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月界最強の姫は人間界に遊びに行く〜魔法学園で規格外扱いされるが隣の公爵子息にだけ勝てない件〜  作者: おもち
第一章

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第17話 学園生活五年目 ④



嬉しくて、そして自分の行動が合っていたことに安堵して、私は肩の力が抜けたのかペタリと座り込んだ。


ちょっと動きすぎたし、休憩もしたかったから。


そのとき、何やら不満そうな令嬢の声が聞こえてきた。


「待ってください! 先生、どうして私たちは通過できないんですか!」


確かこの子たちは最初の方に自分一人だけ、もしくは一人を助けて二人で上に上がってきた子たちだったはずだ。


「俺は言ったはずだぞ。班で通過できなかったら、本選出場権は得られないってな。それも丁寧に2度もな。班は一人や二人じゃない。三人で一つの班だ」

「そんな……」


そう、先生は丁寧に試験が始まる前から教えてくれていた。そして、蔓を切ったらこの場所まで来ることと言っている。


つまり、傷を負ったとしても全員でこの場所に来ることが予選通過に繋がることだった。班は三人で一つの班だ。誰かが欠けてしまったら、それはもう、班ではない。


「この中で討魔士や騎士、宮廷魔法使いを目指すもの、将来家を継ぐものもいる」


先生は声を大きくし、この場にいる全員に伝えるように口を開いた。


「これから先のことなんて誰もわからない。けれど、仲間や大事な人が危機に陥ったとき、どうするか。簡単に見捨てるのか? 己の力量を過信しろと言っている訳じゃない。けれど、助けられる可能性を考えて、すぐに行動に移せるか。それが必要となってくるだろう」


え、すごくアーレン先生が先生に見えてくる。さっきまで生徒を宙ぶらりんにして笑っていたときとは大違いだ。


けれど、ここは真面目に話を聞くところ。先生の話にふむふむと頷きながら聞いていると、先生は不意に私を見てきた。


「エルシア以外の四人は最初こそ迷っていたみたいだが、エルシアが行動に移したことでそれを皮切りに最終的な自己判断を下した。それがこの結果だ。実践魔導演武会は単に魔法をぶつけ合うためだけのものじゃない。お前たちが進む道の先で立ちはだかる大人たちに可能性を見てもらうことだ」


騎士になりたいのなら今見に来ている騎士団総長に、宮廷魔法使いになりたいのなら筆頭宮廷魔法使いにということだ。そして私もあの人たちに見てもらうためにということかな。


「仲間を見捨てることも、時には合理的な判断として必要となるだろう。騎士や宮廷魔法使いになるのならば尚更な。けれど、今俺たちが見せて欲しかったのは仲間を救う強さであり、それを見極めたかった」


結構意地悪な試験内容をしていると思ったが、やはりそういう意図があったのか。先生たちも考えるものだ。


「最初に蔓から抜け出せなかった二人は仕方がなかったかもしれないが、仲間を信じ、自分たちを助けようとした友人を止めようともしただろう。エルシアの班なんて仲間割れしてしまうんじゃないかと少しヒヤヒヤしたがな。だが、その思い合う優しさも必要ものだ。大切にしろよ」


それは確かに慈愛に満ちた先生の顔だった。こんなに生徒と担任として過ごしてきたのに、割と初めて見る顔かもしれないと思った。けれど、私はそれがすごく嬉しかった。


「試験の合格に目がくらみ、仲間を見捨てるという非情な判断を下した班は、この場で失格とする」


先生のその言葉により、泣き崩れる他の班の子たちが目に入った。きっと、彼女たちは色々な感情が沸き上がり、それを消化するすべがないからこそ、ああして涙を流しているのだ。


今回の試験は相手を蹴落すようなものじゃない。一人一人が仲間を信じ、最後まで一緒に戦う気持ちの強さを見極められる試験だった。


その意図を把握できなかった彼女たちは悔しさや悲しさ、怒りや虚しさなどを胸の内に抱えている。


「それにしても、まさかエルシアが班の仲間だけじゃなく、他の班まで助けるとは流石に予想していなかった。エルシアのことだから、二人を見捨てることはないだろうと思っていたがな」


話を終えたアーレン先生が私たちのところにやってきたかと思うと、座り込んでいる私に視線を合わせるように同じく座り込んできた。なんかミラとエリナも座っていて、逆三者面談みたくなってる。


「そんな風に思っていてくれたんですか?」

「何年お前たちの担任やってると思ってる。それくらい嫌でも分かってくるもんだよ」


それは、確かにそうかも。毎日顔を合わせていれば分かってくるか。


「特に、お前とエルヴァレンは目立つからな。色々と」

「色々と!? それいい意味ですよね!?」


思わず先生に詰め寄ると、ミラとエリナから呆れた表情を送られた。え、なんで。いい意味でしょ、きっと!


「まあ、いい意味もあるっちゃあるか。エルシアは数少ない氷属性まで扱える魔法使いで、魔力量も膨大。しかも使い魔はルナ=ネヴァルだしな。普通に目立つ」

「それも、そうですね。確かに、結構レアなところ引いてるかも」

「激レアだわ。そんな激レア保持者が仲間を助ける選択をすることはお前を見てきた先生なら誰でも予想がついた。結構分かりやすいぞ」


そうなんだ。あまり意図して考えたこともなかったことだから、いまいちピンと来ない。


「けれどまあ、他の班まで助けることは予想できていなかったがな。反因で結構な炎に焼かれたんじゃないか? 国王陛下の魔法だし。ちゃんと治癒の先生に治してもらったか?」

「前もって魔法で防ごうとしていたので、そこまで火傷はしなかったんですよ。自分で治せるくらいだったので、もう治しましたし」

「いや、遠目から見てもあれはだいぶ燃えてたからな? さすがに肝が冷えた」


すると、隣で静かに話を聞いていたミラとエリナがそうだそうだと言わんばかりに頷いている。ごめんって!


