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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第八章 〜親としては新米だけど頑張ります編〜
1061/1067

1061.決闘【肆】、まさに老害の見本です。





「貴様等が何と言おうと儂は認めん!」


 どうやらザーネン卿、私が用意した斬艦剣に挟まれて敗れた事が大変に御不満な御様子で、目を覚ますなり私を卑怯者呼ばわりをしている。

 でも巨大であろうが剣は剣。

 立会人もそれは認めている。

 規約と規定には抵触していないと、立会人や係の方に説明されても【負けを認めない】の一点張り。


「あんな巨大な剣など剣ではないし、規程に抵触していないのは、偶々前例がなかっただけに過ぎんっ!

 前例があったのならば、あのような卑怯を形にしたような下劣な代物など、剣として認められる事はなかったはずだっ!」


 かと思ったけれど、一応は無い脳みそを働かせて、それっぽい事を口にしたものの、その申し出が認められるのは、今回の件が終わった後に会議に掛けられて決める事。

 決闘法という法律がある以上、議題に挙げて検討して決めるから意味があるし、正当な物だと認められるのよ。

 ザーネン卿の主張は、規定を今すぐに変更して反則を適用させろ、と言っているのと同じで、駄々を捏ねているに過ぎない。

 何のために国に法務部があって、そこから上がってきた物を更に議題に挙げて判断する議会が在ると思っているのか。

 元とは言え伯爵家の当主で、王国騎士団の師団長だったのに、自分の発言が国のお偉方の立場を軽視しているのだと気が付かないのかな?

 かと言って、くだらない論議に何時までも付き合いたくはないので……。


「私の使った剣は、大きくても剣ですよ。

 まぁ素材に魔法銀(ミスリル)を少量用いているので、魔剣の部類にはなりますが」

「そんな物は、最早、魔導具ではないかっ!

 ついに認めたなっ!

 よし、貴様等も聞いたなっ!

 今、此奴の口からこの決闘で使ってはならない魔導具を使った事をだ」


 だからね、こんな簡単に罠に引っ掛かってどうするの。

 予想通りというか、立会人と係官が魔法銀(ミスリル)を使っただけの魔剣は剣でしかなく、魔導具ではないと説明しはじめる。

 序でに、この場に呼ばれていた宮廷魔導具師が、私が用いた剣を鑑定した結果、魔法銀(ミスリル)を用いただけの魔剣であり、魔導具でない事を宮廷魔導士の名の下で断言した。

 そしてそのままの流れで……。


「ザーネン卿、魔法銀(ミスリル)を用いただけの魔剣を、この決闘で用いる事が反則であると主張するのであれば、貴方様が用いたブロードソードも魔剣である以上、貴方様も規約違反で反則になります」


 そうなのよねぇ。

 ザーネン卿が使っていた新品のブロードソードは、魔法銀(ミスリル)を用いた魔剣。

 以前にも言ったけれど、金に余裕のある騎士ならば、自分に合わせた魔剣を作るのが騎士のステータスになっている程なので、見栄っ張りのザーネン卿が持つ剣が魔剣でない訳がない。

 そもそも騎士が魔剣を持ちたがるのは、魔法銀(ミスリル)をも用いる事で剣に魔力の流れやすくなり、その結果、剣の強度が上がるだけでなく、若干切れ味もよくなる上に、自分の手足の延長のように感じられるため、剣として非常に扱いやすくなるからなの。

 無論、騎士や剣士として、一定以上の技術があってこその話だけどね。

 そして、私の罠に嵌まったというか、寧ろ自爆と言える発言をしたザーネン卿への攻めはこれで終わる訳がなく。


「他にも、治療のために少々乱暴に剥がさせて戴きましたが、貴殿が身に着けていた鎧は魔導具の鎧である事は御存知ですね?」

「……い、いや、知らん。

 い、今初めて聞いた事だっ」

「ほう、あの鎧は我が国の騎士団の師団長に就く際に貸与される代物。

 職を辞する際に本来は国へと返却する物ではありますが、本人の強い希望があれば、規定の処理をした後に引き続き貸与される事もある事は、私も存じております。

 ですが、貸与される際に鎧は魔導具である事とその能力を説明をされ、国の名誉を守るために、鎧に恥じぬように自らを律し、常日頃から励むようにとお言葉を戴いているはずです」


 これまた以前に言ったけれど、魔導具の鎧って物凄く高価なのよ。

 はっきり言って魔剣の何倍も高価なの。

 師団長クラスだからこそ、国の見栄もあって貸与という名で支給される訳だし、基本的に消耗品で、魔導具としての能力の使用回数と年数劣化で魔導具としての寿命も早い事から、職を辞した際に継続貸し出しという名目で事実上の譲渡(・・・・・・)が許されているだけに過ぎない。

 唯の鉄鎧も、立派な魔導具の鉄鎧も、鋳潰してしまったら価値に差なんてないからね。


「昔の事など、一々覚えておらぬわっ!」

「規定上、騎士の名でもって国に誓う儀式が行われているはずですので、記録を探させてきても宜しいのですが」

「ええいっ、今は決闘の最中だっ!

