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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第四章 〜新米領主編〜
476/1063

476.封印されし道具と再利用。





 前世の知識を生かした足踏みミシンなんだけど、結局は半ば封印扱い。

 今の所、屋敷内と魔絹織物の加工場、そして私の押し付けで服飾店を開いたミリアの店にのみ置く事にした。

 それと言うのも、この世界の技術ではミシンの振動に長時間耐えられるだけの針を作るのが難しらしく、滑りを良くするためのメッキ加工した物は、この世界では魔法を使わない限り、あれだけ小さくて細い物には難しいとの事。

 ミシン自体の機構も複雑で、加工賃からして金額自体がとても実用的ではないのだとか。


 因みにミシン針は金剛不壊鉱石(アダマンタイト)を使えば強度もあってメッキもいらないと言ったら、ゼルには『お嬢さん、少しは常識を弁えてください』と怒られたし、せっかく二本針や、幾種類ものステッチ縫い専用、他にも革加工用なども作ったのに開発損です。

 色々作っては儲けていると世間では言われている私ですけど、結構、こうやってお蔵入りして、赤字を出している物も多いんですよ。

 完全にお蔵入りした物に比べたら、使っている分だけ、今回はマシな方とも言えるけど。


 あとお蔵入りした理由として、ゼルはミシンその物には感心していたけど、基本的にこの世界の服はとても高価で、庶民は古着が基本だから。

 新品の服は手縫いで十分間に合うため、大量生産向きの工作機械は現状に合わないミシンは、高価過ぎて売れないと言う事みたい。

 貴族を相手にしても……。


『私、高価なミシンのおかげで、雑巾を一日に千枚縫えますのよ』


 うん、ないわぁ〜〜。

 幾ら見栄を大切にする貴族でも、労働作業を自慢するなんて事は、想像がつかない。

 どちらかと言うと優雅さを尊ばれるし、私が労民令嬢と揶揄されている様に、働く事自体が忌避される風潮があるからね。

 その私だって領民に混ざって色々してはいるけど、本当に民と混ざって同じ事ばかりをしていたら、まず間違いなく陛下やドルク様からお叱りを受ける。

 民と同じ事をしたければ民になれば良いとね。

 でも私の場合、陛下の勅命で無理やり貴族にさせられている訳で、それすら出来ない。

 領民に混じって作業をしてはいても、それは指示をする側だし、作業の方は作業そのものが魔導士としてで、普通の人達には真似出来ない内容だからこそ。

 アドル達が理由をつけて私に田植えや稲刈りをさせないのも、そう言う事が関係しているのだと思う。

 最近は魔法で草毟りする事さえも、領民達が自分達でするからとさせてもらえない。

 と言うか仕事を奪われるんですよね。


 おっと話が逸れた。

 

 とにかく、ミシンは半お蔵入りだけど、値段を考慮しなければ便利な道具には違いない訳で、設置したところでは大変に喜ばれている。

 エリシィーとジュリが私に着せるため、ミリアの店や双子女中(メイド)ちゃん達に頼んで色々と怪しい下着を作らせているみたいだけど、私としては断固として着る気はない。

 持って来たら焼却処分します。

 無論、私でなく二人が着てくれるなら、ぜひとも目の保養をさせて貰うけどね。

 だいたい見たいですか? オッサンの艶かしい女性用下着を着た姿なんて。

 エリシィーと再会した頃は耐えたけど、だんだん耐えられなくなり、今は例え幻視でも見たくない。

 なにより、恥ずかし過ぎて顔が熱くなってしまう。

 だって、そう言う下着を着ると言う事は、相手がそう言う夜を期待しているって事だもの。

 とにかくミリアと双子ちゃん女中(メイド)こと、メアリーとアンネにはあまり変な物を依頼を受けない様にと言っておいたので、三人の良識を信じている。

 既に何度か裏切られているけどね。


 とにかく、手縫いでない分、気楽に服を作れると言う強みがあるため、ライラさんの愛娘であるマリアナちゃんに、タオル地でウサちゃん着ぐるみパジャマを作ってあげたら、ライラさん大興奮。

 旦那さんのエルマーさんも、マリアナちゃんの可愛い姿を前に、床で萌え転がってましたよ。

 その反応に気分を良くした私は、ミレニアお姉様の所のユゥラード君とグリアラちゃんに狼さん着ぐるみと、虎さん着ぐるみと作って行ったら、ミレニアお姉様より、グットウィル子爵夫妻であるラルガード様とマリエーゼ様の方が大はしゃぎ。

 可愛い孫達の姿に、商売をしに行った訳でもないのに、もの凄い数の追加発注を受けましたよ。


『あのぅ、子供って直ぐに大きくなるから、半年も保たないと思うのですが』

『心配は要らぬ、子爵のおかげで、我が家は大変に潤っておるからな。

 可愛い孫の姿のためなら、服の十着や二十着くらいなんともないわ』


 ミレニアお姉様が、どうせ数回しか袖を通さないだろうから、着れなくなったら、小さな子がいる家に回すから大丈夫と言ってくださったので、あらためて採寸してから、商会の服飾店に丸投げ。

