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私、お嫁になんていきません【1000万PV突破】  作者: 歌○
第三章 〜新米当主編〜
322/1141

322.子供は生意気でも可愛いんですよね。叱る時は叱りますけど。





 初夏も終わりに近づき本格的な夏を迎えようとする季節になると、それなりに陽射しが強くなり、汗ばむ陽気ではあるけど、前世に住んで居たところと比べれば、日陰に入ったり風が吹けばそれなりに涼しいこの地域は非常に過ごしやすい気候だと思う。

 でも、いくら過ごしやすいと言っても暑いのがなくなる訳ではなく、当然ながらそう言う季節になると……。


「ふはぁ〜〜〜〜〜、なんだこれっ!

 すっげぇ〜〜っ、うまいぞっ!」

「そう、良かったわ。

 でも、早く食べないと溶けちゃうわよ」


 目の前で、本当に美味しそうにアイスパフェを食べる男の子は、ラードゥナルド王子で、カイル王太子殿下の嫡子。

 こう言った冷たいお菓子が、より美味しく感じるようになるんですよね。

 約束通り、王宮に来る度になるべく顔を出すようにしていると言っても、あのスカートめくり事件から、それほど時間は経ってはいない。

 最初は本当に来たのかとか、お前みたいなガサツな女は見た事ないとか、色々言っていたけど、見ての通り順調に餌付けが成功中。

 無論、短いながらも、ちゃんと約束通り遊んであげているよ。

 男の子のような遊びも、女の子とでもできる遊びとかを教えながらね。

 そして、本人はなんやかんや言いながらも、楽しみにしているみたいなのは、付人の方にも言われたし、先程、陛下の執務室でカイル殿下からも聞いている。


『君が子供好きって、本当みたいだね。

 当人の見た目が子供子供しているからかもしれないけど』


 とか言う陛下の失礼な言葉は軽く流して。

 あらためて王族である王子に、時間が許す程度で構わないから、気兼ねなく相手をしてやって欲しいと頼まれたので、これで王子がまた悪さをしたら、心置きなくお説教ができると言うもの。

 王子曰く私は【お説教婆あ】らしいけどね。

 お説教の話はともかくとして、こんな瑞々しく若いと言うかJCにすら見えないのに【婆あ】と言うのは、私が年寄りみたいな白髪だからと言ったので、あらためてお説教。

 【お説教】の称号は甘んじて受けるけど、人の外観でそう言う事を言うんじゃないとね。


『じゃあ内面なら良いのかよ』

『いいけど、でもその時はちゃんと覚悟しておかないと駄目ですよ。

 相手や言葉によって、本気で喧嘩を売る事になるし、傷つける事になる訳ですから、相手にも自分にもね』

『じゃあ、お前なんて化物だっ、……………と言うのは嘘で、ただそんな噂をしている奴が居ただけで、……うん、もう言わない』


 うん何かよく知らないけど、自己完結したみたい。

 実際、王子に言われたような事は、他の人間にも言われてはいるので、今更と言えば今更なので気にしない。

 王子もそんな私の噂を聞いた事を、よく考えずに口にしただけ何だと思う。

 まぁ、こんな幼い子に正面向かって言われたのは、ちょっとショックだったけど、自分でそう言う事は、言っては駄目だって分かってくれているみたいなら、それで問題無し。

 と言う訳で、今の所、こっちの王子とは仲良しかな。

 生意気な所はあるけど、ジュリの弟のベル君とはまた別の可愛さがある。

 まぁ向こうは王子より三つ年上の九歳だから、可愛さが違って当然だし、別の人間なのだから違って当たり前なんだよね。


「うむ、美味しかったぞ」

「はい、どういたしまして、今度はまた別のを持ってくるからね」


 お菓子は、王宮の厨房で監視の下、チャチャっと魔法を駆使して作った物。

 同時に王妃様達の分を幾つかは作ったけど、溶けると美味しくないので、氷の箱を魔法で作って入れておいた。

 なので直ぐに溶けると言う事はないと思うけど、無事に口に入ったら良いなぁと思う。

 例によって大量に作れと要求されたけど、溶けやすい物だから知らん。

 アイスの部分だけ大量に作って、同じく氷の箱の中に入れて来たから、後は勝手にして欲しい。


「この後は、またなんとかとか言う奴に会いに行くのか?」

「ん? ベル君のこと?」

「あ、ああ」

「今日はその予定はないかな、他の所も回らないといけないから」

「そ、そうか。

 お前は子供のくせに忙しいとか聞いているからな」


 なんと言うか以前に、思わずベル君の話が出ちゃって、それ以来ベル君を意識しちゃっているみたいで、その辺りが素直じゃなくて可愛いんだよねぇ。

 今度、ジュリの誕生日兼成人のお祝いをペルシア家でもやるため、私も招待されているから、其方には行くつもりではあるけどね。

 ベル君、勉強も鍛錬も大分頑張っているらしいから、将来、どんな男の子になるのか楽しみではあるんだよね♪

 そう言う意味では、目の前の王子も楽しみにしていたりする。

 ちょっと尊大な所と素直じゃない所が心配だけど、少しずつ良くなっている気がするし、何処かの変態馬鹿残念M王子みたいにならないよう祈るばかり。

 う〜ん、そろそろ、この心の中の呼称止めてあげても良いかなぁ?

