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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第四章 〜新米領主編〜
480/1061

480.どうして、こう私の周りは勝手に動く人達が集まるんでしょうか。





 結局、お小遣いどうこうはさて置いて、予算案はあくまで予算案として、貴族の面子が必要になって来たから、その準備はしておくと言う事で話は終わった。

 セバスも私の貴族としての交流を心配しての事だろうし、揃える装飾品や職人に対しての声掛けも、私の好みや方針を配慮した上で、セバスやジィーヤの人脈を活かして手配をしてくれていると思う。

 どうせ後ろ盾の皆様も、私に言っても仕方ないとばかりに、二人に話を持って行っているだろうしね。


「と、思っていた自分がいました」

「ん、なんの事?

 それよりも、ユゥーリィは何か聞いていないの?

 ボクとしては、今、凄く気になっている事なんだけど」


 大量の天蓋付きの寝台を納めてくれた家具工房に、代金を支払いに行くついでに、異常に早い納期について聞きに行ったら、何故かサラの独立の話が出て来ました。

 サラは、独立するには若すぎる年齢である事さえ考慮しなければ、誰もが認める一流の腕を持つ家具職人である事には違いないし、例えボクっ娘であっても一応は成人しており、私よりも一つだけ年上の女性。

 だから独立の話が出てもおかしくはないし、きちんとした後ろ盾さえあるなら、よくある話だとは思うんだけど……。


「コンフォード家から、他の街で工房を開かないかって話よね?」

「うん」

「詳しい事は私に聞けって言われたのよね?」

「そうだよ。

 早く決めれば、工房街の一等地を安く確保できるって聞いたし」


 さて、ドルク様かヨハネス様かは知らないけど、人の友人をサクって巻き込まないでもらいたいものだ。

 いや、友人だから巻き込んだ可能性の方が高いのだけどね。


「それで、丁度、私からの注文が入っていて、納品を口実に私に話を聞こうとしたと」

「ジィーヤさんだっけ?

 あの執事の人に聞いたら、ユゥーリィを宜しくって言ってたし、ああ、これは間違いない話だなって直感した」


 サラの話では、あくまで本人に意思があるならって事らしいけど、侯爵家の家紋の入った馬車に乗ってきた使者が、そんな話をして言ったら、殆ど命令と同じ。

 いや、そこまで言わなくても領主からの要請に近い事で、良く言って強い要望。

 少なくとも高位貴族からの要望を、平民が正当な理由もなく断れる話ではない。

 まぁ私は例外とはサラには言ってはいるけど、工房長でありサラの祖父であるグラードさんからしたら、冷や汗がダラダラ物らしい。

 私って、何気に王族関係の仕事を持ってくる事があるからね。


 それにしてもサラってば、えらく軽く考えているけど、この辺りがグラードさんの頭の痛いところなのだと思う。

 当人は昔から独立する事を夢見ていたから、これ幸いにと乗っかっているだけだろうけど、工房長としてもサラの祖父としても、サラを独立させるには一抹の不安どころか、不安しかないのだろう。

 だけど、住む街の領主でもある侯爵家から、正式な使者を立てられた話など普通は断れない。

 そんな目立つ真似をされた日には、サラだけの問題ではなく工房全体の問題になってしまっているから、社会的な信頼問題が生じてしまっているからね。

 かく言う私も、サラの独立は不安しか感じないのよね。

 うん、腕は良いのよ。腕は。

 でも職人としてはしっかりして来たとは言え、経営者としては眉を潜めるしかないのが正直なところなのよね。


「サラ〜、独立は良いけど帳簿の管理って出来るの?

 貴族相手の商売となると、税金を納めるにしても、相手によっては税率も変わる事もあるから、多く納めてしまう分には役所としては問題はないだろうけど、少なく納めてしまった場合だと、後で脱税だと言ってかなりの追徴課税を課せられたり、最悪牢に入れられて鉱山送りよ。

 それに私が言うのもなんだけど、貴族相手だと礼儀作法も必要よ。

 ねぇ不敬罪って言葉、知っている?

