第89話 無礼な黄金の獅子王を秒で即追放! 超絶威圧の制裁と、乞食の王をぶっ潰す絶対無双の覇王道!
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青龍の塔の謁見の間。神気が満ちる広大な空間に、獣人王ライガンの雄々しい声が響き渡った。
「俺は獣人国王ライガンだ」
ライガンは軽く頭を下げて挨拶を口にしたが、その瞳にはどこか見下すような色が透けて見えていた。
「樹海の王、ヒロトだ」
俺が淡々と名を名乗ると、ライガンは挨拶もそこそこに、俺の傍らに座るカーバンクルのカインへとなれなれしく視線を向けた。
「おお! カイン様、お久しぶりです!」
カインは小さな頭を揺らし、ゆったりと応じる。
「久しぶりよのう、ライガン」
「息災でしたか?」
「かわりないのじゃ」
二人が言葉を交わしていると、後方から歩み寄ってきた象獣人のガネーシャ伯爵が、ライガンの横柄な態度に不快感を隠せない表情を浮かべた。ライガンとカインの間に割って入るように進み出ると、ライガンをチラリと睨みつけ、俺へ向かって深く平伏した。ライガンは露骨に不快そうな顔をし、チッと盛大に舌打ちを鳴らした。
「ヒロト王様、ご無沙汰しております。その節は我が領地をお助けいただき、誠にありがとうございました」
「うむ、ガネーシャも元気そうで何よりだ」
俺はガネーシャへ温かい声をかけると、視線をライガンへと戻した。
「それで……ライガン殿、本日は一体どのような用件で我が国へ越されたのかな?」
するとライガンは腕を組み、横柄な態度のままニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「おうおう、それがだな! 我が国土が先のオークどもに荒らされ、領民たちが激しく飢えているのだ。樹海王国から食料の無償支援を頼みたい!」
開いた口が塞がらないとはこのことだ。開口一番、まるで当然の権利であるかのように食料を要求してきたのだ。我が国の仲間たちの怒りが一瞬で沸点に達した。
(ヒロト様、失礼すぎます! 今すぐ斬り捨てましょう!)
(斬り捨てる。主様、許可を)
(うん、めちゃくちゃ失礼だ! ぶっ飛ばす!)
(ぶっ飛ばすぞ、あんなおっさん!)
(我が王を愚弄する不快な存在……今すぐ存在ごと消し去ります)
妻たちの激しい念話が一斉に脳内に駆け巡る。
(そうだねー……ちょっとお願いする態度ではないな)
すると、先ほど眷属になったばかりのアキートが、興奮気味に念話を飛ばしてきた。
(おおっ! これが噂の念話ですか! こんな風に遠隔で会話できるなんて凄すぎます!)
俺は呆れを噛み殺しつつ、静かな声でライガンへ問いかけた。
「……で? 我が国が君たちに食料を支援することで、我が国にはどんなメリットがあるのですか?」
ライガンは馬鹿にしたように鼻で笑った。
「おいおい! あんたら、新しく手に入れたガリア町やら何やらでかなり稼いでいるみたいじゃないか! 貧しい隣国に食い物ぐらい恵んでくれたって、バチは当たらんだろう!」
(だめだこいつ……一国のトップとしての意識も責任感も破綻してるな)
(ダメダメのダメです! 自国の備蓄を隠したまま集集りに来るなんて最低です!)
ハクの呆れ果てた念話に同意しつつ、俺は椅子から立ち上がった。
「……お断りします。今すぐお帰りください。謁見は以上で終わりだ」
俺が冷ややかに言い放つと、周囲の幹部たちへ静かに合図を送った。
その瞬間、ライガンの背後の空間が黒く歪み、超絶悪魔のアスタロトが突如として出現した。アスタロトは一切の躊躇なく、ライガンの豪華な鎧の襟首を鷲掴みにすると、巨大な巨体をまるでゴミ袋のように強引に引きずり始めた!
「王様が終わりとおっしゃっていますので、お帰りいただきます」
「おいっ!? な、なんだこの腕力は……ッ!?」
身の丈250センチを超える獅子王ライガンが必死に踏ん張ろうとするが、アスタロトの絶対的な筋力の前には赤子同然で、ズリズリと床を滑らせて引きずられていく。焦ったライガンは顔を真っ赤にして大声を張り上げた!
「おいヒロト! 勝負だ! 俺と一騎打ちで勝負しろ! 俺が勝ったら食料を支援しろッ!」
(こいつ馬鹿か? 負けたリスクも提示せずに勝手に勝負を挑んで勝ったら食料を寄越せとか、頭湧いてるのか?)
見苦しく暴れるライガンは、助けを求めるようにカインへ叫んだ。
「カイン様! なんとか言ってくれ! 樹海の民が飢えているんだぞッ!」
カインは呆れたように首を横に振った。
「おいライガン、儂はここでは何の力もないただの相談役なのじゃ」
「な、なんだと……!?」
ライガンの従者であるジャガルと将軍グンゴルが、激昂して武器に手をかけた。
「おい貴様ら! 我が王に対して無礼だぞッ! 離せ!」
従者二人がアスタロトの肩を力任せに押さえつけようとするが、アスタロトはピクリとも動かない。
「──お前たちの方がよっぽど無礼よ!!」
ルシーの怒声が轟いた瞬間、爆発的な魔力と禍々しい邪気が謁見の間全体に吹き荒れた!
