表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第六章 〜オルディーネ編~
733/1061

733.物を作るのは楽しいですよ。大きな物も小さな物も。





「ん〜ん〜〜ん〜〜〜♪」


 秋の柔らかな日差し心地良く差し込むラウンジで、鼻歌まじりに手と魔力を動かす。

 色々と禁止事項が増えたため、空いた時間を使ってちょっとした工作に勤しむ。

 仕事の魔導具などではなく、完全に趣味の物作り。

 材料費だって、それほど掛かってはいないから、何処からも文句など出る訳がない。


主人(マスター)、先程からいったい何を作られておられるのですか?」

「ん〜、見ての通り造花よ」


 作っているのは、私に取って想い出深い花。

 この世界では見かけてはいないけど、何処かにあるかもしれない花。

 一年の内にほんの数日だけ小さな花を咲かせ、風に吹かれる様に散ってゆく花。

 薄桃色の花が満開に咲く姿も好きだけど、私は少し緑が混じった姿の方が好きだった。

 だって咲いて終わりではなく、次の息吹を感じさせる姿だったもの。

 その名をSA・KU・RA。


「……どう見ても宝石に見えるのですが?」

「だって、宝石で作っているんだもの」


 プシュケは呆れているものの、前にも言ったけど、魔法を使えば宝石の大半は人工的に作れる代物なんですよね。

 綺麗な物を作ろうとすると物凄い設備とお金が掛かるけれど、この世界では魔法があるから、成分さえ知っていれば結構力任せで作れてしまう。

 薄桃色はルビー。

 若芽の葉はエメラルド。

 枝や幹は琥珀と言いたいけど、あれは化石なので魔法では無理。

 前世には人工琥珀なんてものはあったけど、アレは材料が着色したレジンなので琥珀でも何でも無い。

 仕方なくブラウンダイヤモンド。

 ダイヤモンドって透明のイメージがあるけど、赤・青・緑・黄・茶・黒と様々な色があり、実は透明なダイヤモンドって、ダイヤモンドの中ではそれほど高価では無いんですよね。

 前世では赤色や青色のダイヤの方が高価で、茶色や黒色は工業用ダイヤモンド扱いで安価。

 もっとも、茶色や黒色もその価値が見直されてきた、とかなんとか聞いた記憶があるけど、前世の事なのでよくは知らない。

 もう私には関係ない世界だからね。

 ともあれ、天然物はともかく魔法による人工宝石は安価で出来る。

 ダイヤモンドなんて、主成分は炭素だからね。

 炭や石炭と一緒で、純度と分子結合と結晶構造が違うだけだもの。


「光らせたら綺麗だなぁと思って」


 夜桜名物のライトアップである。

 観賞用の植物園のドーム型の温室を作ったら、懐かしくなったのよね。

 でも、この世界では見かけないから、作ってしまえと思った訳。

 どうせ、妊娠中であまり出かけさせてくれないのならば、時間を持て余しているのもあって、桜の木を一本丸々作ろうとしているの。

 人工宝石を使ったのは、ライトアップによる効果を狙っての事だけど、人工宝石で作った花の軸に輝石と魔法銀(ミスリル)を取り付けて光を透過させるため。

 宝石や水晶を光らせるのは、実家にいる時にもしているので、それほど目新しい技術ではないけど、だからと言ってそれが織りなすものが綺麗でなくなる訳ではない。

 何時だって綺麗な物は綺麗なのよ。


「……主人(マスター)、また陛下にお叱りを受けますよ」

「別に商売にする訳じゃないから問題ないわよ」


 陛下に禁止されたのは、人工宝石を使って商売をする事だし、その製法を公開する事であって、個人的な使用に関しては許可を戴いているもの。


「花が細かいから時間が掛かる分、私が屋敷で大人しくしていると思わない?」

「……、……くれぐれもお見せするだけにして下さいませ」


 冗談で大人しくしているから良いじゃないと言ったのに、そこで納得されたら、まるで私が騒動ばかり起こしているみたいじゃない。

 仕方ないので、プシュケの主人(あるじ)虐めに付き合って……。


「譲らないわよ。

 と言うか、買えないでしょう?」

「それもそうですね」


 人工宝石の事は秘密なので、お譲りするとなると天然の宝石としてとなる。

 桜の木一本分の宝石ともなれば、それだけでかなりの金額になるし、そこに造形物としての価格も加わるとなれば、幾ら私程度の手作りだと言っても、とんでもない金額になる事になる。

