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私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第八章 〜親としては新米だけど頑張ります編〜
1003/1070

1003.駄目な娘達を見ていたら、娘達を甘やかしたくなったのでお菓子作り。





 昨日から勘違いした人達のせいで、余計に疲れる事に……。

 空気や世情が読めない癖に、王妃様からお茶のお誘いがあったので、皆んなでお伺いに行きましょうと伝えた途端、状況を察してたのか集まって貰った人達は動こうとしないばかりか、何故か私に王妃様を怒らせないようにお断りをして下さいと声を揃えて言ってくる始末。

 此処で流石に猫を被っていても仕方ないので……。


「貴女達、王妃様からのお誘いを不敬にも拒むだけでなく、辺境伯である私を顎で使おうと言うの?

 自分がどれだけ愚かな真似をしているか、理解していないからこそお誘いを受けているのだと、未だに判らないのかしら?

 このままだと貴女達、本気で家を放り出されて路頭に迷う事態になりかねないわよ」


 現実を突き付けたわよ。

 王妃様も根はお優しい方ではあるので、おそらくお灸を据えてから後は各家に再教育を命じて終わりだろうけれど、だからと言って此処で更に王妃様の顔に泥を塗れば、王妃様も国母として甘い顔をする訳にはいかなくなる。

 だから放った言葉と同時に、彼女達を軽く睨み付ける。

 【威 圧】の魔法を使うまでもない。

 ただ、人災級の魔物である一角王猪ドス・エンペラー・ボアと真正面から睨み合いをする、その程度の気迫を込めるだけで十分だと判断。

 素人相手ならば、この程度で十分でしょうとね。


「「「「ひぃぃっ」」」」


 先程までの勢いは何処に行ったのか、私の視線に圧されるだけでなく、揃って地面にへたり込む姿に……、その為体で、よくもまぁ王妃様からの呼び出しを断ろうと思ったものだと、別の意味で感心する。

 これ、【威 圧】の魔法を使っていたら、失神者と失禁者続出で酷い事態になっていたかも。


「身だしなみは気にする必要はないと言う事だから、直ぐに立ち上がりなさい。

 それとも、罪人のように縛られて王妃様の前に引きずられて行きたいのであれば、私はそれで一向に構わないけど」


 という訳で、クダクダやるのも面倒なので、問答無用に空間移動の魔法を彼女達の足下に起動させて、強制的に王城に送ってやったわ。

 部屋の残っている彼女達の荷物は、我が家の女中(メイド)達に荷造りさせて、あらためて送り直せば済む話だしね。


「ユゥーリィ様、お疲れまでした」

「慣れもあるけれど、別にあの程度の空間移動の魔法は、それほど疲れるような代物ではないわ。

 向こうと繋げたのも一瞬だったしね。

 ただ……あの娘達の相手をして疲れただけよ。

 最初の頃は、一応は大人しくしていた記憶があるのだけど」

「そうですね……、治療がある程度成功したと思われるまでは、大人しくしていたのは事実ではあります─────」


 夫人曰く、治療が私ではなくエリシィーが行っていた事から、私を軽視しだしたらしいとの事。

 別邸の女中(メイド)達の話から、新しい治療行為自体が私エリシィーの功績を奪っていたのではないかと、それらしい会話を他の者達としているのを家の者が聞いているそうだ。

 集団治験の第一陣の時は、エリシィーが治療を行っている後ろで助言なり注意なりを言葉にしていたけれど、流石に今回の第二陣の時にはその場で口を挟む必要はなかったので、私は黙って見ているだけだったのよね。

