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私、お嫁になんていきません【1000万PV突破】  作者: 歌○
第四章 〜新米領主編〜
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440.女性は男性が思っている以上に大変なんですよ。





「君の顔を見るのは、視察依頼だが、元気で……なにやら疲れているよだが?」

「気のせいです」

「いや、しかし」

「気のせいですっ。病気ではありませんので御安心をっ」

「あ、ああ……、

 まぁ君がそう言うのなら気にはしないが、くれぐれも自愛したまえ」


 よし、ヴァルト様を相手に押し通した。

 あとジュリ、元凶が知らん顔をしないのっ!

 気にされるのも、誤魔化すのも理由が理由だけに恥ずかしいので、必死に押し通すのだけど、実際問題、仕事にも支障が出てきいるし、本気でそろそろ何とかしないと。


「ヴァルト様も御壮健で何よりですが、先ずは仕事の話を済ませてしまいましょう。

 こちらが今回の納品になります」


 従者であるジュリが、副官のロゼルト様に、品物の目録をお渡しし、それを受け取ったロベルト様がヴァルト様にお渡しするのだけど、この辺りのやり方が、少し昔と変わってしまったのは、互いに領主持ちの当主としての取引であり、国政に関わる品物であるため、ある程度格式ばった物を求められるようになったため。

 と言えば聞こえは良いけど、要は私にこういうやり方に慣れろと言うための教育の一環だったりする。

 領地を持ち、港を開くとなったら、こう言うやり取りも増えるだろうとの事。


「事前に聞いてはいたが、やはり一季節分にしては量が少ないな」

「冬は気温が下がるため、どうしても動きが緩慢になり、中には冬眠する個体も出てきますので、仕方ない事かと」


 砂漠クラゲは寒さに弱いため、冬は乾季ではなくても休眠状態に近い状態になり、どうしても個体数があまり増えない。

 かと言って暑い地方で繁殖を行なえば良いかと言えば、そう言う訳でもないのよね。

 実際、領地の最南端にあるリオレイシウス火山の麓での小さな実験所では、年間を通した繁殖その物が抑えられてしまっている。

 実験に対する個体数が少ないため、一概には言えないけど、繁殖を促すために餌場を移動させないといけない様に、おそらく環境の変化が、種の生存率を高めるために繁殖を促すのだと思う。

 実際、春が一番、砂漠クラゲが増える季節でもある事は、今までの繁殖の観測結果から分かっているもの。


「ふむ、その辺りは、此方で調整するしかないだろうな。

 季節による変動があるとは言え、全体で見れば安定供給される事には違いない」

「そう言って戴けるのでしたら、此方としてはありがたいです。

 やはり生き物ですので、自然の摂理には逆らえません」

「当たり前の話だが、それが分からぬ者もおるからな。

 多く手に入る季節は在庫を増やし、手に入らない季節は在庫を出して調節するのだが。

 それを値段を釣り上げるための強欲な行為だと、口にする愚か者がいるからな」

「そう言う人って、物が無くなったり値段が上がったりすると、今度は管理側の怠慢だと平気で責任を追求してくる輩ですよね?」

「まさにその通りだ。

 頭が悪いだけでなく、性質(たち)も悪い。

 おまけにそう言う奴に限って口が大きいからな」


 やっぱり何処の世界にもいるんだなぁ、そう言うゴミメディアみたいな人って。

 王都だと、人が多い分、余計にそう言う性質(たち)の悪い人が多そう。

 ヴァルト様、王宮勤めだから、余計にそう言う人に絡まれていそうで、本当に御愁傷様です。

 ヴァルト様の愚痴の相手を少しした後、今度はヴァルト様の方から厳重に封をされた封筒を直接戴く。

 いったい何かなぁ〜と、少しだけ首を傾げて見せると。


「妻からだ。

 私には一切中身に興味を持つ事を許さず、必ず君に直接渡すようにと言付かっている」


 愛妻家であるヴァルト様が、少し面白くなさそうに言うのだけど、まぁなんとなく中身については想像がついた。

 秋の終わりから、ごく一部の間で商品として広めている物に関する使用した感想や、要望などを纏めたレポートなのだろう。

 胴と足の違いがあるとは言え、原材料が同じ砂漠クラゲなので、ヴァルトの奥様にとりあえず纏め役をお願いしている。

 私では年若いし、社交会の御夫人方とあまり面識もないため、信頼もない。

 その点、古き血筋の一家の侯爵夫人であり、魔物討伐騎士団王と師団長の妻ともなれば、人脈も豊富でその信頼も厚い。

 その大らかな人柄から、多少込み入った話や、相談もよく受けるらしいから、まさに相談の窓口として最適な方。


「私の商会が関わっている女性用の下着に類する物に関してですので、ヴァルト様には少々話し難い内容ですので、どうか御理解ください」

「うむ、そうなのかも知れぬが、妻の下着となれば、夫である私としても興味が」

「ヴァルト様、女性の好む物が、殿方の好む物とは限りません。

 どうかその辺りは広いお心で、見て見ぬ振りをするのも、殿方の優しさだと私は思いますわ」


 取り敢えず、嘘は言っていない。

 下着関係は以前にも矯正下着など開発し、私の持つ商会の傘下の服飾店が、世に広めた経緯があるし、ズレ防止テープをマジックテープ代わりに一人で脱ぎ着出来るドレスの開発等と色々とやっているからね。

