315.騒がしい家人と私の想い。何時までもクヨクヨしていられません。
私の策略によって、歴史あるオルミリアナ侯爵家を凋落させ、その一族に関わる人達を路頭に迷わせる事になってしまった事について、余分な事を考えそうなので、今日は作業に没頭してみる。
とは言っても、お仕事とは関係ない趣味の作業。
どんな物かと言うと、このお屋敷を貰ってからだと、門扉の所に待機小屋を作ったりとかのちょっとした作業の物もあれば、私以外の人だと魔法が使えないので、携帯竃の魔導具はもちろんの事、ミキサーや攪拌器などの台所用品。
しかも屋上の設備室にある魔力貯蔵魔法石から魔力をコンセントのように接続して使えるようにしたり。
他にもペンペン鳥の羽と魔法石を使った、掃除機とかを作ってみたりとか。
まぁ半分以上、エリシィーが楽ができるようにと言う理由なんだけどね。
ただ、他にも何か不便な事な〜〜い、と聞く私にエリシィーは呆れ顔で……。
『ここまでされて、私に他に何を求めろと言うの?』
と、チクッと言われたのだけど、前世の便利さを知っていると、魔法の使えないこの世界の人達は、大分苦労が多いとは思う。
いえ、それが世間の一般常識で、私が言っている事が、ヘンテコだって事は自覚はしているんですけどね。
「今度は何をしてるの?」
「うん、ちょっと快適設備の実験を兼ねて」
そんな訳で、エリシィーがまた自分のために何か作り出すのでは無いかと心配してきたけど、今回はほぼ全員が関わる共有設備。
春が終わり、これから暑い季節がやってくる。
と言っても、この辺りの気候は温暖なので、暑くなると言っても精々が三十度半ばくらいの気温だし、湿気もそこまで高くは無いので、窓を開ければ涼しい風が流れ込んでくるし、日陰にいれば涼を取れる。
もちろん、それは前世の高温多湿の気候の上にヒートアイランド現象を引き起こしている真夏のビル街の暑さに比べたらの話。
我慢できなくない暑さではあっても、暑くないと言えば嘘になるし、暑い場所は暑い訳で……。
『ユゥーリィーばっかり狡い』
毎夏、魔法で一人で涼んでいる私に、セレナ達がブゥブゥ言ってきたりする。
でもそこはそこ、魔導士の特権だし、セレナとラキアも本気で言っている訳では無いので一種のコミュニケーションなので私も気にしてはいなかったのよね。
でも、そんな私の考えを変えるような事件が先日あった。
『あちぃ〜〜』
『だから、言ったろ、熱すぎるって』
馬鹿二人が、お風呂の温度を高く入れて、それでも我慢大会のノリで熱めのお風呂に入っていたため、湯当たりで下着姿で居間で伸びており。
まぁナニがとは言わないけど、横からこんにちわ状態。
ええ、その姿にラキアとセレナが激怒。
『この馬鹿おにぃ〜〜〜〜〜っ!!』
バシャーーン!!
『だらしないにも程があるわよ〜〜〜っ!!』
バシャーーン!!
人に魔法で桶に二杯分の氷水を作らせて、二人に頭からぶっかけてましたよ。
そのあと女性陣に怒られ、騒ぎに飛んできたセバスに懇々とお説教を受けてましたけど。
そんな訳で、もう二度とそう言う事が無いように、屋敷の裏手に直径一メートルくらいの穴を魔法で掘る。
掘った土は、力場魔法で横に置いておくけど、崩れて来ないように気を付けないと、……何せ深さ百五十メートル程もあるからね。
むろん穴の縁の方も崩れないように、魔法で加工はしてあるけど、とっとと済ませてしまうに越した事はない。
アルミ製の肉厚の太めのパイプ。
それを別に作ってある先端部に繋ぎ、穴の中に入れて行くけど、パイプの端がきたら、別のパイプを魔法で繋いで、その繰り返し。
最終的には十本の太めのパイプと、二本の極太のパイプが地中から出た状態で、穴を埋め戻す。
地中に十メートル以下は年間を通して温度が一定なので、それを利用する前世でもあるエコな空調システム。
魔法でならともかく、魔導具では色々な制限があるので一番効率の良さそうな、このシステムを採用。
氷を作ったりするのは魔法石を大分消費するけど、軽い水流を作るくらいは、魔力さえ供給されていれば、魔法石は殆ど消耗しないからね。
地中で冷やされた、または温められた液体の通った管に風を当てれば、エアコンの出来上がり。
「脱衣所に、夏は涼しく、冬は暖かい空気が流れてきたら、この間みたいな事はないでしょうし、皆んなも快適でしょ」
「……お風呂に入れるだけでも贅沢なのに」
「人は贅沢に慣れると、より高い贅沢を求めちゃうものだからね。
でも、贅沢と言ってもお金は殆ど掛かっていないけどね」
この世界のアルミは値上がりしたと言ってもまだまだ安いし、原料で購入しているので値段など知れている。
使う魔法石は、砂漠クラゲの魔石を数十個を実験を兼ねて一つに加工した物。
風を起こす魔法石と魔法の素材も、ペンペン鳥の羽根や魔石を数個を一つの魔法石に加工した物等で、いずれも魔物の繁殖で手に入る物なので、無料当然の物ばかり。
地中からパイプが剥き出しのところも、石や煉瓦を積むけど、それも自作だからね。
魔法を使ったDIYって、マジ万能♪
「私は元々魔法でやっていたけど、皆んなも使えたら便利だからね」
「ユゥーリィと一緒にいると涼しかったり暖かったりしたから、やっぱりそう言う事だったんだ」
研究所の露天温泉はともかくとして、この屋敷はお風呂は男女共同だから、これであの二人がまた馬鹿をやっても、前回みたいな場面に出会う事は無くなるはず。
涼みたくて、外であんな格好をしていた訳だからね。
問題はここからで、配管の中は水ではなく、冬の凍結防止に精製した油を使うから、漏れないようにしないといけない。
曲がりに強い銅管で配管し、フィンが沢山付いたエアコン本体に接続して、配管を返すように接続。
この辺りも歪みが出来ても良いように、前世のエアコンと同じようにネジと銅製のパッキンを使用。
何か衝撃があっても此処で漏れるようにね。
とりあえず脱衣所に居間に台所と食堂と広間と玄関。
後日改めて離れの屋敷も繋げてみるとして、予備のための未使用の管の部分は封印を施しておく。
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「これ、夏に使ったらマジ天国」
「冬は暖かいってマジ?」
「よし、今度こそ、我慢勝負に勝つぞ」
「ふん、超重量級の獲物を持ち運ぶ、我慢強い俺に勝てる訳ないだろ」
……うん、この二人全然懲りていない。
まぁ男の子なんて、こう言うものだし、くだらない事に盛り上がるのは理解できるので、放っておきたいのだけど、一応は女の子達が一緒に住んでいるのだから、パオ〜〜ンよこんにちわは勘弁してもらいたい。
前世が男の記憶を持つ私は、そんな物が見えたって気にしないけど、態々見たい物でもない。
「二人とも、自室と脱衣所以外であんな格好をしていたら、次は氷漬けにするからね」
ビシッ!!
