321.美味しい物も甘い物も好き、でも甘く無い事もあるんです。
美味しい物が好き。
ごく普通の事だし、これが嫌いという人はまずいない。
でもウチの子達曰く、私は食い意地が張っているだの、意地汚いだのと大変不満な評価をされている。
別に何処かの王侯貴族のように、美食に拘っている訳でもなく、ごく普通のレベルでの美味しい食べ物で十分に満足しているし、大食艦…もとい大食漢とう訳ではない。
むしろ小食と言っていい程で、食べたいけど小柄な身体がそれを許してくれないのだから仕方がない。
『あまり人が食べないものを食べるからでしょう』
『魔物を見て、お肉と言う人は、普通はいませんわよ』
『カエルや蛇の魔物も平気で食べるのは驚いたよなぁ。美味かったけど』
『解体すれば、何の肉か分からないけど、普通、女の子ってそう言うのは引くものだと思っていたな、セレナとラキアは平気で食べてたけど』
『五月蝿いギモル。いつぞやも『ほや』だっけ? 何か海の変なの調理していたし』
『生魚も平気で食べるよね』
『いやいや、多くの食材を見てきた私ですが、此方でお世話になって、勉強の毎日ですね』
『知らない食材多いですので、勉強になります』
と、美味しい美味しいと平気で食べておいて、こう言う事を平気で言うウチの子達はどうなのかと思ってしまうけど、食べている時の美味しそうな笑顔を見ると、どうでも良くなってしまうからしかたがない。
それに我が家は他所より多くお肉が食卓に上がるけど、それは単純に無料で手に入るからであって、鶏や豚肉や鰐肉は、なんやかんや言っても贅沢品で、牛なんて貴族や裕福層でもお金がある家ぐらい。
『『『『『いや、魔物の肉を普通に買ったら、とんでもない金額だから』』』』』
でも我が家では、山で獲ってきた無料のお肉です。
皮を剥いだり捌いたりと手間は掛かるけど、無料です。
美味しくて、無料のお肉、最強です。
そしてそんなお肉や様々な食材を、より美味しくしてくれるのが、私のソウルフードとも言える、醤油やお味噌などの前世から製法を持ち込んだ調味料の数々。
醤油とお味噌は今年から販売を初めてはいるけど、これは最初はドルク様の商会である【女神の翼】で、特に醤油に関しては、ある荘園と専属契約して作って貰っていたのだけど、商会【森の滴】が私に移譲された際に、一緒になって移譲され、製造と管理と販売に関してはある家の商会に委任している。
黙っていてもお金が入る美味しくて楽なシステムではあるのだけど、それに甘んじている訳には行かないので、幾つもの種類の醤油や味噌も試験的に作ってみたんだよね。
それと言うのも屋敷と言う拠点が出来たため、専用の発酵小屋を手に入れれたからこそできる事。
醤油一つにしたって、大豆と塩だけでなく、小麦を混ぜたものや、大豆を使わずに小麦と塩だけで作ったものもあるし、配合や発酵の違いでも味や風味はかなり変わってくるし、味噌だまりから作る醤油もあるので様々。
他にも魚醤や肉醤があるけど、魔物の肉を使った肉醤はかなり風味豊かで甘味のある醤油だけど、流石に量がないので販売には適さない。
駄目元でやってみただけだけど、今まで魔毒のため捨てていた内臓でも、発酵させると毒素が抜ける事が発見できたのは幸運だったわね。
そこの四人組、毒のある物で、食べ物を作ろうとする発想がおかしいとか言わない。
もともと特殊な発酵させて薬品にするのは、昔からあった事なんだから、それと同じなのっ!
「だいたい、こうやって開発出来た物が、誰かさん達の家の商会で売られる訳ですからね」
「「「「ははーーーっ」」」」
そこ、今更大袈裟に恭しく頭を下げないの。
そう言うつもりじゃないんだから。
もうっ。
「そう言えばまだ先の話だけど、貴方達、夏はどうするの?
