ミッション98 密会するヒーロー達 その2
皆様、お待たせしました。以前言っていたもうちょっと続くお話です。
本当は前編後編の二話構成にするつもりだったのですが、書いている内に予想以上に長くなってしまったので複数に分けて投稿していきます。
今回は色々な伏線を回収する回となります。・・・まあ、シリアス成分が多いので人によっては面白くないと思うかもしれませんが。
それでもいいと言う方はどうぞご覧ください。
「・・・・・・」
長く、小さな明かりがポツポツとしか存在しない薄暗い通路。その場所を、御城は無言で歩いていた。
その顔は穏やかとは言えない苦々しい表情を浮かべており、彼の内心を表しているかの様であった。
「(・・・まさか今になってアイツが再び現れるなんてな。本当に、思ってもいなかった)」
そう小さく呟いた御城の脳裏には、あの倉庫での出来事が思い出されていた。
『ふむ・・・良い感じに飛んでいったな。ついでに認識阻害のステルスも着けてやったし、あれなら最初から追いかけている奴以外では早々誰かに見つかる事はないだろう。・・・・・・よし、帰るか』
『帰るか、じゃない!そう簡単に逃がすと思っているのか!?』
あの時御城は、突如として現れて自身を襲撃し、ディーナをも吹き飛ばした恐竜の様な見た目の怪人を捕まえようとした。
その正体が怪人だったとはいえ、恩人でもあるディーナが飛んでいくのを目にして心配する気持ちはあった。助けに行きたいという気持ちもまた当然のようにあった。
・・・がしかし、それ以上に今はこの怪人を逃がすわけにはいかないというヒーローとしての使命感が彼をその場に留まらせていた。
なにせ、この恐竜の様な見た目の怪人は御城にとって非常に因縁のある相手であり、その危険性はそこらの怪人怪物なんて比較にならないくらいに高いものであったからだ。
特に戦闘能力に関しては異常どころか異次元レベルの一言。下手をすれば攻撃の余波だけで鎧袖一触にされてしまうくらいに隔絶した差があった。
野放しにすればどれ程の被害が出ることになるのか。過去にかの怪人との戦闘を経験していたことでその光景が容易に思い浮かんでしまった御城は、逃がして堪るかと出入り口への道を遮った。
『ならばこう返そう。―――君こそ捕まえられると思っているのかい?なんなら、あの時果たせなかった決着を今ここで着けてあげようか?』
『グッ・・・!?』
・・・のだがしかし、かの怪人の体から放たれる強烈且つ怖気が走る程の闘気を受けて思わず怯んでしまった。加えて大量の冷や汗が流れ、ヒーロースーツに包まれている自身の体がビッショリと濡れてしまった。
『・・・ふふ、冗談だよ冗談。こちらにも事情があってね、今は不用意に暴れるわけにはいかないんだ。だから君との決着はまた今度、余裕が出来た時にしよう』
『・・・っ、ふ、ふざけるな!あれだけ見境なく、時も場所も考えないで暴れまわっていたお前が今更どの口で言うんだ!そんなの信じられるわけがないだろうが!!』
そんな御城の様子を察したのだろう。かの怪人は軽口混じりに冗談だと言うのだが、しかし御城はその言葉を易々と信じる事は出来なかった。
何故なら、かの怪人が過去に行ってきた所業がどれ程のものだったのか、それによってどれだけの数の都市が壊滅寸前の状況にまで陥ったのかを知っていたからであり、そして実際に当事者として経験したことがあったからだ。
故に、彼は竦んでしまっていた己が気持ちを奮い立たせ、かの怪人と戦うべく構えを取る。
『う~ん・・・過去に行ってきた自らの所業による自業自得とはいえ、知り合いにまったく信用されないというのは結構クるものがあるなぁ。なまじ、この世界で〝彼〝と関わっていた経験がある分、余計にそう感じるよ』
構えを取った御城の姿を目にしたかの怪人は、困ったような声音でそう呟いた後に、「まあでも・・・」と言葉を続けた。
『暴れるわけにはいかない、という言葉に嘘はないよ。今はそれよりも優先してやらなければいけないことがあるからね』
