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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第八章 〜親としては新米だけど頑張ります編〜
1035/1065

1035.降っては降っては、ずんずん積る、のは雪だけでなくストレスもありますよ。





 ライラさんやお姉様達が、それぞれが帰るべき場所に旅立ってから数日、オルディーネ領に、本格的な冬がやってきた。


「うひゃ〜、昨夜は随分と積もったわねぇ」


 一晩で五十センチは積もったかな?

 庭の隅にある積雪棒を見ると……、昨日の夕方が、あの辺だったはずだから、六十センチ程積もった事になるのか。

 まぁ十センチは誤差の範囲と。


「さぁ、今朝も始めちゃおう」


 朝の散歩を兼ねて、積もった雪は収納の魔法の中に力場(フィールド)魔法でポイポイしちゃう。

 地面を削る訳には行かないので、地表三センチから五センチぐらいの所まで。

 それより下は【水】属性魔法で液体に状態変化をさせてから、水を虚空へ還元してから【風】属性魔法で地表を乾燥。

 まぁ今も雪が降っているから、除雪しても直ぐに積もってしまうけれど、放っておいたら、どんどんと凄い事になってしまう。

 敷地内を軽く一周したら、いつも通り鍛錬場でもって軽く運動。

 身体が暖まってこれば、寒さはこれくらいなら気にならないし、結界で体表を覆っているので、風が吹いてもそれほど寒さを感じない。


「相変わらず、朝が早いなぁ」

「本当よね、慣れたと言っても、ちょっと今日は寒いせいかキツイわ」


 準備運動が終わった頃に、ギモルとラキアが顔を見せる。

 ラキアはどうやら、寒くてお布団から出て来るのが厳しかったらしい。

 部屋には空調の魔導具があるのだけど、寒さにも身体が慣れておかないといけないからって、寝る前に魔導具を切っておくらしいのよね。

 その辺りの戦士としての意識と、日々の努力は凄いと思う。


「そう言えばアドルは?」

「セレナが体調悪いみたいだから、もう少し様子見てから来るってさ」


 現在、妊娠中のセレナは、大分お腹が目立つようになって来ており、安定期はとっくに迎えているものの、体調を崩す事が増えている。

 症状としては妊娠中の女性ならばよくあるものの、お腹の子供の事を考えると、あまり強い薬を出せないのよね。

 セレナの場合、体質の事もあるかもしれないけれど、何方かというと精神的な不安があるかな。


『ユゥーリィの子供は私達の子供が守る』


 だなんて、言いきっていたもの。

 別にそんな事は気にしなくても良いと思うのだけれど、新興貴族で、その当主である私の専属護衛騎士の立ち位置って、私が思っている以上に重要らしく、二代続いて専属護衛騎士に就く事で、カルミ家としての立ち位置を確立したいって想いがあるらしいのよね。

 何処かの誰かさんが、四人の中での協定をぶち破って、勝手に先に子供を産むわ。

 少し遅れて私が妊娠して、サクラを産んだ事から、焦りがあったらしいのよ。

 おまけにそんな時に二人目も早く欲しいと、これまた無責任に口にした何処かの誰かさんのおかげで、セレナ、精神的に追い込まれていたのよ。


『アドルとの子を絶対に産むの』


 そもそも新婚旅行の時に子供を授かったら、その時は産むと決めていたのに、子供を授からなかったから、尚のこと力んでいるのよね。

 更に言うなら、幼い子供達だけで、キャッキャと楽しそうにしているのを見れば、自分の子供のその中に加えたいと思うのは、子供を望んでいる女性からしたら寧ろ当然の想いだと言える。

 どうやら、先日のライラさん達をお招きした際の、子供達の交流が変な風にセレナを追い込んでしまったみたいなのよね。


「後で診ておくけれど、教会のディアーナ様をお呼びして診て貰う様にするわ」


 ディアーナ様は正式な教会の医療神官でもあるから、私より経験も豊富だし、なにより立場的に私よりも安心した言葉を掛けてあげられる。

 気安い主従関係だと言っても、私はセレナよりも遙かに上の立場の人間だからね。

 そう言う事を気にする事なく、第三者からの言葉って意外に大切なのよ。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




主人(マスター)、ダルスより伝言で許可を求めてきております」


 何時もの鍛錬を終えて軽く汗を流した後、朝食の準備に向かう最中にプシュケを見かけたので、ついでに教会へ伝言をお願いしようと思ったのだけど、向こうも私に用があったようで連絡事項を伝えてきた。

