311.こう言うプレゼンって苦手なんですよね。
【聖オルミリアナ教大本殿、第二議会場】
「本日は、お忙し処を急遽集まって戴き、大変申し訳ありません」
陛下の予想通り、世界最大の宗教団体である聖オルミリアナ教会の次の大司教は、シンフォニア王国の古き血筋の五公爵七侯爵の内の一つであるオルミリアナ卿となり、三日前から聖山ククルマウントに入山し、祈祷の儀に入っている模様。
聖オルミリアナ教本殿にいる十三人いる枢機卿は、現在、オルミリアナ卿が大司教になるため一人抜けており十二人。
その内、大司教の片腕となる二人が共に祈祷の儀に付いて行っている。
ジル様曰く、その二人もオルミリアナ卿の派閥の者で、あの男に敵対する派閥を受け入れるだけの度量はないとの事。
そして、もともと歴史は古くとも、ここ数百年は大司教を出しておらず、初代大司教の一族と言うだけで枢機卿の座を約束されているため、傑出した人間が数代続いた時でない限り大司教になれた事がない一族でもあるらしい。
まぁ、それでも大司教になるだけの人間が何人もいたと言うのだから、それなりに能力の高い一族である事には違いないんだと思うけど、ここ五代ほどは特に酷いらしい。
つまり、現在此処にいる十名の枢機卿は、オルミリアナ卿の派閥の者ではないと言う事。
少なくとも表立った派閥の人間ではなく、そしてだからと言って、味方と言う訳ではない。
そして私の謝罪の言葉に続く様に、カイル殿下が口を開かれる。
「今日は忙しい父上になり変わってこの席にいるが、基本的に子爵の話を聞いてもらいたい」
「どういう事ですかな?
我等は、偉大なる父を亡くしたばかりの上、新たなる父を迎えるため奔走している中、そこへ、急遽、シンフォニア国王陛下の召集命令でもって集められたと言うのは」
「確かに、我等はこの国にいる以上は、シンフォニア王国の国民ではありますが、臣下ではありませぬ。
この様な強引な手段で召集させられるなど、正直、我々としましては、非常に不本意であります」
「貴殿等は神の信徒であって、臣下ではない。
よくもまぁ、その様な詭弁を王族である私の前で言えたものだね。
だが、今はその様な事を論じるべき時ではない、私は言ったはずだよ、彼女の話を聞けとね。
あと、もう一つ言っておく、これは聖オルミリアナ教全体にとって、大変に有意義な話だ。
より神の御力を、多くの信者に届けるためにね」
その後、幾つかやり取りしているけど、その遣り方や様子を見ていると、やはりカイル殿下は陛下の血を引く方だなぁと思わざるを得ない。
もうね外連味が溢れていて、その使い方が巧い。
さてと、ここからは私のプレゼン次第かな。
「あらためまして、私はユゥーリィ・ノベル・シンフェリアと言います。
一介の魔導具師でありますが、今回、教会の皆様に御協力をお願いにあがりました。
陛下が召集されたのは、この願いの内容が教会のためだけでなく、国のためになると判断なされ、より早い動きをと願われたからであります。
この様な忙しい時にその様な事が重なってしまい、今一度お詫び申し上げます」
何か陛下の腰巾着とか、オルミリアナに媚を売った雌犬とか、ボソッと聞こえるけど、反応を見るために魔法で集音しているのだから、そういう事を言うのは止めて欲しい。
まぁ、聞かれていると思っていないから、平気で言えるのだろうけどね。
「ではまず詳しい話をする前に、実際にお見せしようと思います。
カイル殿下、ご協力の程よろしくお願いいたします」
「うむ、入れ」
カイル殿下の合図の後に入ってきたのは、殿下の従者の一人である男性。
その従者は私の横に来るなり、その上着を脱いで、上半身は下着姿になる。
その身体は引き締まっていて、作られた筋肉など何処にもなく実戦と訓練で鍛え抜かれた本物の筋肉は、野性味溢れた魅力を放ってはいたけど、あいにくと中身が男の私は格好良いなぁ以外の感情など浮かぶ事はない。
それに、別にこの肉体美をアピールしたくて脱いだ訳ではなく、あらかじめ打ち合わせでお願いしてあった事。
私は収納の魔法から、試験管サイズの金属管を取り出し、彼に渡すのだけど今からやってもらう事を思うと、申し訳ないという思いで一杯になる。
「では、予め床を汚す事をお詫び申し上げておきます」
従者はそう言うなり懐剣を取り出し、剥き出しの左腕にそれを突き立てる。
「ぐっ」
びしゃっ!
