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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第八章 〜親としては新米だけど頑張ります編〜
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1034.勿論、可愛い子供達にもお土産はありますよ。





 楽しい日々はあっと言う間に過ぎ去り、十日間に渡って滞在されていたお客様は先程帰って行かれた。

 と言っても私の空間移動の魔法で、リズドの街にあるマイヤーソン邸と、グッドウィル領のお姉様のお屋敷にそれぞれ繋ぐだけなので、見送ったと言うよりも送ったに近い。

 お土産なんて馬車に積むのは大変だろうと、リヤカーのような荷車に積んでそのまま光の門に押し込みです。

 どうせ直ぐに荷を降ろす事になるのだし、実質的に進むのは数馬車分なので衝撃に気を付ける必要もほぼないため、荷車に乗っているより、積み下ろししている時間の方が長いのではないかと思うほど。


「馬車の上が凄い事になっていたわね」

「アレで街中を走ったら凄い事になっていたかも知れませんわ」

「ユゥーリィ、甘々」


 何がってね、馬車の上が凄く可愛らしくなっている状態なのよ。

 原因は【カルバニア・ファミリー・シリーズ】の【ドールハウス】と山程ある同シリーズのヌイグルミ達。

 グリアラちゃんとマリアナちゃんが気に入っていたので、お土産として贈っちゃいました。

 時間ギリギリまで遊び倒そうとしていたので、どうせ荷物は荷車に積むのだから、そのまま馬車の上の荷台に積んじゃえば良いじゃない、どうせ落ちるほど距離を走らないんだしってね。

 その結果、実に見た目の可愛らしい馬車の完成です。

 二人ともその可愛らしい馬車の姿に大興奮。

 今度、ヴォルフィード公爵家とスカルチニア公爵家とコラボして、【カルバニア・ファミリー・シリーズ】をイメージした馬車でも作ってみようかな。

 完全に宣伝用の馬車になるかもしれないけど、もしかすると需要があるかもしれないもの。

 肝心なのは、そう言う柔軟な発想があると世に示す事。


「別に良いじゃない。

 ヌイグルミに喜ぶ女の子だなんて、可愛いものだもの。

 私はそういう物に恵まれなかったから、してあげたいのよ」


 正確には【ユゥーリィ】がだけどね。

 生まれ付き身体の弱かった【ユゥーリィ】、咳の原因になると言う事で、取り上げられちゃったのよ。

 高熱で死に掛けて【相沢ゆう】が目覚めてからは、主人格が【相沢ゆう】よりだった事もあって、人形とかに興味を示さなかったもの。

 魔法で無理矢理病状を抑えれるようになったのだから、少しは興味を示しても良かったのにね。

 だから、代替行為による自己満足。


「心の贅肉って奴よ」


 怒られた。

 そう言う事は贅肉を付けてから言えって。

 いえ、意味が違うって、その贅肉じゃないからね。

 無駄な贅肉が付かないように、日々心掛けている嫁二人に対して禁句だったかも。

 おまけに私自身、長年飲み続けてきた薬の副作用で、筋肉や脂肪が付きにくい体質になってしまっているから、余計に刺激したのかもしれない。

 という訳で話を逸らそう。


「それにグリアラちゃんとマリアナちゃんだけでなく、ユゥラード君にだって、ちゃんとお土産を渡したじゃない。

 単に二人のお土産の方が嵩張っていただけの事よ」


 七歳になるユゥラード君には鍛錬用の木剣などを贈った。

 貴族家に生まれた男児の嗜みって事もあって、五歳の頃から基礎体力を付けるための鍛錬を少しづつ増やしながらしていたのだけど、七歳になった時から素振りと型の練習に入ったんだって。

 だから竹刀もどきである【木光剣】や、小さな傷は再生する鍛錬用の【再生木剣】をこれから身体が成長する事を考えて、予備を含めた幾つかのサイズごと。

 【再生木剣】は魔物の領域奥深くにある魔樹を使っているだけでなく、八脚幻凶獣馬(スレイプニル)羅王(ラオウ)が使う植物魔法を何度も目の前で使って貰って、使えはしないけれど何となく感覚は掴めたので、そこに神字と【聖】属性の魔法を組み合わせた魔導具。

 本来使えない魔法を無理矢理使っているので、能力としては鍛錬で傷付いた剣身を癒やす程度の些細なもの。

 その剣には植物の蔦のような浮き彫りの装飾が施されているのだけど、これも一応は意味があって、神字と似たような効果があり、作っている時に何となく脳裏に浮かび上がってきたのよね。

 その時に【   】の気配を感じた(・・・・・・)から、犯人は間違いなく私の中にいる【   】だろう。


「そう言えばそうね」

「アレはどう見ても遣り過ぎでは?」

「鍛錬用である事には違いないわよ」


 後は本格的に打ち合える様に、金属製の刃のない剣も用意した。

 唯、まだ幼いユゥラード君には重い鋼鉄製の剣は、素振りを繰り返すだけで身体を壊す事になりかねないので、鉄より比重が遥かに軽いチタンを主材に魔法銀(ミスリル)を混ぜ、軽量化と強化の魔法石を装飾として嵌め込んである。

