表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第八章 〜親としては新米だけど頑張ります編〜
1031/1059

1031.貴族あるあるでは済まない話と、お店の形態の違い。





「─────と言う訳で、実際にはあの人は無実だったの」


 ミレニアお姉様の話によると、以前にお義兄様の子供だと言う子供を抱えて、突然に屋敷に押し掛けて来た女性がいたんだって。

 跡継ぎが若い頃は軍務に就いて長期間を屋敷を留守にしているのは、グッドウィル家の事を少しでも知っているのであれば、知っているであろう有名な話だものね。

 それで、そのいきなりとんでもない事を口にしながら、屋敷に尋ねてきた女が言うには、お兄様が勤めている砦の下街で、現地妻として囲われていたけれど、最近御無沙汰で、会おうとしても会ってもくれない。

 いずれ妻の一人として迎えるからと、更に月々の手当を出すとも言われて望まれるままに子供まで産んだのに、いきなり何の補償もせずに会おうともしなくなるだなんて無責任だと。

 そう言って、子供の養育費と慰謝料を合わせた多額のお金を要求。

 もしくは子供を引き取ってくれるのであれば、お腹を痛めた子供のためだから少額でも構わないと。


『一方的に片方の話を聞いても仕方がないから、当然、あの人に早馬を出して帰ってきて貰ったわ。

 丁度一度家に帰る時期だったから、多少時期が早まっただけで済んだし』


 案の定、そこで嘘だと発覚。

 お兄様が素っ恍けているだけだと言う女の言葉も、血を引いているかどうかを調べる魔導具が国にあるという話をした上に、顔に似合わずにお義兄様は日記を付けていたため、相手の言う逢い引きをしていた日付と照合出来ると言われて、ようやく観念して嘘を吐いた事を認めたらしい。

 どうやらその時の遣り取りを、グリアラちゃんがこっそりと聞いていたか、使用人達が面白おかしく話しているのをこれまたこっそり聞いていて、想像を膨らませたのではないかって事らしい。

 でないと、幾ら女の子は成長が早いと言っても、流石にアレは有り得ないものね。

 因みにその話を聞いて、私はお義兄様を欠片も疑っていない。

 なにせ人を雇って見張らせていて、その中でも浮気をしていないかは重要な観察項目なので、そのような兆候があれば、直ぐさま連絡が来るようにしてある。


「幾ら追い詰められていたからって、貴族を騙そうだなんて、あの女も馬鹿な事をしたわ」

「そうね、幾ら旦那さんを亡くしたからと同情すべき所があると言っても、唯で済む訳がないのに」

「……、ぅわぁ……」


 ミレニアお姉様の言葉に賛同するラフェルさん。

 そして顛末を聞いて青い顔をするライラさん。

 温度差があるけれど、そこは貴族と平民との考え方の差かな。

 言うまでもなく女性は処刑。

 金銭を騙そうとしただけなら軽ければ鞭打ちで済んだだろうし、大抵は懲役で鉱山送りで済んだかも知れないけれど、次期当主であるお義兄様の名誉を傷つけ、お姉様を筆頭にグッドウィル家全体を無用な騒動に巻き込んだ訳だものね。

 この世界だと、何方かと言うと後者の方が罪が重いの。

 更にお兄様の子供だと偽った子供って言うのが男の子だから、尚更に罪を重くしている。

 男児だと後継者問題にも引っ掛かる事になるため、血を大切にする貴族社会の考え方では洒落にならない事態へまっしぐら。

 実際、それで血で血を洗うような凄惨な後継者問題に発展した家が多数あるから、どの家も神経を尖らせる問題だけに、血も何も引いていない子供に後を継がせて、グッドウィル家を簒奪しようとしたと取られたとしても、『そんなつもりではなかった』などと甘い言い訳は効かない案件なのよ。


「子供は流石に可哀想だから教会の孤児院に任せる事にしたけれど、あの子供も一生母親の罪を背負う事になるのだから、ある意味、親の犠牲者になるわ」

「どう隠した所で、そこまでの騒ぎとなれば、漏れ出て伝わってしまいますからね。

 人伝に聞く所によると、グッドウィル家が治める土地は此処数年でかなり発展し、領民の生活も向上していると聞いていますから、その領主を騙そうとした者の子供となれば、領民達からは【許されぬ大罪を犯した者の子供】として見られ続けてしまうわね。

 確かに可哀想ではあるけれど、だからと言って必要以上に目を掛けては、それこそ僅かでも領主家の加護が得られるならば、と考える人が出て来るから難しい所ね」

「同じ命を賭けるならば、もう少し考えて貰いたいわ。

 ……まぁその考える余裕すらなかったのでしょうけれど」

「女手一つで子供を育てながら生きて行けるほど、世の中は甘くはないですものね。

 実際にそれを出来る女性はいない訳ではないけれど、大半は貧困に喘いでいるのが現実ですもの。

 知っています?

