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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第八章 〜親としては新米だけど頑張ります編〜
1016/1058

1016.のんびりと休息を楽しむ事も出来ないだなんて、私、前世で何か大罪でも犯しましたか?





 お姉様やライラさん達は、それなりに楽しんでくれているみたい。

 二人とも仕事をしている方が落ち着くという人だから、偶にこうやってのんびりさせてあげたい。

 まぁ、何処かの人外達が美味しい料理とお酒が出ると知り港街にまで付いて来ちゃったけれど、別邸から出る気はないようだし、角や尻尾を隠して人の振りをして大人しく飲み食いしているので、あの方達にしては気を使っていると言えるので文句は言わない。

 コッフェルさんが同類(酒屑)を見付けたとばかりに、あの方達を相手に美味しそうにお酒を飲んでいるしね。

 老い先短い年寄りの相手をしてくれていると思えば、寧ろ有り難いと言える。


「ふふふふふっ、ユゥーリィ見て見て〜、あの人に貰っちゃった〜。

 私に似合うって」


 はいはい、お姉様、良かったですねえ〜。

 お酒に酔っているのもあるけれど、お姉様、大変に御機嫌です。

 お姉様だと贈られたネックレスがどれくらいの価値があるかなんて分からないだろうけれど、それでも良い物だろうって事くらいは分かるだろうし、何より旦那様からの贈り物だというのが嬉しいのだろう。

 もう、何度も同じ話を繰り返していますよ。


「ふふふふふっ♪」

「お姉様、お似合いですよ」


 真珠の養殖が物になりそうだと分かった段階で、魔導具によって真珠の色や層を狙った通りに作れないかと試したら、此方も何とかなりそうなのよね。

 あくまで過程を補助するだけなので確実性は低く、更にはまだまだ研究段階で不安定では在るものの、可能か不可能かの結果は見ての通り。

 お義兄様にも少し話したとおり、宝石関係は陛下に止められてはいるけれど、正確には止められているのは鉱物宝石の鉱脈を採掘して商売をする事であって、有機宝石である真珠に関しては止められていないので問題ない。

 その証拠に王妃様と王太子様、そしてフェニシア様と後宮を纏める三人の王族の方に、養殖真珠、しかも月齢を表すかの様な模様の三十個の真珠を用いた首飾りを各自にお贈りした結果、許可する旨のお手紙を戴きましたよ。


『夫から許可を捥ぎ取りました。

 やりすぎない程度に、自由にやりなさい』


 ってね。

 そもそもこの世界の真珠は自然に採れる天然物のみで、真珠の養殖技術は確立していませんから、私が真珠で宝石産業に参入しても商売敵にはなりにくい。

 お義兄様には適当な事を言って、無料(ただ)当然で売ったけれど、実際には白黒はっきりと色が分かれた真珠なんて物は自然化の真珠では皆無に近く、在っても染み程度で傷物扱い。

 価値のある宝石と認められているのは【プファル皇帝の真珠】ぐらいしかないと言われているほど。

 まぁ私が作り出すまではだけどね。

 何方にしろ未完成の技術なので、今は通常の真珠の養殖の方を安定させる方を優先させるべき時。

 当分はあのレベルの品物は世に出す気はないし、真球ではなく敢えて異形にしたバロックパールも始めたから、実験は養殖場の隅の一角で細々とやる程度で十分。

 品質を高めるには、どうやったって時間は掛かる物だから、それで丁度良いのよ。


「ゆうちゃん、今更だけど、本当にあのお値段で良かったの?」

「ええ、ちゃんと旦那さんに買えるお値段の物にしましたよ。

 利益無視した価格ではありますけど、そこは私とライラさんとの仲ですし、今回限りと言う事にしておけば、関係する方々も文句は言いません。

 あと正直に言えば、実はそれ傷物の等外品なので、本来は売り物には出来ない代物なんですよ」

「えっ? 全然見えないけど、本当に?

