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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第八章 〜親としては新米だけど頑張ります編〜
1054/1076

1054.封印される通信の魔導具と魔導船の運用。





「伝声管の代わりに用いた振動の増幅機能付きの糸電話は、湿気と気温の変化と振動による摩耗が激しいため、室内であっても船での使用は向かないと。

 糸の代わりに魔法銀(ミスリル)を用いた魔力伝達コードにして、振動ではなく魔力の信号にした物は実用には耐えるものの、値段が高価になりやすい事もあって、外での使用は魔法銀(ミスリル)目当ての盗難に遭う可能性が高いと……、作ってはみたものの、問題があるため仕えないって事ね」


 インシュウシンカン国で騒動に巻き込まれた魔導船スクイットが、通常の航路を通って帰ってきたため、一応は船の損傷具合の確認のために船の工房に入れて確認した所、大枠では問題はなかったものの、一部の機能に問題がある事が発覚。

 試験的に導入したものなので、問題があっても然程問題はないものの、その結果の一部が、先程読んだ短距離通信魔導具と中距離通信魔導具の試用報告書。

 室内なら問題ないし、地中深くに土管を通して埋めてしまえば、そうそう盗難に遭う事はないと言える。

 ただね、この世界だと地中にも魔物がいるので、被害に遭わないとは限らない。

 地中千メートルとかなら問題ないでしょうけれど、そちらはそちらで技術的な理由で現実的ではない。

 やはりその辺りを考慮すると、使用範囲は短距離型が大きな建物の中として、中距離型は街中のみと使用範囲が限定されると思われる。

 それも悪用しようと思えば幾らでも悪用出来てしまうし、魔導具【遠き想いを伝えし鏡台】の時も同様の心配が起きた事を思えば、封印した方が良いのかも知れない。


「よし、陛下達に丸投げしよう」

「……陛下達もお可哀想に」

「……本当にそうですね、主人(マスター)には、少し手加減して欲しいと思います」


 私の決断に対して周りは酷い反応だ。

 問題になるかもしれない魔導具を……。


『このまま封印しますか?

 それとも国の責任で以て使いますか?』


 とお尋ねするだけですよ。

 封印するなら開発費と開発に掛かった時間に、試験運用に対する費用程度の損失で済む話しだし。

 国が使いたいと言うのであれば、使い方が危なさそうな技術なので、格安で利権をお売りいたしますよ、と国にとって益になるかもしれない話しなのだから、非難される所など何一つない。

 まぁ良いや、せいぜい陛下達が忙しくなる程度の事でしかないもの。


「エリシィー、船の今後の予定は?」

「点検整備を含めて一月を掛けた後、乗員の半数を入れ替えてエーデルフェルト大陸方面に向けて出発し、四ヶ月の航海を予定して帰港する事になっているわ」

「乗員の交代時期が、他の通常船よりも短期間で行う事に対する不満は?」

「今の所はないけれど、今後は分からないわね。

 人は慣れれば不満を口にするものだもの」


 通常、各国を跨ぐ程の外洋船は一国一城状態で、乗員が入れ替わる事はあまりない。

 その分、寄航する期間を長く取ったり、帰航した際には更に長い期間を停泊しするので、一度港を出れば数年は戻らない事も多いとの事。

 でも、私の所有する船はオルディーの港街に戻ってくる度に、乗員を半数交替する方式を採っている分だけ、各港での寄港期間は短い。

 この世界だと無い方式だったようだけど、この方式だと船乗り達が家族との時間を長く取れるし、陸にいる間は陸で出来る仕事をして貰っているので、評判そのものは良いのだけど問題が無い訳ではなく、従来からある通常の帆船と、私が作った魔導船ではその航行能力に大きな差がある事で、雇用条件に差が生まれてしまう事。


主人(マスター)、魔導船の乗員は例え雑役夫であっても全て上級船員です。

 同じ扱いをする事自体が、最初からおかしいのです」

「そうね。

 だから、そこは同じ扱いはしていないし、同じ扱いをする気もないわ」


 魔導船で動力の一部に魔力を用いる事もあって乗員は全て魔力持ちだし、だからと言って魔力があれば良いという訳でもなく、寧ろ魔力の強さよりも魔力を操作する事に基準を置いている。

