ミッション103 出発、豪華客船に乗って・・・・・・!
お久しぶりです、Kudoです。幾つか話が出来上がったので一週間毎に投稿していきます。
今回は話の前半のような感じです。
何処までも広く、青く輝く大海原。
そこは日本の東に位置する海であり、所謂太平洋のど真ん中だ。
そんな広い広い海の上を、一隻の巨大な船が航行していた。
全長三六二m、全幅六五m、重さ約二十二万トン越え。世界最大の豪華客船と同等規模のその船は、風に吹かれて生じるさざ波を掻き分けながら進んで行く。
その甲板の上で俺達―――悪の組織アンビリバブルのメンバーは、それぞれ思いっきり寛いでいた。
「―――絶景とはまさにこの事だな。この青い大海原の景色を肴に飲むフルーツジュースは、また格別に旨い」
そう言いつつ、プールチェアもしくはサマーベッドと呼ばれる物の上で寝転びながらグラスに入ったフルーツジュースをストローでチュウチュウ吸って飲んでいるのは、悪の組織アンビリバブルのボスであるブレバラント・アーユーカウス・レンテイシア―――略してブレーバーだ。
両手両足を投げ出すようにしているその姿からは、完全にリラックスしているのが分かる。なんならマスクに付いている四つ目がどことなく垂れ下がっているようにも見えた。
「イイッイー。イイイ、イッイー」(食い物も旨いっすよー。流石はお金持ちが所有する船、お菓子も一級品だわぁ)
「イイッ。イーイーイイー。イイイッ、イーイー」(設備も一級品のようだったぞ。まさか銃火器のメンテナンス用品があれ程充実しているとは思わなかった。しかも趣味なのかマニア向けに用意したのか、パイルバンカーなんて物まであったしな)
「あらあら、充実していたのはそれだけじゃないみたいよぉ。医療器具もそうだけど、薬品も古今東西の品が揃っていたわぁ。特に珍しい物としてはこれねぇ。これは『ハバネロカヤクガエル』っていう世にも珍しい蛙でねぇ、自分の身が危険に陥ると唐辛子とかが持つカプサイシンと似た刺激成分を周囲に爆発する様に噴射するのよぉ。・・・これをこの薬品に漬け込めばあら不思議。空気に触れた瞬間爆発する薬が―――」
ブレーバーに続くようにそう言ったのは、戦闘員一号、二号、メドラディであった。
三人は開かれたパラソルの下に置かれていたテーブル席に座りながら、それぞれお菓子を食べたり、銃の手入れをしたり、薬品調合をしていた。
・・・って、おい。何でこんな所でそんな事してんのメドラディ!?危ないから、何かの拍子にその薬品を
落っことしたりしたら危ないから仕舞っとけって!いやホントに!!
「ちょ、どうして僕を追いかけて来るのさアルミィィィ!?」
「それはお前が逃げるからだ!というかお前あれだろ。水着姿の姐さんに突撃かましてどさくさ紛れに抱き付くつもりなんだろう?」
「ギクゥッ!?」
「やっぱりか!そんな事させやしねぇ!絶対捕まえてやるぞピョン太郎!お前を姐さんの下へ行かせはしねぇぇぇ!!」
「つ、捕まって堪るかぁぁ!僕は、僕は、ディーアルナ様とイチャラブするんだぁぁ!!」
視点を移して甲板の中央、幾つかあるプールの一つで、アルミィとピョン太郎が鬼ごっこで遊んでいた。
・・・いや、あれはどちらかと言えば、逃げるピョン太郎を狩猟本能を発露したアルミィが追い掛けているといった感じだろうか。涙目になりながら水上を走るピョン太郎を、鋭い牙を見せる程の笑みを浮かべながら物凄い勢いで泳いで追い掛けているアルミィを見ているとそんな感じがする。
ちなみに此処にいない戦闘員三号についてだが、彼は現在客室で休んでいる。出発したばかりの頃はなんともなかったのだが、時間が経つにつれて体調を崩して船酔いでダウンした為だ。まるでゾンビのような呻き声を上げている様子は本当に辛そうだった。
「なんというか・・・随分とだらけているというか、この状況を思いっきり満喫しているなブレーバー。準備とかしなくていいのか?明日には目的地に到着するんだろう?」
「いやいや、お前がそれを言うのか、ディーアルナよ。屋台で売られていた料理をそんなに大量に抱えていては人の事は言えないと思うが?」
そして俺―――女幹部ディーアルナこと渡辺光はと言えば、ブレーバーに指摘された通り屋台で売られていた色々な料理を大量に抱えており、それ等をパクパクと食べていた。
・・・いや、な?匂いに釣られて思わず買ってみたんだけど、此処の料理は本当に旨くてさ。ついつい手が止まらなくなってしまったんだよなぁ。