お休みはあげるから、いつも通り実家に帰っても良いわよ」
「いや、俺等、もう家を完全に出た事になっているから」
「こうしてユゥーリィの家臣になったって事は、そう言う事だしね」
「帰ったところで、何しに来たと言われるのが目に見えているな」
「お客様扱いされるのもね。
でも、なんだかんだと甘やかしてくれるだろうけど、今まで通りという訳には流石にね」
なにより、私の護衛を放って、長期の休みなんて取れないとの事。
そこまで深く考えなくても良いのにと思いつつも、貴族と言うのはそう言う物だから仕方がないか。
「そう、でも一度挨拶はしておきたいから、手紙を出すけど貴方達の分も一緒に出しておいてあげるから、書いておきなさい」
「「「「げっ!」」」」
げっ、ってなによ、げって。
何しに向かうのかって、そりゃあ、大事な息子さんや娘さん達をこうして預かっている訳だし。
……シンフェリア家に士官したのだから、そう言うのは関係ないし、雇った私から訪問するのは不味く、そう言うのは格下の家が挨拶に来るものだと。
あの、家格としては、新興貴族である私の方が下なのですけど。
……三家の商会が立ち直りつつあるのは、私のお陰だから関係なく、いわば私の家に借りと言う名の借金しているようなものだと。
まぁ値段の上限設定はしてあるとは言え、貴族相手に万能の調味料として大分儲けているみたいですからね。
でも仕事の話もありますから、手紙ではなく一度会って細かな打ち合わせをしたいのもありますから。
……それなら呼びつければいい相手だと。
流石にそう言う訳には……、仮にも数百年の歴史を持つ家を相手に新興貴族である私がそんな真似をしたら、他からのやっかみの原因にもなりますから。
「でも、そこまで言うのであれば、わざわざ挨拶にしに行く事は諦めましょう」
「「「「ふぅ〜……」」」」
「ではプシュケ、夏の数日、皆んなと観光に行くから貴方も付いて来なさい。
セバスは申し訳ないけどお留守番をお願いできるかしら?」
「どうか留守はお任せくださいませ」
「プシュケは宿の手配をよろしく、流石にこれだけの人数となると、いきなりは厳しでしょうからね」
「畏まりました。それで何方へ」
「無論、この子達の家のある街にね」
なんか卑怯だの横暴だの言っているけど知らん。
私はあくまで観光に行くだけだし、貴方達は私達の護衛なので文句は聞かない。
無論、アドル達が言うような関係なら、向こうから顔を出すだろうし、散歩と言って家の前に行ってもよし。
前もって観光に行く事は伝えておくので、そこは上手い事やってくれると信じる。
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かちゃかちゃ。
自室で、かなり大きな物体を相手に格闘中。
水の魔法石と氷の魔法石を使った魔導具と、水の魔法石と氷の魔法石と風の魔法石を使った魔導具。
前世で言うのなら製氷機と冷蔵庫と呼ばれるものに近い。
「やっぱり消費型の魔法石と、魔力の供給型のハイブリットが一番効率が良いのかな」
一時期は諦めた冷蔵庫の魔導具なんだけど、エアコンの魔導具に使ったアルミの放射板が沢山ついた部品を作った時に、これ、もしかすると使えるんじゃないかなと再挑戦。
水の魔法石で水流を作り、風の魔法石で風を作り、配管の中の液体を氷の魔法石で冷却する仕組み。
繁殖している魔物の魔石だけで作った、消費型の魔法石だけだと消耗が激しいので、魔法石に貯めた魔力を使って消耗を減らす仕組み。
結局、魔導具で各属性に変換させると、その時に魔力を多く使うため、その属性変換のみを消費型の魔法石に担わせる感じかな。
部品が増える事にはなるものの、それぞれ単一機能に特化してやれば負担が少なくなるし、その特化も汎用性が利くから我ながらよく思い付いたと思う。
作る際に手間は掛かるけど、只管効率の悪いままその対策に魔石の自動供給装置を作るよりも、魔力持ちがいるのであれば、此方の方が使い勝手がいいと思う。
ちなみに氷の魔法石だけど、砂漠クラゲの亜種である山クラゲの親戚の氷雪クラゲを使った物と、雪山に生息する氷壁大蜥蜴から作った物があり、何方もこの冬から、魔物の領域ギリギリの雪山の洞窟の中で実験的に繁殖中。
氷壁大蜥蜴の方が魔法石の質も良いし繁殖力もそれなりにあるんだけど、飼育の楽さや安全性は、圧倒的に氷雪クラゲの方に軍配があがるので、多分氷雪クラゲにすると思う。