『・・・やらなければいけないこと、だと・・・!?いったい何が目的だ!それは先程お前が吹き飛ばした女性に、ディーナさんに関係することなのか!?』
『―――ほう?どうしてそう思ったんだい』
やれやれといった感じに首を振るかの怪人に御城がそう問い掛けると、スゥ・・・と鋭い視線が向けられた。
『さっきお前が言っていただろう。彼女を、ディーナさんを逃がすことがこの場に来た目的だと。であれば、お前の言う〝やらなければいけないこと〝に彼女が関係し、そして利用しようと考えている事は容易に想像がつく。・・・だからこそ、俺にはお前の目的が分からない。いったい何を企んでいる?彼女をいったい何に利用するつもりだ!?』
『・・・なるほど。流石は〝彼〝の相方、頭の回転は悪くないようだね。・・・ああ、勘違いしないでほしいんだが、別に馬鹿にしているわけじゃない。むしろ誉めているんだ。話に聞いていた通りの優秀な人物だとね』
ウンウンといった感じにかの頷きながらそう言ったかの怪人は、その後で「ただ・・・」と呟く。
『ただ・・・一つだけ訂正させてほしい。君は我々が彼女を利用しようとしているのだと考えているようだが―――逆だよ。彼女を巻き込もうとは考えていない。むしろ、出来るだけ関わらせないようにしたいとすら思っているんだ』
『なんだと・・・?』
その時の御城には、かの怪人がいったい何を言っているのか分からなかった。
彼の知る限りかの怪人は、他者の身を案じたり、巻き込みたくないだなんて言うようなタイプではなかった。どちらかと言えばその逆で、他人の事情なんて知ったこっちゃねえ!といった言動と行動をする、ある意味傍迷惑なタイプだった。
中身が変わったのかそれとも昔に比べて成長したのか。どちらにせよ似合わないことをするかの怪人の姿に、御城は「絶対にコイツと彼女には何かしらの関係性がある」と確信めいた考えを抱いた。
『んで、話を戻して我々の目的についてだけど・・・・・・まあ、君になら話してもいいか。無関係な話というわけでもないし』
佇まいを直し、コホンと咳き込む恐竜の様な見た目の怪人。
『我々の目的・・・それは、〝ヒーロー連合協会を壊滅させること〝さ』
その次の瞬間にはブワッと、並みのヒーローや怪人怪物なら即座に恐怖で気絶するような、凶悪と言っていいプレッシャーを放ってきた。
『彼等はやり過ぎた。この世界の平和の為に数多のヒーローを登用し、サポートし、管理するという職務に従事していればよかったのに、あろうことか欲をかいた。手を出すべきではないものに手を出したんだ。・・・・・・でも、それだけならまだ我慢できた。最終的にはその手にあるモノを取り上げてしまえば問題なかったからだ。実際、手に入れたはいいものの予想以上に手に余ったみたいで、邪魔物扱い、要らないモノ扱いをしていたわけだし』
最初は彼等と呼んだ者達に対して呆れたと言いたげな感じで話していたかの怪人だったが、しかし話していく内に段々とその声音に怒りの色を滲ませ始めていく。
『だけど彼等は、こちらが取り上げる前にそれを滅茶苦茶にぶち壊した。よりにもよって最悪な形でだ。君だったらどうだい?スパイラル・ジェッター。大切にしていたモノを、これから先も大切にする筈だったモノを知らない間に持って行かれ、更には滅茶苦茶に壊されたとしたら、許せるかい?―――我々には無理だ。許せない。許すなんてこと、できるわけがない・・・!!』
ギチリッと音が鳴るくらいに拳を握り、同時に歯軋りの音も響く。
『言うなればこれは復讐であり報復だ。人の大事なモノを滅茶苦茶に壊してくれたことに対するツケを、彼等には存分に払ってもらわないとねぇ・・・!』
それがヒーロー連合協会を壊滅させようとする理由なのだと語るかの怪人の姿に、その時の御城は辺り一面が瓦礫の山となり、火の海に包まれた光景を幻視してゴクリと喉を鳴らした。
コイツなら出来てもおかしくない。そう内心で思っていたからだ。