なお、これ等の料理を売っていた屋台は船の中に存在しており、様子を見る限りでは売上は結構出ているようであった。特に『鉄板一筋〝男坂〝』とかいう屋台で作っている焼きそばの売れ行きは良く、つまりはそれだけ美味しいということであり、今抱えている分を食べきったら後でそれも買いに行くつもりだ。
それとこれは今更かもしれないが、この場にいる俺達の今の格好はブレーバーを除いて全員水着姿であったりする。
耳に掛かるくらいの長さの白髪と、ルビーの様な赤い瞳が特徴の色白肌の見た目が美少女である俺が着ているのはシンプルな白のビキニだ。ワンボイントとして右胸部分にイルカのイラストが描かれている。
前髪に黒のメッシュの入った背中まで延びる長い金髪に赤褐色に近い肌、そして金毛の猫耳と金と黒の縞模様猫尻尾、ミィちゃんと刺繍が縫われたピンクの首輪が特徴的なスレンダーな体型の女怪人ことアルミィは、黄色を基調としたビキニだ。所々に虎の縞模様を模したようなピンクの柄が彩られている。
二十代前後の大学生くらいのボン、キュッ、ボンという擬音が付きそうな豊満な体の持ち主であり、大和撫子風の女怪人ことメドラディは、紫色を基調にしたハイレグタイプだ。元々のメリハリの利いたスタイルに長い黒髪も相まって、大人の色気というものを匂わせている。
つい数日前にとある騒動に巻き込まれて怪人となってしまった、見た目は完全に美少女だが実際は男の子である白いウサ耳にウサ尻尾を持つ怪人ことピョン太郎は、上半身にパーカータイプのラッシュガードを、下半身に青色のトランクスタイプの水着を着ていた。所々に散りばめられた兎のイラストが彼の可愛さをより引き出している様に感じられる。
普段は黒いタイツのようなスーツで全身を覆い、銀色の胸当てと手袋、靴を履き、顔には全体を覆う電子的なアイマスクっぽいものを付けている戦闘員一号と二号は、マスクこそ被ったままだったがスーツは脱いでおり、ある意味では男らしいブーメランパンツをピシッと履いていた。
露となった彼等の体は筋肉質で細マッチョとでも言うべきものであり、履いている物も相まって意外と似合っていた。・・・・・・マスクがなければだったが。
いや本当に、なんでマスクを着けたままなのだろうか?今はある意味休暇みたいなものなんだから外したっていいだろうに。これでは何処ぞの変態の様にしか見えないって。
まあそんなわけで、南国風な気候もあってか皆が皆開放的な感じになっていた。
「・・・というか、ブレーバーはそんな全身黒ずくめの格好で暑くないのか?」
「ふっ、問題はない。このスーツは温度調節機能が備わっているからな。どのような環境でも快適に過ごすことができるのだ!・・・あ、りんご飴ある。それ我に頂戴。おいしそう」
・・・二度目になるが、ブレーバーを除いてだったが。
彼はそう声高々に言った後に私が持っている物の中に自分の食べたい物を見つけたようで頂戴とねだってきた。
まあ、別に断る理由もなかったので普通にあげたけど。また買ってくればいいわけだし。
というか、なんでそこまで頑なに見た目暑苦しそうな仮面とスーツを着ようとするのかが分からない。此処が公共や群衆の目を気にしなくていい環境で、正体を隠す為の着ぐるみを着る必要がないのだから、脱いだって問題ないだろうに。
実際に俺がそう言ったらブレーバーはこう答えた。
「それはそれ、これはこれだ。この仮面とスーツは我のアイデンティティ。そう易々と脱ぐつもりはない!」
・・・・・・さいですか。
そんな呆れたような呟きを、思わずといった風に内心で零した。
そもそも、どうして俺達がこの船に乗っているのかと言えば、それは『悪の組織、秘密結社合同スーパーロボットコンテスト!』の会場である『スパランティス島』という人工島に向かう為であった。
今俺達が乗っているこの船の名前は『フリーダムレインボー』と言い、コンテストの主催者であるオーナーが所有する大型船だ。
一応分類上は豪華客船に入るし、その船内には寝泊まりするホテルや多数の飲食店、販売店が存在しており、加えて船底部分は倉庫区画になっており、そこには大量の物資が置かれている。・・・のだがしかし、実を言うと置かれているのはそれだけではなかったりする。
倉庫区画には大量の物資以外にも、今回俺達悪の組織アンビリバブルも含めたコンテストに参加する者達が造った大小様々なロボットもまた数多く置かれているのである。
