第98話 【覇王の絶対作戦会議】魔王軍5万をハメる極悪挟撃策! 恐怖の兵糧攻めと、戦慄の全軍統合戦略!
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深淵の樹海王国、その心臓部に位置する巨大な作戦会議室。
ズラリと居並ぶのは、この世界を震撼させる超規格外の神々、神獣、レジェンド、そして各勢力の首長たちだ。冷んやりとした静寂の中、緊張感に満ちた対魔王軍戦略会議が今、幕を開けようとしていた。
円卓の最上座には、樹海の王である俺。
その周囲を固めるのは、愛する妻たち──ホワイトエキドナのハク、絶大な機動力を誇るエンシェントドラゴンのリザ、世界樹たる精霊王レイ、スキュラクイーンのコボミ、吸血鬼真祖のヒナ、知勇兼ね備えたアリア、アラクネクイーンのスパ、ハルピュイアクイーンのハピ、死を統べる不死王ルシー、そして超兵器を生み出す魔女サクラ。
さらに、行政を束ねる宰相デレイズと宰相補佐アテレス。
精霊族代表ライゾウ、ケットシー族長老キャル、ウェアウルフ族長老ウルズ、猿人族長老モンタ、そして新たに内諾を得た獣人族伯爵ガネーシャ。
外交を仕切るアキート。軍の総指揮を執る最高将軍リガント、猛将オニバル、知将コボ2、副将軍アレオン。
不死の軍勢を率いるエルダーリッチのデルガ伯爵、死神デステル伯爵、吸血鬼真祖ヴァンス伯爵、そして万能執事アスタロト。
相談役として鎮座するのは、圧倒的な圧を放つ元蛇王ザッハークのリザルドと、幸運を呼ぶカーバンクルのカイン。
まさに、かつての魔王軍どころか世界全体を数分で滅ぼし尽くせるほどの、極悪非道かつ絶対無双の神級布陣である。
俺は円卓を見渡し、静かに口を開いた。
「よし、スパ。まずは魔王軍の最新状況報告から始めてくれ」
俺の指名を受け、陰から現れたスパが深々と頭を下げ、冷徹な声で報告を始めた。
「ハッ。敵将『豪腕のガランド』率いる魔王軍5万の本隊は、あと2日程度で北方の荒野へと進入する予定です。なお、獣人領側では依然としてガランド軍の接近を察知できておりません。予定通り、獣人族の復興イベントである『武道大会』も2日後に開催されます。ガランド軍が荒野に足を踏み入れた段階で、ようやく獣人国側もその異常な軍勢の気配を察知するものと思われます」
「なるほどな。……サクラ、そっちの防衛線の準備状況はどうだ?」
魔法の箒に跨るサクラが、ニンマリと自信満々の笑みを浮かべた。
「ガネーシャ伯爵の領地周辺に、自動迎撃用の各種ガーゴイルと、妖精族の集落を覆っていたあの『絶対不可侵結界』の魔道具をバッチリ設置完了したわ! いつでも作戦開始できるわよ!」
「頼もしいな。……リガント将軍、今回の作戦の具体的な流れを全員に説明してくれ」
全軍の総指揮官であるリガントが重厚な体躯を起こし、巨大な立体地図を指さしながら朗々と語り出した。
「ハッ! ご説明いたします。まず、荒野に進入したガランド軍を察知した獣人国の上層部は、パニックに陥り大慌てで全土に軍の即時編成を要請します。当然、ガネーシャ伯爵のもとにも緊急の出兵要請が届きますが……ガネーシャ伯爵にはこの要請を突っぱねて拒否していただきます。そして『我がガネーシャ領は本日をもって樹海王国の配下となった』と宣言し、絶対結界を張り巡らせて完全に籠城していただきます」
リガントは冷徹な眼光を走らせ、言葉を続けた。
「出兵を拒否された獣人族の本隊は、後方の不安を抱えたまま、野戦または攻撃城戦にてガランド軍5万と真っ向から激突することになります。しかし、圧倒的戦力差と内部の敵により、獣人軍は短時間で崩壊。勝利したガランド軍は勢いに乗ってそのまま南下を開始します。そして……逃げ場を失い、我が絶対結界が張られたガネーシャ領へ侵攻を開始したその瞬間! 敵の背後から我が樹海王国の大軍勢が突如現れ、背後を完膚なきまでに急襲いたします! 同時に、結界内部からガネーシャ軍が出撃し、敵を逃げ場のない完全な挟撃の檻へと閉じ込める手はずです。なお、ガネーシャ軍にはあらかじめ猛将オニバル軍が合流・潜伏しており、実際の軍事指揮はオニバル将軍が執ることになります」
完璧すぎる罠の構築に、会議室の温度が一段下がったような錯覚すら覚える。
俺は一同を見渡した。
「作戦の骨子は以上だ。みんな、何か質問や懸念点はあるか?」
