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私、お嫁になんていきません【1000万PV突破】  作者: 歌○
第四章 〜新米領主編〜
442/1140

442.ストッキングは男の浪漫? いえ、ただの変態です。





「いやぁ、君の成長が嬉しいねぇ」


 舞踏の相手である陛下の柔かな笑顔とは裏腹に、その瞳の奥にはどう考えても人をおちょくる事を考えている事が分かる色味が浮かんでいる事に、どうにも頭が痛くなる。

 既に成人し、身体の成長がほぼ終わっている私に対して、嫌味以外の何者でもない。

 ユールノヴァ侯爵にも言われたけど、知らない人からしたら、誰も私を成人女性として扱わないだろうと言うのに、それが分かっていて言葉を選んでいる辺りも腹が立つ。

 それでも、目の前にいる人間は大国の王であり、此処は多くの貴族が集まる王家主催の舞踏会場。

 陛下に合わせてステップを踏みながら、少しだけ硬く冷たい声で言葉を紡ぐ。


「陛下、何を仰いたいのでしょうか?」

「さて我が事ながら何がだろうな。

 君が珍しく、貴族らしく注目を浴びて、新製品を宣伝している事なのか。

 何もない空間を足場に、私の舞踏の相手をしなくなった事なのか。

 それとも、まるで男を知った乙女のように、男性に対して、僅かに警戒を示す様になった事なのか。

 どれだと思うかね?」

「質問に対して質問で返すだなんて、陛下も意地悪ですわね」


 間違いなく全部だろうね。

 特に二番目かな。

 陛下、なんだかんだと言いながらも、楽しみにしていたみたいだからね。


「以前に君にやられているからね、文句は言えないだろ」

「例えあの時がなくとも、誰も陛下に文句など言えませんわ」


 むろん、こう言った公の場でなければと、心の中で付け足しておくけどね。


「まぁ、何時もの様に踊っていては、その新製品の魔絹織物の軽やかさを、魔法で表現しているだけだと思われるのは嫌だろうと言うのは分かる。

 王妃達やユールノヴァに気を遣いながらも、一見地味に見えながらも華やかさがあるその新しい布は、実に君らしいと言える」

「来年は、王妃様達に贈らせて戴く事を許してくださればと思います」

「許可しよう。

 妻や娘達の魅力を引き出す物を断る程、僕は無粋ではないつもりだよ」


 よくも言えたものだ。

 なら三番目の問い掛けは無粋ではないのかと問いただしたい。

 まあ自覚はあるとは言え、その原因を知っている陛下には言われたくない。

 もっともそれを気にする事自体が、陛下の意地の悪さなんだけどね。


「それと、流石にこれだけ視線を感じれば、幾ら私でも身に危険を覚えますわ」

「だろうね、君の艶かしい足(・・・・・)に、皆、注目をしているからね」

「陛下、滑らかに見える足(・・・・・・・・)の言い間違いでは?」

「そうとも言うね」


 普段ならともかく、夜会や舞踏会では多少足が見える事は珍しくはない。

 少し大きな動きのある舞踏であれば、普通のドレスでも長いスカートは舞うし、舞っても問題ない様に下を履いている。

 私の場合、前方からは元々膝下くらいから足が見える様な服を着ている事が多いし、長靴下を履いているのだから、足を出していない扱い。

 でも、今は長靴下の代わりにストッキングを履き、高いヒールで足首まで綺麗な形が透けて見える。

 でもこれくらいは前世の世界では普通にある光景。

 なのに、もうね、足を舐める様に見られる視線が、否が応でも警戒心を上げるのであって、けっして陛下の言う『男を知ったかの様な』と言う理由ではない。


「サリュード辺りは何か言わなかったかね?」

「いえ、ただお疲れだったのか、挨拶をするなりいきなり顔を押さえて場を離れられてしまったので、会話も何もありませんでしたわ」


 スカートの裾を少し上げてカーテシーをして顔を上げたら、口元全体を手で抑えていたから、もしかすると吐き気を抑えていたのかもしれない。

 残念王子であっても、王族だからそれなりに忙しいだろうし、もしかすると体調を崩されていて、それでも公務だからと無理を押して舞踏会に出席されていたのかも。


「……それはそれで問題だな、あの阿呆め」

「はっ?」

「いや、なんでもない、疲れていたのだろうから、気にしないでやってくれ」

「は、はぁ」


 何やら頭の痛そうな表情をされる陛下を少しだけ心配してしまうが、情けは無用。

 そもそもこんな会話をしている事次第が、陛下のセクハラ発言が原因ですからね。

 いい加減、舞踏を口実に人を回転させてスカートを高く舞わせて、人の足を周囲に見せさせるのは止めて欲しい。

 曲と順番を無視で、何度回転させるつもりですか?

 なんのために空中にブロック魔法で足場を作って踊るのを止めて、少しは視線を抑えようとしていると思っているんですか。

 全部、台無しですよっ!


 ちなみにラード王子は、子供らしく見た事もない生地に興味が湧いたのか、触り心地を確かめていましたよ。

 ケープとストッキングとね。

 頬にケープの布を当ててみたり、手で足を触れてみたりね。

 まぁ、相手は子供ですから、足を撫でられてもなんとも思いません。

 これがサリュード王子や陛下だったら、そのまま股間を蹴り上げていたかも。

 幸いそう言う事はないし、私もサリュード王子が事はしないと信じているから、平気でそんな出来もしない事を考えられるんですけどね。


「しかし、今回の君の格好もそうだが、少しばかし問題だな」

「場に削ぐわない格好でしたでしょうか?」


 一応は、侍女のユリアと執事のプシュケに確認してもらって、私の年齢的にはギリギリ問題ないと言われてはいたのだけど、やはりこの世界で足出しはハードルが高かったのかな?


「いや、見た目の幼い君の足ではなく、そこに使われている布地に興味があるとは言え、場を弁えない程に無粋な視線を送るのは、少々どうなのかと思ってね」


 うん……、アイドルとかならともかく、私の様な一般人を相手では、前世なら間違いなく通報されるレベルの視線だもんね。

 そして陛下、今日はどうやら保護者モードだったみたいです。

 私の新製品のお披露目は、それでもう十分だろうと言わんばかりに、舞踏を止めて二階の王族専用休憩スペースであるバルコニーに拉致軟禁されました。

 着替えるか、客の数が減るまでそこにいろとね。

 う〜ん、相変わらず陛下の行動は、時折意味不明だ。

 いえ、目を掛けてくださり、可愛がってくださっていると言う事は分かるんですけど。


『ああ、その足の奴だが、もし材料が余っていたら、奥さんの分をよろしくね。

 是非ともスベスベ、すりすりをしてみたい。

 来年まで待てと言うのは、愛妻家の僕にとっては酷だと思わないかい?』


 帰りがけにこの一言さえなければ、感動で終われたのに。

 うん、やっぱり残念王子の父親なだけあるわ。

 中身が男の私としては、その気持ちは凄く分かるけどね。







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