 どうやら程良く雪が積もったから、雪室(ゆきむろ)に雪を運び込みたいので、その許可をもらいに来たらしい。


「構わないと伝えておいて、暖かな食事は此方で準備しておくから、風邪を引かない程度に頑張ってとね」


 急ぐ必要はないのだけど、雪の状態が良い時に運び込む方が良いのも確か。

 そういう意味では夕べを含めた、此処三日の雪は雪室に向いた雪だと言える。

 ヴァイスとエマには、村の女衆と混じって雪で冷えた体を温めるための、食事を作る指揮をするように私から伝えておく事を言うついでに、教会への伝言をプシュケの方に頼んでおく。


「屋敷の外で待機していますので、そのまま頼んでおきます」

「……中で待って貰えば良かったのに」

「今回も恐れ多いと固辞されまして」

「次からは私の指示だと伝えなさい」

「畏まりました」


 この手の伝言は子供が使われる事が多いし、そうでなくても雪の降る中を外で待たせるだなんて私的にはどうかと思う。

 ましてや子供ならば身体が小さい分だけ体力がないから、暖かくして体力の消耗を避けるべきなのよ。

 恩に着るのは構わないけれど、信仰の対象にするのは止めて貰いたいわね。

 ふとそこで、今、確認しておかなければならない事に思い至った。


「ぁっ、プシュケ」

「はい主人(マスター)

「一応は確認しておくのだけど、使いの者は子供?」

「はい、十歳の男の子です。

 村民ミハイルの息子で、名前はロアだったと記憶しております」


 あぁ、あの子ね。

 まぁ誰かなんて事には興味はないのだけど、子供ならばお駄賃をあげないとね。

 収納の魔法の中から焼き菓子が数枚入った袋を取り出してプシュケに渡すと共に、今頃は自己鍛錬に入っているであろうギモルとラキアに、村まで子供を送らせるように指示を出しておく。

 ダルスを呼び出す様に伝言を預けてね。




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




「も、申し訳ございません」


 事情を話すと共に平身低頭に謝罪をするダルスだけど、別にダルスが悪い訳ではないので、そこまで深々と謝罪されても仕方がない。

 私が怒っているのは、別に急に雪質(ゆきむろ)に雪を運び込む事を決めた事ではない。

 この地はそれなりに雪が積もるため冬は厳しいと言っても、生まれ故郷であるシンフェリア領ほどではないため、雪室(ゆきむろ)に雪を運び入れる時期が、その日の天気で急遽決める事だってあると理解している。

 村の住民だけでやるのであれば、申請して許可さえ得ておけば問題はないからね。

 なのでダルスが謝罪しているのは別の事。


「あの子の父親には、貴方の方から注意をしておきなさい」


 問題なのはね、雪がアレだけ積もっているのに、朝早く除雪も碌に済んでいない状態で、子供を使いに出す無神経さと危機意識のなさなのよ。

 領主である私の屋敷と村までは毎日除雪して貰っているとは言え、朝はだいたい六、七十センチはあったの、そんでもって十歳ぐらいの男の子って、身長は百二十センチ前後となれば、胸の上ぐらいまでは雪なのよ。

 男性の大人なら膝上ぐらいかもしれないけれど、子供にとっては命取りになる積雪量。

 幾らカンジキを履いて、スコップを片手にしていたからって、そう言う問題ではないし、雪で道を見失って突き進めば、危険な場所だってある。

 その辺りは帰りに送らせたギモル達からの証言で、子供一人でお使いをさせるには危険な状態だった事は確認は取れている。


「こんな事の後では私が顔を出しても、皆が必要以上に気を使ってしまうだけでしょうから顔を出す事は止めますが、その代わり事故が無いように気を引き締めて作業をしてください」


 もう、朝から気分が最悪よ。

 せめてもの救いが子供に何なかった事と、門兵の人達が寒いだろうと、火鉢を持ってきたり、白湯を振る舞ったりしてくれていた事かな。

 本人が固辞したため本人の意思を尊重しつつ、子供を寒い外に待たせる儘にしなかった、我が家の使用人達の振る舞いには、少しだけ心が温まる。


主人(マスター)お疲れ様でした」

「本当よ。

 朝から血圧が上がって倒れそうな気分よ」

主人(マスター)が言うと洒落になりませんので、そのような軽口はどうかお控えくださいませ」


 うん、私の失言だった。

 倒れそうと口にした途端、周囲の空気が変わったもの。

 相変わらず私の体調には、周りは過保護なのよね。

 お姉様方が帰った翌日の夕方から、ちょっと微熱が出たばかりだから、尚更に過敏になっている。


「冗談よ、この程度で倒れていたら、陛下達のお相手は出来ないわ」

「……その国王陛下から、手紙の魔導具にて連絡が入っております」

「……、……」


 こう言うのをフラグって言うのかしらね?







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