 もちろんバラ売りなんて問題外。

 人工物の造花ではあるけど、一輪や一枝ではなく、一本丸毎だから意味があるのよ。


「それよりも見て、ガクだけでなくちゃんと雄しべと雌しべまで再現しているのよ」

「なんの花かは知りませんが、主人(マスター)の様に小さくて可憐な花ですね」

「ふふ、お褒めの言葉と受け取っておくわ」


 中身がオジサンの私としては、小さくて可憐だと言われても嬉しくはないけど、作った物を褒められるのは悪い気分ではないので、素直に受け止めておく。

 細かな部分まで再現するにあたって、その分だけ色も求められるから、実際には使っている人工宝石の種類は多くなるけど、それこそ空いた時間の暇潰しだしね。

 春までに少しづつ作ってゆけば良いと思っている。

 お腹の子が生まれる頃に完成すればね。

 だから最初から誰にも譲る気はないの。

 まぁそんな事は恥ずかしいから口にはしないけどね。


「しかし、レイニシア様がまた頭を悩ませそうですね」


 プシュケの中では、桜の造花は別邸に設置する事が決定らしい。

 まぁ私は完成するまでが楽しみだから、本邸でも別邸でも構わないけど、そうなったら確かにレイニシア婦人は頭が痛いかもしれない。

 人工宝石を材料にしているとはいえ、結局は造花。

 つまり鑑賞物。

 人の目についてこその真価がある。

 そこで心配になるのが、不届な人間の存在なのよね。


「警備の兵でも常駐させれば問題はないでしょう」


 私としては暇つぶしの題材であり、お腹の子が生まれてきた時の記念樹程度の価値でしかない代物であっても、世間一般で見れば枝一本どころか小さな花一輪であっても、宝石で出来た高価な代物。

 小さな枝一本であろうと売るところに売れば、それこそ平均的な平民の家族が数年は遊んで暮らせるくらいにはなるだろう。

 ダイヤモンドって硬いと思われているけど、結構簡単に割れるのよね。

 だから小さな枝を折ろうと思えば、簡単に折る事が出来る。


「警備と言えば、私がお送りした方々も飾られるのは玄関ホールから、当主の執務室へと変更になったとか言っていたわね」

「当然の事かと思いますが、そう言えば我が家にはありませんね」

「勿論よ。

 成金趣味みたいで、嫌だもの」

「……主人(マスター)、あれだけ贈られておいて、流石にそのような発言はどうかと思いますが」


 私とプシュケが今言っているのは、人工宝石で作った家紋の事。

 以前に王家に贈った様に、私の後ろ盾をして下さっている家々の家紋を、お盆サイズで作って贈ったのだけど、最初は目立つ様に玄関ホールの壁に飾られていたらしいのだけど、執事長を含めた家人(けにん)全体の意見として、当主の執務室の壁に移されたらしい。

 なんでも紛失した時の責任が取れないし、その時の事を想像したら心臓に悪いため、家人一同で頭を下げてお願いされたらしい。

 重要な客人に目に触れる場所で、尚且つ警備のしやすい当主の執務室へとね。

 ちなみに家紋は力と権威の象徴だけど、造花は単なる造形物なので、成金趣味ではない。

 そもそも私としては宝石としてではなく、造花を作る際の素材としてしか見ていないから、成金趣味になりようがない。

 ガラス製でも良いのではと思うかもしれないけど、やっぱりガラスだと強度が足りなくて危ないからね。

 だから代わりに硬度の高い人工宝石を使っているだけの話。


「それに似合う花瓶を用意しておかないといけませんね。

 では主人(マスター)、あまり根を詰めすぎない様にお願いいたします」


 プシュケはそう言って自分の仕事に戻って行ったけど、何か変な事を言っていたわね。

 花瓶がどうとか……、ああっ、そう言えば手元に出ているのが小さな枝だけだったから勘違いしたのかもしれない。

 本物を知らなければ、見上げるくらい大きな木だって分かる訳がないわよね。

 でも、一枝だけ花瓶に入れるのも悪くない。

 プシュケがせっかく手配してくれていると言うのだから、それ用にも作っておこうかな。

 メインは大きいのを作る予定があるから、そっちは小さく可愛らしい形にしておこう。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