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私、お嫁になんていきません【1000万PV突破】  作者: 歌○
第三章 〜新米当主編〜
313/1128

313.嫌ってはいたけど、殺したい訳ではなかったんですよ。





「お疲れさん。教会の方の説明は終えたようだけど、いやぁ、君も凄いね。

 聖オルミリアナ教の初代大司祭の家系を教会から追い出し、更には大国である我が国において、建国よりずっと国を支えて来た古き血筋の内の一つを没落させたのだから、悪女として歴史を刻めるね」

「……陛下」


 教会への説明を終え、約束通り陛下の執務室に顔を出したら、いきなりの暴言を浴びせかけられて、つい半眼になって睨みつけてしまう。


「そんな怒らないでよ。

 半分は冗談なんだから、折角の綺麗な顔が台無しだよ」

「そう言う冗談と世辞はいりません。

 陛下が私に会う度に、世辞や賛美の言葉を永延と称えられたい言うのであれば、今度からそのようにいたしますが?」

「それは嫌だな、他人行儀過ぎる。

 折角築いてきた仲を壊すような事は控えて欲しいね。

 でも真面目な話、ああ云う顔は勿体無いと思うよ」


 自分はやるけど私はやるなって、この人は何処まで言っても自分勝手な事をと思いつつ。


「私より綺麗で可愛らしい方は、この城に幾らでもいるでしょうから、そう言う方達に言ってあげてください」

「まぁ確かに君より造形が良い子は、幾らでもいるね」


 あの、無意味な世辞はいらないけど、貶されたい訳ではないですよ。

 それと、もう少し言い方と言うものはありませんか?


「でもね、人の美しさってのはその身の内から出る物が大きいから、そう言う意味では君は間違いなく、そちら側だと思う」


 敢えて『そちら側』と、何方を指しているか言わない所が、この陛下の性格を表していると思う。

 あと身の内って、中身はオジサンですよ、しかも陛下と似たり寄ったりのね。

 オジサンがオジサンを美しいって、陛下、変な趣味でもあるんですか?

 まぁ八人も子供を産ませていますから、そっちのケは無いと信じていますけど。


「それで私が悪女と言うのは今更として、結局はどのようになったのでしょうか?」

「いや、そっちの方が冗談なんだけど」


 教会では、お互い敢えて話題には上げなかった事柄。

 ポーションの魔導具を世の中に広めるために、犠牲にし踏みつけた相手。

 陛下の言う通り、どんな言い訳をしようとも、その事実は変わらない。


「概ね予定通りさ。

 儀式終了後に聖ククルマウントから下山して来たところで、待ち受けていた枢機卿達の手の者達が大司教の解任手続きを行ったさ、その解任決議の結果の書類を見せて大司教をその場にて解任。

 教会を騙し、不正に利益を得て私財を肥やしていた事など合わせて、五十七件の罪状をもってオルミリアナ()に教会から永久追放を言い渡し、その後は国王軍が、国王である僕の署名した契約書と違う内容の書類を偽造した罪で逮捕。

 何故か(・・・)異様に増えている教会が訴えてきた罪状も併せて、当主であるオルミリアナはその罪深さから聖杯(どくはい)ではなく極刑。

 一族は今迄のオルミリアナ家の功績鑑みて減刑はしたけど、侯爵から伯爵に降格の上に土地や家屋を含めた財産の殆どを没収したから、贅沢に慣れ親しんだ人間だと、さぞ大変な事になるだろうね。

 それに今回の事が社交界に広まるから、誰も相手にする家はいないだろうから保って三代かな。

 下手すれば当代で、建国よりも遥かに古いオルミリアナの血筋は終わりを迎える事になる」


 やっぱり私は陛下の言う通り、悪女に間違いないと思う。

 私は私のやりたい事の為に、多くの人間の人生を狂わせている。

 あの広大な敷地に住んでいた人達を、全て路頭に迷わせてしまったのだから。

 おそらくオルミリアナ家の家族親戚以外でも、二百や三百で聞かない人達があそこに住んでいたはずだし、あの家に関わる事で生計を立てていた人達は、もっと沢山の人がいたはず。


