439.アン・リミテッド・●●●●・ワークス
不愉快と感じる内容も含まれておりますので、読み飛ばしても構いません。
春が来たよ〜♪
ふきのとう~♪
たらの芽~♪
早めのウド~♪
出ておいでよ〜♪
赤こごみ~♪
お手軽山菜のうるい~♪
行者にんにく~♪
せりが沢山~~♪
おっと発見、ヨ・モ・ギ〜〜♪
春と言ったら、恒例の山歩きですよぉ~。
と言っても、冬以外は年中山歩きしている気がする、と言う突っ込みは要りません。
季節には季節の山の恵みがあるんです。
それを味わわなくて何の季節ですか。
前世と違って娯楽の少ないこの世界、せめて食道楽くらいは、心行くまでさせて貰うつもり。
「そんな訳で、春の恵みのお裾分けに来ました」
「ゆうちゃんは、貴族になっても、領主になっても相変わらずよね」
「そりゃあ本人に自覚がありませんから、そうそう変わりませんよ」
「いや、少し変わった方が良い場合もあるわよ。
特にゆうちゃんの場合は」
そんな訳で、春の収穫を整理した後、お邪魔したのはライラさんの御宅。
ライラさんのお子さんであるマリアナちゃんも一才と数か月なので、だいぶ人を認識できるようになった様子。
ライラさんの言葉じゃないけど、領主業務で忙しくて、あまり顔を出せていないせいか、誰、このお姉ちゃんと言う表情が、ちょっぴし悲しい。
でも良いですよぉ、何度でも覚えて貰えば良いんですから。
「だから、仮にも貴族の令嬢が、小さい子のほっぺをハムハムしないのっ」
「いや、匂い付けをしようかと」
「ウチの子なんだから、そう言う事は駄目。
幾ら可愛がってもあげないからね」
「残念」
と、冗談は置いておいて、一通り普通に可愛がった後は、付いてきたジュリとエリシィーにマリアナちゃんのお世話を任せて、店舗側の客間にライラさんの叔母であるラフェルさんと移動。
今日、ライラさん宅に訪れたのは、お裾分けがてらに遊びに来たと言うのもあるけど、人生の先輩であるお二人に、ちょっと相談事があるため。
互いに少し雑談をした後、本題に入るのだけど……、正直相談し辛い内容だったりする。
それと言うのも。
「実は、知り合いの令嬢から、おサルさん対策をどうしたら良いかと相談を受けまして」
「……ぁぁ」
「……そぅ」
何がとは言わないし、誰がとは口にはしないけど、意味は通じたようだ。
少なくとも、野生動物を指している訳では無い、と言う事は理解してもらえた様子。
お互いデリケートな事だし、嫁入りして貴族になったラフェルさんはもちろん、貴族相手に商売をしているライラさんも、具体的な事は聞かないでくれるのは有り難い。
まぁ二人に言うまでもなく、今、マリアナちゃんの相手をしている二人組の事です。
前世が男だった事を思うと、色々と思う所はあるけど、愛しい嫁の願いと愛の結晶の為と受け入れた以上、そのための行為そのものはどうこう言う気はない。
正直、私がどうこう思う前に、二人に慣らされてしまったと言うのが本当の所だけど、愛のある関係である事には違いないので、私の男としてのプライド以外は問題はない。
……ただね、毎日のようにせがまれるのは、流石に此方が保たない。
二人にとって毎日ではないと言っても、相手をする私にとっては毎日に等しくなる訳で。
とにかく朝、眠いです。
疲労が抜けずに身体が怠くて重いです。
男の時と違って、色々と後始末が面倒臭いです。
ただ、二人が嫌いになったとかではなく、普通にイチャイチャを楽しんで、普通に寝る分には幾らでもと言えるくらいには、私も二人との時間は望んでいますよ。
と言うか、むしろそっちをメインにしたい。
でもね……。
「なんでも、一向に終わらないそうで、何回でも望まれるとか」
「……うらやま。いえ、それは大変かもしれませんね」
「ある意味贅沢な悩みよね」
ライラさん、ラフェルさんが口の濁したんですから、それに合わせてくださいよ。
あと、想像しているのとは違いますよ。
実際、ライラさんとラフェルさんが想像している事とは違うので仕方ない。
かと言って魔呪具の事は黙っていた方が良いだろうから、正直に話せないので、勘違いをされてもどうしようもないのだけどね。
陛下から戴いた魔呪具が、正常に動作している状態の物を調べた結果、基本的にあの魔呪具は装着者の魔力と血を元にして動いている。
おそらく血液に含まれるDNA情報と魔力に含まれる魂の情報を元に、種となるものを作っているのだろうけど、その工程と理論が全く分からない。
その辺りは魔法同様に、魔呪具なりの不思議仕様と言う事なのだろう。
他にも分からないのが、何故サイズと形状が彼処まで変わる必要がある?