僅かに聞こえる濁った声は、剣を己が腕に突き立てて貫通させた時ではなく、それを引き抜いた時に漏れ出たもの。
そして深々に刺さった剣と言う名の栓が抜けた後には、当然ながら血が噴き出し、床や従者の身体を濡らして行く。
そんな中、従者は馴れたようにズボンのポケットから紐を取り出し、片手と歯を使って上腕部を縛って血の勢いを緩め、そこへ先ほど渡した試験管の栓を抜き中身を半分振りかける。
そう、ただ傷口に液体を振りかけただけ、それだけで時間を巻き戻すかの様に、塞がってゆき、血の跡さえ拭き取れば、つい先ほどまで血を吹き出すほどの怪我があったとは信じられない状態になっている。
まるで、治癒魔法を施したかの様に。
従者は、血止めの紐を解いて、試験管の中にあるもう半分を飲み干す。
こうする事で、内部からも傷を癒し、失った血の補充をしようと身体に働きかける。
血で汚れた腕を布で拭き取った後には、傷一つない艶やかな肌があるだけ。
「「「「………」」」」
その光景に、黙って目を見張る十人の老人達。
論より証拠、これで、これがなんなのか理解できたと思う。
「ありがとうございます」
「何か痛みが残っていたり、具合が悪い事とかはありませんか?」
「いや、ないな。
敢えて言うなら、血を流したから今日は良い肉でも食べたい処だ」
後で、ジュリに白角兎の肉でも付け届けてもらおう。
今一度、カイル殿下の従者の頭を下げ、再び老人達に振り返る。
「今見て戴いた様に、私がこれからお話しするのは、治癒魔法を封じ込めた回復薬。
ポーションと言う名の魔導具のお話です。
もし今見た光景が信じられないのであれば、用意いたしますので、この場にて御自身のでお試しなさって貰っても構いません。
ほんの小さな切り傷であっても、真偽は確認できましょう」
もっとも、流石に目の前の老人達に、今みたいに自分の身体に剣を突き立てるなんて無茶な真似をできる人間がいるとは思えないし、私自身、まさか彼処までやるとは思ってもいなかった。
ええ、完全に打ち合わせ外の事です。
打ち合わせでは、ちょっと大袈裟な切り傷程度だったんですよ。
それでも二人ほど枢機卿が、自らの身体で、ほんの小さな切り傷を作り、ポーションの効果を試して下さったのは、私としてはありがたかった。
最悪、問答無用で手品か、こっそり治癒魔法を掛けたに違いないで終わってしまう可能性はゼロではなかった訳ですからね。
少なくとも枢機卿達の中では、自分達の身内が自ら効果を試した事で、真偽そのものを疑う人はいない流れになった事に、あらためてカイル殿下の従者に感謝する。
「成る程、確かにこれは陛下が態々召集されるだけの事はあると認めましょう」
「是非とも詳しい話を聞きたいものですな」
「これが本当に、今一瞬だけのものでないのならば、確かに我等が神の御心と慈悲を多くの信者の方に届ける事の出来る物でしょう」
「シンフェリア様は、腕の確かな魔導具師、多くの家にその力で富を与え、我等が教会にもそのお力の一部が既に与えられておりますが、これはそれ等の物とは一線を画する代物、一体何を望みますのかな?」
「より多く人々を救うためならば、力になれるものには惜しむ事なく我等の力をお貸しいたしましょう。
ですが、我等もまた神のお力に縋る弱き人の身だと言う事だけは、御理解くだされ」
とりあえず話を聞きたい派と、私がより権力を求めていると思って警戒する派に別れているみたい。
むろん、ただ沈黙している人もいるけど、お互いに視線と表情で情報を交換している様子を、少しだけ眺めて間を置いた後に、あらためてこの魔導具の説明をする。
「この魔導具は先程見て戴いた様に、治癒魔法を封じ込めた物ですので、世に広めるためには、治癒魔法を多く抱える教会に御協力を仰ぎたい、と言う私の考えは理解してもらえたと思います」
