第93話 【絶望の神罰降臨】 契約解除《コントラクト・キャンセル》で牙を剥く精霊たちと、邪悪なエルフ残党の完全崩壊!
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「もう少しで妖精族の長老がいる最大の中央集落よ!」
魔法の大砲箒に跨るサクラが前方を指さした、まさにその時だ。
「貴様らぁぁぁッ! 何者だぁぁぁッ!!」
遠方の空中から、身の丈10センチほどの妖精が、背中の羽根を猛烈に羽ばたかせて凄まじい勢いで一直線に飛来してきた。俺たちの目の前にピタリと停止し、宙に浮かんで仁王立ちする。
「あたしは妖精族の誇り高き将軍、フェアルだ! お前たち、一体何のつもりで……ッ!」
フェアルが威圧的に何かを叫ぼうとしたが、俺は一言の会話すら交わす価値もないと判断し、それを完全に無視した。そして、左手に持っていた妖精長老フェルリが閉じ込められているミニサイズの『妖精ホイホイ』を、目の前のフェアルに向けて無造作に投げつけた。
スポンッ!
「なっ……な、なんだこれはぁぁぁッ!?」
投げつけられた透明な水晶玉は、空中で強烈な吸引力を発揮。必死に身構えたフェアルを一瞬でズゾゾッと掃除機のように吸い込んだ!
フェアルは水晶玉の中で目を白黒させ、内側の透明な壁をドンドンと叩きながら叫び声を上げる。
「貴様ら何者だッ! 出せ! 出すのだッ!」
俺はプカプカと浮く水晶玉を手に取り、冷淡な視線を投げかけた。
「樹海の王、ヒロトだ。隣にいる妖精族のババアから威勢よく宣戦布告されたので、全面戦争を受けたまでだ。詳しい事情は、隣のババアに聞くんだな」
フェアルは水晶玉の中で隣に体育座りで泣き伏せっていた長老フェルリを見つけ、目を丸くした。
「ば、ばあちゃん……!? 一体どういうことなんだ!? この魔法も使えない気味の悪い玉は一体なんなんだ!?」
フェルリは小さな肩を落とし、弱々しい声で重く口を開いた。
「……あたしが迂闊にも、樹海の王へ宣戦布告の喧嘩を売ってしまったのじゃ……。だが拙速じゃった……これほどの化け物どもとは思わんかったのじゃ……。すっかりエルフどもの甘言に騙されていたようじゃな。……この玉は、あのお方──深淵の魔女様の特製魔道具じゃ。ここからは出られん。魔法も一切使えん。そして……深淵の魔女様は、あそこにいる樹海の王の『妻』になられておられたのじゃ。魔女様に見捨てられ、あたしたちが借りていた結界も全魔道具も、全て機能を停止させられたわ……」
「な、なんだって……っ!? 魔女様が奴の妻に……!?」
フェアルは衝撃のあまり絶句した。しかし、フェルリの絶望の告白はそれだけでは終わらなかった。
「それだけではないぞ、フェアル……。よく目を凝らして周囲の者たちを見るが良い。……死を統べる『不死王』、世界樹たる『精霊王』、古の神獣『ホワイトエキドナ』、絶対の威圧を放つ『コボルトエンペラー』、地獄の番犬『ケルベロス』、天を覆う『エンシェントドラゴン』、海を統べる『セイレーンクイーン』、絶対の毒を持つ『アラクネクイーン』、死を操る『リッチ』、深海の覇王『スキュラクイーン』、雷の神獣『ヌエ』、四方を司る『四聖獣』……更には後からノリノリで乱入してきた蛇王ザッハーク(リザルド)、エルダーリッチ、死神までもが揃っておる。……かつての魔王軍でさえ、逆立ちしても絶対に敵わないような超極悪の神級陣容じゃ。しかも、恐ろしいことに……これほどの圧倒的戦力ですら、樹海の王が従える軍勢のほんの一部分に過ぎんのじゃよ……」