 貴族に不敬を働いた人間を叩き切っても罪に問われないどころか、その家族も罪に問われる事があるのよ。

 おまけに貴族と言っても、支払いの良い客ばかりじゃないから、礼儀を保ったまま相手を怒らせないように交渉とかをする必要もあるし、仕事の内容的にも納期的にも無茶振りだってされる事があるから、それを要領よく避わさないと駄目なんだよ。

 特にサラみたいな可愛い子は、二人っきりになる事はなんとしても避けないと。

 その手の輩したら、サラなんて飴玉と一緒だからね。

 味わってみて、好みじゃなければポイ捨て、好みなら最後までしゃぶり尽くされ、気分次第ではガリガリと噛み砕かれながら楽しまれちゃうの」

「……帳簿と礼儀作法はともかく、最後のは嫌な例えね」

「言っとくが、裕福な大店の商人だって、似た様な事はあるぞ。

 話と寸法を測りに行ったら、ドラ息子になんて話は偶に聞く。

 なんのために、俺や息子が何時も何時もオメエに文句を言われながらも、ついて行ってやっていると思っているんだ」

「えっ! てっきり色々教えるためだって。

 でも大体覚えちゃっているものばかりだから、煩いなぁと思っていたけど」

「「………」」


 よし、とりあえずサラ、グラードさんに謝ろうか。

 親心、子知らずとは言うけど、祖父心、孫知らずだよね。


「グラードさん、やっぱり無理ですよ。

 此処の職人街みたいに長い時間を掛けて、相互協力関係が築かれていませんから、サラみたいな可愛い子、いい餌食です」

「こんな事なら、適当に信頼おける奴とくっ付けておくべきだったな。

 この馬鹿に粉を掛けようとした連中は、どいつもこいつも、ちょっと撫でてやったくらいで逃げ出しやがる腰抜け野郎ばかりだったしな」

「二人とも酷いっ!

 と言うか、そんな人いたっけ?

 ボク知らないんだけど」


 グラードさんの『ちょっと撫でてやった』と言う言葉が気にはなるけど、まぁ孫馬鹿だしね。

 それはともかく、レイチェルにしろ、サラにしろ、色恋沙汰とは無縁なのよね。

 お仕事が面白いと言うか、お仕事が恋人状態と言うか、モテているはずなのに浮いた話を一回も聞いた事がない。

 二人ともせっかく素材が良くて、性格も良いのに勿体ない。

 いえ、浮気なんてしませんよ。

 ごく一般的な感想です。

 だからジュリ、入り口から睨まないの。

 サラが可愛いなぁと見ていただけだよ。


「なんでしたら、私の方からコンフォード家に話を通しておきますが」

「いや、ありがてえが、それはそれで、お嬢さんに迷惑をおかけしてしまう。

 それに断れたとしても、その事実がなくなる訳じゃねえ」


 そうなんだよね。

 どういう経緯で断ろうと事実は事実だし、此処に持って来られた話が十中八九、私の領地の事だろうけど、もし別の街の話だったら、コンフォード家に対する内政干渉で、寄子である私が口を挟む事ではない。


「あーっ! 勝手に、人に持って来られた話を潰さないでよね。

 お爺ちゃんはともかく、幾らユゥーリィでも、その信用のなさは失礼だよぉ」

「「……はぁ」」


 サラ、信用があったのなら、こういう話になっていないからね。

 自覚がないから、グラードさん共々溜息を吐いているの。


「サラにはね。営業だの経営だの面倒な事は考えずに、一心にその才能を奮える環境の方が良いと言う話をしているだけだから」

「ああ、サラは図面を書いていたり、物を作っている時が一番輝いているって話だ」

「いや、ちっともそういう風に聞こえなかったのだけど」

「「気のせいよ(だ)」」


 嘘は言っていない、そういう認識の下で、サラが独立するには時期早々だっていう話になっているだけです。

 工房の経営は、職人として一流であれば良いという訳ではないからね。


「サラ、もう少し真面目な話をするから、此処からの話は内緒でね」


 コンフォード家が持ってきた話は、おそらく私が今作っている港街の事で、国も力を入れる予定があり、そのために動いているとはいえ、現状、誰も住民がいないと言う様な話から始め。