「あと、あの家の失業者に関しては、給金は安くなるだろうが、教会が彼方此方に口利きをしてくれるらしい。

 規模はともかくとして、当主の失態で家人が路頭に迷うなんて事は、決して珍しい話ではないからね」


 うん、やっぱり陛下は意地悪だと思う。

 絶対に分かっていて言っている。

 例えそれが焼け石に水程度の結果だとしても、助かる人達もいるのだと

 こうして私の罪を言葉にしてもらった方が、私の心が少しだけ救われる事を、ニヤニヤ笑って観察している辺りがね。

 私を助けたいのか苦しめたいのか、どっちなのと突っ込みたくなるけど、前者寄りだと言う事は信じられる。

 意地が悪いやり方には違いないけどね。


「今回の事は確かに君の筋書き通りだけど、こうなったのはオルミリアナの責任と言える。

 あの男は最後まで君に嵌められたと、元神官の癖に呪いの言葉を口にしていたが、実際は逆だ。

 嵌められたのではなく、全て自ら嵌まっていった結果に過ぎない。

 なにより、僕がオルミリアナを疎んじるようになったのも、教会があそこ迄あっさりとオルミリアナを見捨てたのも、オルミリアナ自身の日頃の行動が招いた事だ。

 オルミリアナ侯爵として、教会への楔を入れる役目を忘れ、逆に枢機卿として教会での立場を盾に国益を損なう事を平気で行い。

 おまけに教会内では、過去の栄光を笠に遣りたい放題。

 しかも代々の最低の立場が枢機卿と言うのも、教会の人間からしたら目の上のたん瘤だっただろうからね。

 国と教会を繋ぐ橋渡しの役目を忘れ、代々私欲に走った末路であって、決して君だけの責任ではない。

 最期に大司教と言う花道を与えてあげたんだ、むしろ慈悲深いと言えるさ」


 そうかもしれない。

 だけど、そんな物はこっちの勝手な言い訳で、オルミリアナの人達や、路頭に迷う家人達には関係ない事。

 少なくともあの人達には、私を恨む権利がある。


「君は真面目だねぇ。

 そこが君の愛おしい所だけど、少しは楽に考えて欲しいものだ」

「……陛下、気持ち悪い事を言わないでください」

「気持ち悪いって、酷いなっ」


 流石に、そう言う冗談を聞く気分ではない。

 うん、駄目だ、少し気分を落ち着けて深呼吸。

 すぅ~…、はぁ~…、すぅ~…、はぁ~…。

 よし、大丈夫。


「話しを変えるとしよう。

 そう言えば先程小耳に挟んだけど、聖女の話を断ったんだって?

 もったいない」


 それはそれで頭の痛い話なんですよね。

 それと、どう言う話題変更の仕方ですか。

 と言うか、それつい先程の話ですよ、本気で話が早くありません?


「聖女なんて面倒が増えるだけで、一銅貨にもならない話、お断りに決まっています」


 だいたい聖女ってなんですか、聖女って。

 中身がオジサンの私が聖女って、漫画や小説でも出てこないような設定ですよ。

 そもそも、そんな聞くからに面倒が増えそうなものに、誰が好き好んで成りたがるのかと思ってしまう。


「君ならそう言うと思ったよ。

 一応、僕の方からも釘は刺しておくよ。

 彼女は目立つ事を嫌い、ひっそりと静かに暮らす事を望んでいるとね」

「お気遣いの程、ありがとうございます」

「実際は、何処からどう見ても、目立ちまくっているけどね」


 陛下、貴方もですか。

 私の何処が目立つと言うんですか。

 色なし(アルビノ)の見た目はともかくとして、何処も目立ってませんよ。

 社交界は必要最低限だし、舞踏会の舞踏だって後ろ盾して下さった家の人以外は、壁の花と言うか壁のシミに徹していますからね。

 当然、お茶会や観覧会も、後ろ盾の家の方の義理のみのお付き合い。

 私生活だって、基本的に引き籠りですし、出かけても買い出しか、誰もいない山奥。

 うん、ステルス貴族に限りなく近い存在です。


「これで今回の件の顛末は終わりだ。

 どうせ君の事だから、気にはなってはいたろうから話したけど、少し休んで気持ちを切り替えるといい。

 少なくとも、ポーションの開発には一段落つき、急ぐ必要はなくなった以上、休める時は休むべきだ。

 これから、まだまだ忙しくなるかも(・・)しれないから、今の内に休息を取るべきだろう。

 君だけでなく、君の周りにいる者達にも、休息は必要だよ」


 うん、確かに陛下の言う通り。

 少しだけ心を休ませよう。

 変な事ばかり頭い浮かぶもの。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




「ふにぃ~、エリシィー~」

「ん、どうしたのユゥーリィ?」

「うん、ちょっと甘えたくて」

「はいはい、洗濯物を取り込んだら少しだけ」


 そうだ、この後、偶にはちょっとだけジュリにも甘えてみよう。





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― 新着の感想 ―
[一言] こうゆう奴気持ち悪いよね。何かをやって皺寄せが行き貶す結果に凹むのなら端から動かなきゃいい。
2022/05/12 21:37 退会済み
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