 この間、二人に会った時に、王子が場を離れている時に従者のルーに……。


『シンフェリア様、真面目な話、殿下をどう思っておられるのでしょうか?

 率直なお気持ちを、簡潔なお言葉で』

『変態馬鹿残念M王子』


 ええ、当人がいないと思って、つい本音が出ちゃいましたよ。

 流石にMの意味は分からないだろうけど、他は十分に意味が通用する言葉な訳で……。

 王子の従者であるルーは、王子の自業自得なので仕方ないと仰ってくださったけど、……うん、背中が男泣きしていたかな。

 一応は、その後フォローを入れまくりはしたんですよ。

 最近は色々と真面になってきたし、面倒見の良い人だって事は比較的最初の方から分かってはいたって。

 普通に話している分には、それなりに楽しい時間だけど、……やっぱり、最初が最初だけにってね。

 まぁ見た目が見た目だけに、残念な部分があるギャップは笑える物があると言う意見は一致したけど、そこで王子が所要から帰ってきて時間切れだったかな。


『ん、待たせてすまないが、……人が居ない間になんの何の話をしていたのやら』

『いえ、王子が(黙って立っていれば)良い男になりましたと言う話です』

『そうですね、殿下が(底辺から)大変に成長されちゃと言う話には違いありませんし、少なくとも(あった事実のみで)不当な評価など何一つしていません』


 とりあえずあの日は、ルーと副音声が聞こえるほど、仲が良くなった事には違いない日ではあったかな。

 その後、何故か御機嫌だった王子を、憐憫の目で眺めていた事が気になったけどね。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




 城を出た後は忙しかったよ〜。

 化粧品のお店に顔を出して化粧教室の講義に、お店の子達への指導と帳簿チェック。

 今のところ売り上げも順調で、警備の人間を置いたので妙な嫌がらせも今の所は落ち着いてきている。

 ウチのお店はあくまで一般販向けなので、妙な横槍はそれ程無いから良いけど、偶に言って来る客もいるんですよね、自分専用の良い物を作れとか。

 ごく一部、他店からの妬みが酷かったから、主要製品である化粧水、日焼け止め、美白効果のあるケア用化粧水、の基本レシピは公開しているので、専用の人間を雇ってくださいと断っている。

 ウチのお店は、品質はもちろんの事だけど、何方かと言うと小瓶の魔導具による品質維持が最大の売り。

 極端な話、数日毎に作ったり、買いに行かないといけない手間を省いているだけの事。

 なので、一応は表立った妬みは減りはしたんですよ。

 基本レシピを公開されて、妬みを言うのは努力不足だと宣伝するような物ですからね。

 その代わり、無茶振りを言う客が増えたので、良かったのか悪かったのか。

 まぁ、あくまで公開したのは基本レシピだけで、そこからアレンジした物をウチは扱っているので、そこ迄文句を言われる筋合いはない。


「そういえば、会長、また調合を変えました?」

「ん? 何か問題があった?」

「いえ、以前よりも効果を実感できる、と言う事を仰るお客様が多いので」

「悪い評価は?」

「いえ、特には」

「特には?

 リーゼ、報告は具体的に言えるものは具体的に」

「いえ、以前の小瓶の意匠の物を売って欲しいとかの、通常の要望ばかりです」


 客からの、要望やクレームできるだけ記載しておくようには指示してあるので、気になったので聞いたけど、特に問題がないようなら良いか。

 一応、レシピは当初の物より変わって来てはいるけど、最近一番変わったのは、ポーションの薬液の研究で発見した副産物を利用している。

 ポーションとしては非常に低い効果しかない代わりに、効果の維持時間は長い配合。

 それを化粧用品用に研究し直した物を使っている。

 その結果、皮膚の健康状態をほんの僅かに回復させて、化粧水などの本来の効果を出し切れるようになったのよね。

 一応、店長であるリーゼには話しておくけど、他の子には内緒にするように言っておく、きちんとスキンケアをしていれば、さほど差のない程度なのに、魔法を使っている事ばかりに目がいってしまって、誇大評価されて無意味に騒がれかねないからね。


「まさに魔法と魔導具の暴力ですね」


 なるべくオープンな商売をしているはずなのに、この評価って、……解せぬ。


「それと、今度の店の定休日に、ちょっとした工事をやるから、立会をよろしくね」


 王都に三つにある私のお店に、地下熱を利用したエアコンの工事をする予定。

 エアコン魔導具は其れほど魔力は消費しないけど、利便性を求めて戦災級の魔石五つを一つにして魔法石化を施し、魔力の貯蔵用の魔法陣を刻んだ物に魔力を一杯にしてやれば半月は保つ計算。

 魔力の補充は、魔物討伐騎士団の方々が御協力してくださるとの事。

 毎月、女性隊員様に化粧品三点セットを一定量と、甘味のお店から騎士団に月に数度甘味の付け届けをする事を条件に、快く引き受けてくださったけど、……ハッキリ言って、ヴァルト様の御好意だと思っている。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




 王都のお店にエアコンの工事をして半月後、何故か陛下に呼び出され、お叱りのお言葉を戴く事になった。


「君ね、なんであんな良い物を黙っていたの?

