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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第六章 〜オルディーネ編~
739/1067

739.ほ〜〜〜っほほほっ、悪役令嬢爆誕っ! そんな訳がないじゃない。





「とにかく、君は今後は辺境伯の名に相応しい態度を取りたまえ。

 僕等が流した事実と噂で、君にちょっかい掛ける馬鹿はだいぶ減るはずだが、それでも馬鹿をやるのが馬鹿だからな。

 そう言う者は君の方で対応しろ、好きにやれ、僕が許す」


 いえ、ですからそう言うのが面倒くさいから、陛下の私を餌にすると言う御命令に従っていたのに、今更放り出すだなんて酷い。


「つまりちょっかいを掛けて来たら、根こそぎ取り払えと?」

「……出来れば馬鹿の面子を叩き潰す程度にしてくれ。

 法衣貴族は幾らでもいるが、重要な仕事に就いている者もいるし、領地持ちの貴族ともなれば、誰に継がせるかが大変になる。

 下手をすれば、またそれで争いが起きかねん」


 えぇ〜、だってそう言う人達って、絶対に逆恨みして何度も仕掛けてくるでしょうから、それならば最初からサクッとやっちゃった方が、後々面倒臭くなくて良いじゃないですか。

 別に殺したりはしませんよ。

 ちょ〜っと、財産諸共屋敷が消失する、だなんて怪事件が起こるだけですから。

 日頃の行いが良ければ、無一文になってもお知り合いが助けてくれますよ。

 と素直に言ったら、頭痛そうにするのは何故?

 否定もしませんよね?

 寧ろ頭が痛いのは私だと思うんですが。


「ぁぁ……、これまで通り相談には乗るし、君の付き合いのある家にも相談したまえ。

 なるべくなら事を起こす前に、この間のように相談してくれると助かる。

 君に好きにやれとは言ったが、そこは大人なのだから分かるね」

「えっ、先ほど子供だと言われたばかりですが」


 頭をグリグリされました。

 先程、子供扱いされた事に対するお返しに、ちょっと冗談で返しただけなのに、陛下は女性の髪と頭をなんだと思っているんでしょうか。


「ん〜、でもやっぱり面倒くさいので、今まで通り大半は適当に流しますよ」


 いちいち喧嘩を買っていられないし、態々陰口に反応して相手を楽しませる趣味はない。

 そもそもいきなり権力を手に入れた人間が、そう言う派手な事をしても碌な事にならなさそうだもの。

 やったらやったで、何処の悪役令嬢ですかと言いたくなりそう。

 中身がオジサンの童顔発育不良の悪役令嬢……、うん、やっぱりないわ〜。


「何かまた勘違いしてそうな顔だね。

 多分だが、それは間違った考え方だからな」


 陛下、無意識に口に出していたならともかく、適当に人の考えを否定しないでください、怖いですから。


「まぁいい、君があまり消極的ならば、淑女教育と共に当主教育をするように、君の後見人達には命じておいたから、彼等の厄介にならない程度に手を抜きたまえ。

 と言う訳で、彼等が教育の必要を認めた場合は大人しく受けなさい、これ国王命令だから」

「横暴君主!」

「はははっ、褒め言葉と取っておこう」


 何よそれ、辺境伯になってまで淑女教育って、どんな虐めですか。

 絶対に嫌がらせ以外の何者でも無いですよねっ!

