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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第六章 〜オルディーネ編~
740/1070

740.理不尽であろうと、相手にとっては報復も正当な権利なんでしょうね。





「見た目も着ている服も子供の君は、もう寝る時間だ。

 とっとと家に帰りたまえ」


 あの後、そう言って人を舞踏会場から追い出すだなんて、相変わらず人をなんだと思っているんでしょうね。

 妊娠している事はバレたくはないから、大変に有難い配慮ではあるけど、もう少し言葉を選んで貰いたい。

 狙っての事でしょうけれど、あれでは感謝したくても感謝しずらい。

 まったく、あの捻くれ陛下には困ったものです。


「……、……、なんの御用でしょうか?」


 ジュリ達が迎えに来るまで待機している部屋に向けて、一人廊下を歩いていたのだけど、十数歩先の柱の物影に探知の魔法が引っ掛かったため、立ち止まって声を掛けたものの……、返答は無しか。

 偶々そこにいた、と言う事を願っていたのだけど、そもそもそれならば気配を消している意味はないから、無駄な希望を抱いてしまったと言える。

 でもだからと言って、城内で人を傷つける様な魔法は使う訳にはいかない。


「気のせいかしら?」


 ここで状況を膠着させても仕方ないので、敢えて罠に踏み込む事にする。

 幸いまだ帰るには早い時間だから、多くの来客があるのにも関わらず、舞踏会場から離れる廊下には人っ子一人いない。

 警備の騎士や衛兵が足りないのかなと思いつつも、一歩二歩と無警戒のままに足を進め。


 シュッ!

 カッ!


 柱の物陰から人影が飛び出し、凶刃が振るわれる。

 けど、それを私のブロック魔法が食い止めた。

 そう判断した次の瞬間。


 シュッ、シュッ、シュッ、シュッ!

 シュッ、シュッ、シュッ、シュッ!


 双剣による八連撃。

 最初の一撃を防がれた後、直ぐに連撃で私のブロック魔法を、魔力の固有波長による侵食で打ち消そうとした判断力と、ほとんど一瞬とも言えるほど鋭い八連撃を放てるあたり、賊はかなりの腕前。


 シュッ、シュッ、シュッ、シュッ!

 シュッ、シュッ、シュッ、シュッ!


 おっと、一瞬だけ間が空いたものの十六連撃だったか。

 城に持ち込むためか、剣が小剣と小振りである事を差し引いたとしても、一息であれだけの連檄を繰り出すだなんて、たいした腕前だわ。

 普通の魔導士の盾の魔法だったならば簡単にその防御を打ち破り、魔導士は切り刻まれる事になっただろうと思う。

 生憎と私のブロック魔法は一つ一つは小さいものの、同時に幾つも発生させている上に、その一つ一つが多層構造で作られているため、その程度の連撃では私の防御は突破出来ない。


「ふ〜ん、魔法銀(ミスリル)製の双剣か。

 完全に魔導士を相手にするための得物ね」


 鋼と魔法銀(ミスリル)を合わせて作る魔剣は、魔法銀(ミスリル)の含有量を増やせば、それだけ魔力の伝達量が増えるため、魔導士が作る結界を切り裂きやすくなる。

 でも、魔法銀(ミスリル)は柔らかい金属。

 含有量を増やせば剣としては強度と鋭さを失い、直ぐに使い物にならなくなる。

 一、二度の襲撃で保てば良いと思わなければ、剣を造る意味すらない代物。

 つまり完全に対魔導士専用の暗殺兵装。


「そして、お久しぶりです。

 確かスデカーバ様でしたか?