ええ、警告を兼ねて【威 圧】でもって、二人を脅しておきますよ。
我が家には、その二人に付いている物で嫌な思いをしている人間が二人もいる訳ですから、その事を知らなくとも、常識的に配慮してもらいたい。
「セバス、その二人が気絶から目を覚ましたら、もう一度言い聞かせておいて」
「畏まりました」
鍛錬後の上半身裸くらいは目を瞑りますけど、そんなくだらない事をさせるために、快適にしている訳じゃないんだからね。
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「と、言う事がありまして、どう思います?」
「ごめん、ゆうちゃん最初から説明して」
ライラさんの所に新刊を持って来がてらに、昨日あった事を話すのだけど、どうやら心の中の高速圧縮言語はライラさんに通じなかったみたいなので、あらためて普通に説明。
「ふふふっ、成人しているとは言っても、まだまだ男の子と言える歳だしね」
笑い事ではあるのは確かなんだけど、笑い事にするには傷ついている子がいるから勘弁してもらいたい。
「そのうち大人しくなるわよ」
「早くそうなる事を祈るのみなんですけど、こう言う馬鹿をやれる時期も大切でもあるって言うのは分かってはいるんですけどね」
「そうね、小さく縮みこまった男と言うのも、つまらないものね」
馬鹿をやって、沢山の事を経験して、失敗して、大きくなるのが、ああ言う男の子達の特権ですからね。
分かるは分かるんですよ。
実際、二人より一つ年上のヴィーとジッタもそんな感じですし、残念王子もあれほど馬鹿な事をやっておいて、この一年半で信じられない程大人の男性になってきた。
だから、今度はアドル達の番だって事も。
「ゆうちゃんも大変ね、皆んなのお母さん役」
「……私、一番年下なんですけど」
中身の年齢を言えば、セバスの次の年長者で、役割としてはお父さんになるんだけど、それは心の棚の上に置いておく。
「でもまぁ似たような物なんじゃない?
親も当主もさ、目の余るところは注意をして、それとなく導きながら後は本人達を見守る所とかさ。
そんな簡単な事じゃないと思うけど、それでもゆうちゃんは、あの子達を家族として愛しているんじゃないかな。
叱り、教え、導いて、そして守る。
立派な家長をしていると思うわよ。
大変だとは思うけど、嬉しい事や楽しい事も多いでしょう?」
確かにライラさんの言うとおり。
そんな簡単な物じゃないけど、似たような物と言えば似たような物。
前世の会社と違って、この世界の貴族の家人達は文字通り家族に近い。
正真正銘、命と一生を私に預けてくれているから。
皆んな、そのつもりだからこそ、肩の力を抜いて寛いでくれているのだと思う。
本当の自分を曝け出し、時にはあんな馬鹿を見せてしまえるのだと。
そして……。
「そうですね、そうでした」
「何か知らないけど、何か吹っ切れたようね」
守りたいからこそ、今回は頑張ったんだ。
オルミリアナ卿は嫌いな天辺禿げだったけど、それでも出来れば救いがあるように、沢山考えて陛下達も巻き込んでまで選んだ道。
私が狙われる事で、皆んなに危険が及ぶ事が嫌だったから。
だから、私は覚悟を決めたはず。
元凶であるオルミリアナ卿を追い落とすって。
まぁ、彼処まで見事に自滅するとは思わなかったけどね。
多くの人を不幸にした私の罪業は消える物でもないし、一生背負っていかないといけない罪。
でも、それは守りたいからこそ。
貴族の義務を放り出し、全てを捨ててきた私の家族になってくれた人達を守るため。
なら、私は胸を張らないといけない。
例え、それが虚勢であろうとも、家族を守った事に胸を張らなければない。
そうでなければ、皆んなを不安にさせてしまうから、皆んなに笑っていて欲しいからこそ、家長である私が笑っていなくてはいけない。
うん、私は我が儘で自分勝手な人間だから、私は私と私の家族のためにオルミリアナ卿に退場してもらった。
事の大小はどうあれ、それだけの事でしかない。
少なくとも守ったモノに誇りを持たなければ、踏みつけて来た人達に申し訳ない。
だから私はいつも通り笑えば良い。
踏みつけて来た人達の想いと嘆きの上で、成り立っている事をしっかりと踏みしめながら。




