第82話 無条件降伏か、それとも即刻全滅か! 王国の暗部を潰し尽くし、第一王子すら人質に奪う圧倒的完全勝利!
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謁見の間に漂う絶望の空気の中、俺は異次元空間から引きずり出した醜い勅使の胸ぐらを掴んだまま、静かに国王を見下ろした。
「……現在、深淵の樹海周辺の村々およびガリア町は、我が樹海王国の完全なる領地としてすでに占有・制圧している。もはや戦端は開かれているのだ。ガラード国王よ、この期に及んでなお、我が国と戦争を継続する意志があるのかどうか……貴様の口から確認したい」
俺の手の中で暴れていた勅使は、聞き覚えのある「国王」という言葉に跳ね起きるように慌てて周囲を見渡した。
「こ、国王……様……!?」
そこにあったのは、信じがたい光景だった。
最高指導者であるガラード国王をはじめ、宰相、そして誇り高き貴族や近衛兵たちまでもが、俺たちに向かって地べたに膝をつき、惨めに頭を垂れているのだ。
「こ、これは……一体どういうことだぁっ!?」
顔を蒼白にして狼狽する勅使を一蹴し、俺は鋭い視線を壇下へ叩きつけた。
「ガラード国王よ! この蠢く害虫が吐き捨てた侮辱の数々……我が樹海王国に対する明確な宣戦布告以外には受け取れんぞ!」
国王の代わりに、膝をついていた宰相が冷や汗をダラダラと流しながら必死に叫んだ。
「じ、事情はすべて理解いたしました! 近衛兵、何をぼうっとしている! この不敬者をただちに引っ捕らえよッ!」
重苦しい魔圧に喘いでいた近衛兵たちが、必死に身体を引きずりながら駆け寄り、叫び散らす勅使を乱暴に拘束して奥へと連行していった。
俺は連れていかれる勅使を見送ると、ゆっくりと顔を宰相へ向けた。
「ところで……お主がこのガラード王国の国王か?」
俺の問いかけに、宰相は「しまった!」と言わんばかりに顔を極限まで引きつらせた。
「我は『国王』に話しかけたのだ。なぜ配下の貴様が勝手に口を挟む?」
「し、失礼いたしました……! 私は当国の宰相をしております──」
「黙れ! 王でないのであれば、貴様のような臣下に話しかけてはおらん。無礼者め」
俺は宰相の弁明を容赦なく遮ると、腰のムラマサを神速の居合いで抜き放ち、一閃のもとにその胴体を斜めに薙ぎ払った!
ガァァンッ!!
「ぐあぁっ!?」
峰打ちの絶大な衝撃で一瞬で失神した宰相を、俺はそのまま間髪入れずに異次元空間へと収納した。
「ひっ……!?」
「さ、宰相閣下まで一瞬で……!」
あまりの早業と理不尽なまでの圧倒的暴力に、国王も周囲の貴族たちも、固まったまま口ぐうの音も出ない。先ほど最強の軍司令官であったアレオン将軍が瞬殺されて消え去り、今度は国政の要である宰相が一秒足らずで消されたのだ。無理もない。
絶体絶命の圧迫感の中、国王は悔しさと恐怖に満ちた苦々しい表情で、重い口を開いた。
「……も、申し訳ございません。私が……ガラード王国第十三代国王、ガルド・ガラードでございます」
ガラード国王は深々と深く頭を下げた。だがその直後、俺の目を盗むようにして、王の椅子の後ろの暗がりへ向けてチラリと視線を送り、小さな手招きの合図を出した。
その瞬間、スパから影を通じて念話が入る。
(ヒロト様、国王の椅子の背後から、主様の首を狙って忍び寄ろうとした王国の暗殺部隊『闇の風』の者がおりました。気配を察知したコボミ様が即座に首を跳ね、影の中へ収納いたしましたのでご安心を)
(報告ありがとうスパ。本当に助かるよ)
やれやれ、口では謝罪しておきながら、裏ではまだ往相もなく土壇場の奇襲で俺の首を狙っていたとはな。樹海周辺の領地だけを奪って手打ちにしてやろうかと思っていたが、これでは甘い顔をするわけにはいかない。
ガラード国王は、一向に現れない暗殺者に焦りを覚えたのか、何度も何度もチラチラと椅子の後ろを振り返っている。
「ガラード国王……お主が必死に探しているのは、もしやこの者たちのことかな?」
(コボミ、『闇の風』の連中を全員引きずり出せ)
(了解いたしました、主様)
俺の傍らに、可憐な少女の姿をしたコボミがすっと姿を現した。コボミが闇の魔法陣を展開すると、影の中からドサドサッと、暗殺者の装束に身を包んだ冷たい遺体が転がり出た。一番上に転がった男の顔を見た瞬間、ガラード国王の目が大きく見開かれ、絶句した。
「ま、まさか……『闇の風』の筆頭頭領、ヤグルが討たれただと……!?」
ガラード国王が呆然と呟く。へえ、一番手に留めておいたこいつ、暗殺部隊のトップだったのか。
さらにコボミは手をかざし、本日正門から王宮に至るまでに襲いかかってきて返り討ちにした『闇の風』の精鋭たちの遺体を次々と影から吐き出させていく。
どさっ、どさっと音を立てて床に並べられていく遺体の数々。その数、実に32体。
「この者たちは、影から我が命を不当に狙ってきたため、相応の対処をさせてもらった」
自分の誇る最強の秘密暗殺部隊すら完全に壊滅させられた事実を突きつけられ、ガラード国王は両手を床につき、ガタガタと震えながら完全に項垂れた。
「……も、我が国に……これ以上、貴国と戦争を継続する意志は……絶対にございません……!」
「ふん。ここまで我が国を虚仮にし、裏で暗殺まで企てた以上、俺が無条件降伏以外を受け入れると思うか?」
「む……無条件降伏……!?」
「嫌なら断ってくれても構わないぞ? ただし戦争継続を選ぶなら、今この瞬間、この謁見の間にいるガラード王国の関係者全員に、死んで貰うことになるがな」
俺の言葉に合わせ、ルシーが再び地獄の底のような邪気と禍々しい極大魔力を全開で解き放った!
