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私、お嫁になんていきません【1000万PV突破】  作者: 歌○
第三章 〜新米当主編〜
309/1129

309.ああ、お姉様の赤ちゃん可愛いです。このままお持ち帰りしたら駄目ですか? 駄目と。





「ぁ〜、ぁ〜」

「あ〜よちよち、ユゥーリィ叔母ちゃんですよぉ〜」

「もう、そんな事を言っても、まだ分からないわよ」

「いえいえ、ミレニアお姉様、赤ちゃんは意外に周りを見聞きして学習していますから、もしかすると記憶しているかもしれませんよ」

「生後二ヶ月の子に何を言っているの、もうユゥーリィは相変わらず子供好きね。

 ほら、そろそろ御乳の時間だから、ユゥラードと遊んであげて」

「グリアちゃん、また抱っこしてあげますねぇ」


 お姉様の第二子【グリアラ】の出産祝いを兼ねて、グットウィル子爵家にお邪魔している。

 生まれて直ぐに訪問するのは失礼なので、聞いていた予定日から二ヶ月後ぐらいに訪問する旨は伝えてあったし、無事に生まれた旨の手紙は来ていたので、今日と言う日が待ち遠しかった。


「ユゥラード君お利口だったね。

 エリシィーお姉ちゃんと遊んでいたのぉ」


 ついでに、今日はジュリだけでなくエリシィーも連れてきて、久しぶりだろうとミレニアお姉様と顔合わせをしたのだけど、お互い反応としては薄い。

 なんと言うかお互い『ふ〜ん』と言った感じ。

 まぁ、あまり、私の件以外では接触がなかったと言えばなかったし、教会では基本的にエリシィーは裏方だったから、面識は少なかったのは事実なんだよね。


「そう言えばお義兄様は?」

「無事に産まれた知らせの後、三日ほど戻ってきたけど、すぐに職場に戻ったわ」

「寂しくないですか?」

「寂しくないと言ったら嘘になるけど、そう言う物だから仕方ないわ。

 それにこの子達が十歳になる前には、此方に戻って来れそうだしね」


 グットウィル家は、武功によってこの街と周辺の土地を領地に戴いた時に、国に約束したらしい。

 代々一定の年数は国のために軍職につく事をね。

 きっと妬みや謗りを避わす狙いもあったのだと思うけど、子孫としては堪った話ではないだろうな。

 でもそう言う歴史を積み重ねているからこそ、グットウィル家はこの一帯で伯爵家などの上位貴族を除けば、最も精強な領主である事となり、その事で領内の治安を維持し続け街道沿いの街をより発展させてきた訳だから、貴族としては決して間違った考えではないのだろう。


「そう言えばラルガード様、随分と雰囲気が変わられたみたいですが」

「…ええ、まぁ周りからは若返られたと言われているみたいで、お義父様、最近は御機嫌みたい」


 グリアちゃんに授乳させなから、お姉様も言葉を選んでいるあたり、やはりお互い言いにくいのは確か。

 なにせラルガード様、気の所為ではなく、確実に増えちゃってますからね。

 長い毛とまだ短いながらも、しっかりと生えてきている毛と混ざり合ってるけど、以前にお会いした時より、確実に地肌が見える面積が減っている。


「ここから王都までですと、結構な出費になりませんか?」

「本人はユゥーリィの店の視察だと仰っていたけど、貴女には会えなかったとは言っていたから、何処まで本当の事か」


 少なくとも、グットウィル家の当主が訪ねてきたなんて報告は聞いていない。

 お忍びで名も名乗らずと言うのでは、それも仕方ない事だけど、あの頭を見た後だと、お姉様ではないけど疑わざるを得ない。


「確か貴族相手ですと、最低でも一回の施術で金貨二枚が必要だったはずですよ。

 しかも四、五回の施術が必要ですから」

「お義父様、確か来月も視察に行くとか仰っていたわ。

 新しい製品を扱ってくださる商会の店を見に行くとか」


 私の言葉に困ったように思いっきり溜息を吐くお姉様に、私も掛ける言葉がない。

 私にしろお姉様にしろ、シンフェリアの家で角熊対策のために節約する事を求められて育って来ましたからね。

 自分で作った魔導具とは言え、たかが髪のために、金板貨を消費する感覚が理解できない。

 その金額にしたって貴族としては最低価格なので、ラルガード様がどのコースを選んだかでまた金額が変わってくるし、更に旅費や滞在費も必要となる。

 しかも一人で行く訳ではないので、結構な金額だと思う。

 空間移動の魔法がある私は例外だけど、普通は貴族が旅をする際には、立ち寄る村や町でお金を落として経済を活性化させるのが、貴族としての常識みたいな物だからね。

 まだまだ設備費や人件費に投資をしないといけないと言うのに、馬鹿にならない出費ではないかと、思わず心配してしまう。


「あのうお姉様、教会に道具を納めているのは私ですから、私でも施術は可能ですので、なんでしたら私が此処に来た時に施術致しますよ。

 ラルガード様は私のお姉様のお義父様ですから、ギリギリ私の身内と言う事にできます」


 教会に任せた以上は、私がやるのは良くないのだけど、今、言った理由でギリギリ許容範囲の相手。

 そうでないと、ウチの子達の腋毛処理とかできないですからね。

 そう言えば、アドル達がセレナとラキアの二人に言われて、渋々スネ毛とかの処理をさせられていたっけ。

 私も二人が怖くて言われるまま施術したから、人の事は言えないけど。


「私からは流石に言いにくいので、お義母様にお話をしてみるわ。

 ……それで、ユゥーリィ、身内価格ってあるのかしら?」


 流石はお姉様、私との血を感じます。

 ですがお姉様相手ならともかく、流石に家が違うと厳しいですね。

 最近コッフェルさんも、安仕事をするなって五月蝿いですから。


「ああ、でも旅費や滞在費、施術以外の以外のお布施代を思えば、それでもかなり助かる話ではあるわね」


 ええ、多分金板貨単位で変わってくると思いますよ。

 ところでお姉様も試してみます?

