第92話 【絶望の害虫駆除】超兵器「妖精ホイホイ」大量投入! 深淵の魔女の容赦なき殲滅作戦と圧倒的無双の進撃!
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樹海の王国の全戦力を挙げた、初の大規模な大遠征が始まった。
俺たちは全員で空を駆け、北方の妖精族の集落群を目指して爆速で飛翔する。
同行する巨大な神獣や怪物の軍勢の中で、唯一自力で飛べないのはアラクネクイーンのスパだけだった。スパは巨大な蜘蛛の胴体を揺らし、エンシェントドラゴンへと化身したリザの広大な背中にちょこんと乗っている。
だが、スパは我が国の情報収集と暗殺を司る諜報部隊のトップだ。現場で空中を縦横無尽に動けないのは流石に不便極まりないだろう。
俺は即座に、念話で万物を見通す神眼アイへとアクセスした。
(アイ、聞こえるか? スパに飛行用の眷属を一人つけてやってくれないか?)
アイの可憐な声が脳内に優しく響く。
(承知いたしました、我が主様。直ちに手配いたします)
続いて俺は、リザの背に乗るスパへと念話を繋いだ。
(スパ、自力で飛べないと不便だろう? 今アイに頼んで眷属を一人手配させたから、それに憑依してもらいな。飛行スキルが共有されて空を飛べるようになるはずだ)
スパの歓喜の声が返ってくる。
(おおっ……! 主様、どこまでもお優しいお心遣い、誠にありがとうございます! 助かります!)
直後、アイが自身の配下である魔眼の眷属を召喚した。
出現したのはイビルアイに似た形態で、不気味に真紅く輝く巨大な瞳。その両脇には蝙蝠のような漆黒の翼が生えており、スパの目の前をパタパタと軽快に飛翔している。
魔眼がスパの身体へすっと吸い込まれるように憑依すると、スパの左目が俺やアイと同じ鮮血のような赤色に染まった。
次の瞬間、スパの巨躯がふわりと宙に浮き上がり、魔眼の飛行スキルによって縦横無尽に空中を旋回し始めた。
一方、俺の隣を飛ぶサクラは、魔法の箒に跨って優雅に空を舞っていた。
しかしその箒、よく見ると形状がかなりおかしい。柄の先端部が太く開口しており、どう見ても極大口径の大砲の砲身にしか見えないのだ。転移者であるサクラのことだ。ただの大砲であるはずがなく、間違いなく地球の某SFアニメに出てくる『波動砲』クラスの超兵器が仕込まれているに違いない。
俺は並走しながら、サクラに声をかけた。
「サクラも昔、妖精族と仲良くしてたみたいだけど、戦うことになって良かったのかい?」
サクラは箒の上で可愛らしく首を傾げると、あっけらかんと言い放った。
「ん~? 大丈夫よ! だって妖精族は、超希少な魔法素材を取りに行くのがめんどくさかったから、素材を集めさせる都合のいい奴隷として使ってただけだもの。昔助けてあげたのもそのついでよ」
「そ、そうだったのか……」
「ええ。だから別に思い入れなんて一ミリもないわ。私にとっては庭に湧く害虫や虫ケラと一緒よ。それに、さっきのあの態度見た? 結界を作ってあげた恩も忘れて、うちの愛しいヒロトに対してあんな酷い暴言を吐くなんて……許せるわけないじゃない」
サクラは激しい殺気を瞳に宿しながら、俺が左手にぶら下げている水晶玉──ミニサイズの『妖精ホイホイ』を睨みつけた。
中に閉じ込められた妖精長老フェルリを見ると、体育座りで小さくなり、ボロボロと涙を流して震えている。自慢の魔法も結界も封じられ、自分がどれほど致命的な存在を怒らせてしまったのかを今更理解して絶望しているのだろう。顔が小さすぎて表情はよく分からないが、完全に泣いている。
ちなみに、今回の超大規模な遠征において、留守番として謁見の間に残ったのは人間姿のアキートだけだ。それ以外の全戦力、そして後から乱入してきた蛇王リザルドやデステルたちまでもがノリノリで同行していた。
サクラが空中で小さく指を鳴らした。
「さて……そろそろ一番手前の集落が見えてきたわね。……今から、妖精族に貸し出していた全魔道具の動力を強制ストップします」
パチンッと澄んだ音が響いた瞬間、空を覆っていたドーム状の巨大な透明結界が、まるでシャボン玉が弾けるように跡形もなく消滅した。
「あそこが最初の集落よ」
サクラが指さした先には、木々の間に作られた小さな集落があった。
「へえ、割と小さいんだな」
「妖精は身体が小さいからね。……さて、サクッと片付けちゃいましょうか」
サクラはアイテムボックスから、今度は巨大なサイズの『妖精ホイホイ』を取り出した。
それはまるで、大型のロボット掃除機のような形状をした円柱型の魔道具だった。高さ20センチ、直径1メートルほど。下部は重厚な漆黒だが、側面と上部は透明な強化ガラスのようになっている。……一言で言えば、完全に空中を飛ぶUFOだ。
巨大妖精ホイホイは音もなくゆっくりと回転しながら、集落──というか、まるで蜂の巣のような木上の建築群へと飛んでいく。
結界が破られて混乱した妖精たちが、巣からわらわらと湧き出て空へ飛び立った。
すると、集落の上空で停止した巨大妖精ホイホイが強力な空間吸引を展開! 飛び出した妖精たちを片っ端から、ズゾゾゾゾッ!と内部へ吸い込んでいく!