ズゴォォォォンッ!!
謁見の間に充満する死の圧迫感! 同時に神竜レイが極上の精霊魔法を展開し、俺や仲間たち、そしてガネーシャ伯爵だけを優しく光のバリアで包み込んだ。
バリアの外側にいるライガンと従者たちは、ルシーの放つ絶望的な重圧に圧し潰され、床に這いつくばって苦しそうに喘いだ。力など全前入らない。
そこへ、地獄の番犬『ケルベロス』に進化したコボ2が、漆黒のフルプレートアーマーを着込んだオーク兵2体を連れて悠々と現れた。
「ヒロト様、お手を煩わせるまでもございません」
オーク兵たちは身動きの取れない従者二人を軽々と肩に担ぎ上げ、コボ2は唸り声を上げながらライガンの鎧の首元を巨大な顎で咥え込むと、そのままズルズルと謁見の間から引きずり出していった。
まったく……完全な時間の無駄だったな。
残されたガネーシャ伯爵は、冷や汗をダラダラと流しながら恐縮しきりで深く頭を下げた。
「ヒロト王様……誠に申し訳ございません。自国の王とはいえ、まさかここまで酷いお方だったとは思いませんでした……」
「ガネーシャのせいじゃないさ。だが……主君は選んだ方が良いんじゃないかい?」
ガネーシャ伯爵は意を決したように目を見開き、両膝をついた。
「はい! 本日をもちまして、あのような愚王率いる獣人国とは完全に縁を切ります! お願いですヒロト王様、我がガネーシャ領ごと、私を配下に加えてくださいッ!」
「いいよ、歓迎する。時期や具体的な併合の手順については、アキートとデレイズとじっくり相談してくれ」
「有り難き幸せにございます!」
安堵の息を漏らすガネーシャを見送りつつ、サクラが不機嫌そうにカインへジト目を向けた。
「……はぁ。そもそも、このカインのバカが悪いんじゃないの?」
カインは「な、何を言うのじゃサクラ!」と慌てて跳ね起きた。
「どういう意味だい、サクラ?」
俺が尋ねると、サクラは呆れ果てたように説明した。
「カインってね、『王様、王様!』っておだてられると、相手の善悪や事情なんて一切関係なく、助けを求めてきた方の味方をして相手をやっつけちゃうのよ。自分にお金や食料があれば、後先なんて考えずに全部あげちゃう。要するに、頼まれると『嫌』と言えない超絶なバカなの」
「助けを乞われれば助けるし、欲しいと言われれば持っているものをあげるのが当然じゃ! 住民が困っているのを解決してあげるのが王様なのじゃ! 儂はバカではないのじゃ!」
サクラは「ほらね」と冷ややかに鼻を鳴らした。
「こいつがここにいるから、ライガンも『頼めば断らないだろう』ってタカをくくってたのよ。断られたとしても、カインにおねだりすれば何とかしてくれると思ってたの。……ねえヒロト、こんなバカなカインなんて、樹海の外に捨ててきちゃう?」
「なにーっ!? 酷いことを言うなサクラぁ!」
「だってたしかに、昔私が何も悪事をしていないのに、泥棒の嘘に騙されて私を襲撃しに来たこと、私は絶対に忘れてないからね!」
「うぐっ……それは……我に嘘をついた泥棒が悪かったのじゃ……」
「今だって、もしカインが大量の食料を持っていたら、ライガンにあげてたでしょ?」
「当たり前じゃ! 飢えそうな住民がいれば、食料をあげるのが王として当然の義務なのじゃ!」
俺は腕を組み、カインの目を見つめた。
「カイン、例えばさ。領主が膨大な食料を裏で隠し持っていて、領民をわざと飢えさせているとする。その領主がやって来て『領民が飢えているから食料をくれ!』って来たら、君は食料をあげるかい?」
「あげるのじゃ! 領主が裏で食料を持っているかどうかなんて、儂には分からんのじゃから!」
「……俺は、違う考えだな」
「な、なんでじゃーっ!?」
カインが満開の耳を揺らして叫ぶ。俺は静かに、だが厳然と言い渡した。
「カイン、自分でよく考えな。自分の頭で考え抜いた結果、もし俺のやり方や考えに反対だと言うなら……俺は君との『眷属化』を解除するから、ここを出て行ってくれて構わない。考え方は人それぞれだから君の思想を否定はしないけれど、俺と一緒に行動することはできない」
「む、むむむ……っ!?」
カインは言葉を詰まらせ、耳をへにゃりと垂らして沈黙した。
絶対的な力を持ちながらも、甘い博愛主義で利用されかけるカイン。王としての真の資質とは何か──静まり返った謁見の間に、重厚な沈黙が流れるのであった。
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