 幾ら強い魔力と魔力量を誇っていた所で、魔力操作が未熟ならば魔力を魔法石に補給出来ずに無駄に垂れ流してしまうだけだもの。

 勿論、船の取り扱い技術や勤務態度が最重視されるのは、今更言うまでもない事。


「船長のアインフォース卿の報告書では、一名の交代と二名の経過観察が必要な者が出ているわ」

「一名はともかく、二名は陸にいる間に研修をして、その結果を見て交代をするかどうか見極めるように指示を出しておいて」


 雇用条件が良いと言う事は、それなりの働きが求められると言う事。

 エリシィーから渡された報告書に目を通す限り、二名は職務放棄とまでは行かないようだけど、職務懈怠の傾向があるようだし、既に交代希望(戦力外通知)の出ている一名に関しては、寄航した際の夜遊びが激しいらしく、既に現地妻らしい約束を幾つもの港で女性としているらしい。

 女性から見たら立ち寄った船乗りなど所詮は金蔓で、遊ばれているだけでしょうけど、そうでなかったとしたら腹の立つ話しね。

 まぁそれでもそんなものは個人の問題でしかない。

 領主として問題にすべきなのは、その夜遊びの中で酒場で酔っ払って色々と口にしてしまっている事。

 インシュウシンカン国で受けた襲撃も、この一名の口から漏れた事から作戦が組まれた可能性も高いと見られている。

 明確な証拠もないし、本人もその気はないのだろうけれど、問題と言えば問題。


「まだ解雇はしないけれど、陸上勤務のみにするか、通常船の乗員へ移籍させるか、本人の意向を聞いてから決めさせて。

 それでも改善しないようなら解雇ね」

「分かったわ」


 厳しいかもしれないけれど、この世界では船の乗員って、他国の間諜ではないかと疑って見られるし、国を出て仕事をしている以上、他国の間諜になってしまっていないかと味方からも疑われてしまうの。

 それだけに給金は高いのだけど、その分、日々の生活にまで自制と規律を求められるの。

 そこは騎士と同じなので、この世界ではそれ程おかしな事ではなく、前世でも職種によっては求められる事なのでおかしな事ではない。

 例えば航空旅客機のパイロットがアルコール中毒気味だとか、夜遊びを勤しむあまり交際相手の女性達から色々と頼まれたり(・・・・・・・)する可能性がある性格の人物だとか、航空会社側からしたらそんな人間は危なくて使えない、と判断するのと同じ事。

 嫌なら辞めろ、ってね。

 多くの人命や組織の命運の前には、一人の人間の人権など無視される事は、どの時代も一緒なのでしょうね。


「ん〜、うちの船長になりたい人がいるってか」


 アインフォース卿の報告書の最後の方に、ポンパドールに寄港した際に知り合いの貴族籍を持つ元船長に会い、我が家の雇用条件を聞いて、是非とも働きたいと言ってきているらしい。

 子供が生まれてから何年も子供の顔を見れないなど、もう耐えられないと船乗りを止めたばかり、短期間で寄港出来る船は人気が高いため、只の乗員ならともかく船長ともなれば、空きはそうそうないのが実情だそうだ。


主人(マスター)、口調が悪くなっております。

 お子様達が真似をされては、恥を掻くのはお子様達となります」

「気を付けるわ。

 それはそうと、この人物についてリズドにいるジィーヤとゼルに調査するようにお願いして貰えるかしら」

「畏まりました」


 アインフォース卿曰く、かなり優秀で信頼も出来る人物らしいけれど、調査は必要。

 話の流れ的に魔導船の船長の交代要員を希望しているようなので、尚更に何重もの調査をした上で、人物を見極める必要がある。

 現状、魔導船は各大陸を一周してくる長距離運用をしている【スクイット】に対して、シンフォニア王国のフォルスの港街を中距離往復する【カルマール】の二隻がある。

 現在、この【カルマール】を帰港する度に、目的地をカルデア大陸のトライワイト王国、エーデルフェルト大陸のロドズ帝国、同じオルディーネ大陸であるキレイ帝国と順次変えて運行する案が出ている。