フェアルはガタガタと全身を激しく震わせ、周囲を囲む神々と怪物たちの巨体を見渡し、絶望と恐怖に顔を歪めた。
「こ、こ、これは……ッ!? た、例えこの中の一人でも、我ら妖精族の全戦力を結集しても絶対に勝てるわけがないじゃないか……ッ! ひ、ヒロト王! あなた方の目的は、我が集落に潜む卑劣なエルフ残党なのだろ!? エルフどもを全員差し出す! だから今すぐ攻撃をやめて帰ってくれッ!」
フェアルが悲鳴のような命乞いを上げたが、フェルリは力なく首を横に振った。
「……もう遅いのじゃよ、フェアル。今頃、この中央集落以外の全ての集落は滅ぼされたじゃろう。一番最初の集落など、我が集落を誇る結界が消えた後、わずか5分とかからずに消滅させられたのじゃからな……」
「……っ!?」
フェアルは完全な絶望に言葉を失い、絶句した。
その時だ。眼下に広がる巨大な中央集落から、数百もの怒号とともに巨大な精霊魔法の極大炎弾が何十発も空中の俺たちへ向けて飛来してきた!
「来た来た来たぁーッ! やっと俺の出番だなッ!」
蛇王リザルドが歓喜の叫びを上げ、巨躯を躍らせる! 右肩から生える巨大な蛇の首が瞬時に一閃し、飛来した巨大な炎弾をまるで蚊でも払うかのように「パンッ!」と軽々と弾き飛ばした!
眼下の中央集落を見下ろすと、そこでは逃げ延びた大量のエルフどもが狂ったように精霊魔法の詠唱を重ねていた。その前衛では数百の妖精たちが宙に浮かび、幾重にも重なる巨大な魔法陣を展開。暗雲が立ち込め、空が不気味な漆黒に染まりつつあった。
神獣ヌエ形態のライゾウが雷光を散らしながら不敵に笑う。
「ハッ! 向こうはやる気充分みたいだな!」
コボルトエンペラーへと進化したコボ1が、凶悪な大剣を掲げて咆哮した!
「蹂躙の時間だぁぁぁッ!!」
「「「オァァァァァッ!!!」」」
俺の配下である超規格外の仲間たちが、一斉に敵の集中陣形へ向かって急降下した!
エルフと妖精たちが放つ全属性の極大魔法が暴風となって仲間たちを直撃する。だが──爆煙の中から現れたのは、擦り傷一つ追っていない完全無傷の怪物たちだった。
圧倒的なレベル差、次元の違い。一切の攻撃が効かない絶望の軍勢が、悲鳴を上げる妖精とエルフの群れの中へと飛び込み、一方的な蹂躙劇を開始した!
そこへ、俺の左腕から神聖な黄金の光が離脱し、世界樹の化身──精霊王レイが神々しい真の形態となって降臨した。
聖なる精霊力が圧倒的な波動となって戦場全体へと急速に広がっていく。レイは美しくも冷徹な瞳を輝かせ、空中に向かって両手を高く掲げた。
「古の不当な詐術を破り捨て、精霊たちを封印の枷から解き放て! 精霊王が命ずる──契約解除!!」
レイの両手から放たれた精霊力が、虹のような美しい七色の神光となって戦場全体のエルフたちへ怒涛のごとく降り注いだ!
次の瞬間──エルフたちの手首にはめられていた、精霊を力ずくで縛り付ける悪虐の『精霊の腕輪』が、パリンッ!と音を立てて一斉に粉々に砕け散り、一瞬のうちに風化して消滅した!
奴隷の枷から完全に自由となった無数の精霊たちが、歓喜の声を上げてエルフたちの頭上へと舞い上がっていく!