ズゴォォォォンッ!!
謁見の間全体が激しい咆哮を上げ、壁に亀裂が走る。周囲の貴族や近衛兵たちは哀れな悲鳴すら上げられず、死の恐怖に息を呑んで震え上がった。
アレオン将軍の敗北、宰相の消滅、そして守護神であった『闇の風』の全滅。すべてのカードを失い、完全に心を折られたガラード国王は、ついに床に深く額を擦り付けた。
「……承知、いたしました……。ガラード王国は……『樹海王国』に対し……無条件降伏を受け入れます……!」
「「「な、何ということだ……っ!?」」」
貴族や近衛兵たちの間に、絶望と衝撃のどよめきが駆け抜ける。
同時にルシーがピタリと魔力圧を収めた。相変わらずルシーはいい仕事をしてくれる。
俺は転がっていた『闇の風』の遺体をハクの力で一瞬で異次元空間へと回収し、代わりにガリア町の領主屋敷で捕縛・収納していたアーシュ男爵やその側近たちを床へシュッと放り出した。
「この者たちは返してやる。後で正式な身代金をたっぷり支払ってもらうぞ」
「あ、アーシュ男爵……!?」
気絶して白目を剥いているアーシュ男爵たちを見て焦る国王に、俺は淡々と言い渡す。
「気安心しろ、ただ気絶しているだけだ。死んではいない」
「こ、近衛兵! ただちにアーシュ男爵らを別室へ運び込め!」
指示を受けた近衛兵たちが、急いで気絶した男爵たちを連れ出していった。
その時、影の中からスパの念話が入った。
(ヒロト様、別室の奥深くにガラード王国の第一王子ガラールが隠れ潜んでおります。連れてまいりましょうか?)
(ほう、将来の国王候補を人質に取るわけか。そいつはいいアイデアだな)
俺は不敵に口元を歪め、国王へ向けて言い放った。
「ガラード王国が我が国に対し、二度と愚かな牙を向けないための『保険』として……第一王子ガラールを我が国で人質として預からせてもらう」
(スパ、連れてこい)
(畏まりました)
スパが一瞬で影の中に消えたかと思うと、次の瞬間には背後に影の糸で縛り上げられた30代ほどの男を引きずって現れた。
「ガ、ガラールッ!?」
国王が悲鳴のような声を上げる。
「賠償金や領地割譲に関する詳細な内容については、追って使者を派遣して通達する。要件は以上だ!」
俺たちは叫ぶ国王たちを置き去りにし、第一王子ガラールを拘束したまま、一瞬で我が樹海王国の城の会議室へと空間転移した。
「デステル! こいつを絶対に逃げられないよう厳重に軟禁しておいてくれ」
俺が声をかけると、空間が黒く歪み、死神デステルがゆらりとガラール王子の背後に現れた。
「ひ、ひぃぃぃぃっ! け、化け物ぉぉッ!?」
背後を振り向いた第一王子は、漆黒の骨の死神を目にして泡を吹かんばかりに悲鳴を上げた。デステルは深紅の眼光を怪しく光らせ、恭しくお辞儀をした。
「クックック……承知いたしました、ヒロト様。決して害さぬよう、しかし指一本動かせぬよう完璧に管理いたしましょう」
デステルが泣き叫ぶ王子を引きずって去っていく。王子と言っても見た目は30代の立派なおっさんだが、人質としての価値は十分だろう。
俺は異次元空間から、先ほど収納したアレオン将軍、宰相、そして暗殺頭領ヤグル率いる『闇の風』の遺体を取り出し、出迎えてくれた暗黒の王デルガへと向き直った。
「デルガ、このアレオン将軍と宰相、そして『闇の風』の精鋭たちを、我が国に絶対の忠誠を誓う最強のアンデッドとして蘇らせてくれないか?」
デルガは重厚な兜の奥から邪悪かつ頼もしい笑い声を漏らした。
「クハハハ! 易い御用にございます、我が王よ。生前以上の力を秘めた無敵の忠僕として生まれ変わらせて見せましょう」
「頼んだよ。……ふぅ、今日は本当に色々と動いて疲れたな! さあみんな、城の美味しい夕飯をたっぷり食べて、ぐっすり寝るとしよう!」
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