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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第八章 〜親としては新米だけど頑張ります編〜
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1057.お茶が流行っているようなので、新たな商売を始めたいと思います。





 娘のサクラが物に掴まる事なく数歩を歩いた事に、私と嫁達が歓喜している中で、王都とオルディーの港街の中にある、とある建物が話題を呼んでいる。

 建物の屋上から更に柱を立てて、大きな帆が吊り下げられているからだ。

 最初は鮮やかな薄青色の下地に、日付を示す内容が記載されていただけだった。

 ただ、それは毎日僅かに書き足され、次第に形を成そうとするのが誰の目にも明らか故に、尚の事何が完成するのか注目されている。


「ユウさん、毎日板で塞がれたお店の中を覗こうと、多くの人が集まっているそうですわ」

「そうでなければ派手な宣伝をした価値は無いわよ」


 この世界の人々は娯楽に餓えているからね、こういった日々変わって完成して行く姿は興味を引く。

 で、何をしているか言えば、文字通りお店の宣伝です。

 春の王家の催しの数日前の開店を目指して、現在従業員は最終調整に向けて修行中です。

 例によって従業員の大半は元孤児だけど、このお店は常識的な礼儀作法が出来れば問題ないので、【女中(メイド)喫茶】や【従僕喫茶】が出来るようになるまでの繋ぎ的存在だと言える。

 勿論、それで終えるつもりはないけどね。

 で肝心の何を売る店かと言うと、只のお茶です。

 専用機材を用いたワッフルなど簡単な軽食も食べれるけれど、基本的にはお茶を中心とした飲み物を扱う喫茶店。

 王妃様達が今までと違うお茶文化を広めてくださったのもあるし、砂漠の国であるイシュライナからトーヒー豆が手に入るようになっただけでなく、我が家とアーカイブ家の融資で大規模荘園を作らせたから、これからどんどんとトーヒー豆が安価に手に入るようになるのよね。

 おまけに王都にある炭酸事業も合わせて、この春に正式開業。

 となれば、前世にあったような某珈琲店を作らないのは嘘だと言える。


「売りはそこそこ高級な味わいが、そこそこのお値段で味わえて持ち出しも可能。

 お店の絵が入ったコップは、再び持ってこればその分を差し引いて新たなコップで商品を提供。

 コップだけを返却して現金化する事も可能。

 序でに有名な分かりやすい場所であるなら配達も可能、と可能の三連発」

「でも相変わらず魔導具による暴力よね」

「ええ、他の店では真似出来ない暴力ですわ」

「仕入も大半が関連部署からだから、原価を下げられるし」

「イシュライナ産のトーヒー豆で淹れた珈琲だなんて、王家ですら満足な量を確保出来ていないというのに、平民の方が飲むにはやや高いと言っても、あの価格で売られたら、他のお店は参入しても太刀打ち出来ませんわ」


 他のお店では真似出来ない、隙間を狙った上手い商売だと言って欲しいなぁ。

 まるで私が悪徳商人みたいに聞こえるから止めて欲しい。

 因みに建物は何方も平民向け服飾店【森の紬屋さん】(レ・シルヴァン)の横に建てているので、連動した集客も見込める。

 そのためもあって、服飾店の横か前後に土地を確保させておいたのよ。

 商会の関連店と隣接していれば、警備代もそのぶんだけ節約できるしね。

 そうそう肝心のお店の名前なんだけど、オルディーネ領が海に隣接している土地である事もあって……。


【海の雫】(シー・バッカス)