サクラいわく内部の異次元空間へ安全に転移・捕獲しているらしいのだが、見た目が完全にロボット掃除機そのものなので、害虫を強力な掃除機で一網打尽に吸い上げているようにしか見えない。
わずか数分で、集落から妖精の気配が完全に消失した。
「ふう、もうこの集落には妖精はいないみたいね」
サクラが合図を送ると、ホワイトエキドナ形態のハクが巨大な口を開き、妖精たちが居なくなった集落の木々や巣を丸ごと異次元空間へ格納・収納してしまった。
更地になるまで、かかった所要時間はわずか5分。
……これって本当に戦争なのだろうか?
どう見ても高度に自動化された『害虫駆除作業』にしか見えない。
横で腕を組んで飛んでいた蛇王リザルドが、拍子抜けしたように首をかしげた。
「ぬう……いつになったら我が牙を振るう本番の戦いが始まるのかね?」
いつの間にか戦闘意欲満々で同行しているリザルドの問いに、俺は苦笑いするしかない。
水晶玉の中のフェルリは、故郷の集落が一瞬で掃除機に吸われて消滅した光景を目撃し、この世の終わりのような悲しい顔をしている……ように見える。顔が米粒のように小さいのでイマイチ確信は持てないが。
サクラは満足そうに頷くと、アイテムボックスの空間を大きく開いた。
「この自動捕獲型『妖精ホイホイ』は全部で50個用意したわ。今から全て自動運転で樹海全域にばら撒きます! GO!」
サクラの掛け声とともに、空中に残り49個のロボット掃除機型妖精ホイホイが一斉に出現!
ヒュンヒュンヒュンッと音を立てて樹海各地の集落へ向けて音速で飛び去っていった。
俺は飛びながら、サクラに確認を取る。
「そういえば、この深淵の樹海って全域が俺たちのダンジョン領域として統合されたんだよね?」
「そうだよ! 世界樹になったレイちゃんの権限が凄すぎるの! DPなんて使い切れないくらい山ほどあるわよ!」
「なるほど。じゃあ妖精ホイホイで妖精を吸い取った後の集落は、ダンジョン機能を使ってどこか別の安全な階層へまとめて移動・隔離しちゃおう。ヒナ、念話で監視を頼めるかい? 妖精がいなくなった集落から順番に空間移動させるよ。スパ、この作戦をヒナにも伝えておいてくれ」
スパが飛行しながら力強く頷いた。
「ハッ! 承知いたしました! 直ちにヒナ様へ伝達いたします!」
50個の超兵器が樹海を掃討していく中、サクラが前方を指さした。
「さて! 雑魚の妖精は放っておいて、いよいよ本丸のエルフね!」
「うむ。行くぞ!」
サクラが冷徹な笑みを浮かべ、大砲型の箒の向きを整える。
「逃げ延びた不法占拠者のエルフどもは、妖精族の長老がいる中央集落に固まっているわ。妖精族の中で最も巨大な超大型集落よ!」
絶対的な覇王の軍税は、哀れなエルフ残党が潜む最後の砦へ向け、容赦なき断罪の進撃を続けたのだった!
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