氷壁大蜥蜴は壁はおろか天井にも張り付くので危険が多いと言うのもあるけど、なにより食費が掛かる上に、使えるのは魔法石と革だけで、肉は毒こそ無い物の苦くて食べられない。
その点、氷雪クラゲは捨てるところ無しの優れもの。
何方を繁殖させるにしろ、寒い地域でないと繁殖は無理そうなのが欠点。
「冷凍庫は流石に断念せざる終えなかったけど、自動製氷機が出来たのは大きいかな」
大きな箱は冷凍庫にしようとすると、氷の魔法石の消耗が激しく常時使うには厳しいと言わざるを得なかった。
そこで、どれ位なら実用的かなぁと色々試してみた結果、結構小さくて、こんなのじゃ、氷しか作れないよと思う程に小さな物になってしまったので、ならば一層のこと氷を作るための製氷機を作ろうと発想を転換。
冷蔵庫の魔導具に、更に状態維持の魔法を掛けて、その上に製氷機の魔導具を乗せて、出来た氷は状態維持の魔法と、それなりに冷えている冷蔵庫によって氷を溶かしにくいようにする仕掛け。
しかも出来た氷は、白い氷じゃなくて、泡も何も入っていない透明で綺麗な氷なんだよね。
「今年の夏は、氷フェアで丸儲けかな」
そう言う訳で、作っているのは業務用サイズの大型の冷蔵庫と、自動製氷機をそれぞれ三台。
屋敷用に一台と、王都の甘味店用に二台ずつ。
氷の魔法石の繁殖は始めたばかりなので、今の所はこの台数が限界。
来年くらいには、陛下やドルク様の屋敷分くらいは回せるだろうけど、それもこれからの繁殖状況次第なので、なんとも言えない。
当分は、増やす事が最優先のためと言って断るつもり。
「そうそう、忘れる所だった。
かき氷機も作っておかないとね」
氷が自由に使えれば、私が氷を作りに行かなくてもアイスクリームも作れるようになるし、地下の氷室は倉庫として使えるかな。
アイスクリームは、現在男性向けの甘味店でしか出しておらず、男性が気兼ねなく入れるようにした中二階の建物の下の部分は、半地下の倉庫兼氷室になっている。
私が向こうに顔を出す度に、大量に氷を作っておくんだけど、やっぱり排水とか考えると無理が出てきたので、ちょうど良かった。
あの子達は良い鍛錬になると言うけど、あんまり筋肉ムキムキなってもらっても暑苦しいしね。
労働筋だから、言うほど見苦しくは無いのだけど、遣り過ぎると骨の成長の妨げになるから。
「あっ、ついでに足踏み式のアイスクリーマーも作っちゃおっかな。
私ならチャチャっと魔法で作れちゃうけど、魔法が使えないと筋力と体力に頼らないといけないからね、少しでも楽にしてあげないと」
うん……、こんな調子で器具を作っていたら、倉庫は直ぐに一杯になるかも。
よし、そう言う事を考えるのは後回しっ!
まずはアイスやかき氷を使ったレシピも書いておかないといけないし、他の氷菓子も研究しないと。
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そして誕生日には少し早かったけど、エリシィーより少しだけ早いジュリの誕生日の前の休息日、練りに練ったプランを実行した。
ええ、昨日の昼間は本当に楽しかった。
山中で見つけた綺麗で壮大な滝の周りを散歩をし、ルシードの港街をゆっくりと観光しながら、地元のお菓子を食べてお茶をしたり、可愛らしい小物屋さんを一緒に回り。
ついでに回ってみた装飾品店も綺麗だの何だの騒ぎながらも、勧めてはみたけど良い返事は貰えなかったのは残念。
だけど、地元の人に教えてもらった夕日の綺麗な景色が見えると言う高台は、思い出に残る光景だと思う。
なにせ湾と海と港街が、同時に見下ろせる最高の場所だったからね。
天気が良いのは、単純に運が良かったのだと思うけど、雨だったら雨だったで、天気の良い地域に空間移動で移動していただけの事。
初っ端で快晴だったのは普段の行いのおかげかもしれない。
ただ、失敗したなぁと言う事も、全く無かった訳じゃないんですよね。
しかも致命的な……。
『そう、エリシィーさんも一緒なんですね。
いえユウさんが選んだなら、それで良いですけど』
『私もユゥーリィが選んだなら、それで楽しませてもらうだけ。
さぁ、行こう』
いくら公平にと思っても、誕生日のお祝いのデートまで公平にするのは間違いです。
手間と時間は掛かっても、それぞれのちゃんと別々にやるべきだと、夜に二人掛かりでもって、文字通り身と魂に刻まれましたよ。
『うひゃあっ、ゃ、もう、かんべん、はぁははぁ…して』
『三人が良いんでしょう?』
『ええ、記念日で三人が、ですわよね?』
擽りごっこと、女の子同士のスキンシップでね。
ええ、本気で懲りる程に……。