 この世界だと、チタンは軽すぎて武器の素材としては人気がないし、そもそも加工が難しいため敬遠される素材。

 防具ならって思うかもしれないけれど、軽くて強度がある事を求めるなら、魔物の革を使った方が加工しやすいこともあり、それもまた鍛冶師から敬遠される理由だったりする。

 私のような形状変化の魔法が使える魔導具師にとっては、使い勝手の良い素材なので、一応は素材として出回っているのよ。

 強度の割には軽くて、更には粘りもある金属だもの。

 そして重さによる威力よりも、動作の正確性を求める子供の鍛錬用の剣に向いているともなれば、使わないのは寧ろ勿体ない。

 ついでに魔力が通りやすいように加工したし、ちょっとした能力も付加した程度。


「あれ、普通に作らせたら、一本で金貨五枚はするわよ」

「それを大きさを変えて五本もですもんね」


 普通に作らせたら確かにそうかもしれないけれど、それは魔導具師の人件費と技術料が高いのが原因。

 技術の安売りをする気はないけれど、可愛い甥っ子のために剣の一本や十本くらい、ポポポポッポ〜〜〜ンって贈ってあげたいじゃない。

 だから、お姉様やお義兄様が気後れしないように……。


『私の手作りだから(・・・・・・)気にしないでね』


 っと言って贈ったの。

 まぁお義兄様が自分の剣より高価だと非常に羨ましがっていたけど、重い剣が重要視されるこの国だと、軽過ぎて威力が落ちるチタン製の剣は装飾剣扱い。

 お義兄様の大柄な体格だと、小剣や短剣として扱えるかもしれないけれど、まさか子供から取り上げたりするだなんて、非常に大人気ない真似はしないと信じている。

 と言うかそんな真似をした日には、間違いなくミレニアお姉様の雷が落ちる事は間違いない。

 母は強しである。


「それで生き残れるだけの力を手にする事が出来るなら安い物よ。

 実際にはユゥラード君の今後の努力次第なんだけどね」


 グッドウィル家は初代の頃から続いている国との盟約で、一定年数を最前線の砦で国防に当たる事になっている。

 それはユゥラード君が成長したら、否が応でも突き付けられる現実。

 だから私が贈ったのは剣ではなく、自らをより鍛える事の出来る環境の一端。

 お姉様も、お兄様もそれが判っているからこそ、複雑な顔をしながらも子供に贈るには高価すぎる物であっても、黙って受け入れたの。

 貴族にとってどういった形であれ、力を手に入れるのは義務のようなもの。

 この国ではまだマシな方だけど、領民を守る力の持たない貴族は、それだけで罪だからね。

 グッドウィル家は、貴族として武力に特化しているってだけの事。


「ユゥーリィのそういう所って、好きよ」

「ええ、ユウさんの不器用な優しさは、きっと伝わっていると思いますわ」


 別に伝わってなくても構わないのだけど、嫁の二人にそう言われると、何となく安心してしまう。

 そうそう、一応あの晩は勇気を絞り出して頑張ったわよ。

 絞り出した結果が、耳元で掠れるような小さな声で想い告げるって言う、ヘタレっぷりですけどね!

 前世では此処までヘタレではなかったのだけど、結局は前世の記憶はしょせんは記憶でしかないく、【ユゥーリィ】でも【相沢ゆう】でもなくなった、別の人格を持つ人間ってだけの事なんだろうね。

 脳裏に浮かぶのは、執拗なまでのお母様から施された淑女教育……、う゛っ、頭が割れるように痛くなったので、必要以上に思い出してしまわないように、心と記憶に蓋をする。

 別に虐待を受けた訳ではないのよ。

 教育ってね、悪い言い方をすれば洗脳なの。

 更に極端に表現をするのなら、人格の書き換え。

 まだ人格形成が成されていない幼い子供に少しづつ施してゆくならともかく、前世の記憶を思い出した事で一個の個人として完成されてしまった人格を、不安定な魂の状態の儘に施されたのなら、そりゃあ変質ぐらいするってものよ。

 お母様が悪いのではなく、特殊な状況だった【私】に問題があっただけの事。

 私とは別の意味で【壊れ】掛けていた、幼いエリシィーの存在があったからこそ破綻せずに済んだにすぎない。

 でも今はもうそんな事はどうでも良い事だし、済んでしまった過去でしかない。

 愛すべき嫁達がいて、その愛の結晶たる子供を授かり、守るべき家族がいる。

 十分に幸せなのだから、それで良いの。

 だから、ちょっとだけ頑張る。

 何時もなら二人の力を借りて、頭が真っ白で何も考えられなくなって、ようやく素直に出せる言葉を。

 小さな、本当に小さな空間移動の魔法で門を愛すべき二人の耳元に開き、消えるような小さな声で呟く。





 私も好きだよ、って。







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