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ミッション15 怪人&ヒーロー登場!しかし・・・・・・?


前話にて動物園の一角で飼育員との戦いを繰り広げていたディーアルナ達。

その最中に何者かの手によって引き起こされた爆発。

そしてその爆発の下手人である謎のシルエットの人物が彼女達の前に姿を現した。


「・・・・・・ようやく名乗ることが出来るな。」


一歩ずつ足を踏み出すシルエットの人物。

ディーアルナ達に近づくにつれて陰に隠れていたその姿が少しずつ見えてきた。

緑色の体色の丸みを帯びた頭部、同じ緑色の太い四本の手足で四足歩行をし、胴体には大きな甲羅を背負っていた。

その姿を現すのであれば、この一言が適切であろう。


「・・・・・・カメ?」


その姿を見たディーアルナが呆然としながら呟いた。

シルエットの人物は一度コホンと咳をしてから、その呟きに答えるように力強い声で名乗りを上げた。


「吾輩の名は『バスタートータス』!獣解放戦線の怪人である!!」


人間と同等サイズでこそあるが、見た目が完全にカメ。

声高々に、そして威風堂々とした宣言からは勇ましさが大いに感じられていたが、その見た目によってなんとなく微妙な印象を名乗った本人以外の面々は感じていた。


「イッ・・・・・・!!」(あれは・・・・・・!!)


「知っているのか、一号・・・!?」


「イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!イイイイイイイイイイイイイイイッ!!」(あれはガラパゴスゾウガメ!爬虫類綱リクガメ科ナンベイリクガメ属に分類される世界最大級のカメ!ガラパゴス諸島のエクアドルと言う場所に生息している甲長が最大百三十五cmまで大きくなるカメですよ、アレ!開けた草原や森林、サボテンなどが散在する荒地とか火山の斜面などで暮らしていて、サボテンを含む多肉植物の葉とか低木、果実、花だけでなく、シダやコケ、地衣類などを食べます。不確実な記録ですが、オーストラリア動物園で百七十年も生きていた個体がいる程の長寿のカメでもあります!!)


「・・・お、おう。」


目の前のカメについての説明を長文で語って見せる一号。

ただし、セリフがテレパシーリンクによって通じる俺たち以外には「イー」しか聞こえておらず、目の前にいるバスタートータスと名乗ったカメも、おそらく自分の事を語っているのだと理解はしているようだが、その内容までは分からず首を傾げていた。


「・・・・・・ニィッ!」


一号の説明が終了すると飼育員の山田がビシッ!と一号に向けて親指を立てた。

まるでよくぞ言ったとでも言いたそうな笑顔も付けたそれに、一号も応えるように飼育員に向けて親指を立ててみせる。

・・・・・・「イー」としか聞こえていないはずなのだが、直感か何かの電波でも受信して理解したのだろうか?あの飼育員のスペック云々が非常に気になるのだが。


「うぅん!・・・・・・それで、その獣解放戦線の怪人がなんで俺達に攻撃して来たんだ?」


咳払いをして変な空気となってしまったそれを切り替え、バスタートータスに問い掛ける。


「・・・・・・なんでだと?よりにもよって我輩達の邪魔をした貴様等がそのようなことを口にするとはな!」


しかし、その問いに対する返答は激昂であった。

憤怒に塗れたその顔は、さながら鬼の形相の様である。


「あれを見よ!あそこに見える光景は、貴様達の行いによって引き起こされた地獄よ!!」


「あれ、って・・・・・・え゛!?」


その一言と共に大きな影が自身に覆い被さるのを理解し、彼の顔が指し示す方向に視線を向ける。

そして俺達はその先に見えた光景に絶句したのであった。






その頃、アンビリバブルの秘密基地の研究室では、ブレーバーが研究の合間のおやつを食べようと棚を漁っていた所であった。


「えーと、確かここにドーナッツが入った袋を仕舞っていた筈・・・・・・お、あったあった!」


棚の奥に目的のおやつを見つけたブレーバーは、それを取り出そうと手を伸ばす。


「そこらのスーパーで売っているような安くて小さいドーナッツだけど、これがおいしいんだよなぁ。日本の食べ物ってほとんどハズレがないから安心感があるよなぁ・・・・・・・・・うん?」


