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私、お嫁になんていきません【1000万PV突破】  作者: 歌○
第三章 〜新米当主編〜
302/1132

302.店舗開店の裏事情。やるからには儲けないと。





「ユゥーリィ、先月のお店の帳簿確認を終えたから最終確認をお願い」

「ん、どれどれ、……やっぱり卵も牛乳も高めかな」

「どちらも贅沢品だから」


 帳簿以外の庶民の感覚としてのエリシィーの言葉に、改めて牛乳や鶏卵が、富裕層向けの商品だと実感させられる。

 牛乳を止めて、山羊の乳にする事を本気で検討してみないといけないわね。

 鶏卵も、もともと卵用に品種改良された品種と言う訳ではないから、数が貴重なのは分かるけど、此方は代替品を思いつかない。

 とりあえず、鶏卵にしろ牛乳にしろ、私の所有する商会【森の滴】の元になった商会に掛け合ったら、快く頷いてくれたので今の所は助かっている。

 ヨハンさんが事前にかなり脅したのか、青い顔で頷いていたけど、取引そのものはクリーンなもの。

 不当に安く仕入れていたりはしていません。

 むしろ定期的に大量に使う予定なのでと言う事で、支度金を渡した程ですからね。

 その支度金で、現在王都の街の近隣の幾つかの農村に、大きな養鶏場と牧場を造成したとか。


「でもよく思いつくね」

「ん? なにが?」

「お店とお店を繋ぐ事」

「それ用に頼むより、自分の所で手に入る環境を作れば安く手に入るし、お店経営でお金も増える。

 むしろ普通の考え方だよ」


 エリシィーが言っているのは、甘味の店を作った理由。

 別に甘い物を提供をするお店を開きたかった、と言う理由だけで甘味の店を開いた訳ではなく、お店をやって行く事で、手に入る物があるだけの事。

 その一つが卵の殻。

 お菓子には大量の卵を使う物が多く、あの店で出すお菓子にも、当然ながら多くの卵を使っている。

 そして使った卵の殻を、直ぐに専用の状態維持の魔法を掛けた箱に投入してもらう事で鮮度を保ったまま回収。

 卵の殻って、畑の肥料とかにも使われるけど、化粧品の材料にもなるんだよね。

 他にも【花の蜜】の方では、豆腐や豆乳も飲み物やデザートに使っているので、その際に出る絞りカスであるオカラは、魔物の繁殖の餌になっているし、豆腐も一定数は燻製にして貰って、商会の方で販売して貰っている。

 大豆は、ルチアさんの方で、馬に乗ったままや、歩きながら食べる事のできる携帯食として、シリアルバーの開発をしてもらっているので、材料の購入の際に多めに購入して貰っているため、ただでさえ安い大豆が更に安く買える。

 何方にしろ、品書にはラテとか豆のとかしか書いてないので、店員以外はそれが大豆だって事は知らない事もあり、今のところ優しい味だと評判は上々。

 少しずつ大豆の良さを浸透させて行く計画でもあったりする。


「私はあまり感じないけど、そんなに新しい化粧水は違うの?」

「ルチアさん達曰く、違うみたいよぉ」


 エリシィーも私もまだ若いため、プルンプルンの艶々のしっとりときめ細やかな肌なので、効果は実感しにくい。

 ただ、二十代から四十代の人達からは絶賛。

 一度、遣らかしてくれた何処かのオバ・、もとい公爵夫人達には、以前の無理やり開かさせられたばかりのお店の時と、本来のやり方だった場合の損失差を記した書類を見せて、絶対に他に漏らさない事を条件に、試用に入ってもらっている。