 ただ、今回は下着そのものではなく、下着に関係する代物だったりするって言うだけです。


「う、うむ。確かに言われてみればそうだな。

 妻が喜ぶ事であるのなら、知らぬ振りをするのも、正しいと言えるか」


 むしろ興味を持ったら、奥さん怒っちゃいますよ〜。

 実際、前世で男だった私は、現世で女に生まれて、如何に女性が大変なのかと言う事を、身をもって体感している。

 女だからと言うだけで、色々我慢させられたり覚えさせられたりはあるし、男ならなんてことのない姿でも、女性だとだらしない扱いされるから、身嗜みは欠かせないとかあるのは勿論だけど、物理的にも色々ある訳ですよ。


 だからこそ高分子吸収材に似た性質を持つ、砂漠クラゲの胴体部分を原料にした女性用品について、前世の便利な物をこの世界の物なりに再現し、安く広めたいと画策している。

 より多くの人達に広めるために、試用販売を始めた訳です。

 取り敢えず、まずは使って貰わないと話にならないからね。

 露骨が歪むほどキツイコルセットの時でも思ったけど、基本的にこの世界の女性は、そう言うものだと受け入れてしまって、思考が停止している所がある。

 悪口とか蔑視とかではなく、知らないから考えようがないだけの事で、去勢下着の時のように知る事が出来れば、寧ろ動きは男性陣よりも早い。

 前世の中世頃のように男尊女卑があるとは言え、この世界の女性はそれなりに発言力があるからでしょうね。

 でもそれは、魔導士や魔力持ちの女性がおり、そういった女性が文字通り身と心を削って活躍して来たからこそ築けた女性の地位と言える。

 無論、そんな事は関係ないと言う男性も多いし、男女平等とはけっして言えないけど、そう言った下地があるため、女性全体の理になると知った時の女性の結束力は強い。

 中には例外の人もいるけど、それはそれで仕方がない事だし、必要な存在。


「ヴァルト様のそう言った深い懐があるからこそ、奥様も輝かれているのだと思いますわ」


 ヴァルト様の奥様は、そんな高位貴族の女性陣の意見を纏めている一人な訳ですからね。

 言葉にし難いデリケートな事に関して便利な物を広め、嫌な顔をせず相談を受けて下さるとなれば、社交界での信頼度と影響力が変わってくると思う。

 無論、元より高い信頼がある方だからこそですけどね。

 先日、王城の統括侍女(スーパーメイド)長様(SSR)からも、例の物はたいそう好評で、是非ともサイズの種類を増やして欲しいとか、目立たず可愛らしい専用の下着も開発して欲しいとかのお手紙を戴きました。

 当然、そう言う身分の方ですから、下は下働きの女中(メイド)から、上は高貴な方々の意見が多く含まれている訳で、王都の近くに土地を確保し資金も出すから、工房を作らないかと言うお話があったぐらいです。


 まぁ、ゼルの意見で既にコンフォード領に作ってあるし、現在の砂漠クラゲの繁殖による供給量を考えれば、これ以上の工房は今の所は必要ない訳で。

 各地で砂漠クラゲの繁殖が始まれば、王都での工房も考えるけど、今のところはお断りしてある。

 工房があっても材料がなければ、工房は動かないってと言ってね。


「うむ、今度一度、妻の茶会の方に顔を出してくれたまえ。

 若い君との話は、妻にとっては色々と楽しいようだからな」

「うふふっ、お誘いありがとうございます。

 奥様のお話は楽しいだけでなく色々と勉強になりますので、是非とも参加させてくださればと思いますわ」


 今年は、トラー樹の実の種を使った、女性用痛み止め剤を出す予定があるので、その辺りを相談に乗って戴けたらと思っていたので、丁度良い機会と言える。

 一日二回までで、一回当たり一錠の服用だけど、主要薬効成分は二割しか使っていなかったりする。

 ほら、圧縮して取り扱いしやすいように錠剤にしたのは良いけど、あまり粒が小さすぎても手にし難いし、ある程度量が無いと効かないのではと言う誤解を受けないために、一定の大きさは必要な訳で、残り八割は優しさで出来ていたりする。

 まぁ冗談は置いておいて、前世の言う所のビタミン剤とか、アレの時に色々と身体に必要そうな物を練り込んである訳で、そう言う意味では優しさと言う言葉には嘘は無いです。


 これも一応は教会との共同開発品で、純利益の五パーセントを教会に渡す事になっており、逆に教会が独自ルートで作って販売する場合は、純利益の二パーセントが此方に入ってくる事になっている。

 ただ、これも問題があって、需要に対して供給が満たせそうもないんですよね。

 トラー樹の実の種一つで、数千回分の原料が取れると言っても、トラー樹の栽培そのものはまだ始めたばかりで、年間で確保できる実の数は千にも満たない。

 こればかりは時間を掛けて増やして行くしかないので仕方がない事だとは思う。

 だけど問題なのが、栽培に適した土地の魔素量と、肥料が特殊なため、その内に栽培量が頭打ちになる可能性が高いんですよね。








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