小さなドーナッツが複数個入った袋を取り出し、袋の口を開こうとしたブレーバー。

だが、その最中で気になるものを見つけてしまった。


「・・・・・・『多目的超栄養補完液』?・・・・・・なんで、これがここに?」


五百ml分の茶色いビン。

その表に貼られてあるシールには、先ほどブレーバーが口にした名前が表記されていた。

目についたそれを手に取って首を傾げてしまうブレーバー。

だってその名前は、今朝方ディーアルナ達に渡した()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだから。

自分の記憶の中では、確かに茶色いビンを丸々一本使い切ってゴミ箱に捨てていた。

その事を覚えていたブレーバーはまさかと思い、ゴミ箱の中を漁って調べ始めた。


「・・・・・・あった!ええと、『超筋肉増強液』?・・・・・・え゛!?」


そして見つけたそれに表記されていた名前を見て硬直し、大量の冷や汗を流すのであった。






視線を向けた先で見た光景は、出来る事ならとても口にはしたくないものであった。

自分達に覆い被さった影の正体。それは一匹の大型動物であった。

大きな丸い耳。長く伸びた鼻。青み掛かった灰色の体色。

その特徴的な形を並べれば誰もが知っている動物であるゾウが思い浮かぶだろう。

だが、そこにいたのはただのゾウではなかった。


「バァァアアアオオォォォンゥゥゥ!!!」


四足歩行を行う四本の脚、本来なら丸みを感じられるそれが、今は異様に筋肉が発達して筋肉の波を浮かばせながら一回り程膨張している。

胴体の方もモリモリと物凄く鍛え抜かれたように感じられる筋肉が浮かび上がり、膨張していた。

その見た目からは通常のゾウよりも約二回りほど体が大きくなっているように見えた。

目元も異様に鋭く尖り、その眼光は赤く光り輝いて正気など微塵も感じられない。

今のあのゾウの状態をあえて名付けるのであれば『スーパーエレファント』とでも呼べそうである。

そんな異常とも言える光景を目にしたディーアルナ達であったが、異常だったのは目の前のゾウだけではなかった。


「ガァアアアアァァァッ!!」


「キキッ!キキィッ!!」


「クエッ!クエックエッ!」


「ブルルッ!ヒヒーン!!」


そこには()()()()()()()()()()()()()()()()動物園の園内を我が物顔で走り回っていた。

動物達が飼育小屋の外へと飛び出しているという事態を認識し、しかし内心ではそこで首を傾げた。

出入口の扉は一号がしっかりと鍵を閉めたはずなのに、何故動物達が外に出ているのだろうか?

そう思いながら動物達がいた飼育小屋に目を向け、そこで見た光景に驚愕した。

驚くべきことに飼育小屋の檻やガラスが破壊されていたのだ。

檻とガラスの破壊痕からどうやら小屋の中から破壊されたように考えられ、そこから推測できることは、おそらく飼育小屋の中にいた動物達が外に飛び出す際に破壊したのでだろう。

その証拠が先ほどから園内を走り回っている動物達の体に合ったことは見れば分かってしまった。

先程のゾウと同じく異常なほど筋肉が発達し、肉体が筋骨隆々という言葉が似合うものに変貌した動物達。

彼等の体もまた、まるで膨張したように膨れ上がった筋肉のせいなのか、元のサイズよりも二回りほど大きくなっているように見えた。

また、走り回っている動物達を捕まえようと奮闘する飼育員達の姿も見えていたのだが、筋肉が異常発達したことで強化された動物達の筋力に成す術なく、吹き飛ばされたり、引き摺られたりなど、散々な目にあっている様子が見えた。


「「「・・・・・・イ、イィーッ!?イイィーッ!?」」」(・・・・・・え、えぇーっ!?何アレーッ!?)


「―――――――――ッ!?」


俺と同じ光景を目にしていた戦闘員達と飼育員が目を剥いて絶句し、驚愕の悲鳴を上げる。


「これが!この光景が!貴様等の所業の結果だ!」


そして我慢ならないとばかりに吼えるバスタートータス。

だがその声音は怒りの色に染まってこそいたが、目に見える表情はまるで何かを後悔をしている様に顰められていた。


「吾輩達、獣解放戦線がこの坂之上動物園に来たのは、人間達の支配下にあるこの動物園の同胞たちを解放し、吾輩達の本拠地へと案内して新たな同志にする為であった。解放する際に暴れられても困る為、鎮静剤の効果を持つ粉末を放出できる同志を事前に向かわせたのだが、事が成される前にヒーローに見つかり、倒されてしまった。しかし、偶然にもその同志が倒された際に放出された粉末がこの動物園にまで届き、多数の動物達を鎮静化させることに成功した。・・・・・・そして今日、散っていった同志の死を無駄にしないために動物達を解放しようとした矢先に貴様達がやって来た。」