「あの炎の中、傷が軽度だったことは不思議で仕方がないが、もうお前は激レア保持者だし、俺はなんでもいいような気がしてる」


なんか投げやりだな、アーレン先生。


「それよりも、なんで他の班まで助けた? エルシアのことだから、早々にこの試験を通過する方法を思いついていたんじゃないか?」

「まあ、あれだけ先生が言っていましたからね」

「他の班まで助けたところで、自分の班の二人を助ければ合格だ。他の班を助けても、加点なんて存在しないのに」


先生はこれを聞きに来たのかとようやく分かった。なんかミラとエリナも聞きたそうにしているし。


でも、そんな特別こういう理由! って言うものがある訳じゃないんだよね。ずっと見守ることしかできなかったからこその反動とも言えるけど。


「私は、手を伸ばせば助けられるところにいる相手を見捨てるという選択肢を持っていない。それだけです。助けられる可能性が低くとも、私は最後まで相手を助けるために足掻く。ちょっとした、反動みたいなものですよ」


すると、話を聞いていたアーレン先生がとても真面目そうな顔をした。


「……なるほどな。エルシア、相手を助けようとする気持ちは大切だ。けれど、自己犠牲と間違えるなよ。なんか今の話を聞いて、随分危なっかしいと思ったな」

「先生の言う通りだわ、セレナ!」

「セレナはもっと、自分を大切にするべきよ!」


思わぬ追撃に目を丸くしていると、先生は不意に立ち上がった。だから私たちも立ち上がる。だいぶ疲れも取れてきたことだし、男子の予選もあるから休憩時間はまだあるしね。


「だからあいつはエルシアに突っかかるのか? この危なっかしいのを止めるために」


アーレン先生は私を見ながら、そんなことを言ってきた。あいつって誰?


私は分からなかったが、ミラとエリナは分かったようで、首を横に振った。


「さあ、そこまでは分からないですけど、少なくともアレは引っ込みがつかなくなっただけですよ」

「素直になれないみたいですからね。でも、向こうの気持ちも分からなくはないですけど」


それを聞いて、アーレン先生はふーんと軽い返事をした。というか、私だけ話が見えないんだけど。一体誰の話をしているんだろう。


そう思っていると、アーレン先生が他の先生に呼ばれた。どうやら次に行う男子の予選の準備をするらしい。


「呼ばれたから行くわ。お前たちも見学席に戻れよ」


それだけ言うと、アーレン先生は使い魔を召喚して下に降りて行った。結局、最後の方は話が分からなかったな。


「私たちも下に降りましょ。いつまでもここにいたら、先生たちの邪魔になるわ」

「それもそうね。ここにいても、男子の予選はあまりよく見えないし」

「じゃあ、下に降りよっか」


ミラとエリナは使い魔を召喚する。私もそれに続いてルオルを召喚した。


「トゥアラニクス」


ポンっと音を立てて現れたルオル。私は早速、背中に乗せてもらうようにお願いし、ルオルと共に地上へと降りた。


もうすぐ男子の予選が始まるみたいで、今度は男子が競技場の真ん中に集まっている。ルオルの召喚を解いた私はミラとエリナに挟まれながら空いている席に座った。


さてさて女子の戦いは見物とか言っていたが、それは男子の戦いだって似たようなものだと思う。どんな予選になるのかと思っていると、今度は別の先生が前に立って、説明を始めた。


「次は男子の予選を行う。まあ、女子のあとだから何か勘繰るやつもいるかもしれないが、男子のほうは至ってシンプルだ」


先生は胸ポケットから何かを取り出した。目を凝らして見てみると、それはバッジのようで先生はそれを胸元につけた。


「今からこれを全員に配る。配られたらこんな風に付けろよ。で、制限時間内に魔法を使わずに敵のバッジを奪い取れ」

「「「―――は?」」」


聞いていた私、ミラ、エリナの声が見事に揃った。男子のほうも呆気にとられたような声を上げているし、見ている女子たちも意味がわからないという顔をしている。


いや、普通に私も分からないんだけど。え、どういうこと?


「制限時間は10分だ。その間に敵のバッジを班でひとつ以上獲得すること。ちなみに、3人のうち2人以上バッジを取られた班は失格とする」


先生の言う通り、これ以上ないほどルールはシンプルだった。むしろシンプルすぎて意味が分からない。


実践魔導演武会なのに魔法を使わないでというのも意味が分からないけど、なんで奪い合い? この試験考えた先生、なに考えてるの?


そんなことを思いつつ、先生は魔法で一人一人にバッジを渡していく。未だ事態を飲み込めていない私は思わずミラとエリナに問いかけてしまう。


「ね、ねえ、バッジを奪い合うのも意味が分からないんだけど、魔法を使わないって、先生たちは何を見極めようとしてるのかな……?? 素の身体能力??」

「お、落ち着いてセレナ!! 私たちにも訳が分からないけど、一旦落ち着いて!」


もう訳が分からない。頭がぐるぐると回りそうなほど、先生の意図は全く分からなかった。


そんなことをしているうちに、男子の予選は始まった。




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