 ムダ毛の永久脱毛とかも可能なんですよ。

 当然、お姉様は正真正銘の身内なので、身内価格で、なんと今なら満足いくまでで、お値段は何と銀板貨一枚の価格破格コースです。

 教会やギルドに知られたら、私が怒られますから周りには内緒にしてくださいね。

 はい、後ほどお姉様の自室でやらせて戴きます。


「それにしても、本当に幅広くやっているのね」

「ええ、私は、価値を示して行かないといけませんから」

「……ユゥーリィ、貴女の病気を理由に、家に閉じ込めて何もさせて来なかった私が言うのもなんだけど、貴女はもっと自分を認めてあげなさい。

 貴女は私の自慢の妹なんだから、自分を卑下にするのはもう止めて頂戴」

「…ぇ」


 私にとってごく当たり前の言葉に、お姉さま凄く真剣な眼差しでもって、私に言葉を浴びせてくる。

 まるで、それが真実なのだと。

 私が間違っているのだと言わんばかりに。

 でも、何故いきなりそんな事を言ってくるのか、私にはよく分からなかった。

 お姉様は私を閉じ込めていたと言うけど、そんな事はない。

 そりゃあ確かに小さな頃は、魔力過多症候群のせいで、いつ倒れても仕方ない状態だだったから、ずっと誰かを付けておける人の余裕がないあの家では、その事は仕方のない事だし、実際、私は何度も倒れていたのだから、お姉様の私を家の外になるべく出さないようにしていたのは、間違いではない。

 それに私をよく看病してくれていたのは、そのお姉様自身。


「別に、私はそんなつもりは……。

 それにお姉様は私を閉じ込めていた訳ではありません。

 それなりに心配はされてはいましたけど、最後は外を出歩く事も認めてくださったじゃありませんか」

「それはそこの子が、言って来たのよ。

 ユゥーリィを閉じ込める気かって、私やお母様を相手に凄い剣幕でね。

 身分の差を知らないって怖いわね、と当時は思いはしたけどね。

 貴女、知っている?

 あの後、貴女のお母様が、地面に頭を擦り付ける勢いで謝罪に来た事を。

 だからその命知らずに免じて、この子の好きにさせて様子を見ていたら、ユゥーリィはどんどんと元気になって行くから、結果的に言えば貴女の言う事が正しかった訳だけど、そうでなかったら貴女危なかったのよ。

 何がとは言わないけどね」


 言葉の途中から私ではなくエリシィーに語り掛けるお姉様だけど、……知らなかった、そんなやりとりがあったなんて。

 小さな子供だったからとは言え、エリシィーがそんな危険な橋を渡っていただなんて。

 うん、二人の気持ちが嬉しいと感じる。

 そしてお姉様は、やっぱり間違っていないと思う。

 お姉様は私の病気を心配して、家からなるべく出さないようにしていたのは、幼い頃の私の病状を鑑みれば当然の事だったろうだし、エリシィーの言葉の後、そのまま私が外を出歩くのを認めたのも、結局は、私を想っての事の結果だもの。

 その当時当時に応じて、自らの考えを変えてまで私を心配してくれたのだから。

 エリシィーは、その切っ掛けを作ってくれただけ。

 言動に責任が伴う貴族に、感情論だけで考えを変える事は、そうそうないからね。


「お姉様、何時も私を心配して見守っていてくださり、本当にありがとうございます。

 それとエリシィー、貴女にもお礼を言うわ。

 でも、小さかったから仕方なかったとは言え、もうそんな危険な真似をしないで頂戴」


 此処での今のエリシィーの立場は、私の使用人で一介の侍女でしかない。

 なので、これ以上の言葉を、今、此処で掛ける事はできないけど、それでも感謝の言葉を直ぐにでも伝えたかった。


「ですが、私が価値を示し続けないといけないのは、変わりません。

 今の私がこうしていられるのは、多くの方のお力があっての事ですし、今みたいに走り続けられるのは、きっと若い内だけですから」


 多分、これからどんどんと柵が増えて、自由に動けなくなる。

 貴族になってしまった私には、自由になる時間が減って行くだろうからね。

 実際、ほんの二年前と今では、自分の事だけに使う時間は、驚くほど目減りしている。


「そう、確かにそれは言えるかもしれないわね。

 なら自分が納得するまで頑張りなさい。

 でも同時に忘れないで頂戴。

 貴女は私の自慢の妹だって事をね」

「はい、心に刻んでおきます。

 私にとってお姉様がそうであるように」


 だから、こう言う想いは大切な物。

 それがあるからこそ、耐えられるのだから。

 だから、今はもう少しだけ自由になる時間を楽しみたい。


「そう言う訳でエリシィー、自室では自由な服装で」

「意味が分かりません。

 自室だからといって、下着姿でいて良い理由など思いつきません」


 エリシィーの意地悪。

 あれ、お姉様どうしたんです? そんな怖い顔をして。

 話って、今、話をしていたのでは?

 違う真面目なお話と。





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