それはコンテスト会場に輸送する為というのもあるが、それ以外にも主催者側が一旦預かる事で妨害行為や不正行為を行わせない為でもあるらしい。なんでも、コンテストに参加する悪の組織や秘密結社の中には敵対し合っている所も存在している為、その者達が会場であるスパランティス島に到着する前にお互いのロボットを破壊したり、動作不良が起こる様に弄る可能性があるからだそうだ。
というか、実際前にそういう事をした連中がいて、破壊された事で動力部が大爆発を起こしたり、動作不良が起こった事によりロボットが暴走してスパランティス島を破壊して回るといった大惨事を引き起こしたのだそうだ。
また、ロボットコンテストが始まったばかりの頃は各組織それぞれでコンテストに出すロボットを運んでもらう様にしていたそうだが、妨害工作として運んでいた船ごと沈没させるといったことをする連中もいたことがあったので、公平を期す為に現在の形式となったらしい。
・・・いやまあ売れれば金になるし、それを期に売買契約とかが出来るようになれば、長期的な収入源にもなったりするからな。金が欲しい連中からすれば是が非でも勝ちたいという思う事だろう。その気持ちは分からなくもない。
・・・ただまあ、ウチの場合はそういった連中とはちょっと違ってそこまで金に固執してはいなかったりするのだが。
その理由は組織的には金に困っていないというのもあるが、今回俺達が用意したロボットが趣味やらロマンやらが全開の代物だったからだ。
それは巨大ロボット。よくテレビの戦隊ものとかで出るような、あれだ。その性能に関しては、ブレーバーと戦闘員三号が主に設計、建造したということもあって高い事は間違いない。
とはいえ、それと売れるかどうかは別問題だったりするのだが。
というのもコンテストが始まったばかりの初期の頃はともかく、今のスタンダードは基本的に人間サイズか、それよりも一回り二回り程大きいもの。ロボットのサイズに関しては特に規定とか規制なんてものはないらしいのだが、今時巨大ロボットの需要なんてほとんどないからだ。
故に、そこに敢えて巨大ロボットを作って持って行こうとするブレーバー達はかなり酔狂な、ロマンを追い求める趣味人的な連中の括りに入るらしい。まさに天才となんとかは紙一重というやつだろう。
「まあ、アンタがそれでいいならこれ以上言うつもりはないけどさ。・・・・・・それはそれとして一つ聞きたい事があるんだけど、この船って会場であるスパランティス島に到着する前に何かしらイベントをやる予定とかあったっけ?」
「・・・うん?どういうことだ?」
「いやな?さっきから何か騒がしい音が聞こえてきているからさ。ショーか何かでもやっているのかなぁ、って」
パク、パク、パク、ゴクン。と、抱えていた屋台料理を全て食べきり、空となった紙皿やプラスチック製の器を用意していたゴミ袋に入れた後で、俺はブレーバーにそう尋ねた。
そう。実はさっきから俺の耳に、ドッカンバッカンという何かが破壊されるような音が何処からともなく聞こえてきていたのだ。
怒声やら悲鳴のような声も聞こえてきていたので、何かしらのイベントでも起こっているのだろうか?と思ってブレーバーに聞いてみた。
「・・・???いや、そんな予定など無かったと思うのだが・・・・・・というか、本当にそんな音が聞こえているのか?我の聴覚センサーにはそんな反応は出ていないのだが・・・」
だがしかし、彼もまた分からないという風に首を傾げていた。
・・・その後でこちらを二度見しながら、「・・・というか、え?あの量を本当に食べきったの?マジで??」とかなんとか呟いていたが、まあそれは些末事だろうと思った俺はスルーして、先程から音が聞こえている場所に向けて指を指した。
「ああ、今も聞こえているぞ。この甲板よりも上の所と、大体船内の真ん中・・・いや、それよりちょっと下くらいの辺りから」
「む、む・・・?その位置となると、おそらく操舵室と動力室辺りだと思うが・・・・・・何でそんな所で騒ぎが起こっ―――いや待て、まさかっ!?」
俺が指を指した場所に目を向けたブレーバーは、始め首を傾げたが、そのすぐ後に何かに気付いたようにハッとしてーーー
ドッッッガアアアアアァァァンッ!!!
「ぬおっ!?」
「な、なんだ!?」
―――その時だった。突如として爆発音が響き渡るのと同時にこの船が大きく揺れたのは。
次回投稿は10月2日の予定です。