「確かに我等が教会が、神の慈悲を世に広めるために、多くの治癒魔法を使う者がいるのは広く知られている事。
ですが同時に国に縛られる事もない、と言う事は御理解されておりますかな?」
「無論です。
これはシンフォニア王国だけでなく、世界中の聖オルミリアナ教の信者に齎されるべき物であり、陛下からも教会から協力が仰げるのであれば、その様にするのが相応しいとお言葉を授かっております」
こんな魔導具を一国のみが使うとなれば、周りの国は力を合わせてなんとしてもシンフォニア王国を滅ぼそうとする可能性が出てくるからね。
戦に利用するとなったら、圧倒的な消耗戦に持ち込まれたら勝ち目が無くなってしまうし、それを利用して侵略されないかと怯える事になる。
当然、シンフォニア王国の中にもそう言う考えをする人間も出てくるだろう。
なら、教会を通して世界中に広めてしまえば、そう言った問題はなくなる。
「ただ、多少の混乱は避けられないと思いますので、そこは教会の皆様のお力で持って混乱を収拾するよう、各地に働き掛けをお願いしたいと思います」
「それは無論ですな、そのような事は神は望まれてはおりませぬでしょう。
ですが、人は弱気もの故に時にその欲に負けたり、恐怖に駆られる事もあります。
それを神の教えでもって説くのが、我等の使命とも思っております」
その説得と言うのは、まさに人間らしい遣り方なのだろう事は、今更、言うまでもない事だけどね。
とりあえず、世界中に広まるまでの時間差の問題は押し付けれるようだ。
それだけの価値がこの魔導具にはあり、同時に利益を教会に齎す事になるだろうからね。
「ただ、この魔導具は、神官様方のお力をお込めになられるとは言っても、やはり道具でしかありません。
神官様、お手ずからの治癒魔法ほどの力を発する事はとても……。
せいぜいが、本来の三割程の効力しか発揮する事はできませんが、それでも先程ぐらいまでの怪我であれば癒せます。
ですので、大きな怪我などは、今まで通り神の膝下に縋り、お願いするしかありません」
それは当然とか、所詮は道具とか聞こえるけど、その通りだから仕方がないし、魔導具と言う物は元々そういう物。
私としては、五割近くまで持って行きたかったのだけど、仕方ない事。
ただ、それでも多くの人が助かる事が出来る、とか言う声が聞こえた事に、少しだけ救われた気になる。
「さてこの魔導具ですが、大きく分けて二つの物に構成されます。
一つは、この魔導具の本体とも言える治癒魔法を封じた液体。
もう一つは、治癒の効力を持った液体を長期間保管するための容器となります。
従って、この魔導具を広めるにあたり、まずはこの液体の部分の製法は、教会に譲渡する予定です」
そのまま渡すと言う言葉に驚く人もいれば、部分という言葉に眉を顰める人、そして私の狙いは何かと睨み付ける人それぞれだけど、まぁそんなのは気にしていても仕方がない。
「ただ、この液体の部分は液体ですので、当然ながら放っておけば腐ってしまいますし、そのままでは半日も経たずに効力が消え伏せてしまいます。
そこで、そのための特殊な容器になります」
「それは貴女の商会が扱っている化粧品の瓶と同じものですかな?」
「大元は一緒ですが、効力を封じるための仕掛けが幾つかありますので、別物と言っても良いでしょう。
それに当商会で扱っている物とは、保管期間が全く違います」
商会で扱っている小瓶の魔導具は二ヶ月ちょい。
でもこの試験管の魔導具は、今のところ半年は効力を保ったまま保管できる。
主な原因の一つは、使っている素材の差。
陶器と違って硝子を使っている事、そして硝子を保護するために銅を使っている事。
硝子と銅と栓の其々に状態維持等の魔法を施す事で、六ヶ月以上もの保管を可能にした。
ただ、魔法陣がその分複雑になったため、魔力を吸収する機能までは組み込む事はできなかったけどね。
