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月界最強の姫は人間界に遊びに行く〜魔法学園で規格外扱いされるが隣の公爵子息にだけ勝てない件〜  作者: おもち
第一章

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第16話 学園生活五年目 ③



さて、どうしよう。まずはこの中で誰が抜け出せるのか確かめなければいけない。


「一人ずつ蔓を切っていく? 国王陛下の魔法がかかっているみたいだから、対象の一人目以外は自力で抜け出せないみたいだし」


とりあえず、私はミラとエリナにそう声をかける。3人仲良く宙ぶらりんでは次に進めない。無情にも砂時計の砂は刻一刻と下に流れ落ちているわけだし。


「そうしましょう。まずは決めていた通り、私から試してみるわ」


実は私たち、予選で三人一組のチーム戦となると聞いていたときから作戦を考えていた。順番に魔法やら何やらをやってみないといけなくなったときはミラ、エリナ、私の順で行動すると決めていたのだ。


前もって決めていたほうが時間を無駄にしなくて済むという考えの元、決めていたのだが、こうしてみると決めていてよかったと心底思った。


だって、他の班を見ると、既に誰から蔓を切るかで揉めてるんだもん。いいじゃん、誰から切ったってさ。微々たる差だよ。


そう思っていると、ミラは魔法を蔓に向けて切ってみたらしい。けれど、蔓は切れることなく未だ両手は縛られたままだった。


「私じゃないみたい。ビクともしなかったわ」

「なら次は私ね」


エリナは魔法の詠唱をして、風の刃を蔓へとぶつける。結構威力があったと思うが、エリナでも蔓は切れなかった。


ということは、必然的に最初に蔓が切れる対象は私ということになる。


「じゃあ、蔓が切れるのは私みたいだね」


私はほぼ無詠唱に近しい速度で魔法を詠唱する。まあ実際、無詠唱だったんだけど。だって、無詠唱魔法を見せたら、結構騒ぎになりそうじゃん。


私は水を炎の蔓に絡ませて、消火させるように炎を消していく。ジュワッと水が蒸発する音が聞こえてくるが、炎は段々と弱くなっていき、やがて蔓は切れた。


「よっと」


タイミング良く地面に着地した私は未だ宙吊りになっているミラとエリナを見上げる。


正直、この試験は最初に蔓から抜け出せた子の判断や実力で合否が決まる。早く蔓を切らないと制限時間に間に合わなくなるし、空中にある先生が待機しているあの場所まで班の子を運ぶのにも時間はかかる。


5分という時間内というのであれば、尚更取捨選択は必要となるだろう。


でも、私の中でその取捨選択は初めから存在していない。全員で本選に進むと決めたのだから、当然ミラとエリナ、二人とも助けて上に行く。


そう考えて、私は二人を縛っている炎の蔓に向けて同時に小手調べ感覚で魔法を放った。その瞬間、私の足元から焼けるように熱い炎が沸き上がり、私を襲った。


思っていたよりも熱量がすごく、私は咄嗟に魔法を解除する。すると、私を襲っていた炎は嘘みたいに消えた。


「なるほど、こんな感じなんだ」


二人同時に蔓を切ろうとしてあんな感じなるんだとすると、アーレン先生が言っていた通り、二人助けるとなると代償的な感じで二人の倍の炎に襲われるということだ。


二人に向けて魔法を使った直後に炎に襲われたということは、魔法を使ったあとに防御するんじゃなくて、初めから防御した上で蔓を切るようにしないと間に合わないね、これ。


そもそも、魔法で防御したところで国王陛下の魔法が防げるどうかは分からないし。まあ、本気で防御するならそれこそ《月の姫》としての力を使うことになるわけだけど、明らかに反則技だ。


防ぐよりも緩和に近い感じの方が効果はあるのかな? 色々と試してみたいところだけど、なんと砂時計の砂はもう半分も落ちきってしまっている。


悠長にしていられないなぁと一人考えていると、突然ミラとエリナから怒られた。


「セレナのばか! 何やってるのよ! 二人同時にって、先生の話聞いてなかったの!? あなたに全部負担がいくのよ!」

「今ですら熱いと感じているのよ!? それを二人分だなんて、いくらセレナが水で抑えようとしても無理があるわよ!! セレナに全部を背負わせないわけじゃない!」


突然怒られた私は思わず呆然としてしまう。


「え……、なんで私怒られてるの……??」


本気で分からない。だって、私は三人でこの試験に合格したい。そのために、国王陛下の魔法の威力がどれくらいなのか軽い小手調べとしてやってみただけだ。


おかげでどうすれば時間内に合格できるかも目処が立ったのに、私はなんで怒られているの??