 調べさせた所によると、少し前から、君の屋敷でも使っているみたいだしね」


 特に隠してはいないけど、誰が漏らしたのか、それとも出入りしている業者なのかは知らないけど、一度調べておかないと。

 でも、門横の詰所にもエアコンを設置してはあるから、漏れる以前の問題か。

 それはともかくとして……。


「新しい技術ですから、最低一年を通して様子を見てみませんと、どの様な問題が内在しているのか分かりません。

 その様な不確定の物を、王城に置く事など恐れ多くて考えれませんでしたので」


 この時期だと、風呂上がりとか涼みたい気持ちも分りはするんですけどね。

 実際、我が家では暑くなってゆくにつれて、風呂上りの脱衣所の占領時間が長くなっていますから、居間や台所への増設も検討中。


「ちなみに、大きな設備向けの試験は、この技術の移譲先でもあるドルク様の新しい建物で行う事になっております」

「くっ、先を越されたか」


 大体、陛下や王妃様達の性格を考えたら、脱衣所だけで終わる訳がなく、全館空調管理をしたがるに決まっています。

 昨年、お風呂場の件を発端に、切替機(スイッチ)と魔力貯蔵用魔法石による照明の魔導具への魔力供給の改装で、アレだけお金を使っているのだから、今年もとなると、流石に財務局がキレると思いますよ。

 陛下の許可さえあれば、前回見せてもらった図面の記憶をもとに、王宮と後宮の大雑把な部材量は出せると思いますが……。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

【コンフォード家、執務室】




 私の貴族後見人であるコンフォード侯爵家に呼び出され、直ぐにお伺いしたのだけど、そこで見せて戴いた手紙の内容に本気で頭が痛くなる。


「……ドルク様、これって」

「言うでない。

 コレも臣下の務めではあるし、古き血筋の力と結束を世に示すためだ」



 ///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


 一定以上の広さを持つ屋敷に、以下の魔導具の設置する事を禁じる

    魔導具:空気調整器具(エアコン)

    対象広さ:●■▲♦︎


            シンフォニア王国、国王

             ジュードリア・フォル・シンフォニア


 ///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////



 なんと言うか、非常に意味不明なお達しが国から出たようです。

 古き血筋の五公爵七侯爵改め古き血筋の五公爵六侯爵に、こんな内容が回状されたみたいで、要はお前達も付けたかったら、王城分の改装費を出せと。

 実際にはちゃんと装飾された、長い文章で書かれてはいるのだけど、余分な言葉を極力削り取って内容を簡潔にすると、こんな感じの文章になる。

 名目状は、他国の人間も大勢出入りする王城内に、国の力と財力を見せつけるためと言う事らしいけど、よく財務局や他の部署がこんな暴挙を許したと思う。

 ……遠回しに数年に渡って税金を安くしてくれるから、結果的には得するように出来ており、古き血筋の五公爵六侯爵は私のおかげで、それくらいの金を余裕で出せるはずだと知っていて言ってきているので、これでも比較的穏便な手段だと。

 そして、涼しい夏を過ごしたいのは、城内で働く人達の総意に近い懇願だから、王城内で色々と優遇が効くようになるし、此処までやっているからこそ、国に優遇されているのだと他の貴族に知らしめる事が出来るので、決して【大人気ない】とか口にするなと。

 それって、大人気ないと言ってますよね、ドルク様。


「だから言うなと言うのに」


 それで、この書類の束は?

 ……地下に埋没する部分の制作と工事の依頼と。

 配管と送風口の部分の魔導具は、コンフォード家の魔導具師と言うか、ほぼ魔導具師ギルドでやるのは分かるのですが、何故かコンフォード家を除いても十家分もありますよ。

 別に一定以上深ければ、後は時間を掛けて広く土地を取れば、あそこ迄深く掘る必要はないと、以前に説明したと思いますが。

 ……まともにやったら、それだけで年を跨ぐ工事になる上に、その間は景観を損なう事になるし、なにより待っていられないと。

 大きな屋敷ですから工期も掛かって当然ですよね、ならば魔導士を雇っては?

 ……それでも一月は掛かるし、まだそこまで長期間魔導士を土木作業に従事させる事がまだまだ世間体的に拙く、春まで使ってみて問題がなければ、【土】属性を持つ負傷した退役魔導士を、それまでに確保して使って行くつもりだと。


「それって、魔導具に不具合があれば、全部、私が対応しないといけない事になりかねないと思うんですけど」

「そうとも言うな」


 そんな、『そう言えばそんな事を言っていた様な気がするなぁ』みたいな顔で鬼な事を言わないでください。

 試用段階だって言ったのに、……酷い。

 ……いえ、例の件でお世話になっていますからやりますけど、これ以上試用段階で増やさないでくださいね。

 約束ですよ。





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