淡々と語っていたバスタートータスはギロリ!と、殺気を込めた視線を俺達に向けてきた。


「だが、貴様達が動物達に食べさせたあの饅頭によって彼らの姿はあのような醜い姿に変貌した!自らの力で檻の中から脱出したことは嬉しく思ったが、ああも狂暴化して暴れられては手に負えん。我が戦線の戦闘員達が必死になって動物達を誘導しようとしたが、理性を失くした動物達の手により叩き潰され、全員行動不能にされてしまった。この様では最早彼等を吾輩達の基地に案内することなど不可能!かくなる上は、この事態を引き起こした貴様等を始末しなければ、吾輩の腹の虫が治まらん!!」


バスタートータスはズン!と一歩ずつ足を前に踏み出しながら「絶対にお前達を皆殺しにしてくれるわぁ!!」と声高々に宣言した。


「ああもう・・・!なんだってこんなことに・・・・・・!?」


正直、現在の状況は理不尽だと思ったディーアルナ。

現状に対しての文句を口に出しながらも、こちらに迫ろうとするバスタートータスに警戒し、構えを取る。

目の前に迫りくる相手がどのような攻撃手段を取るのか不明であったが、その一挙一動を見逃さないように集中する。

カメと言う姿形から想像できる攻撃方法と言えば、突進とか咬みつきとかのしかかりなどが思い浮かべられるが、怪人として強化されたのだから普通とは違うような攻撃手段を持っていてもおかしくはなかった。

迫り来るバスタートータスと迎え撃とうとするディーアルナ。

互いの距離が残り数mとなった時、そこへさらに何者かの待ったの声が掛かった。


「待てぇい!見目麗しい少女に迫り行くそこの怪人よ!」


「ムッ!何者だ!?」


立ち止まり、声が聞こえた方向へと視線を向けるバスタートータス。

ディーアルナもバスタートータスの事を警戒しながら視線だけを同じ方向へと向ける。

飼育小屋の中でも一際高い小屋の屋根の上。

そこには仁王立ちで「ハーハッハッハッハッ!」と高笑いをしている一人の人物がいた。


「何者と問われたからには答えよう!私の名は仮面ヒーロー『サンフラッシュ』!怪人よ!貴様を倒しに来た者の名だ。その胸に刻んでおけ!!」


白を基調にしたライダースーツ。手足の先からは橙色の揺らめく炎を表しているような柄が胴体に向かって伸びている。

頭部には頭全体を覆うヘルメットのような仮面を被っており、仮面の外側には三角状の突起がライオンの鬣のような感じで並び、後ろへと伸びていた。


「なにやらおかしな恰好こそしてはいるが、か弱い乙女に手を出そうという蛮行、許すわけにはいかんな!私の手で成敗してくれる!!」


そう宣言してポーズを決めるサンフラッシュ。

彼のセリフを聞いている限りでは、どうも俺の事を助けようとして現れたように聞こえるのだが、一応こちらも悪の組織の構成員なのを気付いていないのだろうか?


「サンフラッシュだと!?まさか我等の同志を手に掛けた奴が目の前に現れるとは何たる僥倖!丁度いい、吾輩達の作戦の邪魔してくれたこやつ等と共に冥土へと葬り去ってくれよう!」


「ふっ!僥倖はこちらもだよ。先の怪人を倒し、その後の結果が気になって調査の為に再びこの近辺に来てみれば、新たな怪人の出現。ヒーローとしてあまりパッとしない私に立て続けに舞い降りたこのチャンス、逃すつもりなど欠片もない!()()()を倒して今度こそ私の名を世間に知らしめてみせよう!!」


ビシリ!とバスタートータスに向けて指を突き付けるサンフラッシュ。

何やら利己的な思いも吐露しているように感じられるが、その覇気は疑いようもなく本気であることが伺えた。

・・・・・・ん?貴様等?

この場にいるのは俺と戦闘員達三人と飼育員と怪人の計六名。

彼に保護対象として見られている俺は除外するとして、戦闘員達はまだ飼育員にやられてから動けるほどにまでは回復していないので地面に伏せたまま。

残るはこちらと向かい合っている怪人と草むらから出た際に彼の背後に出た飼育員だけなのだが、・・・・・・まさか?


