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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第八章 〜親としては新米だけど頑張ります編〜
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1056.ドールゼン家の子供達は、今日も仲良く追い駆けっこをしています。




「マンマ〜」

「にぃ〜にぃ〜」


 一歳半ともなれば、それなりに立って歩けるようになるし、単語ではあるけれど意味のある言葉を話せるようになる。

 ユルギア君にクレアちゃん、ドールゼン家の兄妹は、あっちに歩いて、こっちに歩いてと、目を離せなくなってきた。

 ベビーゲートがあるので安心ではあるものの、油断は出来ない。

 なにせ子供は何をするか分からない、謎生物の代表のようなものだからね。

 もっとも歩けると言っても、所詮は一歳半前後の赤ん坊。

 すぐに疲れて座り込み、ハイハイへと形態変化。

 この世界の貴族だと、子共が二本の足で歩き始めると二本の足で歩かせ続けようとするのだけど、私はそれを止めさせている。

 獣と同じ事を何時までもさせたくはない、と言う貴族特有の考えは分からなくはないけれど、子供の身体の発達には必要な事なの。


「すぐ座り込んでしまうのは、真っ直ぐに立つための筋力の発達が未熟だからなの。

 だからと言って無理に二本足で歩かせても、疲労で動けなくなるし、無理に補助をすれば骨の歪みの原因になりかねないわ。

 何より本人のストレスになるの。

 それならば、四つん這いであっても自由に運動をさせて、その事で筋力の発達を促すと同時に体力を付けさせた方が、よほど子供達のためになると思わない?」


 疲れて四つん這いで歩くくらいなら休んでから歩きましょうでは、一日の運動量は激減してしまう。

 脳筋なところがあるアドル達には、一日に対人戦を何回かやるのと、地味な型の練習をやるのと、新人には何方が大切だと思う?

 と聞いたら納得してくれた。

 型の練習って技を覚えるのが目的なだけでなく、それに必要な身体を作るのと同時に、多くの事を含んでいるの。

 赤ん坊が最初に覚えるハイハイも同じ事。

 実際、大人でもハイハイで五十メートルを往復させたら、如何にキツイ運動か分かる。

 ただ、赤ん坊は二本足で歩くだけの筋力と体幹が出来ていないため、四つ足のハイハイの方が楽に感じるだけなのよ。


「まんま〜〜〜〜っ」

「ニィ〜ニィ〜〜ッ」


 という訳で、今日も今日とてドールゼン家の兄妹は、逃げる兄を猛然と追い掛ける妹という構図で大運動会を広げている。

 もうね、力尽きてそのまま寝てしまうまで行うから、この兄妹の身体の発達は早そうだと思うのは私だけだろうか?


