第8話 幻獣『雷獣』を救え!MP吸収×神速ヒーリングの絶妙連携!そして訪れる怒濤の【眷属進化可能】通知!!
黒のパーカーに使い古したジーパン。現代日本のラフな格好のまま、俺は異世界の深い樹海を歩いていた。
左腰には、先ほど討伐したゴブリンから奪った鉄のショートソード。
そして──俺の身体には、最強の眷属たちが所狭しと寄り添っていた。
右腕には、空間を断ち切る次元白蛇ハクが巻き付き、神秘的な『白蛇の手甲』を形成。
左腕には、木霊のレイが蔦を這わせて『植物の手甲』を作り上げ、その上にはミニサイズ化した土蜘蛛のスパが可愛らしい蜘蛛のアクセントとしてチョコンと乗っている。
さらにフライングアイのアイも左手に羽を休め、左肩には水滴のように輝くスライムのスラオ。
そして左足元では、フォレストリザードのリザがカサカサと力強い足取りで警護するように並んで歩いていた。
まさに、歩く『フル装備状態』だ。
その時──左腕のスパから緊張した念話が飛んできた。
(ヒロト様! 前方数十メートルの開けた場所で、ゴブリンの群れと何者かが激しい戦闘を行っております!)
俺はピタリと足を止め、即座に念話を返す。
(分かった。アイ、ゴブリンたちの隙を突いて『鑑定』してきてくれ! 見つからないように上空から頼むぞ)
(はーい! 任せて、ヒロト!)
アイがパタパタと白い翼を羽ばたかせ、樹木の天井へと姿を消す。数秒後、アイの視界と詳細なステータス情報が脳内に転送されてきた。
敵はゴブリン6匹。
・ゴブリンリーダー(Lv.20)×1
・ゴブリンメイジ(Lv.20)×1
・ゴブリン(Lv.10)×4
(ゲッ……メイジにリーダーまでいるのか。かなり凶悪な小隊だな……! で、戦ってる相手は?)
アイの鑑定ウィンドウが切り替わる。
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【名前】ライゾウ
【種族】雷獣(幻獣)
【性別】♂
【レベル】30
【HP】10/300(極限超瀕死)
【MP】0/400(完全枯渇)
【スキル】雷魔法(Lv.5)
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「雷獣……!? しかも名前持ちの幻獣!?」
画面に映し出されたその姿は、イタチに酷似していた。
体長七十センチほど、黒褐色の美しい毛並み。驚くべきことに尻尾が二本に分かれており、前足二本、後足四本の計六本の足を激しく動かして疾走している。丸く黒い瞳と小さな耳が特徴的だが──今は全身傷だらけで、荒い息を吐きながら絶体絶命の危機に瀕していた。
HPはわずか10。MPは完全なゼロ。
ゴブリンメイジが放つ火炎弾と、リーダーが振るう大剣を間一髪で回避しているが、いつ倒れてもおかしくない!
(みんな! あの雷獣を助けるぞ!)
「「「((おーっ!!))」」」
俺の決断に、眷属たちが一斉に昂ぶる!
(指示を出す! アイはまず『ゴブリンメイジ』に接近して【MP吸収】! 奴の魔法を封じたあと、他のゴブリンからもMPを吸い尽くせ!)
(うんっ! おいしいMP、いっぱい吸ってくるね!)
(ハクさんは白蛇形態に戻って、無力化したゴブリンメイジを瞬殺してくれ!)
(了解ですわ、ヒロト様! 私の前で魔法など使わせません!)
ハクが右腕からスルスルと抜け出し、白銀の流星となって草むらを滑るように突進する。
(スパは『ゴブリンリーダー』の足止めと撃破を頼む!)
(承知いたしました! 仲間の仇、ここで返させていただきます!)
スパが巨大な土蜘蛛の姿へと一瞬で変化し、カサカサと恐ろしい速度で地を駆け抜ける。
(レイはライゾウの『回復』に集中! アイが吸い取ったMPを俺の【眷属共有】経由でレイとライゾウにダイレクトに流し込む!)
(うん……! ヒール……いっぱいかける……!)
(よし! 俺とリザ、スラオは残りのゴブリン雑兵の足止めだ! 行くぞっ!!)
俺は左腰のショートソードを「シャキーン!」と一気に抜き放ち、戦闘現場へと躍り出た!
