第85話 樹海の王、ガリア町をお忍び巡行! 奇跡の復興と絶品魔豚串焼きに舌鼓を打つ圧巻の日常!
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最高幹部会議を終えた翌日。俺たちはガラード王国の有力貴族であるアラント辺境伯との会談に赴くことになった。
会談の場として選んだのは、我が国の本拠地である『世界樹の里』ではなく、新領地となったガリア町だ。
いくら降伏勧告を受け入れたとはいえ、人間の国に樹海王国の圧倒的な内情や国家機密をそう簡単に明かすわけにはいかない。それに、制圧から間もないガリア町の生の復興状況を、この目で直接確認しておきたいという目的もあった。
会談自体は午後に予定されているが、町をゆっくり視察するため、午前中のうちにガリア町へ向かうことにした。
ハクの空間転移魔法によって、ガリア町の正面大門から少し離れた街道沿いへと一瞬で移動する。ここからは徒歩での入城だ。
今日の俺の装備と同行者は万全を期している。
右手に寄り添うハク、左手を繋ぐレイ、左目には固有スキル『魔眼』を宿すアイ、そして俺の身体を守る防具として全身に絡みつくスラオに、腰には銘刀ムラマサ。
さらに人間の少女形態へと人化させたリザ、ルシー、ハピ。
高度な隠蔽魔法で姿を消し、周囲を警戒し監視するコボミとスパ。
ちなみにヒナとサクラは、拡大したダンジョンの管理とシステム調整で大忙しのため、今日の巡行は残念ながらパスとのことだった。
姿を消しているコボミやスパを除けば、傍目からは少年一人が可憐な三人の美少女を引き連れて楽しそうに散歩しているようにしか見えないだろう。
「おおー、門前は相変わらず大勢の人で賑わっているねぇ」
並ぶ長蛇の列を見渡し、俺が感心したように声を漏らすと、ハピが「うんうん!」と明るく頷いた。
「すごい盛況だねー! 活気が溢れてるよ!」
リザは黄金の瞳を輝かせ、驚きを隠せない様子で列を見つめている。
「人間とコボルト、ゴブリン、オークたちが……互いに文句も言わずに混ざり合って整然と並んでいるのを見ると、なんだかとても不思議な気分になりますね」
ルシーも不敵な笑みを浮かべつつ、深く頷いた。
「ええ、人間の国では絶対にあり得ない光景だわ。種族の壁を越えた平和が、早くもここに根付き始めているのね」
俺たちは長蛇の列の脇を通り、そのまま堂々と正面大門へ向かって歩みを進めた。
列に並んでいた魔物たちは、俺の姿に気づくや否や、一斉に背筋を伸ばして最敬礼で深々と頭を下げる。
一方、事情を知らない人間たちは「おいおい、横入りかよ……」と不満げにブツブツと呟いていたが、恐ろしい威圧感を放つ巨大な魔物たちが俺に対して恭しく頭を垂れる姿を目撃した瞬間、察したらしくサッと青ざめて口をつぐんだ。
門の前では、ブラックミスリルの漆黒のフルプレートアーマーに身を包んだ精鋭のオーク兵2体が、厳めしく門番を務めていた。俺たちが近づくと、オーク兵たちは重厚な甲冑を鳴らして直立不動の姿勢をとった。
「ヒロト王様! お疲れ様にございます! どうぞお通りください!」
「ご苦労様。門前や町の中で何か問題は起きていないかい?」
「ハッ! 些細な揉め事すら皆無でございます!」
「うむ、宜しい。引き続いて治安維持に励んでくれ」
俺は右手を軽く上げ、堂々とした仕草で門を通り抜けた。一国の王たるもの、時にはこうして威厳を示すことも大事なのだ。たぶん。
大門を潜り、ガリア町の内部へと踏み込む。
この町を占領した際、魔物の統治を恐れて外部へ逃げ出した住民はほんの一部に過ぎなかった。
そして一度は恐怖で町を飛び出した住民たちも、残った住民から「税金が劇的に安くなった」「樹海から送られてくる食べ物が美味すぎる」「魔物の兵士がめちゃくちゃ親切だ」という評判を聞きつけ、次々と町へ戻ってきていた。
今やガリア町は、周辺諸国の中で最も暮らしやすい町として大評判になっていたのだ。
昨日の今日ではあるが、ガリア町全体がヒナの手によってダンジョン管理下に組み込まれているため、街の一角にはすでに冒険者ギルド、鍛冶ギルド、錬金術ギルド、商人ギルドの各支部が完成していた。ダンジョンの創造機能を活用して建てられたそれらの施設は、機能美と重厚感を兼ね備えた立派な佇まいを見せている。
我が国の眷属や住民たちは皆、非常に仕事熱心だ。各領地から派遣された優秀な人材がすでに各支部に配置され、スムーズに業務を開始していた。
眷属同士は距離に関係なく『念話』で瞬時に意思疎通ができるため、現場で何か問題が起きても即座に本部のデレイズたちへ相談できる。距離的なデメリットはゼロであり、ハクの転移や召喚を活用すれば物品や人員の移動も一瞬だ。
特に冒険者ギルドは、旧ギルドの跡地に二回り以上も大きい豪華な建物が爆速で建造されていた。