 多くの商会や貴族の血筋の方が居を構えるだろうから、家具職人の仕事は移民が始まれば問題はないけど、先程も言った通り、なにも出来ていない街。

 つまり材料の仕入れすら儘ならないと言う事。

 出来たばかりの街というのは、勢いが生まれる反面、治安も乱れやすい状態だし、組織体系が安定しない事には、普段の生活にも危険も及ぶ事が考えられる。

 無論、これ等が只の心配性で済む話なら、それに越した事はないけど、その危険性を前もって承知しておくのとしておかないのとでは、大きく違う。

 危険やデメリットを意識しておく事はとても大切だからね。

 何方にしろ、家具職人であるサラの場合、林業や製材業に従事する人間が移民して来なければ話にならないし、木材以外の物も必要だから、そちらもどうやって手に入れるかと言う問題もある。

 田舎の家具職人なら、それこそ材料の仕入れから全部自分でやるんだろうけど、代々街の中で生業をしていたサラ達に、そのノウハウがあるとは思えない。

 私の話に、テンションが目に見えて下がるサラには申し訳ないけど、これが現実。


「物資の運搬は、一部の付き合いのある方から頼まれているから、そのついでに私が魔法で運ぶ事は出来るけど」

「その御方達の顔を立てるために、無料(ただ)と言う訳にはいかないわな」

「ええ、今回の話に最初から乗れる様な貴族の方には、たいした金額ではないですが、一般の方には結構な金額だと思います。

 ただ、その辺りは我が家の別邸の仕事を引き受けてもらえれば、当家のためと言ってどうとでも言い訳は立つでしょうが、結局は一時凌ぎでしかありません」


 私が力を貸したとしても、サラが材料の仕入れから、売り込み先までの販路や人脈を開拓していかなければ、いずれ問題が出て来るし、ハッキリ言って今のサラにそこまでの能力はない。

 街がある程度機能し始めて、この街と同じ様な条件で工房を開けれるのであれば、確かにサラほどの腕があれば、なんとかなる事もあり得るだろうけど。


「サラ、オメエ、蓄えはどれだけある?」

「えっ? なんでいきなり」

「独立したいと言っていたんだから、多少は貯めてはあるんだろ」

「う、うん、でもまだ少ないよ。

 金貨で八枚ぐらいかな」

「はぁ……、話にならんな」


 いやいや、サラの歳で金板貨一枚近くの貯蓄はたいした物だと思うよ。

 確かにグラードさんが言う様に、貴族向けの家具工房を開くには、とてもじゃないけど足りないだろうけどさ。


「工房を建てる金や当座の生活費も考えれば、俺のと合わせても、まぁ五年分の材料は仕入れられるか」

「ぇ? そのどう言う事?」

「馬鹿野郎っ、テメエが独立してえって言うから、金と手を貸してやるって言ってるんだっ!

 それぐらい分かりやがれっ!

 そもそも領主様からの正式な話である以上、断れねえ。

 此処は息子達に任せて、俺が付いて行ってやるって言ってんだよっ!」


 結局は孫が心配だから、付いて行くって事なんだけど、グラードさんの年齢を考えたら、住み慣れた街を出ると言うのは、相当な勇気だと思う。

 それだけ孫であるサラが心配しているんだろうね。

 それにグラードさんなら、確かにサラを守れるだろうし、サラに足りない物を教えられる。


「えぇ〜〜っ、それって独立と言わないじゃん」


 だと言うのに、この子は。

 とりあえず直ぐにって話ではないので、じっくりと話し合う様にと、あとサラだけって話は、私が断固反対するとだけ言い残して、店を後にする。

 あぁ……、なんか知らないところで、面倒くさい事になっている気が。





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