「そこのカメの怪人と大男の怪人よ我が正義の鉄槌を潔く受けるが良い!!」


「―――――――――オォッ!?」


サンフラッシュが口にした言葉から誰を差しているのか理解出来た。

どうやら彼はバスタートータスの背後にいる飼育員を怪人の仲間だと認識しているようであった。

指を差された飼育員の山田は、「ええ、自分も!?」と言いたげに自分を指差して怪人の仲間だと思われてしまったことにショックを受けているようであった。


「トウッ!」


屋根を蹴り、空高く跳び上がるサンフラッシュ。

跳び上がったサンフラッシュが雄たけびを上げつつ体を大の字に広げると、周囲から橙色のエネルギーが円を描くように集まって来た。


「はぁぁあああああっ!!」


両手を頭上に掲げ、集まって来たエネルギーを両掌の先に纏め始めるサンフラッシュ。

集ったエネルギーは大きな球体となり、そこから纏まり切れなくて漏れた分が炎となって球体から噴き出していた。


「まさか、登場して即必殺技を放つつもりか!?普通そこは最後に出すもんじゃないのかよ!?・・・って、もしかしてこの位置ってヤバい?・・・・・・・・・・・・撤収!!」


状況の変化を呆然と見ていたディーアルナは、このままこの場所にいるのは危険だと判断し、そこら辺に転がっている戦闘員達を回収しながら近くの飼育小屋の影に隠れるのであった。






仮面ヒーローサンフラッシュは今のこの状況を自身のヒーロー人生の転換期だと彼は思っていた。

彼のヒーローとしての活動は一年ほど前から始まり、主に他のヒーローが休暇に入るときや負傷して活動休止状態となった際の代打か、もしくは怪人との戦闘で苦戦しているヒーローの助っ人として参加するというのが常であった。

言い方は悪いが、まるで他のヒーローが復帰するまでの繋ぎのような活動だが、サンフラッシュはその点については不満はなかった。

例え代打であろうとも、繋ぎであったとしてもヒーローとして活動していることに変わりはないからだ。

しかし、そんな彼にも不満に思うことはあった。

それは世間に対する知名度があまりなかったことである。

サンフラッシュを含めたヒーローは活動支援金と言う形での給金がヒーロー連合協会から渡され、その増減はどれくらい活躍したかによって比例する。

サンフラッシュはいつも他のヒーローの助っ人としての参加であった為、また主に敵対する悪の組織や怪人が存在していないこともあり、世間からは”苦戦するヒーロー達に助太刀するヒーロー”という認識であった。

そしてそれ故に彼に与えられる活動支援金の実入りは少なかった。

時には一ヶ月もの間まともなヒーロー活動がなく、派遣業で食いつないだこともあった。

だが、そんな彼に転機が訪れた。

つい一ヶ月ほど前からデビューし始めた野獣戦隊アニマルレンジャーが重傷を負い、急遽活動休止状態となったのだ。

アニマルレンジャーの状態は全治半年だと医者から告げられており、その間彼らが戦っていた獣解放戦線と誰が戦うかについてヒーロー連合協会は協議していた。

そしてそれを千載一遇の好機と見たサンフラッシュは、活動休止している彼等の代わりに助っ人として戦うことに積極的に立候補した。

この機会に自身のヒーローとしての知名度を一気に上げて、活動支援金を増額してみせる為に。

今回もあえて前回の戦闘で気になったことがあって調査しに来たと口にしたが、実際は貪欲なまでに血眼で獣解放戦線の怪人を探して街中を駆け回り、その最中に聞こえた戦闘音を辿ってやって来たのだ。


「うぉぉおおおっ!とくと味わいたまえ、我が必殺の技を!『サンフレイム――――――」


目の前の怪人達を倒して前回よりも活躍し、知名度を上げてみせると意気込むサンフラッシュ。

頭上に作り出した炎のエネルギー球体を投げ込もうとする体勢に入り、仰け反るように大きく振りかぶって、バスタートータス達に向けて投げ―――――――――


「「「「「クエッ!クエッー!!」」」」」


「――――――シューとうぎぃやぁああああっ!?」


――――――込もうとして背後から何処からともなく高速で飛んできた五匹のスーパー化したペンギンによる(くちばし)攻撃を受けた。

あえて言葉にするのであれば、スーパーペンギン達によるつつく攻撃!サンフラッシュにクリティカルヒット!サンフラッシュは怯んだ!・・・・・・とでも言うのだろうか。

意識していなかった方向から――――――というか敵と認識していなかった存在から不意打ちを食らったサンフラッシュは背中にペンギンたちの(くちばし)が突き刺さったまま地面に向けて墜落していく。


