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ミッション13 動物園での一騒動・・・!


「おお・・・!食べてる!食べてくれてる・・・!」


目の前にいるウサギが、自身の掌の上に置いてある特製饅頭をモキュモキュと食べている姿に、感動と癒しを感じたディーアルナ。

そんな白くてフワフワとした毛を持つウサギの食事風景に「口をモキュモキュ動かしている姿は可愛いなぁ」と思わず顔を綻ばせる。


「イ~!イイ~!」(ディーアルナ様~!ヤギの餌やり終わりましたよ~!)


「イイッ、イ~!」(こっちも、ゾウとキリン終わったぞ~!)


「イイイ~!」(僕の方も鳥さん達の分は終わったよ~!)


「分かった~!俺の方も、もうすぐ終わるから~!」


遠くから聞こえてくる戦闘員達の声に返事を返しながら、ウサギが食べ終わるまでのんびりとその姿を眺める。

一号による驚愕のライオンの飼育小屋侵入事件から一時間が経過した現在、ディーアルナ達はそれぞれ手分けして動物達に餌やりを行っていた。

鍵開けというスキルを一号が持っていることを知ったディーアルナであったが、さすがに一号だけで全部の飼育小屋の鍵を開けていくのは時間がかかり過ぎると判断し、まずは小屋の鍵を入手することから始めることにした。

鍵のある場所はおそらく受付や飼育員室にあると考えたディーアルナ達は、それがあると思われる建物に侵入し、見事飼育小屋の鍵を手に入れた。

これで効率よく作戦を進められると喜んだディーアルナ達であったが、同時に一つの懸念事項が出て来た。

それは動物園を管理している筈の従業員の姿が見えない事であった。

物陰に潜みつつ建物の中を移動していたディーアルナ達であったが、鍵があった管理準備室に到着するまで、唯の一人も従業員の姿を見かけなかった。

いくら休業中と言えども、動物たちの飼育の為に必ず何人かは従業員がいる筈であり、更衣室などを調べてみて、用意されている制服が何着かないことから、動物園内にいるだろうと思われるのだが、それでも現在に至るまで影も形も見かけることがなかった。

うーん?と頭を悩ませるディーアルナであったが、ふと足をタシタシと叩かれていることに気付く。


「・・・うん?ああ、もう食べ終わったのか。」


視線を下に向けて、掌の上にあった特製饅頭がなくなっていることに気付いたディーアルナ。

どうやら食べ終わったようなのだが、饅頭を与えていたウサギは「もっとくれぇ!」と言いたげにディーアルナの足を何度も叩いていた。


「ごめんなぁ。饅頭を与えるのは一個までだから、もうこれでお終い。後は飼育員の人から餌をもらいなよ。」


そういいながらウサギの頭を数回撫でた後、小屋から出る。

扉にしっかりと鍵を閉めてからウサギ小屋から離れ、戦闘員達と合流しに向かうのであった。






「・・・・・・」


ディーアルナの後姿をじっと見つめていたウサギ。

しきりに口元を動かしているので、先ほど食べた饅頭の味を思い返しているようにも見えた。

また、小屋に張り巡らされている金網をしきりにタシタシと叩いてもいて、その姿からは「待ってぇ~!」と言っているようにも見え・・・・・・・・・・・・


「・・・・・・!」


――――――も゛っ・・・!!


・・・・・・・・・・・・もっ?






「・・・・・・これで全部配り終えたかな?」


「ヨイショッ・・・!」と言いながら空になった饅頭の入っていたビンをゴミ袋に詰めるディーアルナ。

ブレスレット型端末を操作してホログラムウィンドウを呼び出し、ボックス画面を開く。

それからブレスレットを付けている腕をビンの入った袋に向けると、ブレスレットから光が伸びた。

光りが袋に当たると、袋はボロボロと崩れるように光へと変わり、ブレスレットへと渦を巻くように吸い込まれていった。

光りが完全に消えた後に画面を見てみると、画面内に先ほどまではなかった袋のアイコンが表示されていた。


「・・・本当に便利だな、このブレスレット。変身や通信装置として使えるだけでなく、物質を粒子化して電子ストレージに収めるなんてことも出来るなんて・・・・・・」


マジマジと自身が付けているブレスレットを見つめながら、「なんてオーバーテクノロジー・・・・」と呟くディーアルナ。

やっていることは悪の組織っぽくないくせに、どうしてこういう技術面だけは突出しているのだろうか?


「イイー!?」(ディーアルナ様~!?)


「・・・・・・うん?」


と、そこへ戦闘員三号の声が聞こえたので、声が聞こえた方向へ振り向く。


「・・・・・・うぇ!?」


そこには動物園の飼育員に追われている戦闘員達の姿があった。


「イー、イイー!!」(ごめんなさい、見つかっちゃいましたー!!)