『―――まあ、それはそれとして。此処での用件はもう済んだことだし、そろそろ帰らせてもらうよ。この後にも色々やらなきゃいけないことがあるからね』
『・・・っ、逃がさん!』
『残念、一手遅い』
その後、かの怪人は姿を消した。ご丁寧に追跡対策として各種センサーやレーダー等をジャミングし、更には感覚すらも鈍らせる撹乱用のスモークまで放ってだ。
おかげで御城は追い掛けることが出来ず、気付いたときには既に逃げられてしまった後だった。
「(しかし復讐・・・復讐か・・・・・・これほどアイツに似合わない言葉はないな。なにせ昔はする側ではなくてもっぱらされる側だったからな)」
御城の脳裏には十数年前のかの怪人と交戦した時の光景が思い出されていた。
かの怪人は自分達ヒーローや敵対していた怪人達を時に切り捨て、時に吹き飛ばし、ちぎっては投げちぎっては投げを繰り返していた。
それ故に公衆の面前に姿を表した時には、積年の恨みを晴らさでかと言わんばかりに大多数の者から狙われ、襲撃されていたが、しかしそれ等全てをかの怪人はまとめて叩き潰し、辛酸を嘗めさせていた。まさに鎧袖一触という感じで、だ
「(まあ、その時の姿は恐竜の様な見た目のそれではなく、甲殻類を模した様な鎧姿だったが・・・・・・アイツの姿がコロコロ変わるのは前からだったからな。今更驚きはしない)」
強さという点では昔も今も変わっていなかった。だが、どことなく動きに洗練さが増した感じはしていたので、その分昔よりも強くなっているのではと御城は思い、タラリと冷や汗を流した。
「・・・・・・と、此処だな」
そんな事を考えている内に、御城は自身が向かおうとしていた目的地へと辿り着いた。
彼の目の前には地味目な茶色い色合いの扉が存在しており、その上には『吟醸殿〝芋次郎〝』という名前が書かれた看板が立て掛けられていた。
名前と街中の隅にひっそりと存在するような雰囲気からして知る人ぞ知る酒場っぽい感じであり、知り合い―――向井秀一から届いたメールに記載されていた目的地が此処で合っていることを再度確認した御城は、扉の取っ手を掴むとガチャリと開けた。
「―――ふ、ふふふ・・・燃え尽きたぜ、真っ白にな・・・・・・!」
扉を開けた先で彼が最初に目にした光景は、様々な種類の酒が整然と並べられた棚に綺麗に磨かれたテーブルカウンター、―――そして椅子に座りながら燃え尽きたように真っ白になっている、ヒーロー名メタルブレードことラッセル・バレンスタジーの姿であった。
「え・・・えっ!?」
某熱血漫画の主人公のボクサーの様に椅子に座って頭を垂れているラッセルの姿を見て思わず驚きの声を上げる御城。
「ちょっ、ラッセル!?いったい何があったんだお前!?何でそんな真っ白けに・・・!?!?」
「―――ああ、来たのね御城」
「羽澤か・・・!なあ、ラッセルに何があったんだ?何でコイツ、こんな真っ白になってるんだ?」
「何、何があったの!?」という感じに戸惑っていた御城に答えたのは、丁度ラッセルの近くにいた女性―――ヒーロー名クラッシャーバニーことヴィルマリア・羽澤であった。
「あ~、それなんだけどね・・・どうやらラッセルの奴、自分に婚約者がいるってことを知らなかったみたいなの」
「はっ?知らなかったって・・・マジで?」
「マジもマジ、大マジよ。今日の戦闘の際に御城、アンタから言われて初めて知ったんですって。・・・んで、後から私が知る限りの事をコイツに話したらこんな感じになっちゃって・・・」
「へ、へへへ・・・まさか既に外堀が全部埋められているとは思わなかったぜ・・・ウチの家族は言うに及ばず、友人知人、職場にまで根回しが完了しているなんてな。・・・結婚が人生の墓場なんて話を昔聞いたことはあるが、今の俺の心境はまさにそれだぜ・・・ふふ、ふへへへ・・・!」
「「・・・・・・」」
乾いた笑いを浮かべるラッセルに、なんて言葉を掛けたらいいのやら、といった感じに御城とヴィルマリアは無言となる。