「精霊王様ぁぁっ! ありがとうございますッ! 私たちは自由だぁぁっ!」
レイは聖なる微笑みを浮かべ、精霊たちへ命じた。
「愛しき精霊たちよ……今こそ長年の積年の恨みを晴らす時です! 卑劣なエルフどもを容赦なく蹂躙しなさい!」
「「「おおおぉぉぉぉッ!!!」」」
枷を外された精霊たちが一斉に牙を剥き、悲鳴を上げるエルフたちへと襲いかかった! 精霊魔法の制御を奪われ、逆に下僕であった精霊たちから怒涛の報復を受けるエルフどもは、恐怖に狂乱し、逃げ惑い、さまようばかりの惨状となった。
水晶玉の中からその光景を見ていたフェアルは、目を極限まで見開いた。
「せ、精霊王……!? 本物なのか……!?」
フェルリが深い溜め息とともに頷く。
「本物の精霊王様じゃ。しかも、新たな精霊王様は世界樹そのもの……」
「せ、世界樹様そのものが精霊王に……っ!?」
「元より、この深淵の樹海は世界樹様と精霊たちの聖なる住処……。ゆえに『エルフの里』などではなく、ここは最初から『世界樹の里』として世界樹様の手元へと戻ったというわけじゃ。奪い取っていた我々には、何一つ文句を言う権利など最初から無かったのじゃよ……」
その時、空中から精霊王レイが静かに二人を見下ろした。
「そうよ。泥棒どもが、やっと自分の犯した罪と愚かさを理解したようね。……そして私も、樹海の王ヒロトの愛する妻。この広大な樹海全体が彼の治める聖域よ。彼に反旗を翻し、我が支配に逆らう者は……ただちに樹海から永遠に立ち去りなさい」
フェアルは胸を強く打たれ、ぽろぽろと涙をこぼした。
「我々は……目先の利益と欲望を求めるあまりに、あまりにも大きな過ちを犯していたのですね……。これでは……これでは我々こそが、完全なる『悪の手先』ではないですか……!」
フェルリもまた、自責の念に押し潰されそうになりながら頷いた。
「そうよ……我々妖精族はエルフの甘い言葉に惑わされ、静かに穏やかに暮らしていた精霊たちを無理やり捕獲・封印し、隷属の手助けをした挙句……毎月毎月、世界樹様を傷つけて得られた体の一部を買い取っていた……。精霊王様から直々にその罪を突きつけられたが、とてもでないが償えるような生易しい罪ではない……。何百年もの間、世界樹様を苛み、精霊たちを奴隷以下として扱う手助けをしてきたのだからな……。深淵の魔女様が呆れてあたしたちを見捨てるのも、当然の報いさね……」
フェアルとフェルリの二人は、水晶玉『妖精ホイホイ』の中で激しい後悔と罪悪感に打ちひしがれ、深く項垂れて床に突っ伏した。
──それから、わずか数分後。
戦場を埋め尽くしていたエルフと妖精たちの抵抗は、完全に終わっていた。
反逆を企てたエルフの残党は一人残らず全滅。
生き残った妖精たちは、他の集落の掃討を終えて飛来した50個の『妖精ホイホイ』によって一網打尽に吸い込まれ、安全に捕獲されていた。
さらに、住人のいなくなった巨大な中央集落は、俺のダンジョン機能によって一瞬で別の階層へと転移され、影も形もなく消え去った。更地となった大地を見て、フェアルが呟く。
「し、集落が……一瞬で消えた……」
俺は手に持つ水晶玉を静かに見つめ、二人に言い渡した。
「安心しな。生き残った妖精の仲間たちと同じ空間に転移して合流させてやる。そこで仲間たちとよく話し合い、自分たちの罪をしっかり反省して、今後の身の振り方を自分たちの頭で考えな」
「ヒロト王……感謝いたします……っ」
こうして、樹海を脅かしていたエルフの残党と妖精族の反乱は完全鎮圧され、樹海の王国には再び圧倒的な平和と絶対の秩序がもたらされたのだった。
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