 意外に剣がお得意でしたのね。

 以前お会いした時は、その腕前を見る事無くお休みになられましたので、驚きましたわ」

「黙れっ、この化け物ふぜいがっ!」


 凶刃の持ち主は、人に領地戦を仕掛けてきた三家の内の一人、スデカーバ元伯爵の子息であられるダノモコ様。


「私みたいな女が一人歩きしている所を襲っておいて、酷い言い掛かりですわね」

「煩いっ、あの様な卑怯な手で使っておいて、生意気な口を開くなっ」

「卑怯? 魔導士はそちらにも百人以上もいましたのに?

 アレほどの人数の魔導士を一箇所に集める事自体が違法でしたのに、まさか無抵抗で降伏するのが当然だとでも仰るつもりですか?」

「当たり前だっ!

 女が男に逆らうなど、許されて良い訳がないっ!」


 はぁ……、やはりこう言う人達は相手をするだけ無駄よね。

 会話をしても面倒なだけ。

 と言うか、相手も話をする気が無いからこその返答だろう。

 必要が無いと言うのならば、それに合わせましょう。


 パチリッ。


 指を鳴らす事で、目の前の男の注意を私に向けると同時に、男の足元にブロック魔法の足枷を発生させる。

 あまり知られていないけど、魔法は手元で発動させるだけの物ではない。

 ただ発動させやすいと言うだけだし、手元から離れるほど発動させ難くなる上に、遠すぎればそもそも発動すらしなくなるため、私みたいな力場(フィールド)を意識して使う魔導士が殆どいないだけにすぎない。


「なっ!」 

 どさっ。


 男は突然足が動かなくなった事に、姿勢を崩して無様に床へと倒れ込む。

 そこへ新たなブロック魔法によって、手首と双剣を固定すると共に床にも固定。

 いくら暴れて魔力の固有波長による侵食を用いて私の魔法を打ち消そうとしても、それ以上の速度で魔法を発生させ続けたなら、抵抗されようが関係がない。

 つまり無駄な足掻きと言う奴よ。

 何か喚いているけど、聞いてあげる義理はないので、ブロック魔法で後頭部を叩いて気絶させる。

 城の衛兵が駆けて来てくれないかと指笛を吹くけど、こう言う事をやるから野生児令嬢だと嫌われるんでしょうね。

 それともか弱い所を見せて、泣き真似しながら駆けて行くのが良いのかな?

 うん、無理、私のキャラじゃない。

 と言うか此処を離れたら、もしも目の前の男が目が覚めたら逃げられてしまうもの。


「どうしました?」

「襲撃を受けたから、後はお願いするわ」


 でも幸いな事に、すぐに警備の兵が駆け付けて来てくれたので、後始末をお願いする。

 事情聴取は私の名前と爵位を言えば、今の説明程度で良いと判断される。

 王城内で辺境伯を襲った、その事実だけで罪状は十分。

 そもそも緊急時を除けば、訓練施設以外の王城内で剣を抜いて誰かに向けて振るった時点で、問答無用に反逆罪の容疑が適用されるもの。

 私の魔法に関しては防御用の盾の魔法なので問題がないし、陛下に身を守るためだと使用を許可を戴いているので、尚更に罪に問われる事はない。


「この者にお心当たりは?」

「さぁ?

 知っていたかもしれないけど、もう忘れたわ」


 我ながら酷いと思うけど、私を襲って来た男の名前など覚えている必要はないし、同情する気もない。

 せっかく家も命も助けてあげたのに、自らドブに捨てる人の気持ちなど、知りたくもないもの。

 ああ、でも陛下には減刑をお願いしておかないと。

 名前を忘れた人の命はともかく、家を潰されたら、戦争賠償のお金を払ってもらえないもの。


「はぁ……、やっぱりこう言う人に関わるのは面倒くさいわね」


 舞踏会場に戻って事情をお話ししたら、きっと陛下に『君は余程揉め事に愛されているんだね』だなんて揶揄われるんでしょうね。

 ええ経験談です。

 実話です。

 思い出しても腹が立ちます。

 私、荒事は苦手なのに、なんでそうやって揶揄われる事になるのだか……、本当に解せない。






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