「ギギャアアアッ!?」
突如現れた俺たちにゴブリン雑兵が牙を剥く。
だが、その背後で──俺はすかさず右手を突き出した。
「頼む、間に合ってくれ……! 『テイム』!!」
『──幻獣『雷獣』のテイムに成功しました──』
『──【眷属強化(Lv.10)】発動:全ステータスが2倍に底上げされます──』
「ギ……ガハッ!?」
背後のライゾウが激しく目を見開いた。
テイム補正によって最大HPが600へと跳ね上がり、瀕死だったHPも瞬時に20まで上昇!
そこへレイの温かな緑色の光──【ヒール】が絶え間なく降り注ぐ!
(アイ! MP吸い上げたか!?)
(ばっちり吸い取ったよ! メイジはもうすっからかん!)
アイが吸い上げた大量のMPが、俺の【眷属共有】のパイプを通して、レイの回復魔法の糧となり、さらにはライゾウの体内へとドバドバと還元されていく!
「ギギャッ!? ニンゲン……殺す!!」
雑兵ゴブリンの1匹が俺に向かって短剣を振り下ろす!
(ヒロト様には触れさせない!!)
リザが弾丸のように飛び出し、ゴブリンのスネに鋭い牙で噛みついた!
「ギギャアッ!」と悲鳴を上げて前屈みに転倒するゴブリン。
だが、間髪入れずに2匹目のゴブリンが横から剣を振り下ろしてきた!
(しまっ──!?)
咄嗟に身を引くが、体勢が崩れて回避が間に合わない! 死の刃が俺の胸元に迫る──!
(ヒロト、まかせて!!)
ポンッ!!と弾けるような音と共に、左肩からスラオが跳躍!
俺の胸元に割り込み、自らのぷにぷにした体を盾にして剣を受け止めた!
バツンッ!!
「スラオっ!? 大丈夫か!?」
(えへへ、平気だよー! ぜんぜん痛くない!)
【物理耐性(Lv.3)】とステータス2倍補正により、鉄の剣すらスラオの弾力によって無効化されたのだ!
そして──MPが急速に満たされたライゾウの全身から、眩いばかりの『黄金の放電』が爆発した!
(──下等な悪党どもが……我が主と仲間に手を出した罪、その身で受けよ!! 【万雷】ッ!!)
バチバチバチバチイィィィッ!!!
轟音と共に、白銀の雷光が周囲のゴブリンたちを飲み込んだ!
凄まじい衝撃波と焦熱。抵抗する間もなく、襲いかかってきた雑兵ゴブリンたちが黒焦げになって崩れ落ちていく!
直後、俺たちの頭の中に、怒濤のシステムメッセージが鳴り響いた!
『──敵小隊の全滅を確認──』
『──【眷属経験値UP】発動:獲得経験値2倍──』
『──サトウ ヒロト がレベルアップしました!(Lv.2 → Lv.3)──』
『──スラオ がレベルアップしました!(Lv.3 → Lv.5)──』
『──レイ がレベルアップしました!(Lv.3 → Lv.5)──』
『──リザ がレベルアップしました!(Lv.3 → Lv.5)──』
『──アイ がレベルアップしました!(Lv.3 → Lv.5)──』
『──ハク がレベルアップしました!(Lv.30 → Lv.31)──』
『──スパ がレベルアップしました!(Lv.15 → Lv.16)──』
『──ライゾウ がレベルアップしました!(Lv.30 → Lv.31)──』
「うおあぁぁぁっ! 全員一気にレベルアップ!!」
そして──ファンファーレは止まらない! 脳内にさらに黄金の警告テキストが連続で躍り出た!
『──条件を満たしました──』
『──【スラオ】が進化可能になりました!──』
『──【レイ】が進化可能になりました!──』
『──【リザ】が進化可能になりました!──』
『──【アイ】が進化可能になりました!──』
「し……『進化』可能に……!? 一気に4匹も!?」
俺が叫ぶ後ろで、メイジを噛みちぎったハクと、リーダーを切り刻んだスパが優雅に戻ってきた。
(ふふ、お怪我はありませんでしたか? ヒロト様)
(あ、危なかったよ……本当にみんなのおかげだ)
(……危ない、だったの……?)
足元でリザが、ポカンと口を開けて俺を見上げていた。
(……ヒロト様、人間。防具、ない。斬られたら……死んじゃう……?)