 そんな遙か昔の事務的な細かな事など関係ないっ!

 これだから、騎士でもない奴は碌な者がいないのだ」

「そうですか。

 では更に言わせて戴くのであれば、ザーネン卿、あの短剣は何方から入手されたのでしょうか?

 古い代物ではありますが、あの剣も立派な魔導具です。

 しかも防具である鎧とは違い、攻撃のための剣である以上、存じなかったでは済みません」


 幾ら怒鳴って誤魔化そうとも、それで誤魔化せれるのは同じ脳筋の格下か気弱な人間だけ。

 このまま放っておいても良いけれど、それでは私の気が済まないので加勢。


「あらあら、この決闘は王族の方も見に来られていると言うのに、まさかの反則負けですか?

 しかも、この決闘は王妃様主催で慈善事業の一環として組み込まれているため、多くの方の御協力を仰いでいる事もあり、王都だけでなく王国中の各主要都市で話題になっているため、バッカカス・ノルド・ザーネン元伯爵様が、王族の方々の前で恥この上ない反則負けをしたと、国中に知られてしまいますわね」

「ぐぬぬぬぬっっ!

 こ、小娘ぇぇっ!」


 おぉぉぉ、顔を茹で蛸みたいに真っ赤にして、睨み付けてきますよ。

 私、嘘は言っていないですよ。

 陛下から、今回の決闘のルールの連絡が来た際に、王妃様がこの決闘で行われる賭けを慈善事業として行うと一緒に連絡されているはず。

 その時点でこうなる可能性を想像出来たはずなのに、それでも実行したのはザーネン卿の選択。

 まぁ残念な方なので単にそこまで考えられなかった、という可能性の方が高そうではあるけどね。


「流石にそれは、ザーネン伯爵家の他の方々がお気の毒です」


 という訳で、立会人と他の係官の方達に提案。

 魔導具の使用禁止の規定を無かった事にしないかとね。

 この仕合のための特別規定なので、当事者である私とザーネン卿、そして立会人の方が認めたのであれば可能なはずだと。

 後、自分の事は盛大に棚に上げて、人の剣を反則呼ばわりするお方のために、仕合の二本目からは事前に得物を立会人と、せっかくお越し下さった宮廷魔導士の方にお見せして確認して貰う事で、この決闘が正当に行われた物とするのは如何だろうかってね。

 王族の方々が関わった決闘を、このまま汚すのは王族の方々の名を汚す行為になる可能性もあると匂わせて。

 煽るように話をしたのは、その後にこうして話しを自然に繋げるためであって、相手を怒らすためだけに覆った訳ではない。

 煽って怒らせたところで、私に何ら利するところはないのだもの。

 立会人達が私の提案に小さく頷いた後。


「ザーネン卿、如何致しますか?

 貴方様が同意するのであれば、一本目はシンフェリア辺境伯爵閣下の先取とし、二本目に入りたいと考えております。

 この状況で無いとは思いますが、同意しないのであれば、多くの方々だけでなく王族の方々の前で行われているこの決闘、貴方様の反則負けと言う事で決着が付く事になります」

「ぐぬぐぬぐぬぐぬぅぅぅ〜〜〜っ!

 ……分かった、王族の方に恥を掻かす訳にはならぬ以上、今回は小娘の卑怯な提案を飲んでやろうではないか」

「「「「……、……」」」」


 本当……、なんでこの人、ここまで強気で上から目線でいられるんだろうか。

 ドルク様がもの凄く嫌そうな顔で、深い溜め息と共に付き合いきれないと仰る訳だわ。


「儂の広い心に感謝するがよいわっ!」


 だからそこで私に非があって、それを許すような事を大きな声で言わないで欲しい。

 どういう神経しているのだろうかと、事情を知る立会人達が、心底呆れた視線で見ていますよ。




 恥の意味を知らぬのかって。








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聞き苦しい言い訳とゴネだけで1話終わった…
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