無論、魔導具師が一つ一つ手作りすれば組み込めるだろうけど、そんな事をすれば世の魔導具師達が過労死するのは目に見えている。
そもそも、化粧品と違って毎日手に触れる物ではないから、魔力を吸収する機能を組み込む意味がないため、小瓶の魔道具とは別物と言える。
なにより私が言いたいのは、この試験管の魔導具を作るための魔導具の話。
「この容器自体も、魔導具の元となる部分は教会の方で作って戴けたらと思います。
その方がより安価に作る事が可能でしょうし、より広い地域で作れる事になります。
ですが、それを魔導具とするための魔導具は、当商会から買って戴く事になります。
ただ、その方法では、私や当商会に何かあった時に、多くの方々が迷惑をかける事になりますし、助けられる人も助けられる事が出来なくなってしまいます。
現在、魔導具師ギルドに、この魔導具化を施すための魔導具を作れる人間の育成をお願いしておりますが、かなりの時間が掛かると言う返事を戴いております」
とりあえず、今、説明した事を理解してもらうための時間と、本当の意味で世に広めるには時間が掛かる事と、私の都合でそうなる訳ではないと言う事を納得して貰いたい。
別にあくどくガッチリ儲ける気はないですからね、私としては楽して少しづつ長く儲けれれば十分です。
「ただ、この魔導具化を施す魔導具は、容器の魔導具ほど数がいる物ではありません。
当然、それでは私の商会は、商会員を食べさせて行くだけの利益を出す事が出来ない事はご理解下さい」
実際、魔導具化を施す魔導具なんて物は、かなりの金額になるので、商会員の少ない私の商会が食べて行けないなんて事はないけど、そこはそこ、楽して小額を儲け続けていたいですし、これからが今回の作戦の本題に入ってくる。
収納の魔法から、人数分の書類と一組の契約書を出す。
その書類は魔導具の金額や契約内容などで、肝心なのが……。
「我がシンフェリア家では多くの家の方々に一割の半分、つまり百の利益の中から五の利益を戴いておりますが、私も聖オルミリアナ教の信者の一人。
特別に前回の契約と同じ百の利益の中から二の利益を、この回復薬の魔導具を教会が使い続ける限り、我が家に支払って戴ければ構いません」
案の定、騒つく枢機卿達。
それはそうだろう、どれだけの人間が真実を知っているかは知らないけど、表向きは頭髪再生の魔導具と無駄毛処理の魔導具のサービスによる私への利益還元は、二パーセントではなく五パーセントになっている訳ですからね。
だから、本当に何も知らないのか、知らない振りをしているのかは分からないけど、老人の一人が聞いてくる。
前回と同じであるなら、百の利益の内の五ではないのかと。
だから私は収納の魔法から前回の契約書を取り出し、机の上に置く。
「間違いなく、百の利益の中から二の利益還元の契約です。
契約事項の内容の確認として陛下の署名もありますし、当時、枢機卿であられた新たな大司祭様の署名もあります。
我が家とオルミリアナ侯爵にではなく、教会との契約である事が御確認できますので、どうか御手を触れずに御覧ください」
確認する振りして、破かれたり細工をされたりされたら困りますからね。
当然、契約書に書かれているのが陛下自身の証明するためと言って、カイル殿下が、私のすぐ横にまで来て確認されたままおられるので、カイル殿下の目を誤魔化す事はできない。
「成る程、確かに、百の利益の内、二の利益の還元の内容になっておりますな」
「それに、オルミリアナ侯爵家ではなく、教会との契約内容だと言う事も」
私とオルミリアナ卿が契約を結んだ後に、何があったかなど大体想像はつくけど、そんなものは私の管轄外の出来事。
ただ、その事で問題があったのだとしたら、私の契約に対する不備の疑念を向けられると言うのは面白くないと言う事にして。
「なにやら私の知らない所で何かあったようですので、私としては身の潔白を証明するためにこの契約書を公開したいと考えますが、カイル殿下、宜しいでしょうか?」