 これはエリシィーの成長の証であり、私にとって喜ばしい事だったのだけど、患者側の視線で見たら、何か後ろで立っている白いナニカでしかなかったのだろう。


「……確か私が直接治療に当たると治療費の桁が変わるため、別の人間が治療を行うと、先方には説明しておいたはずなんだけど」

「おそらくですが、子供にお金の心配をさせたくなかったのでしょう」

「……子供って年齢でもないでしょうが」


 気持ちは理解は出来るけれど、今回、強制的に帰還させたのは、十代半ば前後の娘達ばかりよ。

 前世では未成年の子供ではあるけれど、この世界では成人扱いだし、一番年下の十四歳の子であっても似たようなもの。

 少なくとも物事の分別が付く年齢に達している。

 実際の金額を言う必要はないかもしれないけれど、大金が動く事を話しておいても良いはずなのに……。


「はぁ……親の心子知らずって処かしら?」

「そうなのでしょうが……、失礼ながら、ユゥーリィ様がその言葉を口にするのは違和感しかありません」

「見た目が幼くて悪かったわね。

 私、これでも一児の母よ、それも親馬鹿の自覚のある」

「ふふふっ、ええ、よく存じております」


 見た目が若く見えるのが、私が舐められる要因の一つである事を忘れるなって事なんでしょうけど、私、昔より成長はしているわよ。

 流石に十歳ぐらいにしか見えない、とは言われなくなったもの。


『じ、十……、一、ニ?

 い、いえ、十三ぐらいでしょうか』


 私の事を知らない初めてお会いする方に、聞くと戸惑われながらもそう答えてくる。

 何処かで『忖度ね』なんて声が聞こえた気がするけど、聞こえない聞こえない。

 十三ともなればJSは卒業してJCよ。

 この世界は十五で成人だから、JCの最終学年はこの世界では成人として扱われる。

 つまり大枠で見ればJCは成人した大人。

 それでも子供に見えてしまう事には変わりない、と言う失礼な意見は在るけれど、そこは気にしない。


「あの娘達も今の内に怒られて矯正できるのであれば、寧ろ今回の件は良かったと言えるわ」

「そうですね、相手を見誤って下に見るなど、嫁いだ後ではその後に影響しますから、今回の判断は寧ろ温情かと」

「王妃様のね。

 私は王妃様の決定に従っただけよ。

 見捨てて丸投げしたとも言うけどね」


 花嫁修業をかねた厳しい淑女教育が待っているであろうけれど、まぁそこは自業自得と思って諦めて貰いたい。

 絶対に何人かは逆恨みしていそうだけどね。


「強制帰還になった人達のための薬を余分に用意するから、少し集中するわ。

 彼女達の荷物と共に送れた方が良いでしょうからね」

「畏まりました」


 自宅療養に切り換えた以上、朝夜に服用する薬を専用に調薬しないといけないし、薬の取り扱い以外に、普段の生活をする上での注意事項も含めて手紙で書かないといけないので、意外に手間が掛かる。

 それにしても貴族の冬って基本的に一年の疲れを取る季節のはずなのに、あまり休めた記憶が無いのは気のせいだろうか?




 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・




「では宜しく〜」


 急遽お帰りになられたお客様の荷物は、王城に用意された私用の転移の部屋ではなく、王都邸を経由して遣いの者と共に手紙を預けて送った。

 国に私にと用意された部屋はあくまで緊急手段で、国の許可があって使えるものであって、普段使いにするものではない。

 おそらく使っても陛下達なら何も言わないだろうけれど、警備的な観点も含めて色々な面で見れば危険視する人達の考えも理解できるので、そこは自分から自重しているのよ。

 遣いにやった人間は用が済んだら王都邸で過ごして貰い、私が王都邸に寄った際に回収。

 何やら他の使用人達に、色々と買い物を頼まれていたようだけど、そこは気が付かない振り。

 一応は頼み事をしたので、お駄賃代わりにとしてお小遣い程度の金額を渡しておいたので何とかなるでしょう。

 所謂、多めのチップという奴と思えば普通の事。

 これで屋敷内の事が上手く回るのなら安い物だ。


「疲れたから、お菓子でも作るかな」


 理由を付けた気分転換だ。

 気軽に好きな事が出来る本邸の方に戻って、さっそくお菓子作り。

 と言っても簡単な焼き菓子。

 用意する材料も非常にシンプル。

  ●黄卵(金羽大鶏(コカトリス)

  ●砂糖(魔草大根(ピンクダイヤシュガー)

  ●牛乳(赤毛剛牛鬼(レッド・バッファロー)の乳)

  ●片栗粉(魔樹の木瘤根から精製したもの)

 と、これだけです。


「何処がだっ!」

「真面な材料が何一つないのが恐ろしい」

「最高級品である事には違いないんだけどね」

「材料費だけでも、平民の家族が一ヶ月は生活できるわよ、あれ」


 何か外野が五月蠅いけれど、別に魔物の領域の産物に拘る必要はなく、普通に手に入る物で構わない。

 単に私の場合、此れ等が普通に手に入る環境にあるだけに過ぎないので、くれぐれも誤解しないように。

 先ずは黄卵と砂糖を球にならないように少しづつ混ぜ合わせながら撹拌、全体が細かく泡だってマヨネーズ状になったら、牛乳を投入しでトロッとした感じになるまで軽く混ぜる。