 嘘を言っていない?」


 ライラさんが旦那様に買って戴いたのは真珠の指輪。

 その指輪の台座に接する部分に配置してあるから、傷があるように見えないだけ。

 宝石業界としては、価格の維持の為に本来は傷物を世に出さない。

 ただね、天然物の真珠しかないこの世界だと、真珠って実は物によっては金剛石以上に高価な宝石なのよ。

 真珠が採れる貝は海でしか採れないし、その中に真珠が入っている確率は数千個に一つとか数万個に一つとか言われている上、その中から更に宝石として売り物になる代物となると、鉱脈さえ在れば掘れる鉱物系宝石よりも高価になってしまう。

 で、ライラさんより収入の少ない、ライラさんの旦那様が買える代物となるとね、本来は売り物にならない真珠を、それっぽく加工した物を用意しておくしかなかったのよね。

 だから本来は売り物ではないから利益なんて最初から関係がないし、私の恩人だからと言う意味も含めて、色々な意味で特別なの。

 という訳で、その辺りをライラさんが負担に思わない程度に崩して説明。

 本来は売り物にならない物を、身内には安く譲る事はよくある事だってね。

 ちゃんと旦那さんには、その辺りは説明して販売した事も。


「そう言う事なら、確かに旦那の収入でも買える……のかな?」

「そこは素直に喜んであげてくださいよ」

「勿論、喜んでいるわよ。

 ただ、あまりにも出来すぎているから、ちょっと怪しんだの」

「そんな事をしたら、ライラさんは突っ返すって分かっているのに、そんな欺すような真似はしませんよ」


 嘘は言っていない。

 例え傷物であっても値段に換算したら、とてもライラさんの旦那さんの収入では買えるような代物であっても、理由があって(・・・・・・)安くした事は嘘ではない。

 色々と細かな説明を省いているだけでね。


「失礼します。

 ユゥーリィ様、─────」


 温室に入ってきたレイニシア婦人が、厳しい表情で私に耳打ちをする。

 その内容に私は顔を顰めるが、文句をこの場で言っても仕方がない。

 婦人に幾つか指示を出してから、お姉様を含めたお客様方に少々急用が出来たので、失礼ながら下がらせて貰うとお断りを入れる。

 向かう先はオルディーネ領領軍基地。


「連絡を受けて足を運んだけれど、現在の状況を説明して」


 領軍基地に用意してある、私専用の部屋に空間移動の魔法で飛んだ後は、真っ直ぐに近くにある軍団長室に足を運んで、アルディス・ダルクファクト軍団長に状況説明を求める。


「魔導船スクイットより救援要請の第一報が、一昨日前に魔報にて入りました」

「一昨日前?

 そんな前なのに、こんなにも連絡が遅れたの?」

「申し訳ありません、どうやら担当者が悪戯と勝手に判断したようでして、数刻前に指示の催促の魔報を別の者が受け取り、文脈から前にも魔報が入っていたのではないかと関係する者達を問い詰めた所、一昨日前の担当者がそのような勝手な判断をしたと発覚しました」


 頭の痛い事態が起きていると言うのに、連絡が遅れた理由がまた頭の痛い内容と来て、思わず重い溜め息が出る。


「その馬鹿な担当官は?」

「現在身柄を拘束し、敵の工作員である可能性を含めて調査中です」

「ならいいわ、馬鹿の事は後回しにしましょう。

 状況報告の続きを」

「魔導船スクイットはインシュウシンカン国に寄港中、多数の船によって湾の出入口を封鎖され、身動き取れないとの事。

 現地の軍船に囲まれた段階で、船に搭載された魔導具による防御機構を発動させ、相手の乗船を防いでいるそうです。

 現在、船に籠城している状況で、相手から執拗に投降を促されており、魔導具による防御機構も何時まで持つか分からないとの事」


 魔導船はスクイットは、私が作った三隻の商業用大型魔導船の内の一つ。

 正確には大型船よりの中型船なのだけど、積載量が大型船なみにあるため、より税金が高い大型船扱いにされてしまった可哀想な船。

 他にも一番船【カルマール】三番船【ロリゴ】があるけれど、【ロリゴ】は別に動いており、【カルマール】は国に献上したので実質は二隻。

 他にもトライワイト王国から賠償で貰った船が幾つかあるけれど、そちらは普通の帆船なので、魔導船としては所有しているのは此の二隻と、個人で楽しむ為に所有している【亀甲船】、そして船の牽引や連絡に用いられている超小型の魔導船が六隻あるだけ。