 魔導船は他の船とは比較にならない程の高速船でもあるので、積載能力よりもその能力を活かしたいとの事。

 通常の五分の一の航行期間で海を渡る事が出来るので、その考えは間違ってはいない。


「各国からの要望が高いのは仕方ないのだけど……、誰がその損失を埋めるのって言いたいわ」


 ぶっちゃけ、人を運んでもあまり金にならない。

 飛行機にしろ船にしろ、売れる物を大量に運ぶから、利益が上がるのであって、人を運ぶのは人と人との繋がりを持つ事で、商売に繋がるからなのよ。

 人を乗せられる空間で、どれだけの荷物を詰められる事か。

 おまけに魔導船は高価な魔導具そのものだし、その装備も高価な物が使われているため、金額に換算しようとしても換算できないほどの金額になるとの事。

 信頼の置けない乗客をあまり乗せるのは、防犯面で不安がある。

 勿論、物資だけなら、それ程問題にはならないけれど、求められているのは間違いなく、乗客を乗せるための船。


「良いの?

 他国だけでなく、国からも要望が来ているのでしょ?」

「それ程強制力のある要望ではないから構わないわ。

 一応は前々から考えていた事もあるし、代案として挙げれば煩い方達も何とかなると思うし」


 トライワイト王国から賠償で多くの船を戴いたし、運の良い事に大王烏賊(クラーケン)の幼体三体も手に入ったから、そのまま大王烏賊(クラーケン)を元にした魔導船を作ったけれど、それらの幸運がなかったら、私が作るつもりでいたもの。

 木造船は流石に厳しいけれど、この世界では比較的安価な金属であるチタン製の船なら、形状変化の魔法を駆使して作れない事もない。

 チタンは完全耐食に近い性質を持っているから、そのままでも錆びにくいし、比重も比較的軽い金属。

 木材の方が比重は遥かに軽いけれど、航海に耐えられるだけの強度を得ようと思うと、かなり体積を増やさないといけないため、総合的には金属を用いた船よりも重くなってしまう。

 なので形状変化を駆使したチタンを船体に用いた船は、同じ大きさの木造船に比べて、十分の一ぐらいの重さで収まってしまうと言う、不思議現象が起きるんですよね。

 この世界の人間の常識からして、金属の船が水に浮かぶだなんて信じられない話しでしょうけれど、浮力を確保すれば金属だろうが、岩だろうが浮かぶのだから仕方がない。


「問題は主動力よね」


 補助動力として帆を用いりはするけれど、求められている用途を考えれば、主動力は必須。

 封印した魔導円環動力機関ロータリー・マギ・ドライブを用いても良いのだけど、燃料となる魔石の供給体制が出来上がらない事には、各方面に対して問題が起きてしまう可能性が高い。

 現状では水流ジェット推進の魔導具を、戦災級の魔石を幾つか合成した魔法石を使うのが最善策だろう。

 災害級の魔石作った物に比べて効率も推進力も大きく違うけれど、大陸の端を往復するだけの中距離航行ならば、魔力タンクとなる魔法石を複数仕込めば何とかなる計算になるし、その辺りの技術は以前よりも上がっている。

 問題は、やはりそれだけでは国が求めているような、大陸間高速連絡艇には届かない。

 私が作った魔導船が驚異的な高速運行が出来るのは、船体に【水】属性を持つ魔物の皮を用いているからこそなの。


「……使うか」


 金属との相性が良くて、尚且つ【水】属性を持つ魔物由来の素材が山程余っている物がある。

 お忘れかもしれませんが、ゼノお爺様は天災級の魔物である氷皇龍ゼノジニヴァ。

 つまり倉庫に山程あるゼノお爺様の鱗は、【氷】属性であると同時に【水】属性と【風】属性をも内包する素材でもあるの。

 しかも超強力なね。

 作る物が船という巨大な物だから、逆にその辺りの量の調整はしやすい。

 龍種の新鮮な鱗だなんて、高価すぎて売れずに余っているのだから、この際使った所で文句など出はしないだろう。

 もしも国から文句が出よう物なら……。


「では在庫を全て買って下さい。

 倉庫代が掛かって仕方がないんですから」


 と言ってやれば済む話し。

 間違いなく、その後にお叱りを受ける案件にはなるけれど、それ以上言ってこなくなる案件でもある。

 お叱りを受けて終わりなら遣らない手はない。

 そもそも無茶な要望を言って来ているのは、シンフォニア王国を含めた各国ですからね。


「ユゥーリィっ!

 そう言う事(魔導具開発)は、執務中にしないのっ!」

「……はい、仕事を脱線して御免なさい」


 各国よりも嫁の方が恐いと思うのは、私だけだろうか?







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