 もうやだ、このオジサン。


「はぁ……陛下が意地が悪いのは今更ですが、そういえば今日はラード王子の姿をお見かけしないのですが、体調でも崩されておられるんですか?」


 これ以上陛下の相手をしていたら、本当に倒れそうなので話題を変更する。

 嫌がらせ混じりの国王命令なんて物を言い出すと言う事は、重要なお話はもう終わりという事でしょうからね。


「心配してくれるのは嬉しいが、季節の変わり目のせいか少し体調を崩した程度で、大事をとって休ませているだけだ。

 ラードは一度病に倒れているからね、あれの母親であるセレスティナが大袈裟に心配しての事さ。

 以前のような事はないと、僕の名において誓おう。

 明日には、いつも通りに元気になっているだろうとな」


 う〜ん、まぁ陛下がそこまで太鼓判を押すのであれば、それで良いんですけど。


「寂しいかね?」

「ええ、恐れながら私にとっては可愛い弟も同然ですから、顔を見れないのは淋しくは思います」

「はははっ、弟か。

 願ってもない言葉だな。あれは最強の守護者を手に入れたも同じ事だ」

「言っておきますけど、私は国政に介入する気はありませんからね」


 陛下に言ったように、ラード王子は私にとって弟のような存在だけど、だからと言って面倒な事に顔を突っ込む気はない。

 そもそも中央政治には、私はなんの力もなれないのが実情。

 せいぜい王家にいる事で命を狙われて、全てから逃げ出したいと言う時に、逃げ場所になってあげるだけ。


「それで構わぬ。

 中央政治に関わらせぬためもあって、君に辺境伯の任を与えた部分もある。

 表だって後ろ盾にならなくとも、君がラードを家族のように思ってくれている、それだけで勝手に勘違いするものだ。

 それで十分だし、それでなんとか出来ぬようであれば、アレに王族としての資質がないだけの事」


 簡単に切り捨てる事を連想させる言葉は、とても冷たいとは思う。

 でも甘やかしてしまえば、きっともっと酷い事になるからこそなのでしょうね。

 だってそうでなければ、その冷たい言葉の後に、小さくだけど『いざとなったら匿ってくれるだけで良い』だなんて言葉はきっと出て来ないもの。


「君は下らぬ事など考えずに、姉として今後も接してやってくれればいい。

 だが魔導士としての教育は厳しく頼む、甘やかす必要はない」


 でもしっかりとラード王子の教育係は命じるんですよね。

 私なんかが良いのかと思うし、そもそも私はラード王子に全てを教える気はない。

 ラード王子が魔力過多症候群に懸かり、その治療法として魔導士の道を切り拓かせてしまったから、それを制御する術を教えるだけ。

 王子にウチの子達みたいな事を教えたら、軍事力に直結する事になりかねないため、そんな危険を冒す訳にはいかないもの。

 今後、私が作った魔導具、写せしは魔導の魂(まりょくそくていき)や、魔導士の卵を育てる学校が出来る事の影響を受け、シンフォニア王国の魔導士の数は今よりも増える事にはなるだろうけど、同時に魔力持ちの人間も増える。

 その後でならば、バランスを崩す事なく秩序を保ったまま国力が上がって行くだろうけど、今は軍の魔導士だけが力を得るのは碌な事にならない。


「陛下、お言葉ですが─────」


 だからきちんと陛下にはお断りしておく。

 私はラード王子を我が家の魔導士達のように育てる気はないと。

 力を扱う上での基礎を教えるだけだと。

 そうでなければ、強硬派がラード王子を利用しようとするからだと。


「そうか、君が必要ないと判断するのであれば、それで構わぬ。

 今現状だけでも、十分に魔法使い共に注目を浴びているからな。

 急ぎすぎれば碌な事にはならぬと言うのは、僕も同意見だ。

 その上で聞くが、君はそのお腹の子がもし魔導士としての素質を持っていたならば、君は君の魔導師としての全てを託す気はあるのかね?」

「いいえ、託すつもりはありません」


 陛下の疑問になんの迷いもなく、自然と答えが出る。

 陛下や周りの人は不思議に思うかもしれないけれど、私の使う魔法の本質は前世の知識があっての事。

 この世界の物ではないし、きっと理解できない。

 もの凄く危険な代物だと言う事をね。

 陛下が私を力に怯えている子供だと言ったけど、まさにその通りだと言える。

 理屈さえ知っていれば、核分裂や核融合なんて事さえ簡単に再現できる。


「墓場まで持ってゆきます」


 でも、本当に恐ろしいのは知識と魔力の制御力があれば、出来てしまえると言う事。

 前世では魔法がないため理論上の産物でしかなかった事さえも。

 両拳程度の中性子星を作れば、地軸を歪めこの星中の大陸に亀裂を生じさせれるし、バレーボールほどの反物質を作ってしまえば、それこそ星ごと消滅させてしまえる事が出来てしまえる。

 そんな危険な知識と制御できない代物を、自分の子供に残したいだなんて誰が思うものですか。




 陛下、私は自分が人として異端どころか、この世界にとって異物だと知っているからこそ、普通でいたいんです。






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