血を残すためが目的の魔呪具と言うのであれば、動作していない状態の小指サイズでも問題はないはず。
とにかくどう言う理屈で、どうやって作っているのかとか、色々興味は尽きないけど、今はそこは関係ない。
魔力はともかく血は少量なので、それほど気にする必要はないのだけど、問題は動力源である魔力の方。
魔力の少ない普通の人間なら、多分、普通に終わるのだろうけど、魔導士であるジュリは勿論の事、エリシィーも魔力持ち。
つまり、ハイパワーなガソリン車が、タンクローリー並みのガソリンを積んでいるようなものなのよね。
うん、あの魔呪具は、はっきり言って欠陥品と言っていい。
私が、もしあの魔呪具に名前を付けるのなら、こう名付けただろう。
魔呪具:無限の精製(Unlimited Competitive Works)
名前から一発でそのヤバさが分かる。
おまけに、屋敷の人間にはどうやらバレているようで、……って、まぁ、ほぼ毎日シーツを念入りに洗っているし、特有の匂いもあるからね。
同じ家に住んでいる以上、アレだけしてバレない方がおかしいのだけど、とにかく、遠回しになんとかならないかなぁと、救援を求めた視線を送っても何故か知らん振りをされるんですよ。
寧ろ料理の材料に、色々と精力の付く材料が、使えと言わんばかりに目に付く場所に出されていたりするし。
購入希望食材リストにもね、もう露骨な物が色々と入っていたりするんですよ。
例を挙げるのなら、何時かのクラーケンの足の干物とか、なんとかトカゲの黒焼きとか。
そう言う状況を、仮想の相談者がいる者として話すのだけど。
「それは仕方ない事かと、ユゥーリィさんの仰るその方が貴族ならば、屋敷の者達は味方になる事はありません。
基本的に屋敷の使用人は、家に仕えます。
例え個人に仕えていたとしても、長い目で見て有益だと思えば、そちらを取るでしょう。
貴族に限らず、大きな家となれば、世継ぎを作る事は、何よりも優先される場合がありますから」
ラフェルさん曰く、大きな家程その傾向が強く、使用人にしろ家臣にしろ、自分達の老後や子供の世代になった時の事を考えたら、どうしても安定した職場を維持しようと考えるのは仕方ない話なのだとか。
うん、確かに職場の安泰を考えたら、分かる話しではある。
いつ病気や老衰で死ぬか分からないのに、後継がいないのでは不安でしょうしね。
それに、貴族であるらフェルさんに、貴族ってそう言うもんだって言われたら、確かにそうなんだけど、それでも前世の感覚を持つ私からしたら納得いかないと言うか。
「そう言えば叔母さん、新婚の夫婦が半年間、一歩も屋敷から出してもらえなかったって話を偶に聞くけど。
ほらそう言う時って、退屈凌ぎに大量に本を買ってくれるからね、此方としてはありがたい話なんだけど」
「私も一年と言う話も聞いた事があるわ。
他国の話で仲の悪い国同士が、戦争を止めて平和交渉の締結のための政略結婚で、一年以内に子供が出来れば平和の象徴、出来なければそれが神の意向だから再び戦争だって事になって。
両国の王子と姫は勿論、側付きも外部からの圧力が大変だったみたいよ」
驚愕の事実ですよっ!
この世界、私が思っていた以上にメンヘラ社会ですよっ!
……あっ、ごくごく一部の話で、普通はそこまで過激では無いと。
いや、それでも大概だと思いますよ。
ちなみに、その話題に上がった両国は、無事に平和交渉が締結したらしく、圧力から解放された二人は、心身ともに疲れ果てた後に本当の意味で互いに分かりあい、数年後に第二子、第三子も出来たとかなんとか。
ある意味、苦難を共にし、分かり合えた戦友とも言えるんでしょうね。
結局、愛のある相手なら、相手を傷つけない程度に毅然とした態度で、それとなく相手ヤル気を削ぐのが一番と諭されただけでした。
いえ、それでヤル気が削げる相手じゃないから問題なのに……。
そして愛があるだけに、問題なんです。