そんな私の表情を見て、ミラは声を上げた。


「っ、セレナのばか! 助けてもらう側からしたら、こんなこと言うのおかしいと思うけど、私はセレナに怪我して欲しくないのよ! それだったら、エリナを助けて上に行ってもらった方がずっといい!!」


すると、隣で聞いていたエリナも同じように気持ちを吐露した。


「私だってそうよ! セレナが怪我するくらいなら、ミラを助けて、一人残った方がずっとずっといい!!」


二人の激情とも言える気持ちを聞き、私はようやく理由が分かった。口には出さないけど、心配してくれて嬉しいと思っている。


すると、近くにいたエミリアが声をかけてきた。


「三人ともそんな言い合いしている暇なんて、もうありませんわよ!」

「あれ、ほんとだ。結構時間ギリギリになってきたね」

「全く、先生も無茶言ってくれますわ。どちらかを選ぶような試験にしてくるだなんて。私たちは仲間ですのよ? 選べるわけないじゃない」


エミリアがこんな時間まで残っていたのはそういうことか。確かに、周りを見てみると、既に二人のうち一人を選んで上に行っている班の子たちが結構いる。


中には一人で上に行った子もいるみたいだけど。なんか一人で上に行った子は色々とたくましいね。


「エミリアはどうするの? このままだと時間になるよ」

「分かっておりますわ。けれど、私にはどちらかを選ぶなんて……」


まだ残っている班の子たちも踏ん切りが付かなくて残っているんだろう。その中にはリリアーヌたちの班もある。


「なるほどね。エミリア、一つ誤解があるよ」

「誤解……?」


本来なら競い合う敵同士なんだけど、実際にできるかどうかは本人の気持ちと仲間への気持ちの大きさだ。それに私が行動を起こせば、踏ん切りがつかなかった他の班の子たちも踏ん切りがつくでしょ。


「アーレン先生が一番初めに言っていたでしょ。『班で通過できなかったら、本選出場権は得られない』って。班であの上に行かないと意味がないんだと思うよ」


私はそこでエミリアから視線を外し、今度はミラとエリナに向けた。そして、精一杯の笑みを浮かべた。


「そういうことだから、二人は私を信じてて! 二人が心配してくれたことは嬉しかったし、今だって嬉しい。でも、私だって三人で試験を通過したいと思ってる。二人は違う?」


そう問いかけると、ミラとエリナは薄らと涙を浮かべながら言った。


「……っ、違くない! 本当は、三人で合格したい! でも、足手まといは嫌なのよ……っ」

「セレナの負担になりたくないの……っ! でも、三人で、次に進みたい……っ!!」


その言葉に、私は自信満々に答えた。


「なら、私を信じて! 足手まといだなんて思わない! だって二人がいるから、私は頑張れるんだから!」


私はそう言い切ると、魔法の詠唱をした。


「ネレイア(水の天衣)」


その瞬間、私の全身を薄い水の膜が覆う。頭からつま先まで全てが水の膜の内側に存在するように。


これは図書館に籠っていたときに見つけた魔法だ。攻撃というか、相手を倒すための魔法はあらかた習得し尽くした私は独自に魔法でも作ってみるかと思い、参考になりそうな魔法を探していた。


そのとき、この魔法を見つけた。得意属性の防御魔法ももちろん使えるようにはしていた。けれどそれは水や氷の盾を作って前方からの攻撃から身を守るだけのものだった。


全方位から守りたいというのなら、それこそ結界を張ればいい。得意属性関係なく使える結界はその空間に制約をかけることで魔法を弾いたり、減衰させたりする。


けれど空間に制約をかけて防御する結界は私の持つ《月の姫》の力と相性が良すぎた。なんかもう、別次元の強度を誇る結界が出来上がってしまったのだ。


自分でも何これ? と本気で思ってしまったくらいだ。自分で制約をかけて使うんだから、上手く制約を考えればいいじゃないかとも思ったけれど、なんかこう、かけた制約が異常なくらい機能したのだ。


例えば、炎の魔法を弾こうと思って、空間にそういう制約をかけたとする。すると、通常なら結界は攻撃魔法の威力にもよるが、数度受けると壊れてしまう。そして、弾くと言っても軽く反射するくらいだ。


しかし私の場合は機能しすぎて、弾くようにしたら魔法攻撃が威力2倍となって相手にそっくり返り、尚且つ簡単には壊れない強度の結界となっているのだ。


それを通常時にバンバン使っていたら明らかにおかしいことくらい分かる。だから私はなるべく結界を使わない方向でいこうと決めたのだ。


得意属性で防御魔法はあるし、問題ないと思っていたのだが、この魔法を見て、これは習得するしかないと思ったのだ。だってこの魔法、魔力操作が難しい分、全身を防御できる魔法なのだ。


受けた魔法を緩和、もしくは防御してくれる優れもの。本人の魔力操作次第では結構強い魔法なのだ。


私は魔力を操作し、水の膜に不十分なところがないか確認すると、今度こそ、二人を助けるためにミラとエリナの蔓に氷の鎖を巻き付かせた。


水で炎を消火させるなんてやっていたら、時間がなくなってしまう。私はしっかりと蔓に鎖を巻き付かせると、パチンと指を鳴らして二人を縛る蔓を断ち切った。


当然、反因として私に倍となって炎が襲いかかる。けれど、水の膜に覆われた今の私は国王陛下の魔法すら効かない。なんか自分でも凄いことしてるかもと思うが、知ったことか。


