第六話:ナーガ姉妹の誘惑の件。
町の中を歩いていると、さまざまな種族が共存していることが見ていて分かった。
「あれ……なんて種族?」
上半身は人間の女性、下半身は長い蛇の尾を持つ存在に心当たりはあった。
「あの人たちは……ナーガよ!」
「ナーガ!?」
(伝説上の生き物……だったような……)
「あら、ニンゲンよ!」
ナーガの女性がニョロニョロと近づいてくる。
「この辺じゃ珍しいわね!」
綺麗な赤い長い髪を靡かせながら、俺を品定めするかのようにジロジロと見つめる。
「奴隷印はないようだけど……」
青い髪のナーガは少し冷たい目をしながら隣で腕を組む。
「アーシャ、この子……イイわね!」
(あの赤い髪のナーガさんは何を言って……)
「ダメよ、ダリーシャ……この間、人間のオスを壊したばかりじゃない!」
(青い髪の子……今、男の人間を壊したって言わなかったか?)
「あの……」
「ニンゲン、私と子作りしましょうよ!」
「いやぁ……こっちに来たばかりでして……」
(今、完全に萎えたのでご遠慮したい……)
隣にいたリリアが困っている俺を見かねて口を挟んでくれた。
「ナーガのお二人」
「ん?その耳……その魔力……」
「あなた……エルフじゃない!」
二人は俺から視線をリリアに向けた。
「ゴホンッ。」
「この人は……私の連れ……そう、連れなの!」
(何で二回言った!?)
「あなたの連れ……つまり、ツガイなの?」
「えっ!!!」
(タツオと私がツガイ……そうなるの……かしら?)
顔を真っ赤にしたリリアは固まってしまった。
「その反応……違うようね!」
リリアが作ってくれたチャンスに俺は賭けた。
「実は、俺たちは新婚なんだよ!」
「エエッ……し、し、新婚!?」
リリアは「聞いてないんですけど!?」と言った様子で俺を二度見する。
仕方ないので俺は、小声で言った。
「今を乗り切るために合わせてくれないか?」
「そ……そうなのよ!」
怪しむように俺たちをナーガの二人は観察するように見つめた。
「どう思う……ダリーシャ?」
「そうね……まぁ、他の種族の獲物を横取りするのはリスクがあるし……アーシャやめておきましょう」
ナーガたちは残念そうにしながら何処かへと行った。
(助かった……)
◇ ◇ ◇
町の中心部に向かった。
目的は、この町の『領主』に会うためだ。
「ここ?」
「そうよ、ビルバーグさんに挨拶と商売の許可をもらいに行きましょう!」
「ありがとう、助かるよ」
(リリアのお陰でスムーズに運びそうだ)
「ちなみに……私とあなたはこの町では、夫婦設定にしましょう」
「え……なんで!?」
「ナーガは口が軽いのよ……周りに怪しまれたらまた、タツオがちょっかいをかけられるわよ?」
「ああ……お願いします!!」
二人は口裏を合わせて『偽装夫婦』の関係をとることにした。
トントン。
扉を叩くと、中からスレンダーな猫耳メイド姿の女性が姿を見せた。
「ごきげんよう……あら、リリアさんじゃない」
落ち着いた声でリリアを見る。
知人の顔に彼女は薄っすらと笑みを浮かべつつ、俺の方に目を向けた。
「ニンゲン……?」
リリアと俺を何度も見比べる。
「もしかして……リリアの奴隷?」
「ちがーう!」
顔を真っ赤にしてリリアは吠えた。
「この人は……だ……」
「だ?」
「だ……だ……だだ……だだだ……だだだだ……」
(旦那……言うのよ、私!!)
「リリアったら……何を言っているの?」
首を傾げるメイドを前に俺はリリアに代わって先に答えた。
「俺の名前はタツオと言います。
リリアとは結婚していて俺の……妻です!」
「なっ……なんですってぇぇぇえっ!?」
猫耳をパタパタ動かしながら目を丸くした。
俺の言葉に驚愕したメイドさんは、しばらくの間──放心状態になったのだった。




