第80話 九尾の狐と火の鳥
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俺達は『婆さん』の魔法屋に行った。
古めかしい木造平屋の店。
引戸を開けて店に入る。
店の中は雑然としていた。
謎の薬や魔物の素材が、ところ狭しと並べてあったり、吊るされていたりしている。
店のカウンターから、いかにも魔女って言う感じの鷲鼻で黒い三角帽子をかぶった婆さんが、声をかけてきた。
婆さん「いらっしゃい。どんなご用だい。」
サクラ「ウィーラ、久しぶりー。」
サクラは片手を挙げて親しげに声をかける。
婆さんの名前はウィーラと言うらしい。
ウィーラ「おや、サクラかい、随分まともな服を着てるじゃないか。分からなかったよ。」
サクラ「目立たない様に幻影魔法で変えてるだけよ。それより、地下の召喚の間を貸してくれない?」
ウィーラ「お代はいただくよ。」
サクラ「勿論お支払するわ。」
ウィーラ「どれ、ついておいで。」
ウィーラはカウンターから出てくると地下に繋がる扉を開けて中に入っていく。
長い階段を降りて重厚な鉄の扉を開けると召喚の間に着いた。
広いスペース。石壁。殺風景。
四隅に低い柱の様なもの。
地面には魔方陣。
そこには魔力が吹き荒れているようだった。
アリアがよろめく。ヒナが支える。
左手よりレイが現れる。
荘厳で華麗な精霊王の姿。
神聖で優しい精霊力が俺達を包む。
アリアはしっかりとして地に足をつけて立つ。
ウィーラ「何者じゃ!」
レイ「精霊王のレイよ。」
ウィーラ「精霊王じゃと!サクラ、お前は何を連れてきた!」
サクラ「ウィーラ、この人達は樹海王国の王とその妻達よ。心配しないで。ただこの場所を借りに来ただけよ。使い魔契約をしたいだけ。」
アスタロト「見事な竜脈ですね。」
ルシー「そうね。この魔力なら強力な使い魔が召喚できるわ。流石深淵の魔女サクラね。」
この場所に来た始めから、全く動揺も無く。
涼しい顔で立っている二人。
いやむしろ生き生きとなった二人の会話。
ウィーラの瞳が紅く変わり、俺達を見詰める。
ウィーラ「そこのよろめいた娘が人間なのは分かるが、他のものは鑑定出来ないし、鑑定できても人間と表示されるが明らかに違うじゃろ。」
俺は人間ですけど。
サクラ「そうね。強力な人達よ。
さて、召喚の儀式に入る前に、ウィーラが心配しだしたので、ヒロト様、ウィーラに私達の正体を見せても良いでしょうか?
いずれ召喚の際は姿を見せる必要がある者もいます。
ウィーラは、竜脈の魔女として、古よりこの場所を守護しているもの。他言無用の約束をすればお互いに約束を破る事は無いわ。」
ヒナとユイのためだし、サクラが言うから問題無いだろう。
みんなが俺の方を見ている。
「いいよ。サクラに任せる。」
いつも人任せ。丸投げの俺です。
ウィーラ「分かった他言無用としよう。」
サクラ「有難うヒロト様。四霊獣の皆は四隅の柱の前に立って、結界を張ってね。」
ウィーラ「四霊獣!」
右手からハクが人間より若干大きめの応龍となって現れる。
ハク「応龍のハクよ。」
ハクは東の柱の前に浮かぶ。
コボミが麒麟に変わる。大きさはハクと同様。
コボミ「麒麟のコボミ。」
コボミが北の柱の前に立つ。
ハピがハクと同じ大きさの鳳凰に変わる。
ハピ「鳳凰のハピよー。」
ハピが西の柱の前に飛んで行く。
リザもハク同様の大きさの霊亀に変わる。
リザ「霊亀のリザです。」
リザが南の柱の前に立つ。
ウィーラ「本当に四霊獣じゃ!」
四霊獣は結界を張った。
四隅の柱の内側に透明な結界が見え隠れする。
サクラ「今回、使い魔契約をする2名。吸血鬼真祖のヒナとリッチで魔法の勇者ユイよ。」
サクラは二人を呼び、二人はサクラのもとに進みウィーラに一礼する。
ヒナ「ヒナよ。」
ユイ「ユイです。」
ウィーラ「吸血鬼真祖とリッチの魔法の勇者かい。随分変わった子達じゃ。」
アリアがライゾウを抱っこして前に進む。
アリア「人間のアリアです。」
ライゾウはヌエの腕から飛び降り、アリアと同じ大きさになる。
ライゾウ「ヌエのライゾウだ。」
ウィーラ「ヌエかい。久しぶりに見たのぅ。」
グレイアが1歩前に出る。
グレイア「ダークハイエルフのグレイアです。お久しぶりです」
グレイアは服だけ変わった。
セクシーで身体にピッタリの黒革の上下。
ウィーラ「グレイア!ダークハイエルフになったのか!