 と思っていたら、いつの間にかライラさんが情報発信をしていて、ライラさんが取引している貴族の方に広まったらしく、お店は注文でプチパニック状態。

 そこへ待っていましたとばかりに、私が顔を出した物だから捕獲されて、着ぐるみに必要なデフォルメした意匠を、その場で何枚も書かされましたよ。

 店の店主(オーナー)であるはずなのに、店長や店員に顎で使われる私って……、まぁ幼児の可愛い姿のためなら、幾らでも描きますけどね。

 流石に全部はそのの場では書き切れなかったので、日をあらためて意匠図帳一冊分を纏めて店長に渡した所で、今度こそ丸投げ終了〜〜♪

 だと思っていたら、今度はカイル殿下から早急の呼び出し。

 何事かと思って行ったら、お小言を喰らいました。


「君の発案で、随分と可愛いらしい姿が流行り出したと耳にしたけど、ウチの子達の可愛い姿を見たいと思わないのかい?」

「似合うかもしれませんが、九歳にもなったら流石に嫌がりません?」


 脳裏に浮かばせてみた、猫さん着ぐるみ姿のラード王子は可愛いけど、その表情は恥辱に満ちている。

 まぁそのギャップも可愛いと言えば可愛いけど、実行に移すのは、ジュリの弟のベル君でやり過ぎて泣かれてしまった経緯があって、流石に懲りています。


「それはそれで見てみたいが、流石に可哀想だねぇ。

 と言うか、普通に考えて下の子達に決まっているだろう」

「……そう言えばいましたね」

「……君ね」


 仕方ないじゃないですか、五歳にならないと、王族としてお披露目する事はないため、王族と比較的良くしてもらっている私も、そのお姿を見た事がない訳ですから。

 ラード王子の下のリリシアナ王女は、もうすぐ五歳になるため、お披露目は秋祭りの時に行ない、その時に参加できなかった貴族向けには、王族主催の秋の終わりの舞踏会の時にもう一度お披露目を行う予定だったと記憶がある。

 生まれたばかりの王子に至っては、名前すら知らないのだから、これで覚えていろと言う方が無理があると思う。

 一応は誕生祝いの贈り物として、砂漠クラゲを原料にした高分子吸収材もどきを使った紙オムツを大量に贈った記憶があるから、かろうじて存在を思い出した程度。

 紙オムツの実証実験は、ライラさんの所のマリアナちゃんに御協力して戴いたし、大きくなったらサイズをお大きくした物をと言われているので、問題は無い様なんだけど、その辺りは商会のゼルに丸投げしたので、私としては右から左の出来事に過ぎない訳です。


「でも、王族として、ああ言う威厳を失するような服は好まれないのでは?」

「好む好まない以前に、王族としての矜持と言うものはあるが、まだお披露目前だ。

 他の者の目など知らん。

 私はシアとアルの可愛い姿が見たいだけだ」


 親馬鹿発言乙です。

 あと、ラード王子の時も見たかったって、今更そんな事を言われてもどうしようもありません。

 それとも父親命令で、無理やり着せてみます?

 十中八九『父上など嫌いだ』と言われますよ。

 ラード王子、子供ながらに自尊心が高いですから

 ……分かっていて勧めるなって。

 どうしようもないと分かっているのに、私を責めるのは?

 ……私を弄るのは問題ないって、酷いっ!


「半分は冗談としておいて、君の所の店は今は忙しいそうだから、意匠図と見本だけで構わないから置いてゆきなさい。

 王族らしく、可愛く格調高い物を頼む」


 また無茶な事を、しかも即興でやれと?

 と、此処までは半分口実で、実際には親馬鹿ぶりを見せておいて、夏の視察中にもし不穏分子が事を起こした時、人質として取られた場合の価値をあげておくのが本命らしい。

 親馬鹿と見せておけば、相手は此方が慎重に動くだろうと誤解をするだろうからと。

 ラード王子の魔導具の服で、大金を掛けたのも事情を知らない人間が側から見たら、ただの親馬鹿による散財だし、王族の威厳を放って動物着ぐるみを幼い王女と生まれたばかりの子供に着せて喜ぶ姿を見せれば、その分、動きやすくなるのだとか。