「父上に確認はさせてもらうが、おそらくは問題はなかろう。
子爵には公私共々世話になっておるし、これくらいの事は許可など取らぬとも好きにすればいい」
多分、想像するようなオルミリアナ卿に有利な内容で、既に教会内で色々と書類が出来上がっちゃっているんだろうから、公開されると不味い事になる人達がいるんだろうなぁ。
この場にも何人か顔色が悪い人がいますからね。
だけどそんな事は、私の知った事ではありません。
では殿下、この後はお願いいたします。
「これで概要は分かったであろうから是非を取りたい、この魔導具を教会で扱うかどうかをな。
もし扱うのであれば、この場で署名をするがよい。
取り扱わないのであれば、聖オルミリアナ教以外の教団に話を持って行く。
治癒魔法に優れた者を持つのは、聖オルミリアナ教だけではないからな。
確かに聖オルミリアナ教に比べたら脆弱かもしれぬが、この魔導具の力と国教として定めれば、時間は掛かるがそれだけの問題だ」
「「「「んなっ! そのような横暴なっ」」」」
カイル殿下の言葉に、枢機卿達が驚くのも仕方がない事。
世界最大で、ほぼ聖オルミリアナ教徒と言うこの世界で、聖オルミリアナ教を捨てると言うのだからね。
でも確かに殿下の言う通り、聖オルミリアナ教以外の宗教は確かに存在するし、その宗教を国教と定めれば、少なくともこの国では数十年で取って代わる事になる可能性がある。
誤解されてはいるけど、シンフォニア王国は、別に聖オルミリアナ教を国教として正式に定めている訳ではない。
歴史として、そう思われているだけに過ぎないだけ。
「なに、もし署名する気がないのであればと言う話だ。
これほどの魔導具、一日でも早く広めれば、それだけ多くの人間が助かる事になる物だと分からぬ訳ではあるまい?
それとも、より多くの信者を救うため、と言う言葉は戯言だったと言うのか?
陛下の名代であり、王太子である私の前で戯言を申したと?」
「い、いえ、けっしてそのような事は」
「ですが、大司教に黙ってこのような重要な契約」
「なるほど、だが前回の契約は、枢機卿の一人が教会の代表として、その場で為されたもの。
同じ一介の魔導具師と、ほぼ同じ内容の契約をするのに、同じ枢機卿であるお前等では不足だとする道理は通るまい、違うか?」
ええ、ほぼ脅しです。
実際、問題としてシンフォニア王国が、聖オルミリアナ教以外を国教と定める事には無理がありすぎるし、多くの問題を発生させる。
ただ、その可能性を示唆し、この場で契約を断るのであれば、もっともらしい理由を述べよ。
カイル殿下は、そう求めているだけに過ぎない。
ただ、そのもっともらしい理由も、オルミリアナ卿が、前回の契約で即決すると言う迂闊さを示したため、その言い訳が通用しない。
オルミリアナ卿自身は、陛下の署名の入った契約書を偽装するつもりだったろうから、その辺りはどうでも良かったのだと思うんだけどね。
「わ、わかりました」
結局は、この場で署名をするのが、最も生き残れる道。
でも、大丈夫ですよ。
新しい大司教になられた、オルミリアナ卿に睨まれる事はないですから。
「ふむ、これで契約はなされた事は、王太子である俺が見届けた。
双方、契約内容に従い、多くの民を救う事に力を尽くしてくれたまえ。
子爵よ、今日は大儀であった、先に帰って契約に従い準備に入るがいい、私はもう少し此処で話をするべき事がある」
「はい、本日はお力添えをして戴き、深きお礼を申し上げます」
「構わぬ、多くの民のために力を貸したにすぎん」
とりあえず、私の役割は終わり、私は魔導具師ですから、あくまで魔導具を作って契約をするところまで。
それ以外のゴタゴタは、知った事ではありません。
オルミリアナ卿と、教会をなんとかしたい人がやってください。