ダークハイエルフが実在するとは!」
スパ1がウィーラの前にアラクネエンプレスの姿で出現。
スパ1「アラクネエンプレスのスパ1です。」
ウィーラ「え!全く分からんかったのじゃ。」
ルシー「自己紹介が必要なのかしら?不死王のルシーよ。」
ルシーが不死王の姿に変わる。
濃厚で邪悪な魔力と邪気が召喚の間全てに広がった。・・・と思う。
レイの精霊力で包まれているからよく分からん。
ウィーラ「不死王!」
ウィーラがよろめく。
スパ1がウィーラの腕をとり支えた。
レイの神々しい精霊力がウィーラも包んだ。
ウィーラ「これは精霊王の力じゃな。」
アスタロト「悪魔で執事のアスタロトで御座います。」
アスタロトは御者服から執事服に変わっただけ。
アスタロトは丁寧に一礼する。
ウィーラ「あ、悪魔まで!」
アスタロト「ヒロト様の危機以外では動かないのでご心配無く。」
「樹海の王ヒロトだ。」
スラオの幻影を解除。
戦闘服に変わる。
ウィーラはジト目で俺を見る。
ウィーラ「他にも何かあるが詮索はすまい。」
何も無いよ。人間だし。
アイとスラオとムラマサの事かな?
サクラの足元の黒猫のミサキが微笑んだ。
ミサキ「私は自己紹介不要よね。ウィーラ久しぶりー。」
ウィーラ「サクラ、こんな災害のような者達を集めて何をするつもりじゃ。」
サクラ「ヒロト、なにするの?」
サクラが俺の方を見て尋ねる。
「別に何かする気は無いなぁ。」
サクラはウィーラに向き直る。
サクラ「だそうよ。」
ウィーラ「むむー。まあ良いか。ここには使い魔の召喚と契約をしに来ただけじゃろ。」
サクラ「そうだよ。」
サクラ「じゃあ、早速使い魔召喚しましょうか。」
ヒナ「何か説明とかないの?」
サクラ「無いわよ。呼べば四霊獣結界で逃げられないし、この面子に戦いを挑む魔物はいないでしょ。暴れたら一瞬で消されちゃうわよ。ね、ルシー。」
ルシー「何で私よ。まあ消しちゃけどね。」
ヒナ「そっかー。私はライゾウの様に可愛くて強い使い魔がいいなぁ。九尾なんてどうかしら。」
サクラ「おお!大きく出たねー。神獣じゃない。ヒナは吸血鬼だから蝙蝠系だと思ってた。」
ヒナ「蝙蝠系ってなによ。九尾の狐でお願いするわ。」
ウィーラ「きゅ、九尾!この国を壊す気かい。」
サクラ「四霊獣と同列ねー。大丈夫っしょ。不死王と精霊王が居るし。じゃあ、呼びましょか。」
コボミ「大丈夫よ。心配無いわ。毛を持つ獣達は私の言う事を聞くから。私が呼びましょうか?」
サクラ「そうね、お願いするわ。」
ヒナ「ワクワクするよー。」
コボミ「古の世より、世界を守護してきた神獣、九尾の狐よ、霊獣麒麟の呼び声に応じ、その身を現しなさい!神獣召喚!」
召喚の間に満ちている魔力がコボミに吸い込まれた。
そしてコボミより魔力の渦が床の魔方陣に流れて行く。
魔方陣が怪しく光る。
黒い霧が魔方陣より涌き出てくる。
霧の中より狐の頭が、胸が、足が浮き上がって来る。