「なにより口実があるからな。思う存分愛でれる」


 カイル殿下から出た言葉が、子供達に対しての愛情なのか、それとも馬鹿な人達を甚振れると言う意味なのかは、怖くて聞けなかった。

 なにせ、陛下の子だからね。

 とりあえず前者と思う事にしておこう。

 そんな私の考えを読み取ったのか、『失礼な事を考えていないかい?』と聞いてきたので、とりあえず令嬢らしく優しい笑みで持って返してみると。


「君、絶対に令嬢と言う物を勘違いしているよね?」


 此方の思考を読んで、それを面白がらないでもらいたい。

 こう言うところは、やはり陛下の血を引いていると思いつつ。


「ちなみに君の所に行った二人だけど、その馬鹿共の血縁者だから」

「はっ?」

「もっとも使い捨ての雑魚だけど、もう少し泳がせて背後にいる奴を掴まえようと思っていたのに、感づかれたのか、それとも功を焦ったのか官吏が踏み込んじゃってね。

 蜥蜴の尻尾切りさ」


 訳ありなのだろうなぁと思ったけど、驚きの事実。

 カイル殿下が言うには、ヴァイスの実家であるロッテ家は、ついこの間までは伯爵家で、ヴァイスはその五男坊。

 家を継ぐ芽も家の仕事を手伝う宛もないから、城の調理人をとして王家に仕えると言う、ある意味、貴族らしい姿勢だったみたい。

 それはさておいて、ロッテ家の経営する商会は、王都で貴族向けの蝋燭と燭台の製造と販売をする事を生業としており、数年前までは王城にも大量に納めていたとか。


 はい、実家とは言え、私関連の事案です。

 実家の商会が売りに出している、光石を用いた照明の魔導具によって、不夜城とも言える王城は勿論、主だった貴族は、火事の心配や手入れや手間の掛かる蝋燭よりも、便利で安全な照明の魔導具に軒並み切り替えており、ロッテ家の収益は激減。

 ロッテ家は陛下の取り計らいもあり、消耗品ではなく祭儀用の高級蝋燭に舵を切る事で生きながらえる道を得たのだけど、楽をして大儲けを続けれると思っていたロッテ家の長男や、商会を任されている次男と三男は予定が狂ったと憤慨。

 王都にある私の店に嫌がらせをしていた内の一つも、この三人の手による者だったらしいのだけど、化粧品の店は私が警備を雇ったり、お菓子の店は周りの住民との関係が良い上に、店の近くにある衛兵の詰所とも良好な関係を築いているために断念。


「そこで止めれば良いのに、何をとち狂ったのか、馬鹿共に唆されて、王族に毒を盛ろうと画策したみたいでね」

「……何処をどうやったら、そうなるんですか?」

「本人達は、嫌がらせ程度で溜飲を下げようとしたらしいよ」


 話を聞くに、便利だからと言って伝統ある蝋燭から照明に切り替え、更にはそれを推奨し、後押しをした国に責任がある。

 直接的な毒物ではなく、食材の組み合わせによるは食中毒を引き起こさせれば、一日か二日苦しむ程度ですむはず。

 仕事を奪われた者達の代弁者として、それくらいの苦しみを味わさせても許されて当然だと囁かれたのだとか。

 意味不明な超理論に呆れつつも、それでヴァイスとエマが関わってきたと言う訳ねと納得してしまう。


「夫の実家からの呼び出しを受けて足を運んだ。

 だけど不幸にも途中で人攫いに遇い、夫であるヴァイスは正体不明の犯人から脅されて仕方なくと言う筋書きだったみたいだよ。

 誘拐を実行する直前の段階だったから、君の所に行った二人は本当に全く知らない話だったみたいだから、その辺りは心配しなくても良い」


 ロッテ家の当主も息子達の暴走は寝耳に水で知らなかったみたいで、今まで長年にわたって国に灯りである蝋燭を納め続けてきた事と、ロッテ夫妻も調理人とは言え、真面目に国のために勤めていた事も考慮され、連座による取り潰しは免れたみたい。

 陛下もカイル殿下も、小物で使い捨てにされたロッテ家程度に目鯨を立てたくないと言うか、甘い処罰その物を撒き餌の一つと考えての事らしい。

 ただし、嫌がらせ程度だと唆されたとは言え、王族を害そうと計画したロッテ家の長男と次男と三男は身分剥奪の上に処刑。

 例え実行前だったとは言え、そのための準備をし王族を害そうとした罪は重く、ロッテ家の墓に入れる事も弔う事も許されない処分は、国としては譲れない物らしい。

 ロッテ家自体も連座は免れたとは言え、子供達の監督責任を問われて伯爵から子爵への降爵処分と多額の過料処分。


「ロッテ家は、原因となった商会を権利と販路の全てを他家に売り渡して、賠償金として国に納めた事で、世間の批判を少しは避けれるだろうけど、身内にそう言う事を目論んだ人間がいるって言うのは、王城に勤める者としては致命的でね」

「そこで私ですか」

「港街に作る君の別邸には調理人は必要だろ。

 あのままでは二人に真面な就職先なんて無かっただろうし、君はそう言うの気にしない。

 君ならば教育した上で、再利用するのは得意だろうからね」


 王都で、そう言う事で噂になったのなら、真面な貴族の家に仕えるのは難しい。

 地方に行くにしても仕える家の格をかなり下げないと駄目だろうし、王宮の料理を作る事に慣れた二人では、店を開いても潰れるのが目に見えている。

 お店を持つって事は、料理が上手いだけでは経営が成り立たないし、料理しか(・・)できないあの二人では無理だと言える。

 それにしても、再利用ってどう言う意味で言っているのか。

 ウチを廃棄物処理場とでも思っているのかな?

 皆んな良い子達ばかりなのにね。






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