「・・・で、でも良かったじゃないか、お前の結婚相手は幼馴染みのあの娘なんだろう?かなりの器量良しな娘じゃないか。あんな美人に好かれるなんて男冥利に尽きるだろう?」
「・・・・・・良かった?良かっただって?良いわけあるかこんちくしょう!!アイツだぞ!俺の体をこんな風にしたあの女なんだぞ!?長年腐れ縁として付き合ってきたから分かるんだ。俺がアイツの、あの小悪魔のモノになったらどうなるのか、どんな目に遭うのかをさぁ!!?」
意を決して御城が慰めの言葉を掛けるのだが、それに対するラッセルの反応は自棄っぱちなものだった。
「い、いやでもお前、三年くらい前からその娘と同居してるじゃないか。それってつまり結婚を前提に付き合っていたってことじゃないのか?」
「同居、同居ね。・・・あれはどっちかって言うと押し掛けて来たって言った方が正しい。ある日仕事を終えて自分が住んでいるマンションの部屋に帰ったら、何時の間にかアイツが入り込んでいて料理をしてたんだよ。そんでもって俺が玄関で呆然としていると出迎えるように目の前に来て、『ご飯にする?お風呂にする?それともわ・た・し?』なんて言ってきたんだぜ。・・・その時に感じた恐怖は今でも忘れられねぇ。それぐらい衝撃的だった」
「えっと・・・それって彼女が合鍵を持っていたってことじゃないのかしら?それを使って中に入ったんじゃあ―――」
「俺はアイツに合鍵なんて渡してねぇ。ましてや住んでいたマンションの場所さえ教えてなかったんだ。なのに気付いたら居たんだ。・・・そう言えば、俺の感じた恐怖が理解できるか?」
「「・・・・・・」」
ラッセルの話を聞いて再び黙り込む御城とヴィルマリア。
なるほど、確かにそんな体験をすれば恐怖を感じ、警戒もするだろう。実際話を聞いていただけの二人も思わずゾクッとしてしまったし。
「いやさ、確かにアイツの作る飯は旨いし、家事とかやってくれんのはありがたいとは思ってはいる。思ってはいるんだけどさ・・・それでもあの不気味さは拭えねぇんだよ」
「えぇと・・・」
「それは・・・」
「シャラップ。何も言わなくていい。慰めも同情もいらねぇ。この状況をどうにかできるだなんて俺も思っちゃいないからよぉ・・・」
「ふふふ、ふふふふふふ・・・・・・!」と引き攣った笑みを浮かべながらグラスに注いだ酒を呷るラッセル。
そんな彼の姿に、御城もヴィルマリアも何も言えなくなって開きかけていた口を閉じてしまった。
「・・・・・・そ、そういえば、さっきから気にはなっていたんだが・・・あのさ、ヴィルマリア。どうして君は露出度が際どいレベルのメイド服を着てるんだ?それも犬耳に犬尻尾まで着けて」
「うぇっ!?」
妙な空気となってしまった事に気まずさを感じてか、話題を変えようと御城は自身の隣にいるヴィルマリアに振り向く。
実を言えば御城は、この店に入った時点から既に彼女の今の服装が気にはなっていた。だというのに、今の今まで質問しようとしなかったのは、燃え尽きたように真っ白になっているラッセルのインパクトの方が強かったからだ。
なのでこれ幸いと、露骨な話題転換であると自覚しながら彼女に声を掛けた。
「え・・・?い、いやその・・・酒場で酒を飲むのなら、こういう格好をするのが正装だって聞いたから・・・なんだけど・・・・・・」
御城に見られている事に恥ずかしさを覚えてか、頬を少し赤く染めてモジモジとするヴィルマリア。
まあ、彼女がそんな反応をしてしまうのは分からないでもなかった。なにせ今のヴィルマリアの服装は御城の言う通りかなり際どいものであったからだ。
上半身部分は正面から見れば肩や胸元に可愛らしい感じのフリルが付いた普通のメイド服のそれに見えるのだが、しかし両脇全体はスリットになっており、またそれに沿うようにスニーカー結び状に通した紐で前面と背面の布が繋ぎ合わさる形で固定され、隙間から素肌を覗かせている。
下半身の膝丈より少し短めのスカートにもこれまた深いスリットが入っており、動き方や角度によっては、下手をすれば下着が見えてしまいそうだ。