「いえ、普通に玩具で遊んでいる時間も多いですよ」


 ユリアの言葉にちょっとだけ安心する。

 赤ん坊のお仕事は、よく食べ、よく遊び、よく眠る事。

 ちゃんと頭を使って遊ぶ事をしているのなら安心できる。


「ところでユリア、この二人、大丈夫だと思う?」

「ユゥーリィ様が御心配するのは分かりますが、今、それを心配するのは流石に酷と言うものです。

 大丈夫です、それなりの年齢になったら、きちんとそこは教育します」


 幾らこの世界が兄妹による近親婚を認められていると言っても、あまりそれが繰り返されるのは生まれてくる子共にも良くない。

 血が濃くなる事による問題を防ぐこの世界特有の薬が存在していようと、血が濃すぎれば影響が出る事は防げないからだ。

 兄妹の仲が良いのは良い事ではあるものの、推奨出来ない例が身近にあれば箍が弛んでしまう。

 その点は私も他人の事は言えないのだけど、此方は普通の方法では血が残らないので、例外と言う事で。

 で、ユルギア君とクレアちゃんにとって見習って欲しくない例は、親であるギモル達だけでなく、他にも身近にいて、これまたドールゼン家の異母姉弟なのよ。

 クラリスは十四歳でシュナイダーは十三歳と、男女の関係が気になる思春期真っ只中。

 まだまだ頭の中は子供と言えるシュナイダーではあるけれど、硬派ぶっているくせに意識してしまっている時点でアウトだと言える。

 これでクラリスが相手にしていなければ何の問題も無いのだけど……、完全にロックオンしている目なのよね。

 本人は可愛い弟を面倒見ているつもりなのだろうけれど、アレは弟を見る目ではないと断言出来る。

 幸いな事にクラリス自身が自分の想いを自覚していない様なので、あの程度で済んでいるけれど、……自覚したらどうなる事やら。


「因みに、もう一つのドールゼン家はどう思う?」

「……既に手遅れで、なるようにしかならないと思います」


 そっか〜、私の妄想なら良いと思ったけれど、ユリアの目にもそう映るのね。

 本当、ドールゼン家の血はどうなっているのかしら……。

 シュナイダーに貞操帯を付けるか、いっその事チョン切れば、心配しなくても済むかもしれない。


《……流石にそれは止めてあげて》


 呆れるような声で何かが聞こえてきたけど、気のせい気のせい。

 そもそも冗談なのだから、最初からする気はない。

 無論、手がない訳でもないのよ。

 貴族らしく当主命令でもって適当な人間を見繕って、二人に婚約者を宛がうとかね。

 でもねぇ、私そう言うのが嫌だから実家を出た経緯があるから、そう言う強制的な真似はしたくはないのよ。

 中身がオジさんなのに、そもそも男に結婚とか無理だって言うの。

 伯爵家の令嬢だったポーニャは自分の意思だったから仕方がないにしろ、イリーナ達はほぼ平民なのでくだらない柵なんて気にしないで、好きな人と結婚なさいと言いたい。

 もっとも、その好きな人が問題があるから悩んでいるんだけど、ならポーニャの時のように本人の了承ですれば良いと思うでしょ?

 でもね、現状でそれをやると、クラリスが自分の想いを自覚して暴走する可能性が出て来る。

 ぶっちゃけ、クラリスがシュナイダーを襲う。

 あの子、不思議ちゃん属性ではあって少しポヤッとしているように見えても、実際には判断したら躊躇がない行動が出来る娘なの。

 その時の行動力はラキアをも凌ぐと思っている。


『恋は戦よ、奪うか奪われるかの戦いなのよ』


 何時ぞやお酒の入った席で、セレナとラキアがそんな事を言っていたから、洒落にならない。

 シュナイダーの意見を聞いて相手に話しを持っていって、そんな事態を起こされては私の面子が潰れるし、それ以上に相手に対して失礼。


【婚約者を義姉に奪われた娘】


 だなんて不名誉な傷を相手に付ける事になるのよ。

 相手を紹介するって事は、その相手に問題が無い事を保障するって事でもあるのよ。

 何事にも例外や、そんな事を気にしない人はいるけどね。

 という訳で、今に至っては誰かを結婚相手として紹介するだなんて、危険な真似は出来ない。

 せいぜい周囲の人間に、下手な干渉をしないように注意を促しておく事くらいかな。

 問題の先送りではあるけれど、それでもお互いに大人になって、冷静な判断を下せるようになってから当人達が決めた事ならば、それはそれで仕方がない事。


「ん?」


 ふと、そこで変なタイトルが脳裏に落ちてきた。


【婚約者を男に奪われた令嬢】


 いや、ありかもしれないけれど、私が好きなのは男同士の友情譚であって、NTR系ではない。

 書くのならば国の派閥問題のために結婚を諦めて、親友でもある第三王子と共に生涯結婚をする事もなく、幾つもの苦難を乗り越えながら国の平和を築きながら友情を育む物語だろう。

 物語の見せ場としては、婚約破棄の嘘の理由として『私は男しか愛せないのだっ!』とカミングアウト宣言する所と、周囲にそう思わせるために親友で協力者である第三王子との、熱い濡れ場を想像してしまうような、会話と仕草の数々かな。



 いや、こんな事考えている場合じゃないからっ!






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