すると、獣人族伯爵のガネーシャが静かに挙手し、質問を投げかけた。
「リガント将軍。一つ伺いたい。我が国……いや、旧獣人族の本隊がガランド軍を相手に城へ立て籠もり、戦争が長期化・泥沼化する可能性はありませんか?」
リガントは即座に首を横に振った。
「あり得ません。仮に獣人族が籠城を選択したとしても、武道大会に乗じて街の中に深く潜入した魔族の工作員どもが、城内から大規模な撹乱と破壊工作を仕掛けます。内と外から挟撃される形となるため、獣人族の城は数時間と保たずに陥落し、戦争はあっけなく短時間で終了するでしょう」
「なるほど……。では、ガランド軍が獣人族を滅ぼした後、奪った城に籠城して我が軍を迎え撃つ可能性は考えられませんか?」
「それも一切あり得ません」
リガントは不敵に唇を歪めた。
「現在の獣人族は復興のため、備蓄食糧のほぼ全量を民へ放出しております。つまり、現在の獣人領地には5万という膨大な魔王軍を維持できる食糧が『爪の垢ほども存在しない』のです。ガランド軍のような大軍は現地調達での兵糧補給が鉄則。食糧が無い以上、彼らは立ち止まることすらできず、すぐにでも次の獲物を求めて出撃せざるを得ません。仮に近隣の村々を片っ端から襲撃して略奪したところで、5万の胃袋の前には焼き石に水です」
リガントは地図上の樹海王国を強く指さした。
「ガランド軍に残された唯一の生存ルートは、食糧が極めて豊富な我が『樹海王国』を短期間で呑み込み、我が国の食糧で一息ついた上で、ガラード王国または聖教国へとさらなる侵撃を進めることのみ。食糧難という恐怖に追われるガランド軍は、我がガネーシャ領の罠へと自ら飛び込んでくるほか無いのです」
一分の隙もない恐怖の兵糧攻めと誘導作戦。ガネーシャは感服したように深々と深く頷いた。
「恐ろしいまでの先読み……見事なご説明です。もう一つだけ、仮に獣人国が軍を整備する際、我がガネーシャ領を通り越して、樹海王国に対して直々に援軍の要請を行ってきた場合はどう対応されるおつもりですか?」
俺は腕を組み、ニヤリと笑って答えた。
「その時は簡単さ。獣人国全体が我が樹海王国の『属国』として完全に下るというなら、援軍の要請を受けてやろう。その際、ガネーシャ伯爵の領地は正式に我が国の直轄領として組み込む。もしそうなったら、属国扱いの小人族、トロル族、ダークエルフ族、さらには蛇王国からも援軍を出させて、我が国の総力を挙げた『圧倒的正面突破』でガランド軍を粉砕するまでだ」
ガネーシャは目を見開き、感服したように頭を下げた。
「承知いたしました。明快かつ完璧なご回答、感謝いたします」
「それからガネーシャ、お前の領地が正式に我が国の配下に入った際は、お前の抱える兵士や軍事指揮権はすべてリガント将軍の配下に完全統合してもらうことになる。これはすでに配下に入っているケットシー、ウェアウルフ、猿人、トロルたちも全て実施している我が国の鉄則だ。軍事権を中央へ一元化することで、地方領主は巨額の軍事費から完全に解放され、その全予算を領地の経済復興や民の福祉へ一気に注ぎ込めるようになる。結果として地方の経済発展が爆発的に加速するんだよ」
ガネーシャは隣に座るウェアウルフ族長老ウルズを見やり、深く頷いた。
「ええ、承知しております。すでにウルズ殿よりその素晴らしい成果を伺っておりました。中央への絶対的な戦力集中と、地方の爆発的な経済発展を両立させる……まさに理想的かつ完璧な国家運営だと深く感動しております」
現在、ゆるやかな属国関係にとどまっているダークエルフや蛇王国にはまだこの完全軍政統合は適用していないが、今回の獣人領における戦争の経過を踏まえた上で、追々検討していくとしよう。
戦略会議が完璧な形でまとまり、解散の空気となったところで、俺はふと思い立ってサクラとスパへ視線を向けた。
「そういえば……白虎の塔に軟禁してある妖精族どもにも、そろそろ今後どうするつもりか意向を聞いてみるとするか。散々絶望を味わわされたんだ、そろそろ心から反省しただろうからな」
魔王軍5万という怒涛の大軍勢を前にして、我が樹海王国の冷徹なる絶対無双の計画は、一分の狂いもなく牙を研ぎ澄ませていたのだった!
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