 路地裏生活児童の大半が、そういう女性に捨てられた子供達だって」

「ええ、うちの領でも問題になっているわ。

 今の所は予算を増やすなりして何とか、そういう子供達を出さないようにしていますけど、教会の孤児院だって面倒を見れる数には限界がりますから、今後街が発展して人が増えれば、自然とそういった子供達も増える可能性を考えるとね」

「……、……」


 うん、話に混ざれないというか、混ざりたくはない。

 実際には周囲の人間に助けられているだけと言っても、私なんてその女一人で生きている人間の代表みたいなものだし、ライラさんも結婚するまでは、女一人で生きていた様なものの上、今も収入面では夫に頼るどころか遙かに上回る収入がある状態。

 この場では言葉を発する事自体、二人の会話に対して配慮に欠けた行為になってしまう。

 お姉様達もその空気を読んだのか、グッドウィル家に起きた問題はこれでお終いと、強引に話に切りを付けて下さる。

 今すべきなのは、子供達の問題行動の原因追及と、それに対する分析と今後の対策。


「うちは本当に大した話ではないのよ」


 まぁ先程の話の後なら大抵は大した事のない話になると思うものの、話を聞いていると……、まあ、割と普通かな。

 いえ、それで良いんですけどね。

 姉弟が歳を取っても普通に(・・・)仲が良く、困った事があれば助け合い、喜ばしい事があれば一緒になって喜び相手を祝福出来るのは、姉弟として良い事であって悪い事ではない。

 悪いのは微笑ましい家族愛を酒の肴にして、面白可笑しい方向に持って行く一族の酔っ払いども。


「旦那の実家だけど、今度文句を言ってやるわ」


 あとライラさんのお店って知っての通り女性向けの書店で、顧客の大半が貴族なだけあって、色々と顧客からお話を聞く事もあるのよ。

 この世界の書店は書籍ギルドに所属していて、基本的に顧客の情報は他者に漏らす事を禁止しているし、その罰則も大きい事もあり、更には店主であるライラさんは、書籍ギルドの支部長の姪と言う事もあって、ある程度安心して話せる相手と認識されているらしいの。


 それで出るのが、下世話な話や悩み。


 ライラさんって平民女性ではあるけれど、一応は富裕層だし、苦労もそれなりにしているのに心根が真っ直ぐで優しいから、貴族女性からの信頼があるのよ。

 無論、私に関して新たな情報はないかと、探る意味で接している方もいるとは思うけど、それはそれ、これはこれ。

 基本的に信頼出来る女性だと、多くの方に判断されているからこそ。

 そういう意味では、マリアナちゃんも、意味を深く理解出来ていなくても、色々聞いちゃっている可能性は高い。

 社交界だとあの手の下世話な話は他人事だけに半ば笑い話でしかなく、娯楽の一環として捉えている人がそれなりにいるもの。

 そうなると今回のような事態になったのは、グリアラちゃんにしろ、マリアナちゃんにしろ、まだまだ幼い子供だからと甘く見ていた結果って事になる。

 つまり親である私達の不注意だったと。

 いえ、私は今回は関係ないのだけど、娘を持つ親として他人事ではないからね。

 かと言って、注意する以外の対策という対策はなく。


「ライラさんの所は、それが売りの一つになってますからね」

「狙っていた訳ではないから嬉しくないのだけど、それが事実なのだから、今更方針を変えるのも変だし、気を付けるしかないわね」


 ライラさんのお店は、大通りから一本外れた隠れ家的な書店。

 必要以上に目立たない分、お客様の出入りも必要以上に目立たない。

 実際には馬車を横付けするのだから、客の出入りに関しては目立ってはいるのものの、高価な書物を扱う書店の前ってだけで、なんだ客が入っただけか済んでしまう。

 女性向けの書物を扱うお店って言う方針だから、それくらいで丁度良かったというのもあったらしいの。

 そしてそれが客層からしても、丁度良い具合だったって訳。

 女性向けの書物を扱うお店なら、使用人を引き連れていると言っても貴族女性だけで出向いても、気晴らしも兼ねてだろうと納得して不審がられないもの。

 それが治安が悪くない通りで、女性が店主をするお店なら尚更に安心出来るってね。


「ライラ、一応は言っておくけど、貴女のお店はあの方針だから受け入れられているのだし、多くのお客様が付いているのだからね」

「叔母さん、言われなくてもそこは分かっているわよ。

 大店を敵に回しても碌な事がないもの。

 と言うか、今更変える方が面倒よ」

「分かっているなら、いいわ」


 こう聞くと、ライラさんのお店が変わっているように聞こえるかもしれないけれど、実際に変わり者の店主の書店扱いだったりする。

 何時だったか、ポンパドールの港街に立ち寄った時に一騒動あった書店も、ライラさんのお店と方向性が違うだけで、何方かと言うと変わり者のお店ではあるのだけど、そういったお店はまったくないって訳ではないので、特定の顧客層向けのお店と言うのが正しいんだろうね。