「あの国か……」

「まぁあり得るとは思いました。

 ただ、県令の……我が国で言う領主による独断での事なのか、インシュウシンカン国としての行動なのかは判断に迷うところです」

「例えそうだとしても、認める事はないでしょうね」

「そうですな」


 インシュウシンカン国は、オルフィーナ大陸の最東端にある国の一つで、一応は大国だと言える程度には大きい国。

 この国って男尊女卑が色濃いだけでなく、酒や煙草をやらない人間は未熟者扱いで信頼出来ないと判断する嫌な風潮があるのよね。

 その辺りはシンフォニア王国でも無い訳ではないけれど、インシュウシンカン国はちょっと極端らしいのよ。

 酒は酔い潰れるほど呑んで当たり前、煙草の煙で部屋が充満して当然っていう、非常に健康に悪いのが常識の世界。

 お酒は本来は食べるべき穀物を大量に消費して、糖化し酒精に変えて僅かな量のお酒にする為、元となる穀物に比べて大変に高価な代物になる。

 それを多くの人間が酔い潰れるほど用意出来るのは、権力と財力の証であると共に、酔う事で判断力が低下する為、その人間の本質を垣間見る事が出来、その人物が信用に値出来るかどうか判断出来るという考えから来ているのだろう。

 煙草もある意味同類なのかな?

 よくは知らないけど、金に余裕在る者しか窘めない代物だから、そこから来ているのかもしれない。


 対してシンフォニア王国やその周辺国の王侯貴族は、酔い潰れて醜態を晒す事を恥と捉える風潮が強い。

 それでもお酒は貴族にとって欠かせないので、結果的に酒に強くなると言うだけの事。

 逆にインシュウシンカン国と似たような風潮を持つので有名なのが、何時ぞや港街に疫病を持ち込んだギアス国だった(・・・)けれど、彼処の国は他にも色々と他国に対してやり過ぎた結果、ものの見事に周辺国に寄って集って攻め滅ぼされたので、今はインシュウシンカン国が一番有名だと思うけれど、この世界の情報の伝達速度は酷く緩やかなので、ギアス国が滅亡した事も知らない国の方が多いかもしれない。


「彼処の国は、いまだに港使用料をもっと下げろと言ってきますからね」

「アルディス様、その話は私も港の担当官からの報告で聞いているわ。

 私が女子供で酒も煙草もやらないから、信頼出来ない相手ならば値段を下げるのも当然だとね。

 迷惑を掛けて申し訳ないと思っているわ」

「迷惑などとんでもない。

 寧ろ不愉快で意味のない理由を述べる相手に、周りは呆れております。

 誰も相手にしないどころか、そう口にした船には取引の値段交渉で上げる事はあっても下げる事はなく、相手を怒らせても知らんふりしていると言う話に、部下の何人かが酒のツマミにしていますよ」


 ツマミって……、私はお酒はまったくやらない訳ではないけれど、今世の私はお酒に弱い体質だし、そもそも生まれ付きで身体が弱いから、大量摂取は身体を壊して寝込む可能性があるため控えている。

 当然ながら煙草なんて以ての外。

 でも彼等から言わせれば、女領主に仕えている様な人間など話にならない、せめて酒宴に自分達を招いて交渉の席に着く事で、初めて話し合いが始まるのに、そんな身体の弱い人間はとっとと引っ込んで、酒も煙草もやる話の分かる男性に領主の座を引き渡せって事らしい。


 阿呆くさ。


 そういう民族性だからある程度は仕方ないにしても、態々それに付き合う必要性は欠片もない。

 女子供が領主をやっているのが気に食わないのなら、港を使って貰わなくて結構だと、港の担当官も相手に言っているぐらい。

 向こうは向こうで、使ってやってあげているのに、何を生意気な事をって事なんでしょう。


「事件の背景は今はどうでも良いわ。

 アルディス様、動けるようにしてある?」

「勿論です。

 船上でも動ける人間、百名を待機させてありますが、追加でもう百名程に召集命令を掛けて準待機を指示してあります」

「取り敢えず四十でいい。

 あまり沢山の人間を連れ立って行っても、船上では身動きが取れなくなる可能性がある。

 状況に応じて応援として呼ぶ可能性もあるから、残りはそのまま待機はさせておいて」


 遠方に対して応援を小分けにするなど、空間移動の魔法があるからこそ採れる手段。

 さっそく軍団長である指示に伝令が部屋から出て行くけれど、直ぐに動けるかと聞いておいてなんだけど、そんなに急がなくても直ぐに動ける訳ではないので、待機命令も含めさせておく。

 本当は直ぐにでも動きたいけれど、場所が他国となると色々とややこしい手続きがある。

 私、他国に勝手に行けないし、許可なく他国に空間移動の魔法を繋げれないのよね。


《えっ?》


 【   】は黙れ、今そう言う時じゃないって空気読みなさいっ!

 知られなければ、行った事にならないのよっ!

 でも、今回は個人ではなく軍として動くのだから、嘘は言っていないのっ!









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