「み、見つかっちゃいましたって、ああもう・・・!?」


逃げてくる戦闘員達に合わせて並走する形で自らも走り出す。


「・・・っていうか、あの飼育員達はいったいどこにいたんだ・・・!?」


「イッ、イイー。、イーイイー、イー!」(どうやら、会議室っぽい場所で話し合いをしていたらしくって、一号のバカが動物の方に意識を向き過ぎて下手をやらかしたんだ!)


「イッ、イー!イイイッ、イイー!」(ご、ごめん!近くにアザラシがいる水槽があって、珍しさについ!)


「イイイ~!!」(一号のバカアホドジマヌケ~!!)


「言い合いをしている暇があるなら逃げる!今は急いで転送装置のある物置小屋に向かうぞ!」


全速力で逃げながら口々に一号の事を罵る二号と三号。

戦闘員達の話を聞きながら事態を把握したディーアルナは、言い合いを続ける戦闘員達を叱咤しつつ、目的地へ向かうことを促す。






「・・・ハァッ!・・・ハァッ!・・・くそっ、なんて逃げ足の速い奴等なんだ・・・!?」


「ダメだ・・・!向こうの足が速すぎて、追い付けないどころか、引き離されている・・・!!」


ディーアルナ達の後ろで、必死に彼女たちの事を追い掛ける飼育員達。

何故彼らが戦闘員達を追いかけることになったのか。

彼らが会議室にて動物達の状態について獣医師を交えて話をしている時に、アザラシやペンギン等の水棲動物達が配置されたエリアから激しい水音が聞こえて来たので、何事かと飼育員達が確認しに行ったところ、アザラシの飼育部屋の中でなにやら怪しげな饅頭をアザラシに与えようとしている戦闘員一号の姿を見つけたことが発端であった。

「何してんだコラァ!?」とすぐさま戦闘員達を捕まえようと動き出した飼育員達であったが、戦闘員達の逃げ足が思ったよりも速く、そして妙に上手いフェイントによって翻弄され、中々捕まえることが出来なかった。

建物の外に出た際にも総出で追いかけたのだが、時に散開し、時に集合してを繰り返されたことで多くの飼育員達が戦闘員達の事を見失い、今現在彼らの事を追いかけているのは、この場にいる二人の飼育員だけであった。


「ハッ・・・ヒッ・・・!に、逃げられちまう・・・・・・!?」


「くっ・・・!?俺達では、ダメなのか・・・!!」


戦闘員達を追いかけてきた飼育員達であったが、ずっと走り続けてきたせいで既に体力は限界に達しており、肉体も疲労困憊の状態となっていた。

もう無理だ・・・!と諦めかけていたその時、彼らの後ろから来た一つの影が間を縫うように物凄い勢いで追い越して行った。


「え・・・!?今のは・・・・・・?」


「あ、あれは・・・!?山田だ!山田が来てくれた!」


その影がなんなのか気付いた飼育員達は安堵した。アイツならばあの不審者どもを捕まえることが出来る筈だと!


「た、頼んだぞ、山田ぁっ!!俺達の分まで頑張ってくれぇ!・・・・・・ガフッ!?」


「お、お願いしますよぉっ!山田さぁん!・・・・・・ゲフッ!?」


「・・・・・・!」


飼育員達の声援を受けたその影は、応えるようにグッ!と親指を立てながら走り去って行った。

それを見届けた飼育員達は安心し、そして先ほど行った声援で体力を使い果たし、地面に倒れて気絶するのであった。






「イッ・・・!イ、イーッ、イイー!?」(ちょっ・・・!ディ、ディーアルナ様、なんか凄そうな人が近づいてくるんだけど!?)


「凄そうな人・・・・・・?」


警戒の為に時折後ろを振り向いていた一号が、突然声を張り上げた。

一号が口にした凄そうな人と言う言葉が気になったので振り向いて見たディーアルナ。


「・・・・・・・・・フッフッフッ!!」


そこには物凄い勢いでディーアルナ達を追いかけてくる一人の男の姿があった。

黒い髪を角刈りに整え、暑苦しいほどの男らしさが感じられる彫りの深い顔立ち。

目元は影となって見えないが、その形はとても鋭そうな様相に見える。

今も勢いよく走らせる肉体は、はっきりくっきり見えるほどの全体的にムキムキとした筋肉をしており、見た目はまるでボディービルダーのような体付き。

現在着ている飼育員の制服もその自己主張の激しい筋肉によってピチピチとしており、今にも破けてしまいそうな印象が見受けられ、胸元には『飼育員:山田』と書かれた名札が付けられていた。


「・・・・・・ムンッ!!」


男――――――飼育員は気合を入れるように声を上げ、顔をディーアルナ達に向けた。


「――――――ヒィッ!?」


「「「――――――イィッ!?」」」(――――――ウヒィッ!?)