 だから家を出たばかりの面倒な予感しかない私を拾った、と言う事とは別の意味での話。

 何度も口にしているけれど、この世界の書物って高価な代物なのよ。

 宝石を扱っているお店と同列と言っても良いくらい。

 なので、基本的には大通りに大店を構えている書店が殆ど。

 お店の建物自体がかなりお洒落で広く、お店に入るのに銀貨数枚がいるほど。

 その分、本に目を通すための空間で紅茶が出てきたり、お店の人が付いて目的の本を言えば、それに応じた内容の本を持って来てくれると、実に至れり尽くせりの接客業を兼ねている。

 更に客層によっては金額を追加する事で、他者に邪魔されない個室に案内される。

 まぁ本に目を通すだけで閲覧料としてお金が発生するけれど、そもそも高価な書物を買える人間はその辺りをあまり気にしないし、書物の価値を分かっている人間は尚更に気にしない。


「そう言えばゆうちゃん、図書館という名の書籍棟は、お金を取る方式だったわよね。

 てっきりゆうちゃんの事だから、誰でも無料で入れるのかと思っていたわ」

「そこは流石に周囲に合わせました。

 本の保管のために空調の魔導具を入れていますから、休憩所代わりにされても困りますからね」


 因みにこの世界の書店と書籍棟とは役割が違っていて、書店は文字通り本を売り買いして商売する所。

 閲覧料で稼いでいる形態のお店が多いけれど、ちゃんと代金を出せば本を買う事が出来るのが書店だし、本来はそちらの方が主の商売。

 書籍棟は基本的に本の売買をしておらず、入館料を取るけれど、一冊一冊に閲覧料は掛からない定額料金形態を取っている。

 図書館は学校関係者は基本的に無料にしてはあるけれど、それ以外領民は入館料として銅板貨三枚(さんぜんえん)を徴収し、それで大砂時計一回分、自由に一定区画の書物を好きに読む事が可能で、それ以降は中砂時計一回分ごとに銅板貨一枚(せんえん)が掛かる時間制。

 領民以外は更に割増料金といった、健全な営業形態ですよ。


「値段は低く抑えていますけどね」

「採算取れるのかって心配になるのだけど」

「元々目的が違いますし、一般開放は開放している事に意味がありますから、採算に関しては最初から度外視です」


 図書館は学校施設と研究施設に付随する建物だから、本来は教育や研究のための代物でしかない。

 まぁ元々は溜まりすぎた本の保管場所なんだけど、そこは突っ込まない。

 無駄に埃を被らせておくよりも、活用して手入れをして貰った方が良いに決まっているもの。

 とにかく全体的に値段が安い事もあって積極的にサービスはしないけれど、書店と違って紙に書き写したり、写本したりする事は可能で、そのための専用の紙や何も書かれていない本も受付で販売している。

 これは私が通っていた学習院にある書籍棟でも採用していた方式なので、特別な事ではないのよ。

 この専用の紙や本は書籍ギルドも関わっているので、少々割高ではあるけれど、正規の写本ではないものの、海賊版でもないため罪に問われる事はない。

 唯、個人で使う物である事が条件で、書き写した物を販売する事や譲渡する事は出来ない決まりがある。

 要はあくまで一時的なメモ扱いって事。


『欲しい本があるので購入したいのですが?』


 それで本を扱っていると、中にはこういう方もいるのだけど。


『此方が専属契約している写本師に仕事を紹介する形になりますが、如何致しましょうか?』


 と案内する体を取っているものの、実際には書籍ギルドに登録させた司書の人間が行う事になっており、書籍ギルドにはその売り上げの一部を支払う事で話が付いている。

 今回、ラフェルさんが招待に応じたのは、その査察も含まれての事なのよ。

 そして本には需要のある物とない物があり、需要のある物なら……。


『此方の本であれば、写本済みの物がある可能性がありますので、今から写本を依頼する事を思えば僅かな時間で済みますので、一度そちらに足を運ばれる事をお勧め致します』


 と、何処かの娯楽遊戯の景品交換所宜しく、建物の外にある別の建物に誘導するんだけどね。

 だって同じ建物内で本の売買をしたら、色々と面倒事があって問題が起きてしまうのよ。

 でもそれは書籍ギルドが決めた事だから、ギルドの考えを尊重しないといけない。

 無論、本を汚したり破いたりしたら、弁償はして貰うけれど、基本的に一般開放している場所に置かれている本は全て写本した物なので、修復が出来そうもないのであれば、最悪、原本からまた書き写せば良いので、写本代と迷惑料だけで済むから、ぼったくりの悪質な方式って訳ではないのよ。


「話が逸れてしまいましたけど、今は子供達の教育について、もう少し話をしませんか?」

「「「……そうね」」」


 現実逃避したいのか、皆んな話を逸らそうとするなぁ。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