私の想像以上だったみたい。

 でもまぁ、見せられるのは堪らないけど、良いなとも思ってもしまう。

 だって、いつまでも夫婦揃って仲が良いだなんて羨望するもの。

 ジュリとエリシィーとの仲が、ヴォルフィード夫妻の様に何時までも愛し合える仲でいられる事をとね


「はは……、君には本当申し訳ないと思うのだが、妻には妻の考えや付き合いがあってね、そこは理解してもらえると助かる。

 だが、例え事情があろうとも、約束を破る事自体は妻の落ち度だ。

 そこは幾らでも賠償請求してもらっても構わない。

 無論、妻が懲りる様に、これからは妻の懐から出させる」

「ア、アナタ、それはちょっと許して欲しいのですけど」


 ジュシ様ストッパー発動ですね。

 うん、今後もそうやってジュシ様の暴走や約束破りを抑えてもらえると有難いです。

 出来れば、もっと前から発動して欲しかったけど。

 とりあえず、ジュシ様が悪気はない事は分かっていますとだけ言っておく。

 約束破りに関しては……うん、またあり得るかもしれないからね。

 ここは敢えて口にしない事で、そっちは信じていないと匂わせておく。


「それで、やらかしたと言うのは、別にあってな」


 ん? やらかした?

 他に何かやらかしそうな事ってあったかな?

 技術供与により利益供与に関しては、季節毎にきちんと払われているっぽいし、合同事業に関しても問題なし。

 ヴォルフィード家が今更婚姻という形で私と取り込もうと言う気はないだろうし、そういう雰囲気でもないものね。

 となるとあり得そうなのって……。


「もしかして、エステサロン【朝霧の滴】モルゲンニブル・ドロップの男性用を作って欲しいとかですか?

 まだ計画中の段階ですし、現在準備中の方の反省点を活かしてからと思っていますので、そちらは出来れば待ってもらえないかと。

 以前の様に準備不足のまま開店する事になるのは、双方共に損でしかありません」


 この世界だとあまり感覚はないけど、貴族男性だってそれなりに身嗜みに気を配っている。

 ただ女性ほどではない、と言うだけでね。

 でも男性も若く見られたいとか、格好よく見られたいとか、健康に見られたいと言う欲はあるので、男性用エステの需要も十分にあると思っている。

 ただね、やはり女性用ほどの需要はないだろうし、かと言ってお客があまり見込めないからと、女性用エステよりも小さなお店を作った日には、男性陣が怒りかねないのよね。

 立地条件も当たり前だけど、出来れば女性用のお店より大きく、最低でも同程度の規模のお店でないと、絶対に不満が出ると思うんですよ。

 ほら男って、妙に大きさとかに拘る人がいますから。

 家とか馬車とか、狩った獲物の大きさとか、アレの大きさとか。

 モノが大きければ良いってものじゃないのにね。


「あっ、いや、それはそれで気になる話ではあるのだが、そうではなくてな」


 これでもないと?

 う〜ん、となれば思い付くのは、私の持っている技術を上の議会を通さずに移譲を願う事くらいだけど、それこそヴォルフィード家らしくない話。

 本気で思い当たらない。


「実は君に領地戦を仕掛けた家々に、我が家が資金供与をしていたのだ」

「……、……、……は?」


 ええ、まさかそんな爆弾発言が出てくるだなんて、思いもしませんでしたよ。

 お口がアングリものです。





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― 新着の感想 ―
[一言] なにが起こるかわからんからみんなを離しておいたのか。。 ぷんすか怒りそうw
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