第十話:異空間コンビニと、移動販売への決意
次の日の朝。
宿屋の隣にある空き地は、朝露に濡れて静かだった。
俺――真部 辰雄は、昨日レベルが上がったことで手に入れた新しいスキルを試すため、空き地の中央へと歩いた。
(リリアは昨日の疲れでまだ寝てるだろうし……今のうちに試すか)
胸の奥が少しだけ高鳴る。
この世界に来てから、俺のスキルはどれも規格外だった。
今回のスキルも、きっと何かとんでもないことになる。
「よーし……早速、試してみよう!」
俺は手を前に突き出し、声を張った。
《出て来いっ! キャンピングカー!!》
何もない空間に、ドンッ! と衝撃が走る。
白いキャンピングカーが突然現れた。
「よし……出たな」
続けて、昨日から気になっていたスキルを発動する。
《コンビニ付与!!》
パァァァン――
緑色の光が車体を包み込み、内部へと吸い込まれていく。
「おお……やっぱり車だったか!」
俺は後部扉を開け、中へ入った。
その瞬間――
「……広っ!?」
思わず声が漏れた。
外観は普通のキャンピングカーなのに、
内部はまるで別世界だった。
棚、冷蔵庫、レジ、照明。
昨日、街の広場で展開したコンビニと同じだが――
内部空間が外観の数倍以上広い。
まるで異空間に繋がっているような広さだ。
「な、な……んだコレ!?
外より広いってどういうことだよ……!」
俺は棚の間を歩きながら、思わず頭を抱えた。
「移動型コンビニ……しかも異空間仕様……」
胸が高鳴る。
これなら、どこでも店を開けることができる。
◇ ◇ ◇
「……タツオ? 何してるの?」
振り返ると、寝起きのリリアが目をこすりながら立っていた。
「お、おはよう。ちょっとスキルの確認をしてて……」
リリアはキャンピングカーの中を見て、目を丸くした。
「これ……昨日のコンビニが、そのまま車の中に……?
しかも……広すぎない?」
「そうみたいだな。異空間になってるらしい」
リリアはしばらく見回したあと、ぽつりと言った。
「……昨日の広場での販売、すごかったけど……正直、手が追いつかないわ」
俺はハッとした。
「やっぱり大変だったか……」
「うん。お客さんは多いし、補充も大変だし……
それに、街の人たちが言ってたの。
『ダンジョンにこんな店があったら便利だよな』って」
俺は腕を組んだ。
(確かに……街の広場だけじゃなくて、ダンジョン前や森の入口でも店を出せたら……
冒険者たちの需要は高いはずだ)
リリアは続ける。
「移動できるなら、いろんな場所で店を開けるんじゃない?
でも……人手が足りないわ。私一人じゃ無理よ」
俺は頷いた。
「そうだな……人員確保も考えないといけないか」
リリアは少し笑った。
「タツオのコンビニ、異世界で本気で流行るかもしれないわよ?」
「いや、流行らんでいいんだが……」
「でも、みんな助かるわ。
冒険者も、旅人も、ダンジョン帰りの人も……
あなたのコンビニがあれば、きっと喜ぶ」
俺は照れながら頭をかいた。
「……そう言われると、悪い気はしないな」
リリアは真剣な目で言った。
「移動販売、やってみましょう。
そのためにも……仲間を増やすべきよ」
俺は深く息を吸い、決意した。
「よし……移動型コンビニ、始めるか」
朝の光がキャンピングカーを照らし、
新しい冒険の始まりを告げていた。