 因みにバックスではなくバッカスで、そのバッカスもお酒の事ではなく、このお店の初代店長と言うか部門を任せている方の名前から戴いた店名だったりする。

 本人は凄く恐縮していたけれど、偶然にも丁度語呂が良かったのよ。

 前世の某お店と名前を似せても違和感がないしね。

 その辺りの名前の由来をそれっぽい物語を付けて、装飾を付けてインテリアの一部として飾ってあるので、もしも私以外の転生者がいたとしても誤魔化せるだろう。

 まぁお店を記した絵、ロゴは正面から見た帆船に乗る翼を生えた角狼(コルファー)なので、きっと大丈夫。

 此処で人魚を選ぶ程、私は迂闊ではない。


「王都と港街でのお店の評判が良かったら、他の平民向け服飾店を出している街にもお店をだすから、そのための準備もよろしくね。

 主にゼルがだけど」

「ヘルマン様、お可哀想に……」

「本当に次から次へと新しい商売を思い付かれますから、大変な思いをしていると思いますわ」


 大丈夫、ゼルにはその分だけ高い給与を払っているし、理由を付けて私に事後承諾でドンドンと人を雇っているから、何とでもするはず。

 現にバッカス氏なんて、直ぐに見付けてきたわよ。


「それと、春の王家の催しの後でやる我が家の催しだけど、趣旨はお茶の選定会だと手紙の原案を考えておいて」


 王妃様達のおかげで、様々なお茶の組合せが流行っているから、競わせたら面白いと思うのよね。

 一番になった人のお茶を期間限定でお店に出す様にすれば、その方の名誉にもなりますし、家の名前を売る事にも繋がる。

 貴族が持ち寄ってくるような茶葉って物凄く高級な代物だから、本当にそのままの組合せは原価の問題で無理なのでそこは前もって御了承して貰うし、微妙なお茶が優勝したらそれを理由に味を調整してしまえば良い。

 原案を考えさせるのは、お勉強を兼ねての事なので、私が面倒臭がった訳ではないので誤解をしないように。


主人(マスター)、その件を一応は王妃様方に、ご連絡して置いた方が宜しいのではありませんか?」

「必要?」

「おそらくは」


 社交界に様々なお茶を広めたのは確かに王妃様達だけど、その王妃様達に伝えたのは私なので別に今更な気がするけれど……、プシュケが気にするなら手紙一つで済む話しなので、素直に手紙を出す事にする。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




「ん〜〜、んべ」

「あらあら、これは好きじゃのね」


 今の所食物アレルギーが出る事なく離乳食が順調に進んでいるサクラだけど、味覚が未発達の幼い子であっても好き嫌いは存在する。

 吐き出した物を目の前で口に入れてみせる。

 その事にユリアは最初は驚いていたけれど、目の前で食べてみせる事で、これは食べ物なのよ、と教える事に繋がると説明すると納得してくれた。

 まぁ貴族は他人が一度口に入れた物を口にしようなんて、普通は思いもしないだろうから、ユリアが驚いて凄い貌をするのは寧ろ普通の事であり、私の行動が貴族から掛け離れたもの。

 それでもちゃんと説明すれば納得してくれる分だけ、ユリアは随分と私に譲歩してくれていると思う。

 その信頼の分、適当な事を言ったら恐いけどね。


「これは次回から量を少なくしても構わないけれど、無くしては駄目よ。

 嫌いな物は吐き出せば良いと覚えてしまうから」

「畏まりました。

 少しずつ慣れさせる方向で行きたいと思います」

「手間を掛けさせて悪いわね」

「いえ、これがサクラ様のためになる事ですので」


 本当に私は色々な人に助けられていると感じる。

 子育ての大変な部分は、多くの人に助けられているのだもの。

 最近はちょっと夜泣きが酷くなってきているけれど、そんな事は些細な事だし、それこそ嫁二人の力も借りているのだから、世のお母さん方よりも楽をしている事には違いない。

 だからこそ思うのよ。

 仕事が忙しいから、なんて言い訳は通じないってね。

 サクラは大変な人生を歩む事になるのだから、ちゃんとサクラを見守り、愛してあげている事を疑問に思わないようにしてあげたい。


「……、……、……」

「あらら、お腹いっぱいでお眠さんかな?」


 もう少しだけ食べて欲しいから、匙一杯分をサクラの口に差込、少しずつ嚥下させるのを見守ってから、サクラにゲップをさせる


「……げふぅ……」


 うん、おやすみなさい、サクラ。

 良い夢を、ね。








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