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私、お嫁になんていきません【1000万PV突破】  作者: 歌○
第三章 〜新米当主編〜
312/1127

312.聖職者だって人間です。汚い面くらいあります。





 シンフォニア王国王太子。

【カーライル・フォル・シンフォニア】視点:




 実年齢の割に小さな身体の白髪の少女の背中を見届けた後、あらためて俺は円卓に並ぶ老人どもを見下ろす。

 多少予定と違った所はあったが、概ね予定通りと言っていいだろう。

 あの少女が指し示した道の仕上げだ。

 聖オルミリアナ教に、あらためて我が国の楔を打つべき時だ。

 本来の楔の役割を果たす一族が、役に立たなくなったからな。


「さて諸君、私が何を言いたいか分かるな?」

「そ、それは……」

「し、しかし今の時期は慎重に……」

「せめて十日前であれば……」


 慌てふためくのも仕方なかろう。

 なにせ枢機卿時代だったとはいえ、現聖オルミリアナ教大司教が、陛下が署名した契約書を改竄した国賊なのだからな。

 このまま事が明るみに出れば、前代未聞の事件となるだろう。

 だが、事の大小はともかく、大司教の行いが問題になった事例が過去に全くなかった訳ではないし、そのための決め事が教会内には存在する以上、それを成せば良いだけの話。


「選ぶが良い、教会として前代未聞の大罪人を出しそれを世に知らしめるのか。

 それとも己が大司教になれる可能性を捨ててでも、それを回避する道を選ぶかを」


 大司教の解任決議。

 ほぼ形だけの形骸化した決まりであり、大抵はその前に内々で処理されてきた事。

 だが今回は問題が教会の外に漏れてしまっているため、この決議でもって大司教を解任するしか、教会が『大司教が国賊として捕らえられた』と言う事件を回避する手段はない。

 だがこの決議は、容易に決議をさせないための安全処置がなされている。

 解任に賛同した枢機卿は、大司教になれる事はない。

 それだけの覚悟をもって成されなければならない決議、と言う名目でもってな

 自分の目の前に大司教の可能性があるのに、その可能性を自ら捨てねばならぬ行為。

 権力欲に憑かれたに者には、なかなか決断できる事ではあるまい。


噂を聞くに(・・・・・)、今直ぐに教会に捜査が入れられるのは、教会にとっても不味いのではないのかね?

 子爵が齎した契約が、オルミリアナ侯爵家が教会に技術供与をしている事になっている上に、本来の契約以上の利益還元された差額の消え先、この中にもそれを追求されては不味い者もおろう」


 何人かは、既に証拠が揃っている上、こちらの手の者と化している者とかな。

 まぁ取引で目を瞑る事にはなっているが、外部からの捜査では証拠が掴めなかった者もこの中にはそれなりにいる。

 だが、今回の件で教会の内部い捜査が入るとなれば、大司教になる夢を掴むどころではなくなるだろう。


「それと子爵だが、昨年から何度も何処かの教徒に命を狙われると言う事件があった。

 幾つかは証拠を掴む事は成功してはいるが、この際、そちらも調べても構わないのだがな」


 狂信者共を使って、誰かを消そうとしたり脅しを嗾けたりするのは、確かに知らぬ存ぜぬで、信者が勝手にやった事だと言い訳もできよう。

 だが狂信者共を使う手段は、制御の出来ない危険な代物。

 その辺りもよく理解できずに安易に使ってしまい、その性質上、狂信者達のの動きを止めようと思えば、少々派手になろうとも、狂信者共を説得して回らなければ止めらるものではない。

 その件で、オルミリアナは迂闊な手だったと悔いているかもしれんが、事の重大さはオルミリアナだけで収まる問題ではない。

 教会が狂信者達を使っていた、と言う確たる証拠となってしまう。

 そんな理由で、教会に捜査の手が入るとなれば、かなり多くの者の首が飛ぶ事になるだろうし、他にも明るみに出てはいけない事まで出て来てしまう。

 こうも不祥事が立て続けでは、教会の求心力が地に落ちかるのは、目に見えている。


「今一度、選ばせてやろう。

 これ等の教会の醜態を、我が国の胸の内に収めて貰う事を願うか。

 それとも大罪人と共に滅びの道を歩むかをな」


 もっとも、選ばせると言ってはいるが、答えなど聞くまでもない事。

 所詮、神の信徒だの偉そうな事を言っていようが、我等と同じ地面を這う小さな人間でしかない。

 己と、己の守りたいモノを守るのが精一杯の人間でしかな。

 私も……。

 あの少女も……。

 そしてこいつ等もな。

 幾ら力や権力を持とうとも、その事を忘れては、生き残る事などできはしない。

 魔物の影に怯えながらも、必死に生き延びて行くしかない哀れな生き物。

 それが我々人と言う種だ。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

【ユゥーリィ・ノベル・シンフェリア】視点:




「なるほど、これが魔導具を作る魔導具ですか」

「はい、今、試してて戴いたように蓋をしてから魔力を込め、填め込まれた光石が灯れば完成です」


 教会の枢機卿を集めたプレゼンから半月後、私は契約通りに初期納入品の準備を済ませ、こうして魔導具の説明を行うために、再び王都の大神殿の一室に足を運んでいる。


 魔導具:焼付しは魔導の魂(ポーション保存管用)


 魔導具を作るための魔導具。

 基本は小瓶の魔導具を作るための物と同じもの。

 ポーションの効能を失う事無く、長期保管するための魔法陣を組んでいるため、ただでさえ小瓶よりも小さな管を、更に三つに分けて魔導具化を施さなければならなかった。

 なので蓋用、硝子管用、保護管用と三種類の魔導具で一組と言える。


「未成年は、一日三回まで、成人でも七回までにしてください。

 魔力持ちの方であれば、その限りではありませんが無理は禁物です。

 教会であれば人出はそれなりにおられるでしょうから、それを利用してくだされば問題は無いと思います。

 使用を終えた管の魔導具はそれぞれの部分に分けて融かし直せば、また再利用は可能ですので、銅貨五枚程で買い取る方式を採れば、原材料が不足したり高騰する事もある程度防ぐ事が出来ると思われますので、一度御検討の程を」


 硝子も使っていますから危険なので、ポイ捨て厳禁環境破壊反対の方向に持って行ってほしい。

 実際に資源回収を採用するかどうかはともかくとして、教会と言う立場を考えたら悪い仕組みではないと思う。


「シンフェリア様、教えて戴いた通りに薬液が出来ましたが」

「ありがとうございます。

 ではこれを冷却した後で液剤の中に手を入れ、身体全体の傷を癒す感じで治癒魔法を施していただきますが、その際には、必ず手洗いをし、清潔な布で手を拭いてから行ってください。

 間違っても、小用に行ったままの手で行うような真似は厳禁です」


 私の言葉に笑いや苦笑が生まれるけど、傷口に触れたり口に入れる物でもあるので、笑い事ではない。

 手洗いとウガイは、防疫の基本。

 出来れば口以外にも髪の毛もフケ等が落ちない様に、布で覆ってほしいとお願いする。

 私みたいに、結界で液剤を覆ったり出来れば別でしょうけど。


「ポーションは、薬液に治癒魔法を施す術者の技量によって効用が変わってきますが、施術後は、薬液の色が変わりますので、その色の濃淡で効果の程を判断してください」


 ある意味、分かりやすい目安でもあるので、若い術者はこれを目安に練習を励んでほしい。

 実際、実験に協力してくれた聖属性持ちのエリシィーも、試用品を作る際にこの方法でコツを大分掴めたし、本職であるのならそれほど難しくはないはず。


「薬草の栽培に、水晶屑の収集するための働きかけに、銅鉱山の運営、それ等の加工職人」

「金型職人や治具を作る職人に、ポーションを保管するための木枠など、各地で多くの雇用を生み出す事になると思います」

「怪我に悩む者だけでなく、職に迷える者達も救う魔導具と言う訳ですな」

「いえ、教会に縋る信者を教会が救うだけです。

 別のその者達を救わずに、どこかの商会に任せる選択肢がある訳ですから、でもそれをされないのは、教会がより多くの人達を救いたいと願い、そして動かれているからこそだと私は思っていますが、違いますか?」


 教会は確かに薄汚れている。

 だけど、それでも多くの人達の心の拠り所であり、また、本当に困っている人達に救いの手を差し伸ばしている人達も多くいる。

 私は、結局そういう人達まで否定する気にはなれない。

 

「その想いに応えれるよう、我等も日々の努力を積み重ねて行きたいと思いますが、それでも貴女様が齎した事は大変に素晴らしき事、今一度あの話を受けて戴く訳にはいきませぬかな?」

「いえ、私は確かにこの魔導具を世に広めたいと考えて動いてきました。

 ですが、それも商売の一つとしてです。

 魔導具師であり、商会の会長でしかない私には、とても不釣り合いなもの」


 それに、きっと私もその薄汚れている人達の一人なのだと思う。

 私は私のやりたい事のために、教会を利用しているだけですからね。





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― 新着の感想 ―
[一言] 神に仕える云々とか宣ってた場合は権力要らんやろ(笑)
2022/05/12 21:34 退会済み
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