9本の尻尾まで現れると全身が現れた。
黒い霧が晴れている。
九尾の狐はヒナと同じくらいの大きさ。
神々しい佇まい。
大きくてふさふさした9本の尻尾が揺れる。
九尾の狐「妾を呼ぶ者は誰じゃ。」
九尾の狐は周りを見渡し呟く。
九尾の狐「精霊王、不死王、四霊獣、悪魔・・・。」
皆からの無言の圧力にビクッとする。
そして小刻みに震える。
一瞬消えかかるが元に戻る。
転移か何かで逃げようとしたんだろうね。
でも結界に阻まれたようだ。
九尾の狐は観念した様子。
九尾の狐「わ、妾をどうする気じゃ。」
サクラ「この子の使い魔として契約して貰うわ。」
ヒナ「私はヒナ!宜しくねー。尻尾がふわふわだー。」
ヒナはモフモフしたくて両手をワキワキしている。
九尾の狐「拒否は出来ぬ様じゃなぁ。はぁ~。」
溜め息をひとつ。
九尾の狐「承知した。」
サクラ「ヒナ、名前を付けてね、契約するわ。」
ヒナ「じゃーねー。『キュウ』ちゃんにする。」
ああ~。ヒナも俺と一緒でネーミングセンス無いのね。
サクラ「九尾の狐よ、汝は此方ヒナの使い魔『キュウ』として従いなさい。使い魔契約!」
ヒナから淡い赤の光線がキュウに伸びる。
ヒナとキュウは淡く輝き、やがて光は消えていく。
ヒナ「キュウちゃん小さくなっておいで!」
ヒナは両手を伸ばす。
キュウは赤ちゃん狐ぐらい小さくなって、ヒナの胸に飛び込んだ。
ヒナは嬉しそうにキュウを抱き抱えナデナデする。
サクラ「次はユイね。」
ユイ「私はねー。火の鳥がいいな!」
「火の鳥?朱雀や鳳凰とは違うのかな?」
サクラ「不死鳥フェニックスね。朱雀や鳳凰と違うわよ。」
ハピ「不死鳥フェニックスなら鳥だから、私が召喚するわよー。」
サクラ「そうね。鳳凰のハピなら間違いないわ、宜しくねー。」
ハピ「不死鳥フェニックスよ!おいでー。召喚!」
随分あっさりした詠唱だな。おい。まあ、ハピらしいか。
ハピの魔力が召喚の間の魔力と同調して魔方陣で渦巻く。
一瞬の赤い閃光。
同時に熱い風、熱波が魔方陣より吹き荒れる。
閃光が消えると、魔方陣の中央には火の鳥がいた。
姿は鷲。黄色、赤、紫、オレンジの炎を身に纏う。
火の鳥「お呼びでしょうか。」
ハピ「この子の使い魔になってね。宜しくー。」
火の鳥「随分くだけた鳳凰様ですな。否はありません。」
ユイ「名前はねー。『フェン』にするー。」
あぁ~。この子もネーミングセンス無いのね。
サクラ「不死鳥フェニックスよ、汝は此方ユイの使い魔『フェン』として従いなさい。使い魔契約!」
ユイから淡い赤の光線がフェンに伸びる。
ユイとフェンは淡く輝き、やがて光は消えていく。
ユイ「フェンおいで!」
フェンは小鳥の大きさになり飛んできた。
そしてユイの右肩の上に止まった。
九尾の狐と不死鳥フェニックスが仲間入りした。
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