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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第六章 〜オルディーネ編~
737/1066

737.お父様の親友は、随分と濃い方ですね。





「怖面が二人も揃って御婦人方を脅すなど、紳士として恥ずかしいとは思わぬのか?」

「「貴様(同類)に言われたくねえな」」


 うわぁ〜ん!

 状況を打破する前に、また強面の小父様が増えたよ〜。

 ディスマイヤ・ロス・ダルクファクト様まで顔を見せられるだなんて、今日は厄日なの!?

 いえ、ディスマイヤ様はとっても紳士な方ですけど、この状況はどう考えても碌でもない訳でして。


「ユゥーリィ嬢、久しぶりだな」

「はい、ディスマイヤ様もご壮健で何よりで・きゃっ!」

「うむ、確かにカリブの言う通り、もう少し食べた方が良いな」


 えっ、えっ、何事ですか!?

 なんで、いきなりディスマイヤ様に抱き抱えられているの?

 しかも片腕と胸で支える子供抱きですよ。

 とりあえず抗議の眼差しを送るのだけど。


「なに、親友の代わりにな」

「親友ですか?」

「なんだ知らなかったのか?

 お主の父親であるシアとは、昔ながらの知己でな。

 少なくとも儂は昔から彼奴の事を親友だと思っている」

「お父様とですか?」

「ああ、だからお主の近況を偶に話してやると、おっとこれ以上は彼奴に怒られるな。

 口が軽いとな」


 知らなかった。

 ディスマイヤ様とお父様がお知り合いだったなんて。

 いえ、実家のシンフェリア家は、ダルクファクト家と同じ派閥ですから、顔見知りであってもおかしくはないのだけど、ディスマイヤ様に親友呼ばわりされているなど、想像だにしていなかった。


「しかし顔は全然似ておらぬが、性格はよく似ているな。

 彼奴は今でこそ大人しくなったが、昔は無鉄砲と言うか、妙に頑固な所があり、その事でよく周りと軋轢を生んでいた。

 その事を逆に気に入っている者も多かったが、同時に敵も多かったからな。

 ほれ、今のお主と同じであろうが」


 いや、そう言うふうに言われても反応に困る。

 お父様に似ていると言うのはちょっと嬉しいけど、頑固で無鉄砲で敵が多いと言う所が似ていると言われてもね。

 とりあえず恥ずかしいから降ろしてくださいと頼む。


「頑固な彼奴の代わりに、父親らしい事をしてやろうと思っただけなのに、つれない事を言うものだな」

「私のお父様はお父様だけですし、ディスマイヤ様がお父様だとしても、流石にこの歳で抱っこはあり得ません」

「見た目が合っているから良いではないか」

「合っていませんし、よくもありません」

「やれやれ、娘に嫌われた気分だな」


 どっちがやれやれですか。

 普通は年頃の女性をいきなり抱き上げるだなんてしたら、悲鳴を上げられて、その両頬を引っ叩かれても文句は言えませんよ。

 ディスマイヤ様に悪意がないと分かっているから、大人しくしているだけなんです。


「まあいい、彼奴に良い土産話が出来た。

 くくくっ、実の子供の様に抱き上げたと知ったら、さぞかし悔しがるだろうな」

「……ディスマイヤ様、父とは親友なんですよね?」

「ああ、だが知っての通り、シアは妙な所で頑固でな。

 格上の家である儂とは親友ではなく、上司と部下だと線引きしおるからな。

 少々強引な事をせぬと、本性を表さぬのだ」


 すみません、それって本当に親友と言えるんですか?

 パワハラでは?

 そんな疑問が顔に出ていたのか、ディスマイヤ様は……。


「爵位の差を気にする割には、譲れんと思った事には例え相手が目上の者であろうと頑固でな。

 俺と貴様は対等だと何度言おうと、頑として受け付けん。

 その事で時には殴り合いもしたが、そう言う時は妙に彼奴は強くてな。

 この間、お主の件で飲み比べに持ち込んで、ようやく親友だと認めさせてやったわい」


 すみません、本気で頭が痛いです。

 派閥の遥か上の家の当主であり、辺境伯でもある……ああ、その時はまだ爵位を継いでいなかったかもしれないけど、とにかくディスマイヤ様と殴り合いをしただなんて聞かされたら、頭の一つも痛くもなります。

 お父様、いったい何をやっているんですかっ!


「本当に、似たもの親娘だな」


 似てません。

 絶対に似てません。

 私、そこまで無茶をしませんし、頑固者でもありません。

 何ですか、その拳と拳で語り合う少年漫画の様な展開はっ。

 その話の流れで、似ているとか言わないでくださいっ。

 まるで私が肉体言語が大好きな人間みたいに聞こえるじゃないですか。


「確かに」

「似ているな」


 頼みますからカリブ様もアークライド様もそこで頷かないでください。

 お二人はお父様の事は知らないはずですよね?

 あとディスマイヤ様、いい加減に降ろして下さい。


「仕方ない、あまり我儘を言って嫌われたくはないからな。

 そうだ、今度シアに会った時に何か言付けはあるか?

 どうせ父親に似て頑固なお主の事だ、会う気は無いのであろう」


 うぅ……、こう言う事を言われたら怒れないから困る。


「では、私は元気でやっています。

 お父様もお母様も、どうか御身体を労ってくださいと」


 お父様とは偶に手紙でやり取りをする。

 でも領民を見捨てて家を出た私とは、どうしても他人行儀な内容になってしまう。

 別にその事そのものは自業自得だと思っているけれど、直接言葉を届けてくださると言うのであれば、一番素直に出る言葉を届けてもらいたい。


「ああ、任された。

 今のお主の様子と共に、しっかりと届けよう」


 そこでようやく、ディスマイヤ様の腕から解放されたものの、三度領地戦の話に戻ってしまう。

 幾ら陛下のお膳立てだとしても、何でそこまで領地戦の話に拘るのかと思い切って聞いてみた所。

 どうやら此処百年で、一番派手な領地戦だったそうだ。

 いえいえ派手も何も、半日も掛からずに、尚且つ剣を一太刀も真面に交える事なく終わった戦いですよ。

 しかも攻撃魔法らしい魔法だって、一つも使っていません。

 何処に派手な要素があると言うんですか。

 そりゃあ多少は捕虜にする時に抵抗は受けた人もいるけど、既に決着の後の様なものだし、そもそも身体が悴んで碌に動けない状態での反撃だから、あれを一太刀扱いするのは、ちょっと相手に気の毒。

 現に抵抗の意思を見せた人は、一方的に蹂躙されていたもの。

 何処かの撲殺女神とか、微笑みの素敵な接近戦が得意な魔導士のお姉様とか。

 別れた横暴な元旦那に似ていると言って、過剰に痛めつけていたけど、それは例外。

 いえ、抵抗する者に対する見せしめを兼ねているし、それくらいは何処の領地戦でもやっている事。……たぶん。


「「「結果が派手だろ」」」


 うん、三百対三万ですもんね。

 その人数差で圧勝した訳だから、確かに派手といえば派手か。


「ぁぁ……そこは戦いにすらならなかったと言う事で、なかった事になりません?」

「ユゥーリィ様、流石にそれは無理があるかと」

「ならんな」

「普通は誇るべき事だぞ」

「シアがこの話を聞いたら、どう反応するか楽しみだな」


 皆んなして否定するなんて酷い。

 私の味方は此処にはいないの?







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