加えて、頭と後ろ腰に着けた犬耳と犬尻尾が、普段はお堅い女性という印象を覚えるヴィルマリアに可愛らしいというギャップを感じさせていた。
見るものによっては眼福だと思えそうなもの。だがその姿を見て、そして話も聞いた御城は断言するようにズパッと言った。
「嘘だなそれ」
「うん、嘘だ嘘だ」
「う、嘘ですってぇ・・・!?」
「普通酒場に正装着る必要があるとか、そんな決まりないから。高級レストランじゃあるまいし」と言う御城。
酒を呷りながらも聞き耳を立てていたラッセルも同意するように頷いており、そんな二人の姿を目にしたヴィルマリアは、グリンッ!と勢いよく店の奥を―――正確にはそこでゆっくりとワインを飲んでいたヒーロー名シルバリオンこと向井修一を睨み付けた。
「くぅおらっ向井ィ!アンタ、よくもデタラメを教えてくれたわねぇっ!!?」
「デタラメ?いえいえ、これはちょっとしたお茶目、云わばジョークですよ。誰もが知っていることであり、すぐにおふざけだと分かるもの。そう思って言ったつもりだったんですが・・・・・・ああ、そういえば貴女は元々は世間知らずの箱入りお嬢さんでしたね。なら気づかないのも無理はない。いや、これは失敬失敬」
「・・・よし分かった。アンタ喧嘩売ってんのね?売ってるんでしょう?なら買ったろうじゃないその喧嘩ァッ!!」
ガルルッ!?と獣のような唸り声を出すヴィルマリア。
一方、向井は余裕ありげにクイッとグラスを傾けてワインを飲む。その口元には笑みを浮かべており、ヴィルマリアのことを馬鹿にしているのだと分かるものだった。
「(・・・というか、その話を信じたのか彼女は。流石は影でチョロウサ姫と呼ばれているだけのことはある)」
「(普段は神掛かっているのかと思うくらいに滅茶苦茶勘が鋭いのにな。人の言うことを疑うことなく信じちまうその素直なところは、美徳というか欠点というか・・・)」
素直なことが悪いというわけではない。ただ今のヴィルマリアを見ていると、何時か詐欺とか悪い男とかに引っ掛かるんじゃないかと御城とラッセルは心配に思い、なんだかなぁ、と内心で呟いた。
本当に、さっきみたいに恥ずかしそうに顔を赤らめるとか、そういう可愛げのあるところをもっと表に出せば異性にモテるだろうに―――
「フンッ」
ガガガンッ!
「おっと」
「うぉっ!?ど、どうしたんだ羽澤?何でいきなり虚空に蹴りを放ったんだ・・・?」
「・・・今どこからか不快になるようなことを言われた気がしたのよ」
「ふぅむ。何かしらをその鋭い勘で察知したんでしょうかねぇ。・・・でも、ついでとばかりに僕にまで蹴りを放つことはないでしょう」
「チッ、当たればよかったのに。避けんじゃないわよ」
「わぁ、辛辣ですねぇ」
蹴りが躱された事に若干悔しそうに舌打ちをするヴィルマリア。
対して向井は然程気にしていないのかのように棒読みで抗議を―――いや、むしろわざと感情を込めないことでさらに煽っているのだろう。カラカラと笑ってもいるので間違いない。
「そこまでにしてくれ、二人共。羽澤、苛立つのは分かるが落ち着け。向井も、あまり彼女を煽ってくれるな。これじゃあ何時まで経っても話が進まない」
再び言い合い・・・いや、漂う雰囲気的に殴り合いの喧嘩を始めかねない二人を止める御城。
彼に止められた二人は、一方は苛立ち混じりに渋々と、もう一方は飄々とした感じで抜きかけていた矛を収めた。
「はぁ・・・それで、向井。いい加減話をしてくれないか。お前が突き止めたあの子の―――『渡辺光』くんの居場所についての話を」
喧嘩が起こるのを未然に防げたことに安堵の息を零す御城。
その後で向井に、自身を此処に呼んだ目的―――彼が突き止めたと言う、渡辺光を連れ去ったであろう悪の組織についての話をしてくれと言う。
「ええ、勿論です。その為に貴方をお呼びしたのですから」
それに対して向井は、薄っすらとした笑みを浮かべながらコクリと頷くのであった。
次回投稿は6月27日の予定です。