 ええ、黙っていると変な人を差し向けようとしてくるので、それならばいっその事、条件をつけて最初から入ってもらっていた方がマシと言うもの。

 BBとCCに関しては、案の定、高位貴族は興味示さないだろうと言う感想を貰っているけど、その代わり忙しい侍女や女中(メイド)達には人気が出ているとか。


「どちらにしろまだ製法に問題があるのか、偶に分離とかが僅かに出るから、販売はもう少し先かな」

「アレくらい問題ないんじゃないの?」

「使う分にはね。

 でも製品としては駄目」


 最高の品質と状態を維持してこそのブランド。

 ただ、化粧品の店【花の滴】も陰りが見えてきた。

 客数も利益もサービスも問題はないんだけど、問題がないからこそ問題が生み出される訳で……。

 うちは基本的に、何処の御用商人になっていないし、そもそもなる気もなく、お店に足を運べるような貴族や富裕層を客層にしている。

 態々、貴族の屋敷に行ってまで、売りつけると言う商売しておらず、せいぜいが会員になっている方の家まで配達するだけ。

 競争率も利益幅も段違いに高い御用商人になるメリットを、私にはそれほど魅力的には感じていないだけの話。

 悪どいと言える程の利益より、欲しい人に広げたいだけだからね。

 それで、何が問題になっているかと言うと、その御用商人から買っている貴族が、なぜか態々店に来て買って行ったりしている。

 大抵は代理の者や侍女が買いに来るんだけど、結果的に言えば、御用商人の悪ど過ぎると言える美味しい商売の客を、私の店が安い商売で奪っている形になる訳で……。


「今のところ警告とかは?」

「先月と同じくらいか、減った方かも」


 嫌がらせや、遠回しな脅しが増えたのよねぇ。

 幸いな事に、ウチの店に手を出すと怒るお偉い方がいるので、そんなに酷い事をやらかす人はいない分、やり口が陰湿というかセコすぎると言うか。

 そう言う意味では、まだオルミリア卿の方が真っ直ぐすぎて楽だと言える。

 問答無用で、叩き潰せるからね。

 でもね、店先に馬の糞とか、ネズミの死骸とか、立ちショ…、用を足した跡とか。

 前世ではともかく、今世では犯罪とは言えない行為がチョコチョコと。


「まったく、そんな暇があるなら、ウチより良い製品作ればと言いたい」

「またユゥーリィが無茶を言っている」

「対抗手段として、普通の考えだからっ」


 ……いや、私の場合は魔法の暴力って。

 そりゃあ、確かに普通の人では真似出来ない事をして商売している自覚はありますよ。

 でも、そこは向こうも魔導士を雇うなり魔導具師を雇うなりすれば良いだけで。

 ……そんな事をすれば、値段が跳ね上がるって。

 そうなんだけどね、身内に魔導士か魔導具師がいれば。

 ……世間的に許されないって。

 うん、そうだよね、普通は貴重な魔導士は、対魔物要員にって思われるよね。

 力の無い魔導士も、大抵は魔物対策関係の仕事に就く事が多いみたいだし。

 私が子供の頃に【魔法使いの成りそこない】を演じていたのは、そう言う側面もあったから。

 そこまでの力すらも無い、力のない魔導士としてね。


「ユゥーリィは神経が図太いから」

「え〜〜ん、エリシィーが虐めるぅ〜。

 って、冗談はさておいて」

「そう言うところ」

「どちらにしろ、私の店程度の規模じゃ、全体からしたら僅かなものよ。

 他で儲ければ良いだけの話を私の責任にしているだけ。

 少なくとも妨害行為をして良い理由にはならないわ」


 高位貴族の中には、付き合いの関係上、御用商人から継続して義理で購入している方達も多いと聞くしね。

 もっとも、義理で購入しているのは私の方である可能性も高いから、そう悪様には言えない。

 とにかくその件は、警備の人間を雇ったから減って行くとは思うけど、必要経費が上がって行くと思うと腹が立つのは仕方ないと思う。

 ……それでも十分に儲けは出ているって。

 それは今は順調だから利益が出ているだけの話しで、陛下の威光がなくなったら、怪しくなる可能性は十分ある話なのよ。


「それはそうと、甘味の二店舗の従業員は今のところ大丈夫そう?」

「今のところは大丈夫」


 あの店の店長以外は、元は全員、住む家もない貧困層の人間。

 それを半年以上掛けて、礼儀作法や調理方法を叩き込んで使っている。

 お店の二階と裏が、そのまま寮になっているし、店長が夜に読み書き計算を少しずつ教えているから、しばらくは大丈夫だと思うけど油断は禁物。


「健康状態の異常や、別の道に歩みたい子達がいたら、遠慮なく言うように徹底させておいてね」

「分かったわ。

 でも、ユゥーリィのそういう所、私は好きよ」


 エリシィーの言葉につい表情が崩れそうになるのをグッと耐える、今は仕事中だからね。

 ともかく二店舗とも、勉強を兼ねてエリシィーが主になって管理をさせてはいるけど、店長ほど従業員の子達に触れ合っている訳でもないし、滞在している時間も短い。

 私は、もともと別の用件で王都に行く事が多いから、どうしても心配になってしまう。

 店長に関しては心配していない、なにせ国の現役情報部の人間でもある副商会長(ゼル)の紹介だからね。

 引退間近で信頼のある人間を、何処からか引っ張ってきたみたい。

 本当に陛下達には、色々な面で助けられていると思うけど、とりあえずは今はこんなところかな。


「それで、ジュリは確認の計算は終わった?」

「も、もう少しですわ」

「ゆっくりで良いから確実にね。

 計算間違いがあったら意味がないから」


 私の商会関係はエリシィー、魔導具関係はジュリと役割を分けてある。

 屋敷内や私が買い出ししてくる物とかはプシュケが帳簿の管理をし、セバスには三人の補助をしてもらっているけど、最初は何か顔が引き攣っていた気もしたけど、そこはスルーした。

 たぶん帳簿の書式に慣れず、戸惑っていたのだろうけど、最近は何かもっとお金を使いましょうと言ってくる始末。

 必要な物は買うけど、必要でない物は買わない。

 服だって毎年作る必要ないのに、皆んなが五月蝿いから毎年季節毎に作っているだけなのに、これ以上は必要ない。

 屋敷は此処で十分過ぎるほど広さがあるし、庭は鍛錬できる場の方が優先。

 それでも五分の一は二人が雇った庭師によって、樹々や花々が植えられてきているから、私としては十分に目の保養になっている。

 今後どうなるのかと楽しみにもしているけど、逆に言うとその程度で十分なのよね。

 それに美術品とか言われてもね〜。

 私、見るのは好きだけど、所有したいとは思わないから。

 屋敷に飾るなら最低限で良いし、汚れても大丈夫なように二流品、三流品で十分。

 ウチは子爵家だから、一流品なんかで揃えたら、それこそ成り上がりと揶揄される材料よ。

 馬車? ヴォルフィード家に言ったら、多分無料(タダ)でくれるわよ〜。

 以前に馬車の技術供与をした時にそんな事を言っていたし、それに馬車を持って何するの?

 私が空間移動持ちの魔導士で、街中での使用も許されている人間だって忘れていない?

 なにより歩くの好きなのよね、色々な風景が見れるし発見があるもの。

 それに、そのためにアドル達を護衛として受け入れたのよ。

 役割を与えてあげないと可哀想じゃない。

 ……セバス達の役割。

 うん、屋敷の管理を頑張って、その内に考えておくわ。




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