(うん、俺は人間だからね。ゴブリンの剣でも直撃したら即死しちゃうよ)
(……死ぬ、ダメ! ヒロト様、死ぬの嫌!!)
リザが胸をキュッと締め付けられるような顔をし、力強く言った。
(……私、ヒロト様の……最強の『盾』になる……!! 絶対に守る!!)
(リザ……ありがとう!)
俺は感動しながら、命を救ったライゾウに向き直り、念話を飛ばした。
(ライゾウ、俺はヒロト。助けられて良かったよ。よろしくね!)
ライゾウは六本の足を揃え、深々と頭を下げた。
(ライゾウだ。命を救われたばかりか……このような強大な力を与えてもらえるとはな。身体が軽い……魔力が溢れてくるようだ。感謝する、我が主よ)
(それにしてもライゾウ、君みたいな凄まじい幻獣が、どうしてあんなに落ちのびていたんだい? ゴブリンの群れなんて本来なら瞬殺できるだろう?)
ライゾウの黒い瞳に、凄惨な怒りと憎悪の光が宿った。
(……実は、わしは『エルフ』の連中から逃げてきたのだ)
((エルフ……!?))
思いもよらない種族の名前に、俺もハクも驚愕した。ライゾウは溜め込まれていた怨嗟を吐き出すように、一気に語り始めた。
(奴らエルフは……人間どもが崇めるような清廉潔白な種族などではない! 精霊や幻獣を身勝手な古代魔法で強制的に『契約』し、奴隷以下として使役する残忍な連中なのだ!)
(奴隷以下……!?)
(そうだ! 普段は『精霊の腕輪』という真っ暗な狭い闇の中に封印され、食事も自由も一切与えられん。そして戦闘や作業で魔法が必要な時だけ引っ張り出され、魔法を放てばまた闇へと叩き込まれる……。敵を倒しても経験値はすべてエルフに吸い上げられるため、成長すら許されんのだ!)
「……胸糞悪いな、おい」
俺の顔が怒りで歪む。
(先日、わしを契約していたエルフがゴブリンとの戦闘で死亡したのだ。通常なら腕輪ごと別のエルフに回収されるのだが……奇跡的に腕輪が壊れ、わしは闇から解放された。これ幸いと逃げ出したが……追っ手のエルフやその精霊、さらに途中で遭遇したゴブリンどもと連戦になり、魔力が底をついて倒れていたのだ)
(そうだったのか……大変な苦労をしてきたんだな)
(でもライゾウ、見ての通りヒロト様の眷属になっても、そんな暗い場所に閉じ込められたりしないわよ? みんなこんなに自由にのびのびやってるわ)
ハクが誇らしげに胸を張る。
(うむ……言われずとも分かるぞ。仲間の者たちの顔を見ればな。全員の瞳に命の光が宿り、実に生き生きとしている)
((うんうんっ!!))と大きく頷くスラオたち。
(ハハ……『自由』っていうか、俺の指示はちゃんと聞いてほしいけどね……)
苦笑いする俺の横で、ハクが嬉しそうに身をくねらせた。
(それにしてもヒロト様! 私、久しぶりにレベルが上がりましたわ! Lv.30から先はもう何十年も上がっていなかったのに……! 眷属になって本当に良かったですわ!)
(私もです! こんなに早く強くなれるなんて……!)
スパも8本の脚をパタパタさせて歓喜している。
(うむ! わしも何百年ぶりのレベルアップだ! この素晴らしい力を糧にして……いつかエルフどもに捕らわれている同胞たちを解放してみせるぞ!)
(ふふ、応援するわよ、ライゾウ!)
(俺のスキルの【眷属経験値UP】のおかげだな。獲得できる経験値が常に『2倍』になる上に、全員で共有されるんだ。だから1匹でゴブリン6匹分……いや、実質12匹分以上の莫大な経験値が一気に入ってくるんだよ)
(((((凄すぎる……!!!)))))
眷属たちが興奮で歓声をあげる。
そして──俺は輝くステータス画面を見つめ、ゴクリと唾を呑み込んだ。
「さて……レベルアップも最高だけど……いよいよ本番だ」
スラオ、レイ、リザ、アイ──初期から俺を支えてくれた4匹の眷属たち。
「みんな……『進化』の準備はできているかい!?」
待ちに待った眷属たちの進化──その驚愕の姿と覚醒した能力とは!?
タイトルに第○話を追加しました。
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