「バァ、オオオオォォォォオオオオオンゥゥゥ!!!」


「グベアァァァァッ・・・!?」


墜落予定地点の近くには、先ほどディーアルナ達の近くに姿を見せたスーパーエレファントが興奮しながら鼻を振り回しており、それが落下中のサンフラッシュに偶然にもヒットした。

強化されたその力強い一撃は、まるで大型トラックが全速力で突っ込んで来たかのような衝撃をサンフラッシュに与え、それによりサンフラッシュは汚い悲鳴を上げながら放物線を描きつつ吹き飛ばされていく。

ちなみにサンフラッシュの背中に突き刺さっていたスーパーペンギン達だが、彼等はサンフラッシュがスーパーエレファントの一撃を受けた際にサンフラッシュの体に刺さっていた嘴が抜けて、それぞれ上手に地面へと着地した。

その華麗な着地を点数で表すのであれば十点!十点!十点!十点!零点!だろうか。

最後の一匹だけは着地に失敗してドシャッ!と転んでいたが、何事もなかったように起き上がって仲間のスーパーペンギン達と一緒に一列となって歩き去って行くのであった。


「・・・・・・グフッ!?」


スーパーエレファントの一撃を受けてギュルンギュルンと乱回転しながら吹き飛んでいたサンフラッシュは、数秒後に無様に地面に墜落した。


「・・・・・・う、うぅ・・・・・・!」


しばらくはまともに動けない程のダメージを負ったサンフラッシュは、呻き声を発しながらも何とか起き上がろうとした。

しかしそんなサンフラッシュの元へ複数の不穏な影がやって来て、彼の事を見下ろしていた。


「キィッ!キキィ、キィッ!!」


「キキキィッ・・・!!」


「「「キキィッ!!」」」


「・・・・・・――――――ッ!?」


その影の正体はスーパー化したサルであった。

否、その見た目は最早サルなんて可愛いものではなく、完全にゴリラと呼べそうな姿に変貌していた。

体は個体によって違うが二倍から三倍ほどまで大きくなり、腕周りもまた同じ位筋肉によって膨張していた。

そんな強化されたサル達が剣呑な雰囲気を纏いながらサンフラッシュを取り囲んでいく。

そしてそんなサル達を見たサンフラッシュは途轍もなく嫌な予感を感じていた。


「・・・ま、まさか、襲って来るなんてことは、ないよな・・・・・・?」


一筋の希望を信じてそう呟いたサンフラッシュであったが、現実はそんな甘くはなかった。

サンフラッシュが落ちた場所は動物園にある猿山の一角であり、サルたちのテリトリーの中。

結果的に彼等の縄張りに入り込んでしまったサンフラッシュは、サル達にとっては自分達の住処に侵入した外敵。

自分達の事を脅かしかねない敵に対して容赦するなんてことをサル達がする訳もなく、一斉にサンフラッシュに殴りかかった。


「ウキィーッ!ウキキィーーーッ!!」


「キィッ!ウキキィッ、ウッキィー!!」


「キキィ!キキィ!キキィ!」


「う、うぉぉおおおお!?や、やめろ!来るな、来ないでくださいお願いします!・・・いぎゃぁぁああああああっ!?」


スーパーサル達は動けないサンフラッシュに対して集団リンチを決行。

強化されたことによって本物のゴリラと変わらない筋力を手に入れたサル達の腕力は恐ろしいもので、サンフラッシュはされるがままに殴られ、転がされ、振り回され、成す術なく徹底的なまでにボコボコにされていた。


「・・・・・・・・・ペッ!」


「・・・・・・・・・」


ある程度攻撃して気が済んだのか、サル達はサンフラッシュの元から離れて「二度と来るんじゃねぇぞ」と言いたげに唾を吐きかけた。

サンフラッシュはピクピクと体を震わせるだけであり、意識すらもないためか、唾を吐きかけられても何一つ反応を返すことはなかった。






「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」


自分達に必殺技を叩き込もうとして、いざ放とうとした瞬間に狂暴化した動物達に襲われたサンフラッシュの惨状を見て、言葉を失くして呆然と立ち尽くしていたディーアルナ達。

まさかヒーローが動物達にボコられて戦闘不能になるだなんて、誰が想像できるだろうか。

その場にいた全員が最早悲惨としか言いようのないサンフラッシュの姿を見て、「暴走した野生って恐ろしい・・・!?」と内心で戦慄したのであった。





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