第四話:エルフさん、キャンピングカーに驚いた件。
「タツオのその……異常なスキルは、たぶんだけど──」
リリアは俺をじっと見つめ、真剣に考え込んでいた。
「タツオという名前も珍しいし……うーん……」
悩む彼女に、俺はそっとバニラアイスを差し出した。
「はい、これ。アイスって言って、冷たくて甘い食べ物だよ」
「アイス……?」
ぱくっ。
「つ、冷たっ! でも……美味しい!」
「疲れてると思ってさ。気に入った?」
「うん♪ 鼻にふわっと甘い香りが抜けて、口の中で溶けていく感じが……サイコーよ!」
「あはは、よかった」
(目がキラキラしてる……完全に気に入ってるな)
リリアはアイスを食べながら、店内を見渡した。
「それにしても……このコンビニって、本当にすごいわ。やっぱりあなた……伝説の異世界人なの?」
(異世界人の黙示録なんて、村の古い伝承だと思ってたのに……)
「えっと……秘密にしてほしいけど、実はそうなんだ」
「やっぱり……でも、あなたの存在は秘密にするのは難しいわよ?」
「えっ!?」
「だって、タツオの服もコンビニも、この世界に存在しないものばかり。目立つわよ、絶対」
「……確かに」
俺は自分の服を見て、コンビニを見て、納得した。
どう見ても場違いだ。
「でもさ……元の世界に戻る方法も分からないし、生活するにはお金が必要だろ?
スキルを封印したら、俺……速攻で死ぬと思うんだよね」
リリアは再び考え込み──そして、決意したように顔を上げた。
「だったら、私がタツオの護衛として雇ってもらえるかしら?」
「えっ……いいの!?」
「ええ。私は日雇いの冒険者だし、あなたと一緒なら稼げるもの」
(タツオと組めば絶対儲かる……!)
「ありがとう、助かるよ!」
(護衛は大事だよな……盗賊とか出たらコンビニに逃げても入られたら終わりだし)
こうして、俺とリリアは正式に“雇用関係”を結んだ。
◇ ◇ ◇
「じゃあ、移動する前に……」
《コンビニ収納!》
ボンッ!!
コンビニが音と共に消えた。
「驚いた……あの建物を自由に出し入れできるの?」
「そうみたい」
(俺が一番驚いてるけどな!)
道幅が広くなってきたところで、俺はリリアに尋ねた。
「ここって馬車道?」
「そうよ。ここから先は馬車が通るわ」
「なら……“アレ”が使えるかも」
「アレ?」
俺は頷き、深呼吸してから叫んだ。
《出よ……キャンピングカー!》
ボォォォォン!!
空から白く輝く巨大な塊が降ってきた。
「きゃっ!? な、なにこれ!?」
「うわっ……俺のキャンピングカーが……!」
地面に着地したそれは、ピカピカの白い車体。
正面には『Tマート』のロゴ。
(Tマート……タツオの“T”か?)
リリアは剣を構えたまま震えていた。
「な、な、な、なんなの!? 魔物!? 建造物!? どっち!?」
「乗り物! ただの乗り物だから! 傷つけないで!」
「そ、そうなのね……」
なんとか説明して、剣を下ろしてもらった。
「じゃあ、乗るぞ」
俺が先に乗り込むと、リリアは入口で固まった。
「……ビビってる?」
「ビビってないわよ!」
(未知のものに恐れるのは本能よ……!)
「ほら、手」
俺はリリアの手を掴み、軽く引き上げるように車内へ誘導した。
「わ……座るところがふかふかしてる……!」
「じゃあ、シートベルト締めるぞ〜」
カチャッ。
リリアはワクワクした表情で周囲を見回していた。
「ボタン式なのね……」
ポチッ。
静かに機械音が鳴る。
魔導駆動式ということは、ガソリンじゃなく魔力で動くのだろうか。
俺はアクセルをゆっくり踏んだ。
「では、出発〜!!」
魔導駆動式キャンピングカーは滑らかに動き出し、近くの町へ向かって走り始めた。