今は実践魔導演武会の真っ只中なのだ。ちょっとくらい凄いことしても反則にはならない。そもそも《月の姫》の力は使っていないのだから、反則でもなんでもない。


蔓が消えて地面に落ちてしまう前に私は二人を浮遊魔法で浮かせた。そして、そのまま二人を上で待っている先生のところに送る。


「ちょっと先で待ってて!」

「「セレナ!!」」


私はそう声をかけると、取り残された一人や二人の子の蔓も切るために魔法を巡らせる。氷の鎖により蔓がパリンっと割れると私はその子たちを地面に横たわらせる。


けれど次の瞬間、他の子たちの反因も降り注ぎ、私の足元から現れる炎は勢いを増した。


「これは……ちょっと予想よりも炎が強いかも。流石に解除はしたらダメだし……」


水の膜が蒸発させられていく。火傷してしまったら、まあ魔法で治せばいいと思っているけれど、できるなら火傷はしたくない。だって痛いだろうし。


もう焼きに来てるとしか思えないほどの炎の勢いのせいで、私は水の膜があるのに熱を感じる。うわ、いま絶対皮膚焦げた。ピリってしたもん。


砂時計を見ると残り僅か。ルオルを呼んで運んでもらいたいが、こんな炎では可哀想だ。それに普通にびっくりさせてしまう。


かと言って浮遊魔法で上に行っていたら遅くて時間がかかる。


「仕方がない。消えるのが早いけど、そこは上手くタイミングを合わせてかな」


今にも泣き出しそうに心配顔で待っているミラとエリナがいるのだ。私は早く上に行かないといけない。


「グラキア(氷段)」


詠唱すると、空中に氷の足場が現れた。私はそれに飛び乗ると、いま乗っている足場が消えてしまう前に新しい足場を作り、素早く上に登っていく。


途中、炎のせいで皮膚がヒリヒリしてバランスを崩しそうになるが、何とか耐える。くそぅ、これだったらルオルに頼んだ方が良かったも。


今更後悔しながらも、私は次々と足場で片足を踏み込み、やがてミラとエリナが待っている場所まで辿り着いた。あとは滑り込むようにして着地する。


「あっつすぎる! めっちゃヒリヒリするし! 今も燃えてるし!!」


そう不満を垂らすと、私を襲っていた炎が突然として消えた。


「え?」

「「セレナ!!」」

「うわっ、びっくりした。炎が消えたってことは時間になったのかな。結構ギリギリだったね」


抱きついてきたミラとエリナを抱き締め返し、私はヒリヒリするので火傷を治すために一度離れてもらった。


「ほら、そんな顔しないでよ。私は後悔なんてしてないんだからさ」


治癒専門の先生に治してもらうこともできるが、このくらいの火傷なら自分でも治せる。というか、あれだけ燃えていたのに腕と足にちょっとずつ火傷を負ったくらいで済んだのは良かった。


火傷したくない私の本気度故だったかもしれないけど。


あっという間に魔法で火傷を治すと、二人にはまたしても怒られてしまった。


「セレナのばか! 無茶ばっかりして!!」

「みんなを助けようとしたのは凄いし、そんなセレナが好きだけど……だけど無茶しすぎ!!」

「あはは、ごめんね」


そこは素直に謝った。まさか二人も私が取り残された子たちまで助けるとは思ってもいなかっただろうから。


さてさて、試験時間が過ぎる前に私たちは三人でこの場所に来ている。他にもエミリアの班やリリアーヌの班、その他の班も三人でここに来ていた。


三人で来た班は二人を助けた子が一番の怪我を負っている。エミリアもリリアーヌも治癒専門の先生に傷を癒してもらっていた。


このあとは私たちの―――いや、私の選択があっていたかどうかの答え合わせだ。最初に蔓から抜け出せた子により、試験の結果が変わるとは言っても、私のところは独断にも程がある。


これで不合格だったらミラとエリナにどう頭を下げたらいいのかと考えていたら、アーレン先生が魔法で上まで上がってきた。


「それでは試験に通過した班を発表する」


ミラとエリナは私の手をぎゅっと握り、緊張した面立ちで聞いている。


「エミリア・アスティエル班、コニー・ノートン班、リリアーヌ・アスラム班、メイニー・ララトリエ班、そして―――セレナ・エルシア班、以上だ」


先生が言い終わった瞬間、私たちは歓声を上げるよりも先に嬉しくてお互いに抱きついた。


「やったよ! ミラ、エリナ! 試験、通過してたよ!」

「セレナのおかげよ! ありがとう!!」


競技場内に通過した班が大きく示される。その中にはアーレン先生が言った私たちの班があった。


間違いなく、私たちは予選を突破したのだ。



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