グポーンッ!と音が聞こえそうなほどの眼光を赤く光らせ、先ほどよりもいっそう早く足を動かす飼育員。

その走力は尋常ではなく、あと十数秒もすればディーアルナ達に追い付くほどであった。


「ギャァァアアアアッ!?何アレ、何アレェ!?本当に人間なのかよ!?」


「イイイッ!?イイーッ!?」(見た目完全にターミ〇ーターのそれなんだけど!?怖いんですけど!?)


「イ、イイッ!?イッ、イイーッ!?」(こ、殺される!?マジで、殺されちゃうぅっ!?)


「イッ!?イイイッ!・・・イッイー!」(く、くそっ!?このままじゃ追い付かれちまう!・・・こうなったら!)


戦闘員二号が足を止めて振り返り、飼育員に向かって駆け出す。


「なにをするつもりだ、二号!?」


「イイーッ!!」(こうするんだよぉっ!!)


戦闘員二号は腰に付けていた棒状の物体を手に取ってスイッチを入れる。

その途端に棒の先からピンク色のエネルギーが迸り、その形を細長い剣のように形成していき、見た目は完全にビーム〇ーベルとなったそれを二号は振りかぶった。


「イッ、イイーッ!!」(食らえやっ、ワレェーッ!!)


「――――――フンッ!」


「・・・・・・イ゛ィッ!?」(・・・・・・グホォッ!?)


飼育員の脳天をしっかりと捉えていた二号の一撃。

だがそれが飼育員に届く事はなく、逆に飼育員の拳による一撃を胴体に食らって撃墜された。


「に、二号ーッ!?」


「イッ!イイッ!?」(くそっ!二号がやられちまった!?)


「イイイイイッ!?イ、イイッ!?」(うわわわわっ!?こ、こっちに来たよ!?)


二号がやられてしまったことに驚いた俺達は、彼を助けようと思わず足を止める。

飼育員は二号を撃墜した後、そのまま二号を地面に投げ捨てながらさらに接近してきた。


「イイッ!イッイー!?」(こ、この!こっち来るなぁー!?)


「三号!?」


接近してくる山田に対してその侵攻を阻もうとしたのか、三号がディーアルナ達の前に飛び出した。

三号は腰の両脇に付けていたバリア発生装置を起動させ、自らの体を覆うエネルギーの壁を作りだし、飼育員に向かって突撃した。

鉄壁の防御壁であるバリアであればどうにかなると考えていた三号であったが、しかしその予想はまさかの事態によって裏切られた。


「――――――オォッ!」


「イ゛ィッ!?・・・・・・イ、・・・イィ・・・・・・!?」(ゲバァッ!?・・・・・・う、・・・嘘ぉ・・・・・・!?)


三号の体当たりが当たる瞬間、飼育員は右腕を引き絞り、下から突き上げるように勢いよくアッパーカットを繰り出した。

飼育員の拳がバリアに当たった瞬間にバリアは砕け、そのまま三号の顎に飼育員の拳が直撃。

哀れ戦闘員三号は上空に吹き飛ばされ、ディーアルナ達の頭上を通り過ぎて、近くにあったゴミ箱にシュートイン!された。


「三号までやられた・・・・・・!?」


「イッ、イイッ!・・・・・・イー、イイーッ!!」(おのれ、よくも二人を!・・・・・・こいつは使いたくなかったが、二人の仇じゃぁっ!!)


「二人共まだ死んでないんだけど・・・・・・!?」


一号に二人は行動不能になっただけで生きているとツッコムも、もはや聞いていない様子で電子ストレージから重火器を取り出した。

両手にマシンガンを持った一号は飼育員に銃口を向け、盛大に引き金を引いた。


「イイイーッ!イーイーッ!!」(汚い花火を上げろやぁーっ!ヒーハーッ!!)


一号の持つマシンガンが火を噴き、銃口から飛び出た弾丸が飼育員に迫る。

・・・・・・・・・だが、


「――――――フンフンフンフンッ!!」


シュババババババババッ!!


「フー・・・・・・!」


カラカラカラカラカラカラッ・・・・・!


何と飼育員はその場で立ち止まって高速で両手を動かし、飛んでくる弾丸を全て掴み取ってしまったのであった。


「イイイッ、イイッ・・・・・・!?」(弾丸を素手で掴んだ、だと・・・・・・!?)


「――――――ムンッ!!」


「・・・・・・イッ!?イ゛ィッ・・・!?」(・・・・・・はっ!?ブボォッ・・・!?)


銃弾を素手で掴んだ飼育員の姿を見て呆然としていた一号は、急速に接近してくる飼育員に気付くのが遅れ、その顔面が減り込んでしまうほどの拳の一撃を食らって吹き飛び、地面を転がって行った。


「い、一号まで・・・!?こいつ、本当に化け物か・・・!?」


戦闘員達が全員敗れ去り、冷や汗をタラリと流すディーアルナ。

今彼女達はアンビリバブルという組織を結成してから二度目の絶体絶命のピンチに陥っていってしまうのであった。





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