 この後は片栗粉を入れて、液が片栗粉全体に馴染むように混ぜ合わせてから纏める。

 此処であまり生地が固まらずにボロボロするようなら、卵白をほんの少し加えると纏まりやすくなるし、食感も僅かに変わるので好みに応じて調整。

 生地の柔らかさの目安としては、耳たぶくらいに柔らかさが良いかな。


「これくらいか?」

「意外に硬いな」

「野郎の耳たぶでなく、赤ん坊の耳たぶくらいに決まっているでしょうが」


 簡単だから皆も誘ったのだけど、お馬鹿な意見は無視して作業を進める。

 この生地を軽く予熱してから、生地を小さく千切って丸める作業。

 この小さく丸める作業は人それぞれ、棒状にしてから包丁で切って丸めるのも良いし、小さなスプーンで掬うように千切っても構わない。

 私は面倒臭がりなので、ブロック魔法で型を作って切り抜いて、筒状の中で転がして挙げればあっと言う間に丸くなる。

 何方にしろ言えるのがスピード勝負。


「上手く丸くならない」

「こう楕円というか、潰れているというか」

「売り物にする訳ではないから適当で良いわよ。

 寧ろ手作り感があって良いじゃない」


 うんうん、やはり女性組は言っている事が可愛い。

 後はこれをオーブンでじっくりと焼き上げるだけ。

 面倒なので、透明な結界内で焼成。

 一応は言っておくけれど、焼き上がり具合が目で確認しやすい、というメリットがあるのよ。

 薄いきつね色になったら、ゆっくりと水分を抜くように冷却すれば完成。

 まだほんのり暖かい状態で、皆んなで試食。


「ん、ホロホロと溶けるように崩れるな」

「もう少し硬い物だと思った」

「美味しいけど、ちょっと薄味ね」

「うん、優しい味ではあるから、嫌いではないわね。」


 薄味も何も、作ったのは赤ちゃん用のタマゴボーロなので、味が薄くて当然。

 大人用なら少しだけ塩を入れたり、逆に砂糖を多く入れたり、硬く焼き締めるのもありだけど、そもそも味覚と歯茎が未発達の赤ん坊向けのお菓子だから、これで良いの。


「そんな事より、ギモル、さっそくユルギア君とクレアちゃんにあげなくて良いの?

 そのために参加したんでしょうが」

「あっ、そうだった」


 子供のために頑張ろうとするのは微笑ましいのだけど、抜けた所がギモルらしいと言えばギモルるらしいと言える。


「はい、ユルギア、あ〜ん」

「クレアもア〜〜ン」


 そしてお約束の如く、既にユリアとラキアに先を越されているところまでがセットです。


「ぬぉぉぉぉ〜〜〜〜っ、俺が先にあげたかったのに」


 誰かさんの雄叫びはさておき、肝心のユルギア君もクレアちゃんも、幸せそうな笑みを浮かべているので問題なし。

 サクラはちょっと早いかもしれないけれど、一つだけ。


「ぅぁ〜っ」


 おぉぉ、大変にご満足の様子。

 ハムハムしたかったようだけど、口の中で蕩け崩れるのを待った後に、この喜びよう。うんうん、可愛い、可愛い。

 もう一個だけね


「あ〜〜ん」

「ぁ〜〜ぅ♪」


 ヤバイ、本気で可愛い。

 手が止まらなくなりそう。

 でも、可愛いからって赤ん坊の内から暴食は厳禁。

 もう一個だけと言いつつ、今日の所は全部で三粒でお終い。

 サクラは卵も牛乳も大丈夫だったけれど、だからと言って大丈夫とは限らないものね。

 また明日、何も症状が出なかったらあげるから、ちょっとだけ我慢してねぇ。


「うぉぉぉ、此奴、幾らでも入っていくぞ」

「アナタっ」

「兄さんっ」


 うん、何事も程々が肝心。

 アレは駄目な例だから、アドル、ちゃんと目に焼き付けておくようにねと釘を刺しておく。

 セレナが春先頃に出産予定だから、他人事ではないのよ。






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