敷地内には『狩り用ダンジョン』のポータルが設置されており、そこから魔物の冒険者たちが続々と出入りしている。
現在、この町には人間の冒険者がほとんど存在しないため、各領地から派遣されてきた魔物の冒険者たちが中心となって活動しており、想像以上の大盛況となっていた。
本来、樹海の眷属以外の野生の魔物は各領地の自警団が狩っているため、人間が街の周辺で狩れる分は残らない。そのため、冒険者たちが稼ぐには『狩り用ダンジョン』から得られる素材や魔石が必要不可欠となるのだ。
これまでは、高品質な素材を手に入れるには樹海奥地の危険な集落まで買いに行くか、魔物が売りに来るのを待つしかなかったが、この狩り用ダンジョンの開設によって、町にいながらにして無制限に素材が入手可能となった。
魔石や素材はもちろん、魔物以外の希少な各種薬草、色とりどりの果実、上質な木材、さらには激レアな鉱石に至るまで、ありとあらゆるお宝がダンジョン内で採取できる。まさに無限の宝の山だ。
魔物の冒険者たちがダンジョンで狩り集めてきた豊富な素材で街全体の経済が潤っているため、人間の住民たちが魔物を受け入れ、良好な交流が生まれるのも当然と言えた。
何より、魔物たちには俺の絶対命令である『他種族への差別禁止と協調』の教えが隅々まで浸透しているため、人間に対して非常に親切で友好的だ。主の絶対命題だからこそ、徹底ぶりが違う。
さらに、魔導転移によって輸送コストが完全に削減されたことで、流通品の価格は信じられないほど下落していた。その噂を聞きつけた耳の早い他国の商人たちが続々とガリア町へ訪れており、今後商人の数は爆発的に増えていくことだろう。
「うーむ、このペースで人が増えるなら、宿屋や飲食店も一気に増築・増設する必要があるかもしれないなぁ……」
そんなことを考えながら賑やかな大通りを歩いていると、香ばしい肉の焦げる甘辛い匂いが漂ってきた。ふと視線を向けると、見覚えのある一軒の屋台が目に飛び込んできた。
以前、ヒナと一緒にガリア町を訪れた際に立ち寄った、あのボアの串焼き屋だ。頑固そうな屋台のおじさんも、元気に店切り盛りしている。
おじさんは俺たちの姿を認めるや否や、親しみやすい笑顔で声をかけてきた。
「おお! 街がこんな風になってから見かけなかったが、元気にしてたかい坊主?」
「うん、めちゃくちゃ元気だったよ! おじさんも変わらず元気そうだね」
「へへっ、聞いて驚くなよ! この町はここ数日でとんでもない大変動があったんだ! 『樹海の王』とかいう恐ろしいお方がお見えになってな、横暴だった旧領主と兵士どもを一瞬でぶっ飛ばして、町を占領しちまったんだよ! だがそれからは税金も激減して、治安も最高。本当に平和で住みやすい素晴らしい町になったんだ!」
自分の預かり知らぬところで絶賛されている事実に、俺は密かに苦笑いを浮かべつつ尋ねた。
「そうなんだぁ、良かったね! ……ところで、ボアの肉はちゃんと順調に入荷できているの?」
おじさんは豪快にハハハと笑い、肉をひっくり返した。
「それがな、占領直後は流通が止まってボアの肉が入手できなくなっちまって、また廃業を覚悟したんだ。だがそしたらすぐ、樹海の方から『魔豚の肉』っていう、ボアなんて比べものにならねえ超上等な肉が安価で手に入るようになったんだよ! これがもう、ほっぺたが落ちるほど美味くてな! 坊主たちも食べてみな、一本銅貨3枚でいいぞ!」
「へえ! それは本当に良かったねぇ。それじゃあ、一人2本ずつ食べたいから、合計8本ちょうだい! はい、銅貨24枚ね」
「毎度ありっ!」
俺は手際よく銅貨24枚を渡し、香ばしい煙を上げる熱々の串焼き8本を受け取った。それぞれ2本ずつ、リザ、ハピ、ルシーへと手渡す。
さっそく肉にしゃぶりつくと、香ばしい肉汁と絶品タレの旨味が口いっぱいに広がった!
「う、うまいっ!!」
「ん~っ! ジューシーで最高に美味しいです、ヒロト様!」
「お肉が柔らかくてすっごくジューシー!」
みんな大満足で肉を頬張っている。ふと、串焼きを味わっていたルシーが不思議そうに首を傾げた。
「ねえヒロト、この串焼きにかかっている秘伝のタレ……なんだか我が城の食堂で出されているタレの味にすごく似ていないかしら?」
俺は肉を飲み込み、ニッコリと笑って明かした。
「あはは、気づいた? 実はうちの城のタレは、以前ここで俺が貰ったタレのサンプルをベースにして、城の料理おばさんがさらに改良を重ねて完成させた特製タレなんだよ」
ルシーは「なるほどね!」と感心したように深く頷き、二本目の肉を幸せそうに頬張るのであった。
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